引き続き本作をよろしくお願いいたします。
あと、読者様からのリクエストでR-18版の方にアンケートを設置させていただきました。今のところR-18の方も高評価をいただいているので次回話の作成を考えているのですが、その際に皆様が見てみたいシチュエーションのアンケートを取り、その結果を踏まえて作成したいと考えております。ぜひ、皆様のみてみたい宿儺のシチュエーションを教えてください。
黒閃を決めたことで呪力の質が上がった虎杖に加勢した東堂は抜群のコンビネーションを見せ、特級である花御の猛攻を掻い潜り的確に攻撃を当てていた。しかし空中で樹木を操り圧倒的な質量で襲いかかってきたかと思えば、一瞬で消して足場を無くし落下させると言った芸当を見せたり、そもそも花御自体の肉体が硬すぎてまともにダメージが入らず、虎杖も東堂もかなり攻めあぐねていた。
「面白い呪霊だな……在り方としては精霊に近いか」
虎杖の中から花御を観察していた宿儺はつぶやく。呪霊にしては思慮深いその性格は、しかし精霊と呼ぶには存在が呪いに満ちてしまっている。元は精霊になるはずだったものが呪いに身を染めて呪霊として顕現してしまったのだろうと宿儺は分析した。
「しかし……これは中々いい相手になりそうだ」
ケヒッ、と何かを企んで邪に嗤う。この2ヶ月近く、虎杖の特訓に横から口を出すことはあれど、彼の身体を借りて体を動かすようなことはしていなかったので彼女としては正直かなり退屈していた。
「準備運動の相手にはちょうどいい」
宿儺は身を乗り出し、虎杖の内から好機を伺う。
その頃、花御の相手をしていた虎杖達はここで東堂が自身の術式を解禁。“呪力を持ったものの位置を入れ替える”効果を持つ不義遊戯で花御を翻弄し、東堂が作った隙に虎杖が黒閃を4回連続で決め、トータルで虎杖は今回の戦いで5回黒閃を成功させた。
(そろそろ頃合いか)
黒閃をまともに食らったことで一時的に怯んだ花御。そして宿儺はこのタイミングを逃さずにゆっくりと立ち上がる。
「“契闊”」
その瞬間、虎杖との縛りが発動し意識が虎杖と宿儺で入れ替わる。さらに、虎杖の肉体が宿儺のものに近い美女のものへと姿を変える。
『何……!?』
「おまえは……!?」
全くもって想定外な宿儺の顕現に、花御も東堂も動揺を隠せない。「東堂葵よ」と、宿儺は彼の方を向き呼びかける。
「悠仁への教授、感謝する。聞いていて心地のいいものであったぞ。この先も悠仁のことをよろしく頼む」
突如として現れた呪いの女帝に思わず身構えた東堂だったが、向けられた言葉は予想に反して感謝と賞賛の言葉であったことに彼は一瞬思考が止まる。加えて、彼女のスタイルに目を奪われてしまっていた。基本的な体格は自身が敬愛する
はっきり言って自分の好みにドストライクの見た目。虎杖が好みだと言ったのも頷ける。さらにそんな美女から賛辞の言葉を贈られ、もはやIQ53万(自称)の脳を持つ東堂の思考回路は完全に停止してしまっていた。
そして再び彼の脳内に溢れ出す、“存在しない記憶”。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
毎日朝から、兄弟弟子である虎杖と稽古をする日々。まず起きたら走り込みと正拳突きの訓練。
「っあーーー、やっぱ朝からこれは流石にキチィわ」
全身から滝のような汗を流す弟分の虎杖。最近この道場に入ったばかりである彼は、ルーティンであるこの特訓にまだ慣れていないようだ。
「そう言うな兄弟、こうでもしなければ“
同じく朝早くからの特訓で頭から汗を流す兄弟子の東堂は虎杖を宥める。季節は夏場真っ只中ということもあり、2人とも汗が染みたシャツが肌に張り付く不快感に耐えながら脱衣所に向かう。
頭から冷水を被り、火照った身体を冷やすこの感覚は何度やっても気分がいい。まるで心まで浄化されるようなこの感覚は、この特訓を実践している自分たちにしか味わえないだろう。
風呂から上がった後は、彼らの師匠である両面宿儺お手製の朝食。焼き魚に温かい味噌汁のついた、オーソドックスな和食の朝食。しかしこれが、早朝から激しい運動をした東堂達の空きっ腹に染み渡る。
「やっぱ宿儺の作る飯は美味えな!幾らでも食えるぜ」
サービスとして山盛りの白米をかき込むように食らう虎杖。
「これ、悠仁。そんなに慌てて食わずとも良い、まだおかわりは十分にあるぞ」
師匠である両面宿儺の指導は本当に厳しいが、食事の時だけは優しく施す。飴と鞭の使い分けのうまさを、東堂はこの歳ですでに理解していた。
朝食が終わった後は道場の清掃を行い、軽い柔軟体操から始めて筋トレと体幹のトレーニング。そしてそこから、体術の訓練。両面宿儺を相手に東堂と虎杖の2人がかりで挑むが、何度やっても自分たちがひっくり返されてしまう。体格は自分たちの方が上なはずなのに、パワーもスピードも、さらに技術的な面でも師匠である宿儺には全く敵わない。
「なんで何回やっても崩せねぇんだ……???」
「何度も言っておろう。お主達にはまだまだ至らない点が多すぎる。ただ闇雲に挑むだけでは私は倒せんぞ?」
地面に這いつくばる虎杖を見下ろしながら宿儺は宣った。
「……マスターよ、もう一度頼む!」
「ケヒッ、葵はやはり意識が高いな!それ、来るがいい。何度でも受けて立ってやるぞ」
立ち上がった東堂に対して不敵な笑みで構える宿儺。どんなに厳しい修行であっても、虎杖と一緒なら。そして何より、彼女の導きであればどんなものでも耐えられる……そんな気がしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
気がつけば、東堂は宿儺に跪いていた。
「……我が敬愛する
「いつ私がお主の師匠になった?」
存在しない記憶から突然自分のことを師匠と崇め始めた東堂に流石の宿儺は困惑を隠せない。
一方で、未だに宿儺がこのタイミングで現れたことに動揺を隠せない花御。協力者であるとある呪術師からは『宿儺の器が仮に出てきても殺して構わない』と言われてはいるのだが、宿儺の戦闘能力を知らないので身構えずにはいられない。
「おい、雑草よ」
不意に宿儺が花御の方を見て声をかける。“雑草”呼ばわりしてきたことに少々カチンとくるものはあったが、その感情は表に出さず黙って宿儺を見やる。
「此奴との縛りでな、『誰も傷つけない代わりに1分間だけ顕現する』ことができるようになっている。故にあまり時間がないのでな、手早く済ませよう」
宿儺はそう言ってゆっくりと花見の元へ歩み寄っていく。
「今、悠仁に稽古をつけている最中でな。そろそろ次の段階に進もうとしているところだったのだが、ちょうどいいタイミングでお主が現れてくれた。少し付き合え」
そう言うと宿儺は自身の胸元を叩き、「おい、悠仁。よく聞いておけよ」と内側にある彼に語りかける。
「呪術を極めることは、“引き算を極めること”だ。呪詞、手印、舞、楽……術式の構成、あるいは発動させるまでの手段をいかに省略するかで、呪術師の腕は決まる」
そこまで話すと、宿儺は「しかし」と続ける。
「逆に然るべき手段や手順を踏んだ上で術式を行使すれば、その分だけ効果も増幅させることができる。こんな風にな……」
そう言って宿儺は、手のひらをまっすぐ手刀のように揃えると、それを真っ直ぐに花御の方へ向けた。花御も“何かが来る”と予感し咄嗟に周りの樹木を術式で操作し、触手のように宿儺の方へ伸ばす。
『龍鱗 反発 番いの流星』
「“解”」
次の瞬間、花御の肉体は真っ二つに両断されてしまった。しかもその斬撃は花御を貫通した上、背後にある大樹を何本にも渡って両断して行った。
学生達が幾重にも攻撃し、その上虎杖の黒閃5発を直撃させても尚決定打を与えられなかった花御の堅牢な肉体をたった一撃で切り裂いてしまったその威力には東堂も「なん……だと……!?」と驚愕を隠せない。
花御に斬撃を喰らわせた宿儺は、自身の右手を開いたり閉じたりして肉体の状況を確認すると「……うむ」と頷く。
「やはり、縛りの“誰も傷つけない”対象に呪霊を含めなかったのは正解であったな。さて、そろそろ時間か。今日教えたことを忘れるでないぞ、悠仁」
そう言い残し、宿儺は虎杖と意識を入れ替えた。あの美しい女性の肉体が、年若い男子の肉体へと戻っていく。
「……ん?お、東堂!なんもなかったか???」
突然宿儺に取って代わられた虎杖は、すぐそばで膝をついている東堂に慌てて駆け寄る。
「……
瞳を閉じ、噛み締めるように頷く東堂に、虎杖は「は???」と首を傾げる。そんな彼らを他所に、致命傷を負った花御は自身に何が起きたのかも理解できないまま、その身を紫の業火に焼かれて消滅して行った。
読了ありがとうございます。
さて、今回は原作から大きく分岐させたこのタイミングで宿儺が自ら花御を祓う展開にいたしました。
大きな理由としては宿儺にそろそろ見せ場を持たせたかったのと、基本この作品は宿儺目線で進めるため、原作通りに花御を生かしても渋谷事変で宿儺の目の届かないところで祓われてしまうため、それならばいっそここで……と考えた次第です。
にしても宿儺の呪詞ってなんか好きなんですよね。原作だと『解』の分しかありませんでしたが、『捌』や『▫️開』の詠唱も本作オリジナルで考えてみようかなと思っている次第です。
では、次回も何卒よろしくお願いします。
幕間でみたい話
-
女教師宿儺パロ
-
虎杖と一緒に漫喫でジ◯ンプを読み漁る宿儺
-
宿儺が野薔薇と一緒にスイーツ巡り
-
本作の宿儺マテリアル
-
宿儺の1日in虎杖
-
1日外出録スクナ