【悲報】ガチロリ、ダンジョンで配信してしまう   作:油性

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ロリ in 新宿 ~10億獲るまで眠らない女~ ④

 

 さて、現在の新宿の状況だが。

 小弁慶と称する機械が3体暴れ回りながら、その周辺をモンスターが闊歩している。

 目的はモンスターの殲滅。そして弁慶の破壊。

 現在長嶺コトコが小弁慶を1体撃墜。その後残骸を回収して持ってきたパソコンから生産元を辿ることになる。

 この間行動が取れなくなるため、配信映えもしないただひたすらにコトコがトークする場面が映し出されることになる。

 長年の付き合いであるファン層からは好まれているが、他のものはそうではない。

 ぼちぼちと視聴者数が減り始めているが、それでも平均同時接続者数2000超えは崩れない。

 

 トークが面白い時があれば、マジにつまらない時もある。身内ネタを話しまくって視聴者に幻滅されたこともある。誰も知らない分野の話を小一時間早口で捲し立てるように話して、ドン引きさせたこともある。

 それでも10年。積み上げ、育ってきた視聴者は離れることはない。その雰囲気が好きなのだからいるだけなのである。

 

「つってもやることカタカタ作業でしかないんスけどね……、はー解析終わらんくて草」

 

 なんて言葉を漏らして拠点となった大久保公園にて、用意していた椅子に腰掛けながら机の上に肘を乗せて作業を続けていた。

 

 小弁慶は実際のところ全部で3機。

 仮に人間側が攻め込まれてきても、3機いれば力量を測ること、あるいは潰すことが可能だという判断を元に生産された。

 残りの2機のうち、1機はロリコとツバサのもとに、都庁への進入を防ぐために防衛に動いた。

 

 残りの1機は片っ端からその他大勢の配信者に向けてひたすら突っ込んでいた。

 作り出された小弁慶に個性を挙げるならば武器の違いではあるが、その1機はどうにも好戦的な思考ルーチンを持っているらしい。

 生産者も腕を組み、なんでこうなった? と考えたみたいだが、こうなってしまっては仕方のないものとして作り直さず、どういう過程で生まれたのかを分析した。それが2番目である。

 

 

 歌舞伎町近辺、倒壊している歌舞伎町タワーの周辺で小弁慶と戦闘をしている配信者が4人。

 数分前まで何十人もいたはずなのに、撤退を余儀なくされて退散したところだ。

 

「小弁慶って何だよ!」

 

 美大のタラバが文句を漏らしていた。

 自分よりもちょっと強い相手とひたすら戦わせつつ、けれど自分の力がだんだんと洗練されているのを感じながらも水泡を打ち込み、身体を水に変質させながら抵抗を続けている。

 

「文句を言わないでよ! てかこいつソロで倒せる長嶺コトコって何者なのよ……」

 

「FJKを知らない世代か……、若いな」

 

「どなた!?」

 

 セッツの長嶺コトコに対しての疑問に、パワーゴリラは眼鏡をクイっと上げながら言葉を差し込む。

 

「13年前に彗星の如く現れた4人組のダンジョン攻略を中心とした配信者グループのことよ」

 

 訊かれてもいない解説ではあるが、続く言葉には耳を向けている。

 

「サクラ・ソワレ、佐伯フルエンド、長嶺コトコ、そして──藤原カエデ。

「4人の女子高生から連なるこのグループは日夜増え続けるダンジョンをひたすらに攻略していったんだ。まさしく快進撃。

「いっときはニュースにもなってたんだがね。セッツさん13年前って何歳?」

 

「6歳!!!!!!」

 

「わっか」

 

 コメント欄も同じ感想。

 交えて知ってる配信者同士に対する感想。

 指示も舞い散り割とカオスなコメント欄だが、ほとんど聞き流している。

 会話をしながらけれど戦闘は続いている状況。

 

「3年間、たったの3年で攻略したダンジョンの数は100」

 

「100!?」

 

「頭がおかしいくらいに強かったんだよ。見つかった即日に攻略しに行ってそのまま討伐することなんてよく聞いた話さ。藤原カエデが加入してからそのペースが早まったんだ」

 

「最初から4人じゃなかったの?」

 

 セッツは小弁慶が動き回る空中の周囲一帯を凍らせつつ、本体に冷気を当てて凍らせようと画策しつつ、パワーゴリラがサバイバルナイフを片手に急所を突こうと接近している。

 その横で夏生ツナが逆手剣を両手に持ち、黙々と小弁慶の持つ斧と交えている。会話に参加する気はないが聞く耳はあるらしい。

 

「最初は3人、途中で電撃加入したのが藤原カエデ。あの人めちゃくちゃ強かったんだよな。脚を使った攻撃が主だったんだよ。おまけに動きがいい。見ていて飽きないんだよ」

 

「…………」

 

「フィギュアスケートとか、新体操とかさ、自分ではやっていないのに選手がド派手な技を魅せたら目を奪われるって感覚、わかる? あれが毎秒飛んでくる」

 

「それはすごいです、ね!」

 

「本人はゴリ押しって言い張ってたけど、他の3人のサポートの甲斐あってちゃんと強かったんだ。明確なパワーアタッカー。それが藤原カエデ」

 

 小弁慶の動きを数秒間だけ止めたセッツ。苦しい声を上げながらも返答、その隙にパワーゴリラがサバイバルナイフを心臓部分に当てがう。

 さらに後方から夏生ツナが逆手剣を持ち替えて同じく心臓部を、美大のタラバが上から水泡の準備。

 

 3者による同時攻撃が命中。

 轟音掻き立て煙が吹き出されて3人は否応なく距離を取らされることになった。

 

「でも死んじゃったんだよね」

 

「死?」

 

「人の言葉を操るモンスター。学校で習わなかった? あるいは訊かせられたとか」

 

「……あぁ、ありますね」

 

 遭遇したら即座に逃げろ。

 人間が敵う相手ではない。

 本物の災害。

 ダンジョンのどこにでも現れる。

 魔力をないものとして扱うから対抗できない。

 

「情報が言葉を使うことと、魔力をゼロにすることしかないアンノウン」

 

「そいつに殺されたのが藤原カエデ、サクラ・ソワレは意識不明の致命傷、()()()()。残った2人は解散を宣言……、長嶺コトコその中でソロで活動を始めたんだ」

 

「あぁ、年季があるんですね。そりゃ強い」

 

「途中で謎の幼女を拾ってきたこともあったな。そう。ロリコ・リコだ」

 

「クレイジーロリってそこからなんだ。あの子に実力負けてる私っていったい……?」

 

「呑気に話してる場合か!? まだ終わってねーぞ!」

 

「美大の人がなんか言ってますよ……、しかし助かりました。そんな強い人だったんだ、後でちゃんと感謝しとかないとな」

 

 美大のタラバからの叱責を受けて、改めて前方に目をやる。

 

「来るぞ」

 

 夏生ツナの言。

 

「この人喋るのか……」

 

「無言配信のが多い人って聞いてたんだけど……」

 

 煙の中から現れる小弁慶。

 変わらず斧を構えて、けれど心臓部には亀裂が走っている、それでも脅威であることには変わらない。

 この場にいる4人は言葉を交わしている程度には余裕があるように見えるが、実際のところそこまではない。

 配信者たるもの、見ている人たちに不安を感じさせてはいけないのだ。死を意識させる環境下で死なずに輝き続けるからこそ、ダンジョン配信は常に映える。

 どうするか、と内心でパワーゴリラが策を練ろうとしたところで─―流星。

 

「!?」

 

 一同驚愕、突然の乱入者に狼狽が止まらない。

 反応する間に斧による一撃が小弁慶から流星に向けて放たれる。

 流星は、人の形をしているもののフード付きのマントで身を隠していた。黒いそれだが唯一露出している脚部分、金属を纏ったその脚から、小弁慶の攻撃に向けて動き、激突。

 斧と脚が混じり合い、流星が小弁慶を突き落とした。そして配信者4人の前に立って、あとは任せろと言わんばかりに小弁慶を見つめていた。

 

「……誰だあれ」

 

 この場の誰かの声に、一同は頷いた。

 

 

「武蔵をしばくぞ! と、いうことでいま緊急で動画を回しています」

 

「ロリコさん今配信中です。1時間ずっとカメラ回してます!」

 

 右手の刀でロリコの斧を受け止め、左手の刀でツバサのシャーペン剣の動きを止めている。

 その名は弁慶……しかし子機。

 青く輝くその刀身は揺らめく陽炎の様。少し近づけるだけで熱いと感じれるほどの、そんな属性。

 

 :ロリコパワー系なのにここゴリ押せないの? 

 

「いっやっー! こいつも意外とパワフル。だけど意外とワンダフル、やりおるマンだから苦戦してもうてます!」

 

 :なんで嬉しそうなんだこいつ

 

「ロリコさんのバトルジャンキー癖ッ! カメラには見えてないけどこの人すごい顔してますよ! たまんねーっ!」

 

 :ここ狂人しかいないじゃん

 :うわ狂人部屋じゃん

 

「ロリコさん、切り替えます!」

 

「任せろー! せーのっ!」

 

 力の方向性を切り替える。

 行き場を同じ方角へ。シャーペンの芯0.3㎜から4Bの太さへ。レイピアから細身の剣へ切り替わり、けれど強度も増していく。

 そして、共に力を入れて都庁ビル側方面へ向けて強引に振り切った。

 飛んでいく小弁慶。ドア付近上側の壁へ衝突せんとし──同時にロリコは身体を光らせて迫っていく。

 その後方支援に回るはツバサ。空中にはすでに高速で回転した鉛筆が生成されている。ロリコに当たらない範囲でオートマチックからマニュアルに切り替えて発射。桃色の鉛筆が飛んでいく。ロリコの攻撃範囲を避けつつ、けれど弁慶が逃げられない範囲に。

 

 :空中で体勢を立て直した!? 

 :かなり、やる

 :しかしロリコの方が早い

 

「立て直す時間がもう遅いんだよねッ!」

 

 この手の手合いは何もさせない。

 ロリコの戦闘スタイルの主。初見の相手はとにかくこちらのやりたいことを突き通す。

 敵は人型ロボット、武器には双剣。

 ロリコはある程度、相手の攻撃手段を頭の中に浮かべている。

 二刀流で刃先が鉄ではないのなら、伸ばしてくる可能性、刀身を放出してくる可能性、捨ててステゴロに切り替える可能性。

 常に頭の中で浮かべながら、並行して目の前の相手の行動を処理していく。

 その過程で相手の取る選択肢を描いた候補から外していき、最終的に戦闘プランを完成させていく。

 なお、完成までが遠いのが玉に瑕である。

 この手の計画は長嶺コトコが後方に下がって指示出しを頻繁にしていた。

 そうして最終的にはパワーで潰す。出方の判別が付ければ読み切った上で叩き潰せるのだ。

 

「故のゴリ押しッ!」

 

 体勢を立て直した瞬間から腹へ目掛けて斧を振るう。小弁慶は──―その手から双剣を離していた。自動的に動いたそれはロリコからの攻撃を守るように動いている。

 1秒稼げれば小弁慶は動けるらしい。背中に付いているブースター部分が一瞬煌めき、上空へ避難した。被弾覚悟で。

 

「逃げたな? ペンソァ! そこにはもう在るぞ!」

 

 :なんて? 

 :ペンシル? 

 :ツバサの鉛筆ロケット!ドリルのように回転するこれは金属だろうがなんだろうが貫くぞ! 

 :はえーすっごい

 

 避けた先にはツバサの用意した鉛筆が浮いている。切先? 箇所から身体を貫いている。

 小弁慶はこの状況下でマシな選択肢だと判断して動いたが、それは違う。くたばる時間が早くなるか、遅くなるかの違いである。

 

「肩から貫通してますよ〜! 痛くないんですか〜♡」

 

「え〜♡ 火花吹いて今にも壊れそうなのにまだ動くんだすっご〜い♡」

 

 :クソガキが2人、来るぞ! 

 

「まだ抵抗するんだ? こっわ〜い♡」

 

 :すっごい棒読み

 :すまん今来たんだけどこれ誰が喋ってるの? 

 :ロリだが? 

 :どっち!? 

 

「目、合ったね?」

 

 これはロリコの言葉だった。

 空を蹴って小弁慶に追随をするのはロリコ・リコ。ツバサはサポートに回る。シャーペンをロケットに見立ててからでないと空に向けて動くことはできない。行動するには時間を使う。使うよりもサポートに回った方が、ロリコは強く出れる。

 サポートに回らざるを得ない状況で、けれどそれを楽しんでいるツバサ。地味ながらも支援に回る様子はカメラでしっかり捉えられている。

 

「首を切ってロリコさーん!」

 

「首を切るよー!」

 

 :最悪のファンサ

 

「ん? すまんお前ら、ちょっと上行きます、間に合わせる!」

 

 :お? 

 

 ロリコはすでに小弁慶の間合いに入っている。

 あいも変わらず横の大振りを。目と目が合う距離感にすでにいる。空に向かって逃げた小弁慶に、地から空に向かって重力に逆らう動きをしている。

 そんなものは関係ないと言わんばかりのロリコのムーブは小弁慶から見れば異常に見えた。肉体の年齢が明らかに子供なのに何故か強いし、おまけにこのまま負けてしまう。

 

 とはいえ、すでにデータは取り尽くした。

 ここまで来ればやることは一つだろう。

 

「なんか光ってて草……自爆か?」

 

 なら空を蹴って逃げるか……、と考えたところで小弁慶の手が伸びる。「は?」口にした瞬間には腕を掴まれている。

 

「なんだこいつ!? 二刀流だったりマジックハンドみたいに手を伸ばしたりしやがって、往生際が悪いぞ! 機械らしい動きをしろ! やべー! 理解らせられる!」

 

 腕を満足に触れない状況に陥る。

 ──脚を使うか。

 時間制限付きの技を用いて、すぐに止めれば身体への負担は少なくなる。

 早い段階で使いたくない戦術、しかし生きるためには使うしかない。足元に魔力を込めたところで、小弁慶の身体全体に亀裂が走り始める。

 

(うだうだ考えている暇はない! 使──? 液体?)

 

 液体が付いていた。目に見えてわかるように機械の身体の上から液体が引っ付いている。

 ギシ、ギシと、木製のベッドの上に2人分の体重が乗っかった時に出るような音を立てているが、けれど部品が吹き飛ぶことはない。

 

「……のり!?」

 

「ボクだ!」

 

「ツバサちゃん! 助かった! 好き!」

 

「しゃあっ!」デカい声と共にガッツポーズを取るのはツバサ。そのまま小弁慶は機能を停止し、空中で静止、そのまま地面に落ちていく。

 そして地面に顔から衝突。しかしのりで身体を固められているため、部品が飛んでいくことはない。

 

 その近くで身体を回転させながら地面に着地するのはロリコ。そしてツバサに向かってハイタッチ。

 

「ありがとツバサちゃん。よく自爆してくるってわかったね?」

 

「ほぼ勘ですけどね。損壊してるロボットは9割自爆してくるってサブカルで学んでるので」

 

「サブカルってそうなんだ……」

 

 さて、と一息付いて、改めて都庁に目をやる。

「ぶっちゃけいる気しなくなってきた」ロリコは弱音を吐いてみるし、時間を取られる気しかしなかった。「とはいえ疲れましたね」ツバサは息を切らしていた身体を整えて正面を向く。

 

「じゃあ改めて行きますか、都庁!」

 

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