【悲報】ガチロリ、ダンジョンで配信してしまう   作:油性

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ロリ in 新宿 ~10億獲るまで眠らない女~ ②

 

「まーちょっと休んでてよ。遅刻しちゃった分この場はなんとかするさ」

 

 公園の真ん中で2匹のモンスターと相対しながら少女は言って、大胆不敵に笑う。

 切られた太陽は消滅し、薄暗く黄色い空が円型になって覆っていた。

 ダンジョン侵入から30分程度、管理機関公認としてライセンスを持ったS級の配信者、ロリコ・リコが現れる。

 

 :太陽を切った女

 :物理的に切れるのか、あれ

 :参考にします

 

「変なとこ行くとデス太陽はすーぐ出てくるからね。一番キモいのは目に見えない時なんだけど、それは今はいいか」

 

 視聴者と会話する姿をただ見ることしかできないその他配信者大勢。

 ロリコの言葉通り休むことしかできず、黙って見守ることしかできない。

 

「まー、ロリコさんの言う通りここは休んでおくべきっスよ。はいはい回復回復」

 

 その後ろで動き回るのは長嶺コトコ。

 自分の力で回復させるのではなく、回復効果のある湿布を貼り付けているだけだが。

 

「うだうだ言っても仕方ないしさっさとしばくか……おいそこの杖持ったゴブリンのガキ! さっきから小細工を弄してるけど──

「ロリコちゃんにはそれ、効かねーから」

 

 声を落としながら言い終えると同時に両の手首をスナップ。

 飛び目掛けるは杖を持つゴブリン─―ゴブリンメイジ。音を置き去って首元まで向かい、巨大な剣を持つゴブリンがカバーに入った。

 

 その名をグレイテストゴブリン。

 岩で出来た巨剣を携え最小限の動作で斧を弾く。焦点のない目はロリコに向けられて、その目の前で視界からロリコは消えていた。

 

「!」

 

 さながら蜃気楼。足早に動いて視界から消失。

 揺らいだのは一瞬、すぐに構えて警戒体制──途端にグレイテストを覆う影。

 

「なんだ、意外と速いんだね」

 

 体重以上に魔力を乗っける一撃。

 斧と剣が衝突し、火花が舞い散る。ロリコが優勢らしく、グレイテストの立つ地面には亀裂が走り、割れ始めていた。

 

「ゴツゴツしてんなそれ。このまま折っちゃおうかなァ!?」

 

「!」

 

 ロリコの言葉に反応して握る力を強くして、腕を振り切ろうとする。

 力が上向こうとしたところで、グレイテストの視界からロリコが消えて、剣は空を裂いた。

 

「隙あり♡ メイジはやっぱこちらの言葉を認識してるっぽいね? そんなんじゃ甘いよ?」

 

 既に地面にいるロリコがメイジに目を向けて嘲笑混じりに言う。

 手を離して即座に移動、身体が一瞬だけ煌めいていたがこの場にいたものはその動作を目で捉えられない。

 

 :は?今何した? 

 :放送飛ばしたか? 

 :サイクロプス使い勝手良くね? 

 :一瞬だけ使ってたの、見えてますよ

 

 とはいえ眼鏡をクイっと上げながらコメントをする視聴者たちは見えていたらしい。見慣れているから見えていたと思われるが。

 離した手には何もない。

 何もないから作り出す。

 作り出されたのは、使い慣れた斧。ロリコの上半身程度ほどの大きさしかないバトルアックス。

 

「ちぇすとーっ!」

 

 それを一振り、間抜けな声であるものの、しかし輝くはロリコの身体。

 アクセサリーが煌めく。伝うようにロリコの身体に電力が走っていく。

 

「所詮は死体だね。本家本物はこれの5億倍は強いよ。いかに強い個体に成ったところで操る奴がそんなだとただの雑兵にしかならんよ」

 

 腹から横一線。

 肉体の強度などお構いなしの一振りはグレイテストの身体を横にズラした。

 あくまでも死体だ。四肢の一つでも残してしまえば抵抗されるだろう。ならば武器を持てたとしても移動できないようにしよう。

 

 :腹から上バタバタでワロタ

 

「腕も切っとくか」

 

 :容赦もない

 

「容赦は浜で死にました」

 

 :浜(斜海ダンジョン近くのビーチ)

 :メイジ逃げてるけどいいんか? 

 

「背中を向けて逃げ去るとは情けない。それでも日本男児か?」

 

 :どれでもないだろ

 

「まぁ心配はいらないよ、頼りになるママがいるからね」

 

「仕上げはお母さんじゃないんスよ」

 

 声と同時に天より砲撃が一線。

 ロリコの視線の先には円筒の形をした機械が光線を放ち、ゴブリンメイジの脳天を貫いていた。

 

 やがて絶命、大久保公園一帯に現れていたモンスターは全て鎮圧。以降出現は見られなかった。

 

 

 

「ヘアアイロンしてきました?」

 

「えやっぱわかる?」

 

「わかりますわかります。輝いてますよ、その髪」

 

「やだ、うれし〜!」

 

 死んだような目で拠点を作るは長嶺コトコ。「何もわからんくて草」小言を漏らしながらも手作業を続けている。

 拠点を作ることに意味はある。

 単純な話、魔力を回復する休憩ポイントではあるが、エネルギー補給のために安心して食にありつける場所を作るためでもある。

 新宿に結界が張られていたように、こちらも同じように結界を張る。モンスターの侵入を受け付けないそれは確かな効果を発揮する。

 

 佐伯ポプラも斜海ダンジョン侵入時には迷宮区域に所々作成していた。攻略以降足を伸ばして向かう配信者には大変大助かりであった。

 ロリコは作成しなかった。理由は道具を持ってきてなかったから。単純に1日で終わらせる気で時間を優先したから。

 

「あ、今度ボクが愛用してる化粧品紹介しますよ! ロリコさんまだ若いんですから今のうちに化粧水とか付けて乾燥とか肌荒れケアしませんか?」

 

「いいね。ニキビとかでなくなる? 脂っこいもの食べすぎてヤバなんだよね」

 

 ここで作用するのは認識を誤認させるということ。

 デス太陽の存在に思考が向かなかったのと同じように、モンスターにはあの場には何もない場所として思わせる。

 これによってダンジョン内で配信環境を整えるための拠点が完成する。機材の調整を含めてダンジョン内で休息を取る場所は誰かしらが作らなければならなかったのだ。

 

 大久保公園は拠点の一つとして運用させる予定だった。実際に弁慶がそれを作る様を見せていたことがあった。

 だからここを第一の集合地点として設定した。

 これ以降は新宿内にいる配信者はバラバラに動き、モンスターを狩り、あるいは弁慶を破壊して夢を掴むかになる。

 

「か〜っ、美容界隈最強ってわけだね。まだまだ成長中だからもうちょい気ィ遣うか」

 

 知らない界隈に属していたロリコに目を細めるコトコだが、とはいえ今までに関わりのない文化に触れて学びを得ているのだろう。

 そう考えると成長を考えて少し嬉しいような気がした。同時に目線が母親になっていると気がついて頭を横に振った。

 

「ロリコさんにとってのあたしって一体……」

 

「は? 親友だろ」

 

「ロ、ロリコさん……!」

 

「ったく……」と鼻の下を指で擦り散らかしたところでようやく準備が終わる。この間ロリコ達は配信者達に感謝の言葉を向けられていた。

 

「助かった」「すまなかった」「かんしゃ〜」「あざます」「ロリコってちゃんといるんだ」「マジにロリでウケる、ウケない」「実は応援してました」

 

 こぞって向けられる大人からの言葉に最初は照れ臭くなってきたが、最終的には「散れッ全員散れッ! じゃないと新宿のモンスター全部私がいただくぞ!?」と上擦った声で解散を促していた。

 そうして役割分担を行なって拠点の作成が完了。漏れがないか確認した後、配信者は全員散らばった。大久保公園にいるのはコトコ、ロリコ、ツバサの3人のみである。

 

「じゃあ私たちは弁慶狙いで行くか」

 

 ロリコが仕切り始めた。

 はなから10億以外取る気のない短絡的な思考ではあるものの、とはいえ一番目的が明確であった。

 リソースをどこに割くか、欲張りをしたところで限界はあるのだ。

 

「ロリコーン共、私の配信タイトルが見えているか?」

 

 :はい

 :見えてるぞ

 

「10億取るまで寝る気がありません! なんなら飯も食わねーし、息もしねー」

 

「すごいこと言ってますよ」

 

「この人昔からこんな感じなんスよ」

 

「と、いうことで。いそうな場所の案だそか」

 

 何がということでかは分からないが、コメントも含めて弁慶が潜んでいそうな場所を検討してみる。

 

 ・都庁

 ・新宿駅

 ・新宿御苑

 ・どっかの神社

 ・歌舞伎町

 ・歌舞伎町タワー

 ・東京オペラシティ

 ・トイレ

 ・マンホールの中

 ・実はいない

 

「都庁が一番ありそう。理由は一番強いから」

 

「どういう理由?」

 

「実はいないっていう肩透かしを喰らうのが嫌ですよね。とはいえここから出て行ったなんて話、聞いたことはありませんが」

 

 弁慶はなぜか新宿区域内で身を潜めている。

 そこに理由があるかは定かではない。

 新宿近辺は監視用にカメラを常に回している。いつ襲いかかってくるかも分からないモンスターと化した機械がいるのだ。このため、周辺地域に人は一人も住んでいない。

 

 :弁慶ってどういう基準でモンスターを殲滅してたの? 

 

「討伐の優先度の話っスか? 簡単スよ。あいつダンジョン内にいる敵と認識した者の強さを図るんすよ、最初に」

 

 コトコが指を立てて解説をする。

 

「で、今この時点で一番厄介な相手をターゲットに据えて、最優先で襲いかかってくる。あれの思考ルーチンはそういうふうにできてるっス」

 

「じゃあロリコさん相手に来るんじゃないんですか?」

 

「え、やだ照れる。機械相手はちょっとナ……」

 

 :アンドロイドじゃねーんだぞ

 :それなら今ここに来ないとおかしくね? 

 :ロリコお前この中の誰かに負けてるってことだぞ

 

「は? 負けてないが? 今は切り札を温存してるだけだが?」

 

「それを加味して来るはずっスけど」

 

「じゃああれだ。長年の運用で認識があやふやになってんだよ!」

 

「あ、でも弁慶そういうことがないように魔力で自動整備するよう調整されてたはず……」

 

「…………」

 

 :黙っちゃった

 

 子供らしく黙っていたままでは話が進まないので、無理矢理にでも話を進めようとする。

 

「ま、まぁ要は三つなんですよ。現時点において一番脅威な相手で、それなりに力を有していて、倒されそうな程に危険性を持つものを優先してくるはずです。ダン管の資料で見ました」

 

 ツバサが慌てて補足する。

 このため、考えられる説は複数あるが、この場にいる3人はロリコに向かってこない理由をまだ子供だからということで結論づけることにした。

 

「うゆ……」

 

 ひっそり涙を流したが嘘泣きだったのでスルー。「あとで理解らせればそれで解決よな?」自分に言い聞かせつつ視聴者に肯定を促した。視聴者はYESマンが多かった。

 

「ま、単純に弁慶が戦力を測ってる段階のほうがありえるっスけどね。見定めてるんすよ、獲物を」

 

 :クソモンスター? 

 

「片っ端から探すにしても時間は足りないから手分けでもする?」

 

 ロリコが提案する。チームを組んで行動するのはいいがしらみ潰しをしても他の配信者が見つけるのみである。

 

「あたしはいいっスけど」

 

 コトコはその提案を呑みつつ、「ツバサさんはロリコさんに付いてく方がいいと思います」付け加えてそう言った。

 

「体調ですか?」

 

「それもありますけど、ロリコさんと一緒に行きたそうな顔してたんで」

 

「バレとる」

 

 :ロリコが提案した時からずっとロリコの顔見てましたよ

 :ツバサがロリコに情熱的な視線を向けてるの、バレバレ

 

「まぁ一人であたしは行けますし、何かあればすぐに連絡はできますから。慣れてますんで、そういうの」

 

「助かるよ、じゃあそれで行くべ」

 

「ツバサちゃん行くぞ! 手繋ぐぞ手ェ!」ロリコがツバサの手を掴んで引っ張って移動を開始した。「手ェ!?」この日1番のでかい声。

 

「とりあえず都庁側向かうわ。情報なんてこいつらが拾ってくれるし、そん時は頼りにしよう」

 

「ロリコさんそれで前回痛い目見ませんでした?」

 

 :いいんだよ、忘れて

 :よくねぇ! 

 

「じゃあここからは分担で。私とツバサが都庁方面。コトコは?」

 

「歌舞伎町で。前から行ってみたかったんスよね」

 

「観光か?」

 

「調査調査!」

 

「ほならええか」ロリコはそう言ってツバサの手を取って公園を出る。「何かあったら連絡頼むぞ! 10億獲るぞ10億!」そう言いながらコトコに向かって手を振る。「ロリコさん引っ張る力つっよ!」愉快な声を添えつつ、二人は公園を出て行った。

 

「…………大丈夫か?」

 

 コトコはひとりごちる。

 その後ろで飛ぶ彼女のドローン、そこから流れる機械の音声が流れる。

 不安に感じる声も多かったが、それ以上に応援する声。

 

「大丈夫か」

 

 自分に言い聞かせる。

 脳裏に一瞬過ぎるはかつての親友の残骸。

 自分達を逃すために時間を稼ぐと言い張り、戻った先で見えたのは酷い姿。

 10年経っても消えやしない。けれどそれ以上に上書きするのは今の姿。

 

 初めて見た時は目を疑ったのはいい思い出だ。

 今を生きるものとして、イキイキとモンスターを倒す姿にはかえって安心感さえ覚えている。

 今のロリコなら弁慶とサシで戦っても勝てるだろう、自分ではわからないが、それを可能にできるほどにロリコはポテンシャルを秘めている。

 

「じゃああたしもぼちぼち向かいますかね。サボってたらロリコさんに何言われるかわから──―」

 

 後方振り向いた先で、ドンッ、と重い音が公園内に響いた。

「は」と口に出す前に、白亜の体が砂煙の中から現れた。体躯は人間。武器は持たない、緑色の眼は敵型の能力を分析するために常にコチラを見つめている。

 モンスターとしてカテゴリされているが、元はモンスターではない。身体を潜めて行動してこないという前提のもと、拠点を作っていた。

 考えが浅はかだったとは思わない。拠点作りは最善策であるからこそ、最優先で作られるものである。

 なぜわざわざ長嶺コトコが一人になったタイミングでそいつが現れたのか。理由は簡単だった。

 

『ま、まぁ要は三つなんですよ。現時点において一番脅威な相手で、それなりに力を有していて、倒されそうな程に危険性を持つものを優先してくるはずです。ダン管の資料で見ました』

 

 ツバサの発言を思い出し、顔を下に向けて、苦虫を噛むような声でそれを口にした。

 

「あたしかよ。見る眼ねーな……?

「最強はどこまで行ってもロリコさんなのに。

「……やけに小さいな。すまん視聴者共。嘘ついたかもしれん。

「まずはこいつが本物か、確かめるところから始めます、か」

 

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