どうも4号ちゃんです。   作:黒葉 傘

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ゼンレスゾーンゼロ一周年おめでとう!!!!
ハーメルンでもゼンゼロ界隈がもっと賑わうことを願って投下。


4号ちゃんは生き地獄

 人生どこで間違えたのだろうか?

 もしやり直すのであれば、どこからやり直すか?

 そう問われれば、私は生まれたことが間違えで死産した方がよかった、と迷いなく答えるだろう。

 生まれたこと、いや違うか。

 正確には生み出されたこと、かな。

 生み出されさえしなければ、私はこんな地獄を味あわなくて済んだはずだし……。

 そもそも私()()は存在すら罪だと言えるのではないか?

 最近はそう思ってさえいる。

 

「4号!何を惚けている。命令が聞こえなかったのか」

 

 あー…………はいはい。

 インカムから入った叱責に私は顔をしかめ、脳内で展開していたどうしようもない現実逃避を中断する。

 

「報告、4号……準備完了」

 

 準備など、何ひとつできていない。

 心臓は痛いくらいに脈打ち、先ほどから冷や汗が止まらない。

 それでも命令に背くことは許されない。

 廃墟となった駅校舎の中をゆっくりと進む。

 横転した廃電車の脇から奇妙な黒い結晶が突き出している。

 エーテル結晶だ。

 それはここが人が立ち入るべきでない場所だということを示している。

 エーテリアスという化け物が跋扈し、耐性がなければ身体を侵食される極めて危険な場所……。

 ここは……ホロウの中だ。

 そんな場所に立ち入って大丈夫かって?

 ぜんぜん……。

 全然ッ!大丈夫じゃないッ!!

 

「あっ!」

 

 私は視界の先に七色の光を放つ不気味なコアを持った異形を捉える。

 犬のような、しかし犬ではあり得ない巨体に鋭い爪。

 エーテリアスだ。

 エーテルに侵食され変異してしまった末に誕生する化け物。

 エーテルの充満するホロウの主達。

 武器を……構える。

 ヤツを討伐し、自身の運動能力を証明する……それが今回の任務だった。

 大丈夫、身体能力的にはあんなやつを相手するくらい問題ないはずなのだ。

 深呼吸を何度もする。

 だけど高鳴る心臓はちっとも落ち着いてくれなかった。

 

「グワァァアッッッ!!」

 

 エーテリアスはこちらの存在に気づいたのか、雄叫びをあげ私の方へ突進してくる。

 もう、やるしかない。

 やらなければ、やられるのはこっちだ。

 大丈夫……大丈夫ッ!

 

「ぅ、うぁぁあああああッッッ!!」

 

 私の口から情けない雄叫びが上がる。

 エーテリアスのそれと比べ、震え、みっともない叫び声。

 それでも私は叫んで自分を鼓舞せずにはいられなかった。

 武器を振り上げ、敵を両断すべく力を振り絞る。

 

 だけど……敵の方が圧倒的に早かった。

 

 ズブリ……とお腹に得体のしれない感触が走る。

 エーテリアスの爪が、肉を裂き、内臓に到達する感触。

 卒倒しそうになるほどの激痛なのに、私の意識は鮮明だった。

 気を失うことも私には許されない。

 まだ……勝負はついていなかった。

 胴体を抉り、風穴を開ける化け物、その頭部に刀を振り下ろす。

 その七色に輝く黒いコアに凶器を叩きつける。

 合金で作られたブレードが敵の弱点を叩き切り、絶命させる。

 

 「かひゅッ……や、やった」

 

 私の足元で倒れ、霧散するエーテリアス。

 勝負は一瞬だった。

 一瞬で私は腹部を損傷し、今にも死にそうになっていた。

 い、痛い。

 痛み止めは何処ですか……?

 血の溢れ出るお腹を抑え、私はヨタヨタと後ずさる。

 見ましたか、私ッ1匹やっつけましたよ!帰っていいですかッ!???帰宅を希望しますッッ!!

 

「…………ぅそ……」

 

 そんな私の前に躍り出たのは、別のエーテリアスだった。

 たった1匹でエーテリアスが活動しているわけがない。

 ここは怪物達の蔓延るホロウの内部なのだから。

 そんなことは分かっている、それでも受け入れ難い現実。

 

「ガァアアアアアアアッッッ!!」

 

 仲間を切られ、激昂したエーテリアスがこちらに向かってくる。

 私は傷口を押さえながらもなんとか刀を構えた。

 血が止まらない。

 恐怖で歯がガチガチと鳴る。

 なんでこんなことをしているんだろう?

 痛くて、怖くて、苦しいのに、私にはこの地獄から逃げ出す術がない。

 

 「あ、ぁぁああああああッッ!!」

 

 叫び、武器を振るう。

 怪物を攻撃を捌き、討伐する。

 その力を私は持っているはずだった。

 だって私は4号。

 シルバー小隊の誇る4体目の複製体なのだから。

 

「ガッッ!?……は…………」

 

 なのに私は喉を掻き切られ……血を吐き、地に伏してた。

 エーテリアスを2匹討伐することすら出来ない。

 血を撒き散らして殺されるだけの木偶の坊。

 弱い、弱すぎる……。

 私はどうしようもなく失敗作だった。

 

「た…………すけ…………」

 

 涙を流し助けを求める。

 このままだと死んじゃう。

 救急車呼んで…………。

 

「4号、単体戦力試験任務失敗。繰り返す。4号、単体戦力試験任務失敗。」

 

 だけどインカムから聞こえてきたのは淡々とした作戦失敗の報告だけだった。

 

 

 

……………………………

 

 

 

…………………

 

 

 

……

 

 

 

「シノどうしてなのかしら?」

 

 ピンク髪の女が私に問いかける。

 その目から非難の気配を感じ取って私は肩を縮こまらせた。

 

「長官、申し訳ありません」

 

「私は謝って欲しいわけじゃないわ、理由を聞いてるの」

 

「ぁ……ぇと…………」

 

 どうして?

 どうして、そんなに弱いの?

 数値上は問題ないはずなのに。

 どんな複製体よりも優秀な数値を叩き出しておきながら、なぜこの為体なのか。

 その問いに私は答えることが出来ない。

 

「はぁ……もういいわ。次は上手くやりなさい」

 

「はっ、はい」

 

「ねぇ、あなたを修理するのもタダじゃないのよ」

 

 冷たい目だった。

 その目は私に価値があるかどうか測っていた。

 この兵器は次修理する価値のある戦力なのか、その目が問いかけている。

 私は身体に震えが走りそうになるのを必死で堪えた。

 望まれているのは命令に忠実な兵器であり、処分を恐れる小娘ではない。

 

「期待してるわ、シノ」

 

 そう言って白衣を纏ったその女は部屋から出ていく。

 分厚い金属の扉が閉じられ、鍵が閉められる。

 そうしてから、私は初めて息を吐けた。

 

 こ、殺されるかと思った〜〜。

 瀕死の重傷から治療してもらうのは何度目だろうか。

 そろそろ見切りをつけられるかと思ったが、あの女はまだ私に期待してくれているらしい。

 期待するだけ無駄なのに…………。

 私がこんなにも弱いのは理由がある。

 兵器として生まれ、育てられてきたクローン人間。

 痛みも苦しみも感じないロボットであったはずの私は…………なぜか戦闘を嫌がり、負傷を大げさに痛がる。

 戦闘ロボットにどうしても成りきれない。

 なぜか?

 それは死を恐怖し痛みを忌避する、そういった普通の感性を私が持っているからだ。

 

 何を隠そう、私は転生者なのだ!!

 

 多分…………ね。

 頭がおかしくなったのか、現実逃避の末の妄想か、私には前世の記憶があった。

 嘘だと思ってくれて構わない、私自身半信半疑だ。

 だが、その記憶は確かに私にあった。

 そう…………あった……。

 過去形……である。

 今の私に前世の記憶はない。

 

 ちょ〜〜っとややこしいので説明するが、私はシルバー小隊に所属する兵士だ。

 このシルバー小隊というのが超超闇深い組織で、端的に言うとクローンで作った使い潰しの実験部隊である。

 優秀な遺伝子を複製した人間は優秀な兵士たり得るか、そういった倫理観の欠如した悪魔の実験部隊。

 隊員全てがクローンであり人権はない。

 本来名前はなく、番号で呼ばれるべき存在であり、感情、記憶でさえ自由を制限されている。

 具体的には、捕虜にされた際の情報漏洩を防ぐため、私たちは重傷を負うと一時的に記憶を失うように作られている。

 

 もうお分かりであろう。

 この世に生を受けたかつての私は確かに前世の記憶を持っていた。

 だが度重なる負傷の末、それらを今の私はその記憶をほとんど覚えていないのである。

 私の唯一の所持品である手帳に走り書きされた情報によって私は自身を転生者だと予想しているに過ぎない。

 ただ…………その手帳に書いてあることすら眉唾ものなんだけどね。

 

 この世界はゲームの中の世界?

 シルバー小隊は0号と11号を残して全員死ぬ?

 これ………………本当(マジ)

 その手帳に書き込まれたあまりに荒唐無稽な情報に私はただただ混乱した。

 

 

 

 ゼンレスゾーンゼロって何だよ!?!?!?

 

 

 

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