虎杖悠仁は舞い上がっていた。久しぶりに再会する同級生、初めて顔を合わせる2年の先輩たち、これから開催される京都姉妹校交流戦というイベント。もう待ちきれないと目を輝かせる虎杖の様子を眺めていた宿儺は「うむ、今日も今日とて可愛いやつだ」と得意げに頷いている。
「悠仁、ここまで引っ張ってきて普通に登場するつもり?」
五条の方はそれではつまらないだろう、とあることを画策する。
「死んだと思っていた仲間が二月後生きていたなんてそうそうないよ?やるでしょ、サプライズ!」
虎杖はそれに非常に乗り気で、何をすればいいと聞いたりと有頂天だ。しかし宿儺は、「やめた方がいいのではなかろうか」と心配になったが、大いにスベったらそれはそれで面白いのでこのまま成り行きを見守ることにした。
「はい、オッパッピー!」
東京校と京都校の生徒が集合した場で、「故人の虎杖悠仁くんです!」と五条の合図で飛び出した虎杖悠仁。しかし宿儺の懸念通り虎杖の渾身のサプライズは大いにスベってしまった。
「オイ、なんか言うことあんだろ」
と詰め寄ってきた釘崎。その瞳にうっすら涙を浮かべているのを見て、宿儺は「全く愛いやつよのう」とニヤケ顔で彼女を見つめていた。
「ところで悠仁」
不意に宿儺が虎杖の頬で口を開く。突然の呪いの女帝の顕現に場の空気が凍りつくが……
「“おっぱっぴー”、とはなんだ?」
予想の斜め上な宿儺の問いに、思わず全員が「えっ?」と漏らした。
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交流会の説明が終わり、東京校と京都校はそれぞれ控室の方へ向かう。部屋の中で虎杖は故人写真の縁取りのものを持たされて正座させられていた。
虎杖が参戦したことで、東京校の面々は当初の予定を変更する必要が出てきた。2年の禪院真希に何ができるのか問われた虎杖は「殴る、蹴る」と至ってシンプルな格闘術が得意と答える。
「あぁそれと一つお前たちに言っておく」
宿儺が唐突に口を挟む。
「此奴はこの二月の間に黒閃を決めたぞ」
ケヒッと自慢げに虎杖の功績を語る宿儺。それを聞いた周囲の面々は目の色が変わり、結果この中で最もフィジカルと体術に秀でた虎杖を京都校の東堂に当てることになった。
交流会がスタートし、まずは集団で動き出した東京校の面々。しかし開始早々、森林の木々を突き破って現れたのは、鍛え抜かれた上半身を惜しげなく晒す大男。
「いよぉーし!全員いるな!!」
獲物を見つけた熊のように獰猛な目で東京校のメンバーを睨む東堂葵。虎杖の中から見ていた宿儺は一目見ただけで「コイツは強いな」と理解する。しかしそんな相手にも果敢に挑む虎杖。そして彼が作った隙を逃さず、東京校のメンバーは2チームに分かれて行動を開始する。
「いいスピードだ」
頭部に一撃を与えたにも関わらず、東堂は首をゴキッと鳴らすだけで全く効いた様子がない。
「お返しだ一年……死ぬ気で守れ!」
その瞬間、虎杖は咄嗟に両腕を前に交差させて防御体制を取る。しかしそれでも、東堂の一撃は非常に重く途中で低級の呪霊がたまたま挟まっても尚衝撃で数十メートル吹き飛ばされてしまう。あまりの重さに思わず腕が飛んでいったのではないかと錯覚する虎杖。そこは間髪入れず東堂が追撃を加える。大木にもたれかかった虎杖の頭に容赦なく頭を蹴り付ける。
頭から血を吹き出し、力無く崩れ落ちた虎杖を見て興味をなくし背を向けて歩き出す東堂だったが、しかし背後から立ち上がる音を聞いて「マジかお前」と不敵な笑みを浮かべ向き直った。
「……人の頭バカスカ殴りやがって、これ以上バカになったらどうすんだよ!?」
何度も殴られて怒り心頭と言った様子で叫ぶ虎杖。
「心配するな、男は馬鹿なくらいがちょうどいいって高田ちゃんも言っていた」
聞いたこともない女性の名前を出され、「誰だよアイドル興味ねーよ」と吐き捨てる虎杖。
「じゃあなんでアイドルってわかんだよ。知ってんじゃねーか」
と揚げ足を取る東堂。その後、東堂は虎杖に名前を問う。彼としても相手の名は知っているのだが、彼なりの礼儀で敢えて問いかけた。
「名前?虎杖悠仁」
「そうか、虎杖悠仁。お前に一つ聞きたいことがある……どんな女がタイプだ?」
全く予想外な質問に虎杖は思わず思考が停止する。こんな時になぜそんな問いを投げかけてくるのか。
「なんでんなこと聞くんだよ」
「気にするな、単なる品定めだ」
律儀に答える必要性は全くないのだが、虎杖は真面目に考え込む。特にこれと言って決まっている女性の好みはないのだが、不意に彼の脳内に浮かぶのは自分の内にいる両面宿儺の姿。茶色の長髪に端正な顔立ち、キレのある2対の瞳は確かに異形ではあるが却ってそれが美しさを引き立てている。かつて生得領域内で彼女と相対した時は身長が自分よりも若干高いように感じられ、押し付けられた胸の膨らみはこれまで出会ってきたどの女性のものよりもふっくらとしていて大きかった。しかしその胸の双丘の大きさに対してウエストは引き締まっており、極め付けはその胸囲と同じくらいにふっくらとした腰。はっきり言って彼女こそが虎杖にとって理想の女性像そのものであった。
「よくわかんねえけど強いて言うなら……『
その瞬間、東堂の中に流れ出す“存在しない記憶”。中学時代、高田ちゃんに告白すると言ったら『慰めるのはいやだ』と言う理由で止められたが、やってみなければわからないからと勇気を出して告白したもののあえなく玉砕。しかしその後、なんだかんだ慰めにラーメンを奢ってやると一緒に下校した思い出が過ぎる(そんな記憶は存在しないのだが)。
「地元じゃ負け知らず……どうやら俺たちは親友のようだな……っ」
いつのまにか両目から大粒の涙を流し感激している東堂。
「いま名前聞いたのに!?」
突然の東堂の豹変ぶりに思わず困惑する虎杖。しかし先ほどの虎杖の女性の好みに対する回答が刺さっているのは東堂だけではなかった。
「〜〜〜〜〜っっっ///」
生得領域内で真っ赤になった顔を右手で隠している宿儺。予想外のところから食らった攻撃で宿儺は目の前の光景が直視出来なくなるほどに赤面してしまっており、存在しない記憶が流れるほどではないが、「ゆぅじ……おぬし……っ、絶対婿にするっ……」などと譫言を呟いていた。
しかしその時だった。虎杖めがけて銃声が鳴り響く。京都校の人間が学長の命を受け、総出で彼を暗殺しにきたのだ。四方を囲まれて自分を殺しにきたのかと気づき冷や汗を流す虎杖。
だが直後、一回の拍手が鳴り響き虎杖と加茂の位置が入れ替わる。そして東堂は加茂の背後から思い切り殴りかかる。
「言ったよな、邪魔をすれば殺すと」
「違うな、お前は指図すれば殺すと言った」
「同じことだ、帰れ!」
東堂が怒鳴りつけると、加茂はやれやれと言った様子で引き下がった。ここで東堂と無意味な争いをするほど加茂は愚かではなかった。
「ちゃんと殺せよ」
「それは虎杖次第だ。指図すんなや」
すれ違いざまに念を押す加茂に対して東堂は不適な笑みで返す。
「何せ俺は、親友に手加減するような男じゃないからな!」
読了ありがとうございました。
前書きでも述べたのですがここ数日で一気に評価とお気に入り件数が伸びており、日間ランキングもいつのまにか9位にランクインしておりました。皆様本当にありがとうございます。そしてこれからも皆様のご期待に添えるような作品をお届けしてまいります。
私に絵心の才能があれば本作の宿儺のイメージイラストを作成できるのですが、そこだけが本当に申し訳ないなと思っている次第でございます。
さて皆様にお聞きしたいのですが、本作品ののR-18版小説はいかがだったでしょうか?もしまたご要望がありそうでしたら、宿儺×虎杖で第二弾・第三弾も作成できたらなと思っております。
では、次回もよろしくお願いいたします。
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