東方願望異変   作:tukimizake

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第五話 地底

幻想郷の地下の地下。そこは旧地獄という、悪鬼羅刹が跋扈する空間。

 というのは昔の話で、今の地下は繁華街が如く盛り上がっている。

 そこへの出入り口の近く、森の中。

 少女が、そこに居た。

 しかしその眼には何も映らず、意識さえ定かではない。

 

「〜♪」

 

 ふと、鼻歌を歌いながら、見慣れない人物が座っていることに気付く。

 肩には小鳥が止まり、小動物達が警戒なく近づいていた。

 

「?」

 

 白い長髪の少年と目が合う。

 今の自分を認識できる人間なんてそうは居ない。

 なので。

 

「連れてきちゃった♪」

「なんてこったい……。こいし、あなた……いよいよ人間をさらってきちゃったの!?」

 

 薄く緑がかった癖のある灰色の髪で、セミロングに緑の瞳。鴉羽色の帽子に、薄い黄色のリボンを付けた、こいしと呼ばれた少女が楽しそうに話している。

 

 身体の各所から線が伸びており浮遊した丸いそれは……閉じた瞳のようなものである。

 

 それとは対照的に、驚いている少女はピンク色の髪と瞳、フリルの多くついたゆったりとした水色の服装をしている。

 こちらも同じく、浮遊する物体が身体と繋がっているが、瞳と同じ色で、目が開いている。

 

「攫ってないよ? 森で迷ってた感じだったから連れてきたの!」

「それって拉致では……?」

「でもでもこの子!私の姿を認識してたんだよ?」

 

 妹であるこいしは【無意識】の能力を持っている。故に自身も無意識下で行動したり、周りからは認知されなかったりするはずだが……。

 

 そう思いつつ、こいしの姉、さとりは、片目を瞑り【心を見る】能力で、こいしが連れてきた人間の心理を診る。

(お腹……すいた……)

 

 呆れた。

 ここまで連れて来られて、出た感想が呑気すぎる。

 机に突っ伏してうなだれるさとり。

 

「おねぇちゃんどうしたの??」

「いやもぅ……地底には変人しか集まらないのかしら……?」

 

 頭を抱えて困惑する。

 するとこいしが顔を覗き込み、真剣な表情で話す。

 

「おねぇちゃんおねぇちゃん」

「どうしたの……」

「地底に人は居ないんだよ?」

「問題点はそこじゃないのよ、こいし」

 

 そう言い終わると、さとりは問題の人間のほうに向く。

 

「えー……と、まずは自己紹介からでしょうか…?私は古明地さとり、地底の主をしている者です。そしてこっちが─」

「妹の古明地こいしだよ!よろしくね」

 

 自己紹介するも、依然として少年は何も考えていない様子でボーっとしている。

 こちらの声が届いているかすら、定かではない。

 

 さとりは、片目を閉じ、能力を使いながら質問する。

 

「えー……貴方のお名前を伺っても良いかしら?」

 

 何処かを見ていた瞳が初めて、さとり達に焦点を向ける。

 

「なまえ……。つちや……ひびき」

 

 生気の無い声で話す少年。

 色白で今にも倒れそうな程の細腕、髪は白く地面に着く程、その長髪をヘッドバンドで前の視界を確保しているように見える。紫色の瞳はどこを見ているか分からない。

 

「ヒビキ!!よろしくね!!!」

「ありがとうございます。ヒビキさん、貴方の帰る場所はわかりますか?」

「???」

 

 こちらの意図が理解できないのか、キョトンとした顔で見てくる。

 

「きづいたら……あそこにいた」

「迷子……身元の捜索をするべきでしょうか?」

 

 相変わらず、困り顔のさとりとは別に、いつも通りの天真爛漫な様子でこいしが話しかける。

 

「あなたのお家はどーこー??」

「おうち……は……もりのなか」

 

 あまりにも以外過ぎる返答に困惑する二人。

 昔に比べて平和になった幻想郷とはいえ、森や魔力が濃い区域には、瘴気や妖怪妖精になり損なった、いわゆる魔物や魔獣が生息しているからである。

 

 親に捨てられ、森の中で育った故の返答だとして、生きていられるはずが無いのだが……。

 

「ねぇねぇおねぇちゃん、ヒビキを迎え入れてみるのはどうかな?」

「こいしあなたね……この子がどういう人かも分からないのよ!?」

「それなら、おねぇちゃんの第三の目で見ればいいんじゃない?」

 

 こいしに言われて、先ほど心を観た内容を思い出す。そこで出た結論は、【問題なし】であった。

 

「ここに迎え入れるのは良いけれど、霊夢さんからの許可が必要になって来ますね……」

「私が行ってくるよ〜!」

 

 そう言いながらこいしは無意識の能力を、発動しながら扉を出ていった。

 

「あ、ちょ!こいし!! あなたまたふらつくでしょ!!」

 

 そんな声はこいしには届かず、無慈悲に扉が閉まる音だけ残して、そのまま出て行ってしまった。

 

「……大丈夫かしら」

 

 困惑したまま、念には念を入れる。

 

「お燐、居る?」

「さとり様ぁ! 何かありました? お、この子が新しく入ってくる子ですかぁ?」

 

 そう言いながら入って来たのは火車の妖怪、火焔猫燐。

 赤色の髪と瞳、猫の耳が生えているが尻尾が2つある。瞳孔も猫のように少し縦に伸びている。服は黒が基調で緑色のフリルが手首と、スカートの終わりに付いている。

 

「色々と察しがよくて助かります。霊夢から住人としての許可を貰いに行ってくれますか?」

「分かりましたぁ!お燐にお任せください!」

 

 そう言うと、こいしと同じように、楽しそうな足取りで出て行った。

 

「……さて、ヒビキさん、貴方外の世界の人間ですよね?」

「?」

 

 依然として、心の方は食欲以外になにも見つからない。

 しかし、さとりにはその格好に見覚えがある。

(とりあえず、危険性は無さそうですが……暫くは監視が必要ですね)

 

 そう考え込みながら、改めてヒビキの方を向く、そこには疲れたのか床で爆睡しているヒビキが居た。

 

「……うん、危険性、無いわ」

 

 謎の確信を得てしまった。




第五話です!ここまで読んでいただき本当にありがとうございます
文章の組み方がまだまだですね……これからも精進して参りますので宜しければ是非応援をお願いします!
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