【悲報】ガチロリ、ダンジョンで配信してしまう   作:油性

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また次の配信でお会いしましょう!

 

「う~~~~~~~す」

 

 :1か月ぶりで草

 :長峰コトコさん、こんにちは

 

「まぁいろいろありましたから。ようやく落ち着いたので、息抜き配信っス。そんなに長くはやりません」

 

 :前そんなこと言いながら1日くらいゲームしてたじゃん

 :嘘乙

 :今日の作業枠です、か

 

「信用がない!」

 

 長峰コトコはいつも通り、自分の部屋でパソコンを起動して配信を開始した。

 緩やかにコメントは流れて、視聴者数が増えたり減ったりしながら、だらだらとコメントを眺め続けていた。

 配信上似姿を現したのはコメントの通り、1か月程経過した後だった。

 FJK4人が10年ぶりに集まっての配信。行ったのはモンスターの討伐、その後に軽く雑談。雑談枠の時間はそこまで取れず、近況の報告程度に終わってしまったが。

 そうこうしているうちに1か月。配信活動をしているロリコとコトコは“お休み期間”という形で配信活動を休止していた。

 コトコはコトコで1か月がちょうど経過する前日に予約枠を配信サイトで取り始めて、翌日に配信を開始していた。

 なお、ロリコは何も告知していない。

 だからコトコは理解していた。流れてくるコメントの内容を。

 

 :ロリコってもう配信しないの? 

 

「絶対このコメントが飛んでくると思ったので構えてました」

 

 :エアコメ

 

「止めてるでしょうが、コメントの流れを!」

 

 ロリコ・リコは1か月前の配信──かつての自分、藤原カエデを殺したモンスターを討伐した。

 藤原楓の死体も回収され、正しく火葬された。三次利用は流石にという事でロリコがその眼で骨となった姿を確認するまで燃やした。

 人間らしく振る舞えるように機械で身体を補っていたらしい。

 粉々になっていたはずの肉や骨を結び付けながら、配信上に残っている通りに稼働していたので技術面だけで見れば褒められるものであっただろう。

 

 二度と味わうことのできない体験だったなと困惑気味にロリコは言い、お前以外に体験する奴は現れないと冷静に突っ込んだのはフルエンドだった。

 

 遺骨のみが残った藤原楓。家に保管しておくとロリコは決めていたのでこれ以上事が起きることはないだろう。

 視聴者がどんな反応するのか、どう考えてもドン引きものだろう、そうコトコは言いたかったが黙ってロリコの決定に頷くだけだった。

 そうした諸々の処理のために配信以外に時間を取られてしまうことをファンも理解している。

 お休み期間中に時折SNSに投稿を書き込みながら緩やかに過ごしていた。

 なお、ロリコとコトコ以外のFJKのメンバー、佐伯フルエンド、サクラ・ソワレも配信の世界に姿を見せていない。

 

「ロリコさん……改めてロリコさんって呼びますけど、あの人はしばらく休暇です。気が向いた時に配信するとか言ってましたよ。そのうちやるんじゃないんスかね」

 

 :えー

 :ロリコの配信がない世界なんて息苦しいんだが

 :戻ってこい!!!!!!!!!!!!!!! 

 

「ロリコーンがわらわらだ……」

 

 コトコはこう言っているが、ロリコが近いうちに配信を行うことは知らされていた。

 場所が場所なものなので、配信の準備に手間取っていたらしい。

 国外に出来たダンジョンで、ロリコのあやふやな立場を確立させることもあって、準備が近いうちに終わると連絡を貰っていた。

 これ以上話すとボロが出るかもしれない、コトコは内心そう思いながら拾えるコメントを見つける。

 

 :佐伯フルエンドがダンジョン管理機関の会長に就任している件について

 

「あー、なんか指名されたらしいっスよ。誰にどう指名されたかは知らないけど。多分お偉いさんだと思います」

 

 :あ

 :こわ~

 

 佐伯フルエンド──重木冬花(かさねぎとうか)は空いた会長の枠にねじ込まれた。

 騒動を解決した本人として、らしい。らしいしかコトコには情報がなかった。

 フルエンド本人は退職したがってたが逃がしてくれなかったらしい。とはいえ、環境の改善に口出しが出来る立場にはなったので働きやすくはなっているのだとか。

 インターネットの世界にこの先姿を現す気はなかった。いまさら自分を見る人がいないと理由を付けて。

 純粋に忙しいのもあるが、彼女は彼女で配信という環境をよりよくしていきたいと思っていた。だから今も労働に励んでいる。

 

 :かわいそっ

 :あそこ頻繁に炎上してるのに

 :もう配信しないのか

 

「まぁFJKとしてやってた時が一番楽しかったって言ってましたからね。一人でやってもあいつは楽しめないさみしがりやなんスよ。

 今さら言いますけど新宿であたし達を助けに来てくれたのはフルエンドでした。皆さんは気づいてましたか~?」

 

 :知ってた

 :でしょうね

 :配信しろ

 :俺が満足させるのに……

 

「お前らじゃあいつを満たせらんないっスよ。まぁ、フルエンドが就任したのもあってロリコさんが討伐対象にならずに生活できてますからね。そこが目的なんじゃないんスか? 知らないっスけど」

 

 :そうなんだ

 :何を聞かせられたんだ

 :サクラは? 

 

「本職に復帰しました。もう顔見せはないですよ」

 

 :そんな……

 

 姫宮桜はロリコの配信に姿を現れて以降はダンジョンについて研究することに専念し始めた。

 両親の仕事を引き継いだという形になる。先生と呼ばれる人物と共に研究し、時にはダンジョン内にいたりしている。その際に桜は一人でダンジョンには向かってはいない。

 

「今ロリコさんがサクラに付き添って一緒にダンジョンに行ったり行かなかったりしてるんスよ。

 二人しかいない時間を過ごしながら、ダンジョンをくまなく探して。配信? してませんよ。二人だけです」

 

 :ずるい

 :スパチャ投げたらその光景見せてくれないかな

 

「そういうのじゃないんスよ。そういうのじゃ。でもあれなんだよな。ロリコさんが配信しないせいで幼なじみの妹が暴れてるってのは聞いたな?」

 

 :ポ、プラ

 :ポプ、ラ

 :呼びましたか?@佐伯ポプラ

 

「うわロリコさんの供給に一番飢えてるモンスターが来やがったBANしようかな」

 

 :は? 

 

「冗談冗談……そういえばツバサさんと配信してましたね。少しだけ見ました。

 ロリコさんのトークがお互いに止まらなかったとき、なぜかあたしがこそばゆかったのでブラウザバックしましたが」

 

 :酒のせいなんだよな

 :飲酒配信やめろ

 :なぜ配信を残してるんだ

 

「消されたら増えるってよく言うじゃないスか。そういうことっスよ」

 

 ケラケラと笑いながら、次にどんなコメントを拾おうか考え始めたところで通知が鳴った。

 知っている名前の配信者が、配信を始めたという通知。

 同時にコメントの雰囲気が変化する。配信を始めた人が人なので、話題も彼女一色に染まった。

 

「こいついきなり配信を始めやがった! 近々やるって聞いてたけどタイミングくらいさァ! ったく! もうミラー配信に移行しようかな。久々にミラーするわね」

 

 :ちょっと悪いロリコいくわ

 :きたあああああああ

 :すまん流石にロリコ行くわ

 :今からロリコの配信行くけど、どうする? 

 :いくぞいくぞいくぞ

 :ロリコの配信を楽しみにしていた自分に驚いてるんだよね

 :どりゃああああああああああ

 

「飢えてたモンスターが解き放たれちゃった。まぁいいか、あたしもロリコさんの配信見たかったし」

 

 

「なんやかんや、自由にやるのが一番だよな」

 

 氷の上に立って配信の準備を始めている女子小学生がそこにいた。

 寒さに反抗するように、彼女はハーフパンツにノースリーブといつものスタイルで、冷たい世界の中、独り言をこぼしながら配信の準備を開始している。

 着ている衣装は防寒性能があるらしく、少々肌寒い程度に彼女は感じていた。

 

「さっむ。早く身体を動かしたいな。ったく……。サクラも物好きだな。北極に出来たダンジョンに行ってこいって。私だから行ったけど他の奴らだったら速攻で首を横に振ってたぞ」

 

 ロリコの目の前にあるのは大穴だった。

 先の光景が何一つ見えない、真っ暗闇。周囲は氷でできた大地なのに異物のようにそれはあった。

 

『あら、でしたら帰りますか?』

 

「いやいや冗談冗談。行くって決めたの自分だし、桜はゆっくり私の配信を見ててよ。面白くさせるからさ」

 

 独り言に割り込むように入って来たのは桜だった。ロリコを映すドローンカメラの数は2台。1台は配信用で、もう1台は桜との通信用だった。

 席を外しているタイミングで口から漏れ出ていた言葉だったがしっかりと拾われていた。

 桜の身体の調子は回復しきって万全も万全。けれども常に本調子でいられるわけでもなく、定期的に検査をしていかなければならない。

 生活に支障をきたしてはいないものの、検査日と北極遠征日が重なったのでロリコ単独で行くことになった。

 

『あら、期待してお待ちしておりますわ。それでは──』

 

「うん。また一緒にどっか遊びにいこう」

 

『お土産も期待しても?』

 

「北極で期待されるお土産ってなにさ。ダンジョン内にあるお宝によりけりかな」

 

『ふふ、お待ちしております』

 

 モンスター討伐後、復帰したサクラにロリコはずっと付き添っていた。

 10年もの間痛みで苦しんでいた時間を埋めるかのように、自分の配信を振り返って見ながらも思い出話を重ねて。

 自分を拾い出した張本人だからこそ、共に過ごすことで恩を返したかった。

 ロリコとしての目的は済んでいる。お金を稼いで桜の身体を治し、自分を殺したモンスターも討伐して。

 それでもまた彼女はダンジョンに入って、配信活動を再開しようとしていた。

 桜と約束を交わして改めて息を吐き、同時にスマホに着信が入って来た。相手は冬花(とうか)だった。

 

「フーちゃん? 仕事は?」

 

『まだそっちで呼ぶ? まぁいいか、今は休憩中だ。……本当に北極まで行ったのか』

 

「仕方ないじゃん。新しく見つかって、北極まで行けそうで暇な奴なんて私しかいなかったんだから。フーちゃんは悪くないよ」

 

 ダンジョン管理機関が冬花主導になって、お偉いさんから言われたのは北極に出来たダンジョンの調査だった。

 実力者に行かせるのは当然として、では誰を行かせるか。希望者を募ったものの誰も応えなかった。

 ……その話を桜から聞いたロリコが立候補したという流れであった。

 誰も行かないなんて都合がいい。何もかも好き勝手出来るので、ロリコとしては都合がよかった。

 それは桜にとってでもある。ダンジョンの研究に力を入れているので真っ先に研究が出来るということでテンションが上がっていたし、行けない事にテンションが下がった。

 

『助かる。ようやく運営が軌道に乗り始めたからな。期待してロリコの配信を見てるよ』

 

「成果はちゃんと持って帰るさ。……大丈夫だって、死なねーから。安心してね」

 

『お前の死ぬ姿はもう見たくない。またな』

 

 そう言い残して電話は終了した。

「相変わらず心配性だな」そう言うロリコは嬉しそうだった。

 用意していた機材の調子を確認しつつ、ロリコはぐっと腕を伸ばして準備体操。

 斧を生成したり、鉄で脚を覆って感触を確かめた。

 

「準備完了っと。久々に行くかァ……」

 

 マイクテストを行ってラグが発生していないか確認。

 カメラに自分の姿が映っているかも見つつ、調子に問題が無いかも確かめる。

 配信は終わらない。自分がやりたい時に、満足するまで、自由に振る舞おうとロリコは決めている。

 気ままに時には休んで、誰かの配信をまったり視聴しながら。

 それで過ごして終わるのもいいかもしれない。けれど彼女は配信することを選択した。

 

「配信するのが好きなんだよな、私は。誰かに見てもらいたいって気持ちももちろんあるけど。

 一番は自分が好きに立ち振る舞えるからなんだろうな。

 自由に、楽しく、そして子供らしく……死ぬまでロリなんだ、ロリらしく、いつも通り行こう」

 

 定刻。配信が始まった。

 水のように勢いよく流れてきたのは無機物の声。

 画面の前で腕を組んで待っていた、ロリコの配信を待ちわびている視聴者たちの声だった。

 

 :うお

 :きたああああああああああああああああああああああああああああああ

 :よぉ

 :こんにちは

 :なんで氷の上に立ってるんですか? 

 :もうダンジョンに入ってるんですか? 

 :うっす

 :こんにちは

 :Hello! 

 :お久しぶりですね

 :生きがい

 :待ってた

 

 流れてくるコメントを見て思わず顔がほころんでしまった。

 いつだって配信を初めても、視聴者の雰囲気は変わらないのだから。その波に安心感を覚えてしまっていたからだ。

 カエデの時代の時でも、ロリコになった今でもそれは変わらない。

 期待して待っていた視聴者に向けて、ロリコは大声で、いつものように配信を始めるのだった。

 

「こんにちは~~! ロリコ・リコで~~す!」

 





これにて本編完結となります。
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