それは二つの包丁だった。
折り重なり、交差する箇所を鉄で留めた包丁。
紙や布を切るために用いられる、工具にして文具、それが鋏。
そして、断ち鋏は通常の鋏とは異なり、柔らかい布を切るために作られている。
紙を切るのには当然適さない。刃は薄く、鋭い。
蝶の羽を切るために、彼女は鋏を作り出した。
文具を武器として扱う彼女は、自信満々に、自慢の鋏ならば切ることが可能と決めつけて生み出している。
「わーはっはっは!」
身長は140前後、胸は控えめ。
けれど歴とした成人女性。実年齢2□。
ロリコ程イカれた顔を作っていないが、子供らしく振る舞う偽物のロリ。
人はこれを合法ロリと呼ぶ。そしてそれを売りに配信を行うのは彼女。
名をツバサ。
配信タイトルは決まってこう。
"冒険者ランクSSSのプロが送るダンジョン配信"
当然ながら、冒険者ランクの最大はSまでで、プロというカテゴリはない。
そもそもの話、公に冒険者に最強と位置付けされる人物はいないのだ。ファンが勝手にあれこれ格付けすることはあるが。
配信、動画のタイトルは重要だ。
サムネイルと同様にタイトルも映るため、人の目を惹きつける要素として重宝される。
とはいえ見てわかる冗談。しかしこうも思う。
本当に強いなら、参考になるのではないか。
中身は実年齢2□歳合法ロリによるダンジョン配信。
けれど実力がそれなりに伴っているため、人が停留することも多い。
目当ての配信者が配信していない時に流すような、そんな枠。
それが彼女──ツバサだった。
「ほいっ!」
手が叩かれる。
パァンッ! と軽快な音に呼応し、鋭利な刃を持つ鋏が閉じられようとして、弾かれた。
白い障壁みたいなものが、一瞬だけ見えていた。
「粉ァ!?」
ツバサが驚きを見せるその下で、成人女性と違法ロリが腕を組んで、その光景を眺めていた。
「あれ鱗粉スね」ロリコの隣で腕を組んで観戦しているコトコが口にした。「周囲に散らせた粉で身を守るんか……」慣れない相手を目にしてロリコが言葉を漏らす。
そのまま思考の海に突入し、ゴリ押し以外での対抗手段を考える。
「……いや、待て待て」
ロリコは自分を静止した。
先程のスーパーチャットの存在を思い出した。生捕りにすればその分報酬が弾むのだ。
目の前の合法ロリは空中にシャーペンを作り出してロケットの如く飛ばしている──―しかし弾かれている──が放っておけば死に追い込むかもしれない。
「おいそこの合法ロリ! 私の話を聞け!」
:ロリがロリになんか言ってら
:実質コラボやんけ
:幼女の口から合法ロリが出てくることある?
ユグドラを気にせずデカい声で呼びかけるロリコ。
その声はツバサの耳元までしっかりと届く。
「あぁん!? ボクに命令するなんて何様だ!? あれはボクの獲物だぞ!? 顔の一つでも見てやる……ってロリコ・リコォ!?」
「……獲物がなんだって?」
乗っていた鉛筆から地に落ちて、ロリコの元へツバサは駆け寄った。
ブランドのロゴが入った帽子にパーカー、少しダボっとしたズボンを履いた子供のふりをした大人。それがツバサであった。
「ほ、ほんもの!? 実在したんだ……」
「非現実存在だと思った? 本物だよー☆」
「おあーっ! 私ロリコさんを見てロリキャラを全力で貫こうと思ったんですよーっ! サインください!」
「いいよー」
:逆だろ、構図が
:大人が子供に憧れるのか(困惑)
:これもう日常系アニメだろ
「……すんません、今戦闘中なんスけど」
「ごめんコトコ、ちょっとお話しするから時間稼いで」
「えぇ……」
「できるなら弱らせといて」
「めちゃくちゃ言うなこの人!」
「ったく……」と言葉を残しながら、コトコは装甲を纏い突っ込んだ。
今、視聴者の目の前に広がっている構図はこうなる。
正面に“本物”のロリ、ロリコ・リコと“偽物”のロリ、ツバサがおり、その奥で長嶺コトコが成長期を迎えたユグドラと対峙している様子が繰り広げられている。
:混沌?
まさしくそう。
ロリコはスマートフォンを操作してドローンの設定をいじる。
マイクのノイズキャンセル機能が後方の轟音を騒音と判定させてシャットアウト。
目の前の二人の会話のみが捉えられた。
「あ、あの! ボクのコメント欄で“ロリコがお前と飯行きたいって言ってたぞ!”ってよく見るんですけどこれマジですか!?」
「私配信で一度もツバサさんの名前出したことない……」
「あのゴミども嘘つきやがって! 死ね!!」
「口悪っ」
ロリコはツバサのことを把握している。
話題に出したことはないが、自分の振る舞いの参考になる人として、何度か配信を覗いたことはある。
第一印象は、よく視聴者と喧嘩をする人。
ロリコは視聴者を手懐ける方だが、ツバサは視聴者に言われたアドバイスを行い、自分が思う通りに進まなければそれを視聴者のせいにする。
とはいえ関係は良好、プロレスでしかないので最終的には肩を組むくらいの仲。
その次に器用な人間であるという印象。
詳しい名前は知らないが、文具を武器として扱う。
消しゴムを飛ばす、修正テープで攻撃を打ち消す、シャー芯で刺す、定規で切り込む。
さながら、傘を持って振り回す小学生と大差はない。けれどこれらには魔力が伴う。
殺傷力を持って敵を殲滅することは可能。
鋏を持って切り伏せるその姿を切り抜きでもよく見ていた。
おまけにロリとしての振る舞い方。割り切って自分がそうであると言い切る姿は記憶に残っている。
ロリコが活動を始めてから現れた配信者であり、急激に伸びている配信者であった。
視聴者に紹介されて裏で見ていただけだが、それでも名前を把握している。
「じゃあ今度一緒に行こうか?」
見た目は子供、頭脳は子供寄りの大人。
気遣うことは可能。
「なんならこの後行く? 打ち上げでも」ロリコは考えている。この後の展開を。
ツバサは確かに口にしていた。
自分の獲物であると。
前々から狙っていた獲物か、あるいは何日間か戦闘を続けていたのか。
各配信者の情報を漏れなく把握しているわけではないため、探り探りではある。
配信者との間に軋轢を生みたくはない。
単純に、ロリコ自身が配信者という存在を好んでいる背景もあるが。
自分が問題を起こすのはいい。常に撒き散らかしてはいるが。
相手を巻き込むのはよくない。巻き込んでもよい相手が今目の前で戦っているが、基本的には論外。
「いいんです!? うっひょー!」
まさしく子供のように喜ぶツバサ。
「でもあれボクが狙ってたんですよね……」
その顔を引っ込めて真面目な話を始めた。
「……それはごめん、いつから?」
「一昨日ですね。攻め手に欠けてどうすっかな、とりあえず今日も突っ込んでみるか。
「そう思って来てみたら、なんか知らない姿になってたんで攻撃しちゃいました」
「配信してた?」
「そりゃもう! 今だってカメラを回し─―あ!? ドローンないんだが!?」
「おいボクのどこだ!?」後ろを見つつ左右に首を向けるツバサを横目にロリコは自分のドローンに目を向けた。
:ここに来た瞬間に壊れたっぽい?
「マジ?」
:多分羽の部分と粉が接触して不良を起こしたみたい
:魔力運用のドローンの悪いところ
「あー、なる」
:伸ばし棒と句点を外してもう一度言ってくれ
:セクハラやめろ
:ツバサの配信今何も映ってない。黒、黒、黒
:すみませんここにくればツバサちゃんの姿が観れると聞いたのですが
配信界隈において伝書鳩が飛ぶことはある。
コメントとという形で、コラボ配信を行ったり、話題にあがったりした時に伝えられる。
今回の場合は生存報告になるのだろうか。
有用に働くことが稀にあるため、ツバサの配信をよくみる視聴者からすれば吉報ではある。
「あそこで壊れてるやつじゃない?」
「あ゛ーっ!? バカがよ、これ弁償もんだろ許せねーっ!」
:よくある話だろ
「だとしても高いんだぞアレ!」
「そこでツバサちゃん、いい話があるんだけど──―」
「まだスか!?」
「5分だけ待ってくれない!? ……今さァ、緊急の依頼でアレを捕獲してくれないかって言われてるんだよね」
「飛んだ物好きがいたもんだ! 虫博士かよ! だがダメ! あいつはきもい! キショい! 100万円積まれてもボクはあいつを殺す!」
:今なら1500万出せます
「ロリコさん、捕獲しましょう! 殺すなんてもってのほか! 生類憐れみの令が腕を組んでそうだそうだと頷いてます! 500万あればドローンなんて5億台買えますよ!」
「よし来た、500×3で分けるか」
ツバサは自分の背丈と同じほどの長さの鋏を右手に持ち始めた。
ロリコは自分の背丈と同じほどの長さの斧を右手に持ち始めた。
金に弱いのは誰もがそう。10億円宝くじで当選すれば仕事を辞めて投資をしたがるものである。
ロリコたちの目標金額は100億円。
積み上げても足りないものは足りない。
人を治すのに5億円あっても足りはしない。
いかに報酬が弾んでも不足するものは不足する。
長く動き続けるためには折り合いを付けるのは仕方がないことである、故のソロ活動ないしは身内での活動なのだが。
「踏破報酬は─―」
「私それまだ貰えないから全部渡すよ。でも本当にいいの? 3人で攻略しちゃって」
「お金はもちろん欲しいですけど、それ以上にロリコさん達と共闘できる方が価値があるので!」
「……ほぉん」
:ニヤニヤ
:隠せてないぞ
「ぅっせ! そういうのは言わなくていいんだよ!」
ツバサは根がいい人なのだろう。
多分。口は悪いけれど。
「連日戦ってましたけど、正味勝てるビジョンが見えなかったんだよね」ツバサが武器を携え、走りながら口にした。
「ハサミを通すにしても蔦とか根が無限に生えてくる、隙を見つけて大本を叩いてもその後に種を植えてくる。いつか倒せるとは思うけど」
「戻って来た瞬間に鋏で切ろうとしたのは?」
「得体の知れない奴はとにかく殴ってなんぼじゃないですか?」
「それはそう」
回顧しても真っ先に殴りに行っていた記憶しかないため同意した。
「てかアレ、ユグドラなんですね。どうしてこんな形に……」
「ひたすら蔦の根を切っては焼いて、木の種も燃やして出て来た毒はコトコが吸った、そしたらなんかキレた」
「メタを張り続けたわけですか! はーっ! 一人じゃ無理だ!」
一人で攻略するにも当然限度はある。
時間はかかる、けど倒せる。冒険者ならそれでいいのかもしれない。
配信者としてはよくないだけであった。
一人でも多く、釘付けにさせるからこそテンポが重視されるのだ。
「ここで会ったのも何かの縁! 標本にして虫博士に渡してあげましょう!」
ツバサの言葉に頷き、鱗粉舞い散るユグドラの領域に突入した。
※
「う〜ん……」
赤から紫へ。
ユグドラの毒素を吸いながら解析を進めるが、戦闘しながら思考を回してしまう。
「毒は100……いや、1000? 羽を動かす時に性質を切り替えてる? 単調な動きなのに頭を少し回してる感があって嫌スね……」
「でも全部燃やせば関係ないか?
あれ、粉塵爆発ワンチャンあるか?
いや、ないよな? うん、ない。
可燃性じゃないからな、毒は。
魔力とか関係ない。ここだけ科学の世界。
あれ、でも魔力帯びてたら話は別か?
仮に燃えることを仮定して、距離はおきたい。
じゃあ燃やすことを前提に鱗粉を──」
:すごい、なにもわからない
:俺はわかるが?
:じゃあワイもわかる
あれこれ頭をこねくり回しつつ、それらを口にしつつ、時間を稼ぎつつ弱体化を目指す。
目標の達成は近い。相手がしてくることがわかればそれに対して解答を提示するだけ。
あくまで配信のベースは目の前の光景、今の思考を実況することである。
自らも客観視を行い、これからの戦法を口にしていくことで視聴者は理解し、視聴を続ける。
「正味、毒は全部解析し終えたと思うんスよ。ちなみにあそこで舞っている粉には麻薬作用がありますね」
:え、こわ
:おお(戦慄)
:なんで効いてないの?
「ヒュドラが毒に負けるわけないから」
:じゃあ平気か
ロリコとツバサが会話をしたのは7分程度。
その間で吸収した毒素は1000程度。
上限が見えて来たのか、解析を終えてない毒はもうない。
羽を動かすと同時に、内で回している魔力を変換させて毒を排出している。
麻痺、睡眠、催眠、即死、薬物作用。
あげれば枚挙にいとまがない。
100年前から存在している毒とは異なり、人間の身体に支障をきたすような、名前の通りの毒がそこにはあった。
とはいえ、もう関係はないが。
解析は終わった。長嶺コトコにそれらは通じない。
残りは倒すのみ。
「お」
後ろから二人のロリが迫って来ているのが見えた。
ロリコがコトコに視線を向けて、首元に左手を置いて、横にグイッと引っ張った。
終わらせようという意である。
「しゃーないっスね……」
火と、毒と、氷。
折り合わせて、混ぜるように3つの性質を混ぜる。
氷を入れたのは、生捕りの手段としてなんとなく必要そうに思えたから。
「
ヒドラを基準として、体の一部分に赤と水色の光が走っていた。ヒドラを基準とした形態が、毒の属性一つだとしたら、そこに二つの属性が加わった、ということ。
「生捕りってどうやるんです?」ツバサが疑問をぶつけた。「傷つけないように殺す」ロリコが澱みなくそう答えた。
「捕獲用の罠っていうのは……」
「「あるわけがないッ!」」
「ですよね〜」
コトコと声を合わせてロリコが答える。
実際の蝶は捕獲するところから始まるし、捕獲には虫取り網が用いられる。
そんなものは手元にないし、生成で作り出してもいいが、ユグドラが巨大なため捕獲には至らないだろう。
:傷つけずに殺せればなんでもいいですよ
「それが一番難しいって話するか〜?」ロリコが不満を漏らす。とはいえ達成のために動くほかない。一度引き受けてしまったから。
「羽根に何回か攻撃してますけどアレ簡単に破れないっスよ。中魔力通ってるんで」
「好き勝手してもいい……ってコト!?」
「鋏をチョキチョキしながら言われたら少し不安になりますけど大丈夫っスよ、ツバサさん」
あくまで重点に置くべきなのは捕獲。
そのためにはやはり弱らせる必要がある。
某国民的ゲームにおいて、モンスターを捕獲する手段として一般的な方法として挙げられるのは、さっさと弱らせること。
羽化したことで体力は全快に回復されてはいるが、とはいえ心配は何もなかった。
「
陸地を走る二人のロリに付与されたバフ。
目の前で飛んでいるユグドラが撒き散らす毒を全て解析し、それに対する抗体を与えた。
攻撃手段がそれしかない場合、必然、ユグドラは敗北を意味する。
周囲に撒かれている、各々の作用を持つ毒の中を突っ込んでいく。
けれど拒否反応は身体に走らない。
地上に流れる酸素と同じ、そこにあるだけで身体に影響をもたらすことはもうないのだ。
だから、ユグドラは一瞬驚愕した。
表情からは読み取れないが、動きから動揺は読み取れた。
その隙を見逃す者はこの場にいない。
左右に展開するロリ。
空を蹴って右から近づくのはロリコ・リコ。歯茎を存分に見せるほどに笑みを浮かべ、腰元目一杯曲げて斧を振らんとする。
シャープペンシルをロケットに見立て、左方向から上昇するのはツバサ。
手荷物はやはり鋏、しかし巨大。
折り畳み、鋭利な部分、先端から突き刺さんとシャーペンを靴の底で蹴って肉薄した。
「せーのっ!」
衝突する音はほぼ聞こえない。
けれど確実に攻撃は与えられている。
羽根と斧が触れて、ロリコは攻撃が受け流されるか危惧したが、接触時に衝撃が走ったため、ダメージがあると判定。
左方向に目をやるロリコ。
裁ち鋏で突き刺すツバサ、穴は開いていない。
視線の前側でユグドラが苦しんでいる様子が見えて──後方に飛んでいった。
空中に止まった状態で、飛ばされたユグドラは体勢を立て直し、羽を広げた。
「また鱗粉か、こりないな」
「いやこれさざめいて来ますね」
「さざめき!?」
ツバサが反応すると同時に、羽が振動した。
「音波による波状攻撃みたいなもんスね。ロリコさんなら防げますよ」コトコが後方で当たり前のように言う。
「任せろー!」マジックテープ式の財布を開き、奢ろうとする子供のように威勢を示すのはロリコ。
:コウモリの時とやることは同じやね
:さざめけ…
:なんか賭け始まってきて草
:勝敗の有無?一択じゃん
:A
:A
:A
自動的に入る賭け、10:0でロリコが優勢。
ユグドラを応援する者など誰もいない。
開いている手で斧を生成しては振り上げ、巨大化、おおきく振りかぶって空を斬った。
「どりゃーっ!」
可愛らしい声から放たれる斬撃波。
可愛さなんて一欠片もない。
振動させていた羽が前へ動いた。大気がぶれる、視界が揺れるかのような動きで、見えない何かが飛んできて──拮抗。
威力は同等といったところか、やがて相殺し、戦場は元通りとなる。
「意外とやるじゃんね! でも──」
「ボクがいるんだよね!」
空中に飛ばしていた巨大なシャープペンシルの上に乗っていたツバサ。
手に持つのはハサミとは変わって三角定規。
机に置いて、線を引ける誰もが手に持ったことにあるようなサイズ。
今のロリコは学校に通っていないので持ったことはないが。
:三角定規で何ができんねんw
「ユグドラに勝てる!」
手を離し上から落下、ユグドラへ向かいながら三角定規を投げ込んだ。
ブーメランのように弧を描きながら飛んだそれは、大技を出して動けずにいたユグドラと接触すると同時にユグドラのサイズに収まるほどに巨大化した。
:固定具!?
:知らない使い方やめてね
ロリコの視聴者でもツバサが初見のものもいる。当然の反応ともいえる。
そういう使い方もあるのか。
参考にして、戦う手段の一つして自分の中に加える、それがロリコ・リコという冒険者。
「身動きが取れない相手を嬲るっていうのは趣味じゃないケド、まぁ今回だけ。おりゃー!」
衝撃音は、ない。
けれど確かに与えられているダメージ。
呻き声が聞こえて、傷は見えない。回復作用があるのかもしれない。
「じゃあもう少し殴ります、か」
:じゃあってなんだよ
:やめろーっ! それ以上傷つけるなー!
「やめます。コトコー?」
「ウス」
:命令を聞く側なのか……
「可愛い子の命令は聞いてあげたくなるものでしょーが!」
:お、そうだな
:見た目は可愛いもんな
「中身もかわいーだろうがよ!」
:コトコさん渾身の叫びやめてください
:ポプラといいロリコを好きな奴が多すぎる
「でもお前ら私のこと好きだろ?」
:言わせんなっつーの
:えへへ
いつもの流れがコメントで始まったところで、コトコの準備が完了する。
「技に小難しい名前なんていらないんスよ」
三角定規に固定されたユグドラに触れて、コトコが続ける。
触れた箇所から空気が凍り、それはユグドラの身体を侵食していく。
「ただ凍らせるだけなんスから、好きな名前を募集します、お好きな名前、どぞ」
:絶対零度
:†アブソリュート・ゼロ†
「いやワンパターン!」
会話をしつつ、羽を動かして抵抗しようとするユグドラを、宙を舞う小型の部品が光線を放ち迎撃した。
隙は与えない、外傷は見えない、中の魔力のみをどうやら燃やしているらしい。
そうこう言いながら氷はやがて全体を覆い始めた。
「過度な部分は燃やして削って終わり。コールドスリープ的な感じで。なってるかはわからんけど」
「国民的ゲームなら凍らせても戦闘不能扱いにはならないで耐えてますよ!」
「ツバサさんが言うならきっとそうスね。虫博士! 文句あるか!」
:ないッ!!!!!!!!!
「主張が強すぎる」
:あと標本として留めときたいんでもう少しだけ付き合ってもいいか? 報酬釣り上げるから頼む
しゃーねーな。
3人はこぞって口にした。