どうも4号ちゃんです。   作:黒葉 傘

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4号ちゃんは0号ちゃんと訓練する

 ゼンレスゾーンゼロというゲームがある。

 都市ファンタジーアクションRPGというなんだか聞き慣れないジャンルのゲームである。

 ホロウ災害に見舞われた人類が残された安息の地で災害に立ち向かっていく、そんな若干世紀末な世界観のゲームだ。

 いわゆるポストアポカリプスというやつである。

 ポップなキャラクターやシナリオで誤魔化されがちであるが、けっこう暗い世界観なのだ。

 

 人類の脅威たるホロウ災害。

 それは大地を侵食する未知のブラックホール。

 全てを飲み込む超自然災害。

 その内部はエーテル物質が満ち、エーテリアスが跋扈する。

 エーテル物質に侵食された知的生命体はエーテリアスへと異化する。

 それは人間とて例外ではない。

 つまり入るだけで化け物になってしまうヤバイ空間。

 ホロウ内で活動できるのはエーテル適応体質がある者だけ、その体質をもってしても長くホロウに滞在することは極めて危険だ。

 そんな危険極まりないホロウ災害と人類は隣り合って生きている。

 それどころかエーテル物質をエネルギーへ転用し、災害を利用すらしている。

 人間は逞しい。

 

 そんな人間の倫理のタガが外れたどうなるだろうか?

 それは私の所属しているシルバー小隊のことをよく知ればわかると思う。

 入るだけでも危険なホロウにどうやって立ち向かうのか?

 軍が始めた実験的施策。

 エーテル適正が極めて高い人間のクローンを生産し、兵隊へと育て上げる。

 もしクローンがその人間と全く同じ能力を持っているのならば、極めて高いエーテル適正を持った人間を量産できるはずなのだから。

 クローン兵ならば死んでもいくらでも代わりがきく、合理的で悪魔的な発想。

 そんなものに……予算が割かれ、私たちは作られた。

 

 さて、使い捨ての駒である私がなぜそんな軍の内情を知っているのかというと、私はこの世界について詳細に書かれた手帳を持っているからである。

 記憶を失う前の私が記した、ゼンレスゾーンゼロという世界の記録。

 その記録によると、私は転生者だったらしい。

 よく……わからない。

 わからないながらも、私はこの手帳から世界を、自分の境遇を学んだ。

 記憶を失った私にとってそれは半信半疑の内容であったが、知識を学んでいくにつれそれが事実であるかもしれないという確信に近いものを抱くようになったのだ。

 私が知るはずものないことがその手帳には記されていた。

 その手帳は、あまりにも世界の確信をついていた。

 この世界がゲームの中であるというのは信じ難い。

 でも……この手帳は私にとって預言の書に等しい不思議なアイテムだった。

 この手帳頼りにすればこんな世紀末な世界でも生き抜くことができる、私はそう信じていた。

 そう信じでもしなければ、耐えれなかった。

 この世紀末な世界で、私には寄りかかれる何かが必要だった。

 

 

 

……………………………

 

 

 

…………………

 

 

 

……

 

 

 

「また……それ読んでる」

 

 そう声をかけられて、私は顔を上げた。

 感情の読めない静かな瞳が私を見下ろしていた。

 

「アンビー……」

 

「私物の所持は禁止されている」

 

 私たちのために用意された独房のような私室、そのベットに座って手帳を読んでいたんだけど、夢中になっていたせいで彼女の接近に気づけなかったみたいだ。

 私は誤魔化すように笑みを浮かべて手帳を背中に隠す。

 

「シー……秘密、これは私の宝物なの。取り上げたりしないで、アンビー」

 

「別に……没収したりはしないわ」

 

 そう言う彼女は本当に興味がなさそうだった。

 一応注意しただけらしい。

 見つかったのが彼女でよかった。

 隊長はシルバー小隊の仲間には優しいから。

 軍の関係者だったら確実に没収されただろうから。

 以前の私はこの手帳を職員から盗んだらしい、そう書いてあった。

 手帳もそれを記すペンも盗難品だ。

 隠し場所はベットのマットの下。

 ベットに横になった時の違和感で私はこの手帳を見つけたのだ。

 

「今度の作戦……あなたと合同だから」

 

「え、そうなの!?」

 

「そう、だから今日はあなたの調整をする予定」

 

 極めて無表情にアンビーは話を進める。

 まるでロボットのような抑揚のない声。

 シルバー小隊隊長複製体0号アンビー、私の先輩であり現状最強の複製体だ。

 高いエーテル適正に、無慈悲に敵を切り捨てる圧倒的な戦闘力。

 初めての複製体にして成功作。

 そんな彼女と、失敗作の私が合同で任務に挑むのは初めてのことだった。

 一応彼女と共に戦ったことはあるけど……それはシルバー小隊という小隊単位の作戦であって彼女とタッグを組んだことはない。

 大体その時だって私はみんなについていくのに必死で何もできなかったし。

 戦力差があり過ぎて私が足を引っ張る未来しか見えないけど……。

 

「あの、私すっっご〜〜〜く弱いけど大丈夫?」

 

「あなたは強いわ、シノ」

 

 アンビーはそう言ってくれるけど、私の試験任務の成果はボロボロなんだよね……。

 特に実践任務では大抵集中治療が必須になるくらい負傷しているし。

 

「数値的にはあなたは全ての面で私を凌駕している」

 

「数値的にはね……」

 

 私のエーテル適応値、身体的なスペックは全複製体トップ……らしい。

 高いエーテル適性を持つクローンを量産するために始まったシルバー小隊だが、現状クローンたちの完成度にはバラつきがある。

 エーテル適正も、身体能力も、性格も、それぞれ異なるクローンたち、上層部は安定した結果を出す方法をいまだに模索している。

 その中でも、数値だけ見れば私は彼らの望む理想に近い。

 身体テストでは脅威の数値が出ていると科学者たちが沸いていたのを覚えている。

 スペック的な面では私はオリジナルに極めて近い能力を有していた。

 まぁ……そうやって褒められたのも最初のうちだけだったんだけど。

 

「任務の失敗は考えなくてもいい」

 

「でも……っ」

 

「もし任務に失敗したとしても……あなたを適切に使いこなせなかった隊長である私の責。だからあなたは気にしなくていい、違う?」

 

「……ぅ、う〜ん」

 

「私たち2人に任務が下ったということは、それで戦力的に問題ないという判断がなされたということよ」

 

 それは……違う。

 軍は平気で遂行不可能な任務を押し付ける。

 手帳に記されていた未来、シルバー小隊の壊滅。

 私たちは生き残ることなど到底不可能な任務に駆り出される。

 そんなことをする人間たちによって私たちは運用されているのだ。

 今回の任務が私を処分するための計画でないとなぜ言い切れる。

 

「……行きましょう」

 

 いまだに不安を拭いきれない私を置いてアンビーは歩き出す。

 話は終わりということだろう。

 アンビーは私の調整をすると言っていたけど……何をするんだろう?

 私は急いで手帳を隠すと彼女の後に続いた。

 

 

 

……………………………

 

 

 

…………………

 

 

 

……

 

 

 

「どうして……シノ?」

 

「あぅ……」

 

 アンビーに刃を向けられて私は縮こまった。

 鋭い刃先、それに斬られる想像が私の身体を固くする。

 模造刀ならまだいい。

 だけど今回アンビーが選んだのは真剣を使った模擬訓練だった。

 

「目を瞑ってしまえば、攻撃を躱すことも、防御することもできないわ」

 

「でも…………怖くて」

 

「怖い?理解できないわ。怖いのなら……尚更目を開いて攻撃に対処すべき。そうじゃなきゃ……ただ斬られるだけ……」

 

 マジレスやめてください。

 理屈じゃないんだよ恐怖というのは。

 分かっていても身体が竦んでしまうだ。

 

「ツイッギーがあなたのこと怖がり屋って呼んでいたけれど…………なんとなく理解したわ」

 

「ははは…………」

 

 彼女の蔑んだような眼差しは容易に想像できる。

 戦闘が苦手な者同士ツイッギーとはよく一緒に訓練をしていた。

 戦いが得意ではない彼女が他の隊員に対して劣等感を抱いているのは知っている。

 努力を重ねても彼女の戦闘能力は他の複製体に勝てなかった。

 ただ……私はそんな彼女よりも弱い。

 ツイッギーが私に対してだけは微かな優越感を抱いているのはバレバレだった。

 まぁ、あれで私には優しいから嫌いにはなれないんだけど…………。

 

「あなた…………刀向いてないわ」

 

「え?」

 

 アンビーはそう言って私から刀を取り上げた。

 でも……シルバー小隊といえばこの刀じゃないの?みんな使ってるよ??

 圧倒的な機動力で繰り出す刃の乱舞、それがアンビーの強みだしみんなその実力に追いつこうと彼女を真似ていた。

 良くも悪くもアンビーは私たち複製体の憧れだったし、軍も彼女のようなクローンの量産を望んでいた。

 

「あなたの場合敵の間合いに入ること自体が恐怖なのだから、こっちの方が向いているわ」

 

 渡されたのは軍で一般的に使用されるエーテルエネルギー銃「ファルコン-MK3」だった。

 銃……かぁ。

 

「使い方はわかる……?」

 

「い、一応は」

 

「そう、狙ってみて」

 

 アンビーはそう言って自身を指差す。

 危ないよ?

 

「大丈夫、当たらないわ」

 

「いや、そうだろううけど…………」

 

 確かにアンビーの動体視力と身体能力なら、こんな銃如きなにも脅威ではないだろう。

 私は彼女が銃弾の嵐を刀で捌いているのを見たことがある。

 それでも仲間に武器を向けるということ自体が私にはキツイものがあるのだ。

 先ほどまでの刀での訓練だって私は構えはしたけど、凶器を彼女に振るう気には到底なれなかった。

 

「シノ……分かってる?あなたは兵士、コレで殺すの、敵を」

 

 アンビーが詰め寄るように距離を詰めてくる。

 私の持つ銃を掴み、自身の胸に向けさせる。

 彼女の手で、銃の安全装置が取り外された。

 

「ア、アンビー……?」

 

「ほら、撃って。殺して」

 

 吐いた息が吹きかかる距離。

 彼女の胸の膨らみに銃口が当たる感触を銃越しに感じる。

 その胸の中にある心臓の鼓動を、感じた。

 顔が赤くなり、手が震えた。

 引き金を引けば目の前のこの命は散ってしまう。

 

「撃てッッッ!!」

 

 突然の大声。

 ビクリッと身体が震えた。

 その命令に身体が無意識に動き、引き金を引してしまう。

 それは命令に従って生き延びてきたクローン人間の悲しき習性だった。

 

 あっ…………!

 

 銃弾が発射される轟音。

 それと共にアンビーの身体がブレる。

 人間では考えられないスピードで彼女はその銃弾を躱してみせた。

 

「ね、当たらないでしょ」

 

「そ、そうだね……」

 

 タイミングは彼女が命じたとはいえ、こんな近距離で撃っても当たらないんだ、彼女に銃弾を当てるなんて不可能だろう。

 あらためて彼女の運動能力に舌を巻く。

 自分がこんな超人よりも数値的に上回っているなんてとても信じられなかった。

 

「覚えて、今のが殺す時の引き金の重さ」

 

 これから、実践で私はこの重さを克服しなければいけない。

 そう思うと気が重かった。

 でも……私はアンビーを撃ったんだ。

 命令に咄嗟に身体が動いたとしても。

 仲間を撃つ、これ以上に重い引き金なんてあるだろうか。

 きっと敵に向ける銃の引き金はずっと軽い、そう思うことができた。

 

「あ、ありがとうアンビー」

 

「これで撃てるわね…………今日は私に銃弾を掠れるまで終わらないから」

 

「え゛ぇ!?」

 

 今アンビーに銃弾を当てるのは不可能だって思ったばかりなのだけど!?

 掠らせることだって無理に決まってるじゃん。

 下手をすれば銃弾より早く動くんじゃないのあんた??

 

「それじゃ…………始めましょう」

 

「ひぇ……」

 

 その日、私はアンビーにこってり絞られた。

 指が引き攣って、銃を打つ感触が完全に身体に馴染むまで、彼女は私を解放してくれなかった。

 彼女は優しいと思っていたのに……とんだスパルタである。

 4号ちゃんはか弱い生き物なので、もっと優しくしてくれると嬉しいです。







主人公のスペックが高いのは無双系というよりかは無能がなぜ処分されないかの理由づけが大きいです。
原作キャラはキャラ崩壊が心配。
0号、11号、ツイッギー以外のオリジナル複製体ってバンバン登場させていいものでしょうか?
次回は0号4号での合同作戦!
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