呪いの女帝 両面宿儺   作:ジャズ

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投稿遅くなりすみません……
お盆休みも仕事がある職務の関係でバタバタしておりました。
そんな中でも引き続き感想や高評価いただきまして本当にありがとうございます。


第十二話

 乱入してきた受肉体を虎杖が抑える隙に、伏黒と釘崎は順調にモグラ型呪霊を祓い続けていた。しかしその直後、別の受肉体が釘崎を誘拐し領域外に連れ去ってしまう。それを追うように虎杖が相手をしていた受肉体も外へ出てしまった。

 

「そいつを追え!」

 

 戸惑う虎杖に伏黒は迅速に指示を出す。幸い、領域の呪霊は大した強さではないため伏黒1人でもどうにかなる。それよりも連れ去られた釘崎の吸収を優先するように伏黒は伝えた。

 

「やばくなったら伏黒も出てこいよ!」

 

 虎杖はそう告げると、後を追うように領域外に飛び出した。

 

 その後、伏黒は難なく領域内の呪霊を討伐していく。膨大な数だったが、式神を上手く行使することで大きな怪我もなく祓うことができた。しかし彼の中で何か違和感があった。

 それを証明するかのように、天井にぶら下がっている繭のような形状をした呪胎。その中から、以前少年院で見たものと同型の特級呪霊が出現した。見た目は同じだが、纏う呪力の多さから以前のものよりも格段に強いことを伏黒は感じ取った。

 伏黒の予感通りその呪霊はただの呪力を飛ばす攻撃だけで彼を大きく吹き飛ばし、壁に叩きつけた。激しく脳を揺さぶられて気を失った伏黒の脳裏に、ふと五条との特訓の記憶が蘇る。

 

『“死んで勝つ”と“死んでも勝つ”は全然違うよ、恵』

 

 五条は見抜いていた。伏黒恵は自身の術式に隠された“ある切り札”、その存在のために最悪自分が死ねば全て解決できると思っていることを。それ故に、彼が本気の出し方を知らないのだと指摘。

 

『本気になれ。もっと欲張れ』

 

 また、伏黒はもう少し前ーー虎杖から一時的に肉体の主導権を奪った両面宿儺の指摘も思い出していた。

 

『いや、宝の持ち腐れだなと思ったまでよ』

 

 自身にそう投げかけた宿儺の真意。今の伏黒はその意味をなんとなく理解していた。

 

「……やってやるよ!」

 

 一瞬、諦めて切り札を出そうとした伏黒だったが、不敵な笑みで立ち上がると両手で手印を結ぶ。具体的なアウトラインは後回しに、影を伸ばし呪力をどんどん押し出していくイメージを組み立てる。

 

「領域展開!『嵌合暗翳庭』」

 

 伏黒を中心に、足元に真っ黒な影が広がっていく。領域展開と銘打ってはいるが、その領域は閉じられておらず、必中効果も付与されていない。正にーー

 

「不完全!不細工もいいとこだ……だが今は、これでいい!」

 

 しかし、影を足元に大きく広げたことで自由に式神を召喚することができる。呪霊の足元に蝦蟇を這わせたと思いきや、影で作り出した自身の分身で攻撃、さらに鵺を何匹も呼び出して追撃させる。十種影法術の持つ潜在性と可能性、そして自身の術式に対する解釈を自由に広げていく。

 呪霊はそれに対して、呪力を自分の体から爆発させることで領域を破壊してしまう。得意げに高笑いを上げる呪霊だったが、直後に玉犬・渾の腕に貫かれてしまう。領域を破壊されることなど想定済み、この瞬間を狙っていたのだ。

 玉犬が呪霊の胸に収まっていた宿儺の指を抉り取ったことで呪霊の体は消滅、それに伴って彼が形成していた領域も消え去った。

 

「良い……!それでいい!」

 

 虎杖の内から伏黒の進化を感じ取った宿儺は、さも満足といった顔で頷く。

 

「さて、あとはお主だけだぞ……さあ何を見せてくれる?釘崎野薔薇よ」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 釘崎と虎杖が相対した受肉体ーー以前高専から盗まれた受胎九相図が受肉した、壊相と血塗。彼らは自身が保有する術式、「蝕爛腐術」で虎杖と釘崎の両名に致命傷を与えていた。蝕爛腐術の特性である分解と、受肉によって得た副次的効果である毒性のある血液によって虎杖と釘崎は最短で15分後に骨だけになってしまうと壊相から話される。

 

「あたしとの相性最悪だよ!」

 

 しかし、それに対して釘崎は自身の術式を発動。呪詛返しの術式効果を持って同じ激痛を壊相と血塗に味わせた。そしてさらに、元より両面宿儺の器として毒に対する耐性を持ち、さらに痛みをものともせず動くことができる虎杖が反撃に出る。先に血塗に猛攻を仕掛け、そのまま釘崎とスイッチして壊相の方へ向かう。

 壊相の方は、釘崎から齎された呪詛返しの影響で全身に激痛が走っているものの、術式を解きさえしなければ勝てることを確信していた。だが、先の虎杖の猛攻を受けて瀕死の血塗の「兄者ぁ……」という悲痛な声を受けて無意識に術式を解いてしまう。それが勝敗を決することになった。

 蝕爛腐術の極ノ番「翅王」を発動し、背中からレーザービームの如く無数の血の雨を降らして虎杖の接近を阻もうとするも、それで彼を止められるはずもなく。持ち前の反射神経と運動性能で壊相に近づく虎杖。そして、血塗に対して釘を打ち込む釘崎。

 それぞれの攻撃のタイミングがピッタリと重なり合い、同時に2人の呪力が黒く弾ける。

 

『黒閃』

 

 血塗は頭部から夥しい血飛沫を上げ、壊相は呪力で防御したにも関わらず右腕を吹き飛ばされていた。

 

 負けじと釘崎に襲いかかる血塗だったが、釘崎が打ち込んだ釘を媒介に破裂させる必殺技、芻霊呪法『簪』を発動したことで血塗の頭が破裂した。

 弟が殺害されたことで敗北を確信した壊相は、たまたま通りかかった軽トラックを捕まえ、荷台に乗って逃走する。しかしそれを虎杖は自身の身体能力で追撃。さらに釘崎は地面に転がっていた壊相の右腕を媒介に、芻霊呪法『共鳴り』を発動して致命傷を与える。そして虎杖が彼にトドメを刺した。

 

「くっくっく……!」

 

 彼らの戦いぶりを眺めていた宿儺は、生得領域内で腹を抱えて笑い出す。愉快、実に愉快な気分だった。少年院ではほとんど何もできずに反撃すらできなかった虎杖達が、今や自身より格上の呪霊や受肉体に善戦するまでに成長し、さらに虎杖・釘崎は黒閃を決め、伏黒に至っては未熟ながらも領域展開を会得するまでに至った。

 

「良い……実に良いぞお前たち!本当に見応えのある奴らよ」

 

 心からの称賛の言葉が宿儺の口から飛び出した。そして虎杖達がここからさらに成長し、どのように強くなっていくのかこれから楽しみで仕方がない。

 

「む?指か」

 

 すっかり余韻に浸っていたせいで外の状況を把握できていなかった彼女は、虎杖に伏黒が手に入れた宿儺の指が差し出されているのを見ると、せっかくだし貰っておくかと虎杖の掌に口を生やして「あ〜ん」と指を飲み込む。

 

「食うなつったろ!」

 

「えぇ、俺!?」

 

 どうやら指はこのまま封印する運びのつもりだったらしく、話を聞いていなかったせいでついうっかり指を食べてしまった宿儺は

 

「なんだ、食ってはいかんかったのか」

 

 全く悪びれる様子もなく座り直していた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「なあ、宿儺」

 

 八十八橋の戦いから数日後、虎杖が不意に宿儺に語りかける。

 

「八十八橋の一件……アレって俺が宿儺を食ったのがきっかけだったりするのか?」

 

「ふむ……」

 

 虎杖のメンタルに関わることを危惧して話さなかった宿儺だが、どうやら虎杖の方が自分で気づいてしまったらしく、どうしたものかと顎に手を当てる。一瞬考え込む彼女だが、彼に嘘は通じないのはここまで魂を同居させたことですでに熟知している。

 

「……きっかけでは無い、と言えばそれは嘘になる。だが決してお主のせいでは無い」

 

 後から話は聞いていた。虎杖がなぜ宿儺の指を喰らったのかーー全ては伏黒を助けるためだった。故にその選択が間違っていたなどとは決して言えない。

 

「悠仁の責任では無い。だがどうしても責任を感じてしまうというのなら……もっと強くなれ。そしてもっと呪霊を斃せ。それがお主の役割だ」

 

「ああ……わかってる」

 

 宿儺の言葉に、虎杖は力強い瞳で前を見据えながら答えた。

 

 




読了ありがとうございます。
さて、これで八十八橋編は終了になりますので、いよいよ渋谷事変編に突入となります。
そして前々からお伝えしていたとおり、その前にじゅじゅさんぽ的な小話を挟もうと思います。幕間の内容につきましてはアンケートを取らせていただいているのですが、そろそろ締めさせて頂こうと思います。
アンケートの回答期限は、8/17(日)までとさせていただきますので、もしまだ回答されていない方はぜひ投票をお願いいたします。

では、次回幕間でお会いいたしましょう。

幕間でみたい話

  • 女教師宿儺パロ
  • 虎杖と一緒に漫喫でジ◯ンプを読み漁る宿儺
  • 宿儺が野薔薇と一緒にスイーツ巡り
  • 本作の宿儺マテリアル
  • 宿儺の1日in虎杖
  • 1日外出録スクナ
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