あと誤字報告もしていただきありがとうございます。一応見直しはして投稿していたのですが、やはり見落としというのは出てしまうのですね……申し訳ありません。
どう言うわけか虎杖を気に入ったらしい東堂は全力で虎杖と撃ち合いをしていた。互いにパワーに物を合わせた肉弾戦。その中で東堂はあらためて虎杖の持ち味を分析するうちに彼の特異性に感心していた。体格は自分より小さいにも関わらず、その力は自分より圧倒的に強い。故に少ない呪力で打撃の威力が成立する。だからこそ、呪力の流れが読みづらい!
(だが時間差でやってくる呪力!これだけは……これだけは!)
「ちっがあぁぁぁーーーーーう!!!」
森林中に木霊する叫び声を上げた東堂。なんだいきなりと困惑する虎杖だが、
「お前のその遅れてやってくる呪力!それはお前の悪癖だな!!」
と、逕庭拳の特性を指摘。さらに
「それに満足しているようでは、俺とお前は親友では無くなってしまう……いいのか!?」
なぜか名前を告げただけで親友判定されておりすでに東堂を変な奴という認定をし始めている虎杖は「どうしよう、別に……」と言いかけるが、
「弱いままでいいのか!?」
という東堂の問いにハッとした表情になると、
「……よくねえよ!」
呪力を纏い、再び本気でやる気を見せて答える。虎杖の出した答えに満足そうに頷いた東堂は
「そうだろう?マイ・ベストフレンド!」
と、なぜか親友からベストフレンドへと昇格した虎杖に歯を見せて笑いかけた。
ーーーーーーーーーーーーー
その後も、2人きりで何度も何度も撃ち合いをする虎杖と東堂。その中で東堂は虎杖の成長スピードに驚愕していた。撃ち合いをする中で、それまでになかった動きを次々と見せたり、地の利を活かして戦闘を組み立てるセンスの高さを見せつけたり、着実に進化していることを眼の前で実感していた。
東堂の体勢を崩し、ガラ空きとなった顔面に逕庭拳を叩き込む虎杖だったが、東堂は加速直前の拳を叩いで受け止めて見せた。
「お前に食って欲しいのはそこじゃない。お前の逕庭拳は、人間離れしたお前の身体能力に通常遅れることのない速度の呪力が遅れることで起きるものだな?」
虎杖の逕庭拳の特性を分析した東堂はそれらを踏まえた上で「トリッキーだ。並みの術師や呪霊なら何が起きたか分からず混乱するだろう」とその有用性を認めた。
「その程度の奴が相手ならな?特級には通じないぞ」
そう言われて虎杖が思い浮かべるのは、これまでに出会ってきた特級呪霊たち。彼らの力を目の当たりにしていた虎杖は、言われてみれば確かにこの技では通用しないという気がしてきていた。
「どうする?親友」
「……俺の全力に、ドンピシャで呪力を乗せる」
東堂は自身の問いに正解を導き出した虎杖の答えに、「グッド!」と頷く。
「では何故呪力の遅れが生じるのか?それはお前が呪力を“流しているから”だ!」
と、きっぱり告げた。
「え?いや流す速度上げようって話だろ?」
「“呪力を流す”、多くの術師がこれを意識的に行なっている」
東堂は語る。“腹が立つ”“はらわたが煮えくりかえる”、負の感情から捻出された呪力はへそを起点に全身に流すのがセオリーだと。へそから胸へ、肩、腕、拳へと呪力を流す。しかし、この“身体を部位で分ける意識が呪力の遅れを生む”のだと東堂は指摘する。
「“呪力を流す”、これ自体は確かに間違いではない。しかしそれは初歩!その意識に囚われすぎてはいけない。一流の術師ほど呪力の流れを読みづらいものだ、お前とは違う理由でな」
「俺たちは腹でモノを考えるか?頭で怒りを発露できるか?いいか、虎杖。俺たちは全身全霊でこの世界に存在している。当たり前すぎて、誰もが忘れていたことだ」
東堂の教えを理解しハッとした顔をした虎杖は、次の瞬間全身に呪力を“纏う”ようになった。
「ありがとう、東堂……なんとなくわかった!」
「……もう言葉はいらないな!」
そして2人は拳を合わせ、再び打ち合いを始める。
「全力で導く!死ぬなよ、虎杖。登ってこい、高みへ!!」
しかし今度は殺し合いではない。東堂が虎杖を高みへと導く、いわば修行である。
「ほう?なかなか面白いことを言う童ではないか」
内側から東堂の指南を眺めていた宿儺はなるほど、と感心した様子でそれを見ていた。初手から虎杖の命を本気で狙ってきたり、反転術式で止めなければ危うく致命傷になりかけるくらいに頭部を殴り続けてきたかと思えば、女の好みを聞いてきていきなり泣き出して親友だと言い出して仲間の京都校の面々と仲間割れを起こしていたので、宿儺の印象としてはただひたすらに「変な奴」となっており、これ以上虎杖のそばにいられると彼に悪影響を及ぼしかねないので実力行使で排除するつもりだったが、彼の呪力操作に対する解釈は聞いていて気分が良く、また虎杖ともおそらく相性はいいだろうと判断したので一旦は様子を見ることにした。
しかし一方で、宿儺はこの交流会の場に不穏な気配が近づいているのを感じ取っていた。この気配はあの時、火山頭と相対した時に一瞬現れた、植物を操る特級呪霊のものに近いだろうか。
「まったく、無粋な輩もいたものよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
宿儺の予想通り、交流会の場に乱入してきたのは植物を操る特級呪霊、花御であった。花御は狗巻や加茂、さらに伏黒と真希を襲撃し負傷させたが、虎杖と東堂が間一髪で救援に間に合ったことで彼らが相手をすることになった。
「俺は手を貸さんぞ虎杖!お前がもう一度黒閃を決めるまでな」
河川の中で向かい合う虎杖と花御。しかし東堂は虎杖に背を向けて歩き出し、河原に上がると腕を組んでそう告げた。
先ほどの修行の最中に、虎杖はすでに黒閃を経験している状態であることを知った東堂は、ここでさらに黒閃を決められたら彼を次のステージに上げられるのではないかと考えたのだった。
「黒閃を決められずお前がどんな目に遭おうと、俺はお前を見殺しにする!」
「押忍!」
あまりにも残酷な東堂の宣言であったが、しかし虎杖は力強く答える。こうでもしなければ、黒閃を決めることはできない。
「……お前、喋れるのか?」
不意に虎杖は問いかける。
「訊きたいことがある……お前の仲間に、ツギハギ面の人型呪霊はいるか?」
低く、どすの利いた声で告げる虎杖。目的は呪力を練るため、集中するため、そしてあの時黒閃を決めた状況を再現するためにもう一度あの怒りを湧き上がらせるための問いかけだった。
『……いると言ったら?』
耳からの情報は訳のわからない言葉の羅列でしかないそれは、脳内でしっかりと言語として認識される不思議な花御の言葉。しかし虎杖はその答えを聞いた瞬間に飛び出す。地面を殴りつけて川の水を弾き上げての目眩し。
『軽率に距離を詰めない……そこは評価します』
虎杖の出方を読んでいた花御だったが、しかし彼の瞬発力は読み違えていたようで、背後に回った虎杖から飛び蹴りを喰らう。だが花御の防御力は非常に硬く、まともにダメージは入っていなかった。
しかし虎杖はこれも狙い通り。あえて手加減した威力の打撃で油断させ、ガラ空きになった胴に黒閃を決める算段であった。
「今ならいける……黒閃!」
だがその瞬間脳裏によぎる、無惨に殺された吉野順平と負傷させられた伏黒の姿。そのせいで呪力が鈍り、黒閃は不発に終わった。
「……マイフレンド」
虎杖を呼び止めた東堂は、彼に甲高い音を立てて平手打ちをする。
「怒りは術師にとって重要なトリガーだ。相手を怒らせてしまったばかりに、格下に遅れをとることがある。逆もまた然り。怒りで呪力を乱し、格上に実力を発揮できずに遅れをとることもな」
東堂は語る。確かに怒りは呪術に置いても大きな起爆剤になるが、それゆえに不安定になりがちであると。
「友を傷つけられ、さらに親友である俺との蜜月に水を刺され、お前が怒髪頂点に陥るのはよーく理解できる……だがその怒り、お前には余る。今は抑えろ!」
そう言って、東堂はもう一度平手打ちを放つ。今虎杖に必要なのは怒りではない、それすらも黒閃には不要な雑念であると伝えるために。
「消えたか?雑念は」
「ああ、雲ひとつねえ……サンキュー・ソー・マッチ、ベストフレンド!」
スッキリした表情でもう一度花御の元へ戻る虎杖。そして今度は打って変わって、口から涎が出るのもまったく気にならないほどの集中力で花見をじっと見据える。
(凄まじい集中力……!)
虎杖の圧倒的な集中力を感じ取り、何かが来ると予感した花御は身構える。
そして同時に飛び出し、花御は植物を操作して襲いかかるが、それよりも早く虎杖が懐へ飛び込んだ。その拳が花御の胴へ叩き込まれると同時に、再び黒い火花は虎杖に微笑みかけた。
「黒閃!」
瞬間、黒い稲光が炸裂し花御を大きく吹き飛ばす。
(……成ったな)
見届けた東堂は不敵な笑みを浮かべた。そしてそれを中から眺めていた宿儺も、
「さすがは私の悠仁だ」
と得意げに頷いていた。
虎杖は黒閃を決めた直後、自分の呪力に深みが増したのを感じ困惑していた。以前、真人に向けて黒閃を決めた時は視野が広がり、咄嗟の判断力や反応速度が上がりまるでスポーツのゾーン状態のような恩恵を受けていたのだが、今度は自分の呪力に変化が生じたのに気づいていた。
「呪力の“味”を理解したんだ」
と、東堂が歩み寄る。
「お前は今まで味の知らない食材をなんとなく鍋にいれて煮込んでいるような状態だった。だが、黒閃を経たことで呪力の味を理解した今、シェフとして3秒前の自分とは別次元に立っている」
そして、「パン!」と手を叩き虎杖を祝福する。
「コングラッチュレーション・“ブラザー”、お前は強くなれる!」
その後、黒閃を受けたことで発生した傷を一瞬で直した花御を見て驚愕した虎杖だが、「頭をつぶせばゲームセットだ」と東堂が確実に祓う方法を示し、
「さあ……調理を始めようか!」
と、2人揃って戦闘態勢に入る。
『どうやらアナタたちには、多少本気を出したほうがよさそうだ』
花御は左肩から覆っていた布を引き裂き、隠していた左腕を露わにする。いよいよ、花御vs虎杖・東堂の決戦が幕を開けた。
読了ありがとうございます。
東堂って意外と教えるの上手いですよね。感覚派な虎杖にはかなり相性良かったんだろうなと思います。
あと全然関係ない話なんですが、アニメ渋谷事変のOPであるKing Gnuさんの『SPECIALZ』をなんとなく聞いていたんですが、これ本作の宿儺にめちゃくちゃ噛み合ってるなぁ……と感じました。
では次回もよろしくお願いします。
幕間でみたい話
-
女教師宿儺パロ
-
虎杖と一緒に漫喫でジ◯ンプを読み漁る宿儺
-
宿儺が野薔薇と一緒にスイーツ巡り
-
本作の宿儺マテリアル
-
宿儺の1日in虎杖
-
1日外出録スクナ