「もっと本気でやってほしいんだけど?」
「この状況でよくそんな口を……! 【魔銃】!」
銃が投影されている。
屋内空間にいた時と同じ仕様だ。どうにもこちらに近づいてほしくないらしい。
横一面を埋め尽くす銃の壁、一斉に弾が解き放たれる……直前に効果付与が行われた。
「【貫通】! 【高速】!」
「まだまだ甘いよね」
それでもロリコは物怖じしない。
放たれた銃弾を小さな動作で避ける、避ける。
あるいは斧を用いて盾にしたり、風を生んで守ったり。
まるで当たらない。
それどころか近づいてきたりする。
「ポプラちゃん」
銃弾流れる音の中、ロリコが話を向ける。
その心に目の前の人物を救いたいという気持ちなんてものはない。
純粋にたった一つ、本気の佐伯ポプラと戦いたいということだけ。
「なんで武器ばかり出すの? 前みたいに隕石とか暴風とか起こせばいいじゃない」
「……! それをした結果私がどうなったか覚えていないのですか!?」
「知ってるよ、ダンジョンクラッシャー。Aランクダンジョン、星宮の遺跡を破壊した時についた異名でしょ」
目を見開くポプラ。
戦闘の意思が弱くなっているように見えた。
目の前にいるロリコは自分の活動を事細かく理解しているらしく、その上でポプラにしてほしいことを本気で口にしている。
たとえこの先、ロリコが敗北して配信人生に終わりを迎えたとしても、そんなものは関係ないと言わんばかりの態度を示している。
なお、その時の光景はまだインターネット上に存在している。
減らしてもいつの間にか現れるインターネットの特性によるものである。
「……ちゃんと見てるじゃないですか」
「引き気味に言わないでよ。いーじゃん! 初めて見た時からカッケェって思ってたんだからさ!」
佐伯ポプラには別の異名がある。
ダンジョンクラッシャー。書いて字の通り。
佐伯ポプラの魔術の才は誰よりも優れていた。
詠唱するだけで、頭の中に描いたものを放出できるのだ。
だからロリコは惹かれた。派手でカッコいいという小学生らしい理由で。
「ダンジョン配信は攻略後が一番重要ってよく聞かされるよね。だって配信するんだもん。
攻略後、二度目の挑戦の時には情報が出揃うし、観光してもよし、攻略してもよしでようやく安全という言葉に意味が生まれるんだ。
けど。ポプラちゃんはいつも通り意味の読み取れない文字列並べてフルバースト。
その結果最奥ボスがいる空間どころかダンジョン全体まで破壊しちゃったんだ。
魔術の暴発だかだっけ? ギリギリのコントロールをしてるって言ってたからそこを突かれてた記憶があるね」
迷宮タイプのダンジョンは、攻略後にモンスターが湧いてくることはない。
今回の斜海ダンジョンも後に同じ枠組みに収まるだろう。
検査も入るが最終的に全てが掃討されて、安心の烙印が押される。
果てに観光スポットとして成り立つ。
あるいはダンジョンについての歴史、背景を知ることだってできることになる。
だからこそ、星宮の遺跡を破壊した佐伯ポプラは──炎上した。
:なっつ
:もう2年前か
:比べるとよくここまで制御できるようになったよね
:逆に言えばさぁ……
「ここが転機だよね」
ポプラは口を噤んでいる。いつもの詠唱は繰り広げられない。
額には汗が浮かび、息が切れている。
いつものポプラから見えない姿に彼女側の視聴者から困惑のコメントが流れる。
「炎上して、活動休止して、復活して、売りの破天荒さはまるで消えて超丁寧な魔力操作と解説と攻略。わかりやすければ人気が出るし、見た目も可愛いからシナジーも出てくる。
うん。持ち直せたのはポプラちゃんがすごいからだ。誰もがすごいと言えると私は思う。けどさ、私が見たいポプラちゃんじゃないんだよね」
近づいたのはいいものの、戦意を感じない相手に武器を振るうことはしないのがロリコ。
ドローンを手繰り寄せて収納していたビニールバッグを取り出した。
愛用のスマホを手に取って、ドローンを介して映像を投影した。
いつでも再生ができる状態。
チャンネル名は佐伯ポプラ。ライブ配信中という表示があるが、気にせず古い動画を開いた。
「な、何をするつもりなんです?」
「今から私が好きな佐伯ポプラの戦い方を発表していい?」
「なぜ!?」
「間近でこれが見れると思ったからやる気があったのよ、私は」
「そんなことしたらまた……!」
「また、何さ。炎上すると思ってるの?」
図星だ。
佐伯ポプラは一度味わった炎上を忌避している。
魔力量が優れているだけでコントロールできなければその点を突いて叩かれるし、優れた姉が配信活動していれば、否応なしに比較して叩き棒にもしてくる。
自分の戦い方にすらケチを付けてくる。彼女はこれでも成人。昔の戦い方はどうにも子供らしいと冷たい言葉を何度も投げかけられた。
それがファンの言葉ではないことを理解している。
逆に言えば、ファンになる可能性があった人たちの言葉であるということ。
恐れているから力の使い方を一から学び直した。
コンパクトに、最小限に抑えて戦闘を繰り返し、後々に繋げていく。
綺麗だ。鮮やかだ。華麗だ。わかりやすい。
言葉にすれば簡単で、直接伝わるためポプラも自分のやり方に間違いはなかったと思うようになる。
ただ、満たされなかった。
「心のうちでは前みたいにボコスカやりたいと思ってない? やってよ。私が受け止めてやる」
「なんでそこまで私にさせようと……!」
「推してるからだよ。言わせんなって」
「恥ずかしいだろ」目線を逸らしてロリコは口にした。珍しく顔が赤かった。
話の節々からロリコがポプラの配信を幾度となく視聴しているのは、ポプラも把握できていたし、もしかしたら知らないうちにコメントを拾ってたりしているかもしれない。
ロリコがロリコとして初めて見た配信は佐伯ポプラなのだ。
知ってる中で配信しているのは一人、長嶺コトコだけだったし、今後の参考になるかと思いながら色々と配信者を漁っていたのだ。
彼女は学校に通っていない。ありふれた時間の中で服を吟味するかのようにずっと探していた。
そうして見つけたのが佐伯ポプラだった。
ただ、それだけの話である。
「本気のポプラちゃんの戦い方を見たいんだ。ファンからの軽いお願いだよ」
「ですが!」
「じゃあ、なんでポプラちゃんは配信してんのさ」
「──」
「ダンジョン攻略しようが、ゲーム実況だろうが、飯を食おうが、雑談してようが、絵を描いていようがなんだろうが、配信したいと思ったからには理由があるでしょ。
私は金稼ぎとか復讐だーってあるけど。ポプラちゃんは? なんで配信しているの?」
前提条件として、彼らは配信者なのだ。
俳優、アイドルなどのプロとしてお金を稼ぐ者とは違う一般人の延長線。
やめたければすぐにやめれるし、場合によるが責任なんてものはない。
何処ぞと知らない一般人が、自分を武器にインターネットの上で活動する、それが配信。
デメリットは大きい。個人を晒すことになるので対応を間違えれば今後の人生を左右することもある。
何より顔が見えない相手と、顔を晒す自分では見えない方が語気も強くなる。
暴言も、指示も、セクハラも、それ以上も。
メリットも大きい。お金もあるだろうが。
「話してみてよ。本気でやり合った仲でしょ?」
ロリコはたまにではあるが視聴者の悩みに答えたりする。なんなら、他人の質問箱に投げられた質問を勝手に拝借して答えたりもする。
ウケがいいから続くし、視聴者もこぞってお金を投げて相談をしたりする。
価値があるかは投げる人によるが。
その経験があることをポプラは知っている。
「…………」
動きと、言葉が止まった。
戦いの轟音が泣き止み、海カモメの鳴き声、波の音が耳に入るようになってきていた。
それほど時間がかかって、ようやく彼女の口が開かれた。
「姉が、います」
「姉? ……あぁ、なんか雑談で話してたな」
思い返すは活動初期。
質問箱に聞きたいことを投げかけて、あるいは流れたコメントから拾って自己紹介したりする枠。その中で確かに口にしていた。
「偉大な姉です。昔は配信してたんですよ、ロリコさんも知ってるんじゃないんですか? 佐伯フルエンドって言うんですけど」
「…………佐伯フルエンド?」
姉がいるのは知っている。
姉の名前は知らない。初めて聞いた。
初めて聞いた名前なのに知っている名前だった。
「元FJKの一人です。私は──お姉ちゃんと、カエデさんに憧れてたんです」
「──」
佐伯フルエンドとは関わりがあった。
言動は厨二病染みてていまいち理解が追いつかなかったが、戦略の組み立てだけはやたら上手かった。
チラリとドローンに目をやった。
ドローンから聞き慣れた音声が届くことはなかった。
二人にしか流れない会話は流れる川のように消えていく。だが、一瞬だが外野で見ている元同士の言葉を把握することはできた。
単なる偶然ではない……とロリコは思った。
佐伯フルエンドとは面識がある。ダンジョン管理機関で働いていることも知っている。
切り抜きを管理しているかまでは知らないが、今後の根回しをするために準備をしていることは知っていた。
(……なんとなく見えてきたな。あいつもあいつで運がない)
それ以上考えても仕方ないので話を傍に置いた。
これだからダンジョン管理機関は。
いやな役回りをさせてしまったことに、詫びの心を内心で描いた。
いや、待て。佐伯フルエンドに気を取られていたが次の言葉は聞き捨てならなかった、と次に思考した。
藤原カエデに憧れていた、と。
「……カエデが好きなんだ?」
かつての自分の名前を呼ぶ。
何処か嬉しそうにしながら。
「かっこいいじゃないですか」
感性は同じだった。
共通するのはカッコ良さ。
口角が吊り上がってニヤニヤしかける。必死に抑えた。
なお、この様子を見ている長嶺コトコは爆笑している。
「足蹴り一つで地を割り海を割り果てには空を飛んで、さながらうさぎのように可愛く跳ねてモンスターを鮮やかに倒す姿! 15歳でデビューしてばったばったと倒す姿には憧れたものですよ」
「ほ、ほ〜……ふーん、他には?」
「フィギュアスケーターのように飛んで、蝶のように舞って、目にも止まらぬ速さで相手を殲滅せしめる……。あの頃の私のことは今でも覚えてます」
「私もあんな風に配信してみたい」懐かしむように口にした。
誰かに憧れて何かを始める。珍しい話ではない。どこにもありふれてる話だ。
水泳選手に憧れた子供が水泳を始めるように。
身内が始めた運動に触発されて始めるように。
触発されて、真似をして、その背中を追いかけるように舗装された道の上を歩く。
佐伯ポプラにとって、配信は輝いて見えていた。
「家にいるお姉ちゃんは寡黙で何考えてるか、正直わからない人だったんです。そのくせ頭はいい」
(よく知ってると頷きたいけど頷けねぇ〜)
「しかも強い。家で見る時と違うお姉ちゃんの姿に何度驚いたことか」
「……家にいる時どんな感じなの?」
「がさつ」
「へぇ……」
(真逆じゃねぇか)
話に混ざりたい気持ちを抑える。
ポプラが語る姿はどこか楽しそうだ。
「それでも」
息を大きく吸い込んで、こちらを見据えて彼女は言葉を続けた。
「私は憧れたんです」
その目に映るロリコ。視線を捉える。揺れない、動かない、迷わない。口にすることで初めて自分の原点を振り返ることができた。
「同じようにしてみたいと。藤原カエデさんが脚技で私の心を掴んだように。
あるいは、私の姉が配信上で華麗に優雅に荒業を綺麗に通してくるように。誰もが出来もしないことを身をもって行い、自分でもやってみたいと思わせてくれる。
そんな彼女たちに、私は憧れたんです」
単純な理由が一番の原動力。好き勝手子供のように遊んで、けれどもルールの枠組みで魔力を使わないといけなくて。
ダンジョンなんて危ないもの、壊しても問題ないだろうという意見もある。
けれど、壊すにしても背景を調べてから壊した方がいいという意見もある。
ダンジョン配信は信頼の上に成り立つのだ。
だから──一度炎上して戻ってきて、今の地位を確立したポプラの実力は相当のものでないとおかしい。
それこそ、今のロリコを圧倒できるくらいにはないと……、ロリコはそう本気で思っている。
彼女は結局のところ、自分より強いモンスターと戦う羽目になるので、今の自分がどこまで通用するかは把握しておきたいのだ。
「思い出せたならそれでいいさ。いいよ? 存分に受け止めるよ」
「ですが、私は──」
「後が怖い?」
「……」
「ポプラちゃんは一連の騒動のせいで無所属だし、気負うものは何もない。恐れているの は何? 視聴者? 将来? 立場?
私が口にすることでもないけれど──好き勝手やった方がいいよ、配信は」
それは、ある種の悪魔のささやきであった。
ロリコ・リコは極悪違法ロリであり、配信させるのを止めてほしいと言われている存在。
同時に、配信によって生み出す効果は大きいモノとも言われている存在。
意見は二分している。放置するか、好きにさせるか。
故に捕獲を行い、真意を確かめ今後どう扱うかを検討したい。
それがダンジョン管理機関の考え方だった。
ただ、ロリコは来ることを要求されても行く気はなかった。
理由は嫌いだから。
今後、仮に。
ロリコ・リコが表舞台に立っても問題ない日が来るのならば。
18歳合法ロリとして、隣に立って戦える日々が来るのならば。
心の声に耳を向けてみる。
それは楽しそうだと即答された。
視聴者の声に耳を向けて見る。
不安に思う声、こちらのことを考えない野次馬の声、揺らぐ声。
誰もかれも、この後のポプラの行動に責任を取ることはない。
選ぶのは自分自身。やりたいことをやって楽しむか、抑圧された環境の中を生きるか。
目の前の少女の顔を見た。
いつもの、何も考えていないあどけない表情をしながら、けれどこちらに期待をしている姿が見えていた。
それはつまり、裏付けでもあった。
この先、佐伯ポプラは力を暴発させることなく、けれど本気の本気で魔力を運用できると、ロリコは思っていた。
お互いに満足できる結果に終わらせないといけない。
それがロリコとポプラの戦いに付けられている意味であった。
ロリコはお互いに満足して、この場を有耶無耶にしようと思っている。
だから言葉を並べている。ぶっちゃけ、好きな配信者とは関わりたくない気持ち半分に。
それはそれとして今の状況、炎上後の状態から楽しくなさそうに見えていたからという気持ちを半分に。
不運だなと同情しているし、けれど本気で戦える機会をくれて嬉しいとも思っている。
だから本気で戦わせて、植え付けるのだ。
ロリコ・リコは誰にも止めることはできない。本気の佐伯ポプラが相手でも、と。
疲れかけの身体に鞭打って相対する価値があるとロリコは思っている。
ほぼほぼ疲れていない状態で、ダンジョン内の財宝を根こそぎ獲得されていたとしても、お金を得る以上に佐伯ポプラとの本気の戦闘には価値があると思っている。
選ばせる。
ダンジョン管理機関のことなんて知ったことではないのだロリコは。
別に所属もしていないポプラもそう。だから思考できる余地が生まれる。
なれば、自分にできることを考えて。そして──佐伯ポプラは選んだ。
視聴者が離れてしまっても、今後自分の立場が危うくなる可能性があったとしても。
それが楽しそうだと思ってしまったから。
「……いいんですか? 間違えて、うっかり殺しちゃうかもしれませんよ?」
「あははっ! いい性格してんねェ! 問題ないよ。私の方が強いから!」
彼女のその言葉に、初めてポプラが笑顔を見せた。遊び相手を見つけた子供のようにはしゃいだ、爛漫さに溢れた顔をしながら。
「時折ロリコさんがカエデさんと重なる時があるんですよ。なんでですかね?」
「さぁ? 繋がりはあるけど教えないよ?」
本人である。
「なんでここまで私に言ってくれるんですか? 好きだから以外にもありますよね、理由」
「……」
目を閉じた、遠い記憶が自然に呼び起された。
『カエデさん。好き勝手戦うのはあなたの美徳です。楽しければそれでよし。他の事なんて気にせず、したいことをすればいい。
配信なんてそんなものです。変に気負う事なんてないのですよ。誰もあなたの人生に興味はない。興味があるのは現在見ている貴方だけ。
楽しいですか? その気持ちを忘れないでください。今、この時間、この瞬間、人の目が集まって、好きな気持ちだけを持って視聴する。
それでみんなが満足できる。だから配信が好きなのですよ、
ですがやりすぎです。自慢のスカートが傷物になりました。どうしてくれましょうか、カエデさん。逃げないでください? ねぇ、カエデさ~ん?』
「なに、ただのお節介だよ」
「あはは、今はそういうことにしておきます」
風向きが変わった。
表情が変わった。何かが起ころうとしていると、この場を視聴する者全員が予感していた。
「ロリコさん」
「ん」
「好きな配信者は私って言ってくれましたね」
「そーだね」
「私も好きな配信者がいるんですよ」
「ふーん、誰?」
「ロリコさんです。配信で初めて言っちゃいましたね」
「なんだ、両思いじゃん!」
「えぇ、両思いです……。では──」
幾度となく生成した斧。
基本的に使い捨てなので目立った傷はない。けれども握り慣れたそれを持って、ポプラに視線を向けた。
不意に笑みが浮かんだ。それはポプラに集う魔力が、先ほどまでと異なり一点、明らかに違っていた。
セーブしていたパワーを解放した。ダムが決壊し、溢れる力を吐き出そうと流動している。
そんな姿が見えて、かつて見た佐伯ポプラの姿に、自分が心の底からカッケェと思った佐伯ポプラと重なった。
「【星海の
空中に投影される──一隻の船。
年季が入っている、木造でボロボロな大型の船は、しかし威厳を感じさせる何かがあった。
目を奪われた。歴史的な価値を持ちそうな、ただのボロボロな船は異質な雰囲気を感じさせた。
「【胎動する
主砲らしき部分が赤く光った。
赤よりも紅く。海岸線の真上、夕焼けが差し込む造られた大地の上にいるはずなのに、全身が汗に塗れていた。
無意識に出た焦りも混ざっているかもしれない。途端に増えたのは、間違いなく目の前の戦艦の出現から。
「【光の刃】」
言い終えた瞬間、音が鳴る。
置いていかれる、何かが放出されていた。
思考は走らない。走っていたのは己の直感、かつての経験をもとに無意識に動く反射のみ。
「ッ!」
刃、と彼女は口にしていた。
斧を通して感じる、耳に通る金属の音、そして熱。じわりじわりと手に持つ斧が削れていた。
ただ──削れた箇所をロリコは生成する。新しく作る時間などないから。
弾き返す? ベストな回答だろう。
ロリコは真正面から叩き切ることしかできなかった。
佐伯ポプラの炎上前、本来のスタイルは。
今とは真逆。現在は頭にわかりやすくこれから生成するものを口にして、その後ろに効果を付与していく。
当然ながら付与する効果も口にするため、視聴者にとっても今手に持つ武器がどう言った効果を持っているのかを、考えずに理解することができる。
そこから派手に、どこか厨二心をくすぐられるような、けれどこちらにとっても頭に負担がかからないようなスタイルだったと言えた。
忘れてはならない。魔力はイメージの投影であると。
彼女の頭で描かれる世界で、彼女がそれを本物と思い込むことができるのならば。好きなものを生み出すことができるのだと。
だから、真逆。本人にしか理解できない、他人には理解されない言葉を並べて、けれど破壊力は抜群に。好き勝手、派手に誰もが予測つかないような魔力の運用方法を見せて、魅せてくる。
理解に及ぶことはできない、けれど見ていて楽しいから。だから好まれた。
枷を外してきた佐伯ポプラ。ロリコが好む彼女の姿が戻ってきたのだ。
誰も彼もが置いてけぼり。けれど彼女の姿に目を離せない。
星のように流動し、瞬き惹きつける彼女の姿に。
「ッ……! マジかよこの威力!」
なぜなら飛んできたのは空想の砲弾、それも刃。打ち返すという選択肢がそもそもなかった。だから両断するしかなかった。
斧を持つ腕は震えていた。一発防ごうとしただけでこれだ。余波で肌が焼け落ちるかもしれなかった。
それでも、身体の中に走る高揚感から目を背けることはできなかった。ふだんの化けの皮が外れて、一人の冒険者としての顔が露出していた。
「さいこーっ!」