ダンジョンに蒼の兄弟がいるのは間違っているだろうか。   作:やりも

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完全自己満作品始まりました。


初雪少年

ダンジョン都市オラリオの一角にある「青の薬舗」。そこで一人の少年がカウンターで本を開き、その内容を読み老けていた。

 

 

「今日も暇ですねー。」

 

 

少年は本をなぞりながらぽつりと呟いた。

 

千年前より前の時代、ダンジョンからモンスターたちが溢れかえり、人々を守るために戦った英雄たちの物語が綴られたその本はページからその年季の古さを感じ取れるほどであった。

 

 

少年の名前はソーン・ユーリエフ。零細ファミリアであるミアハ・ファミリアの団員でありわずか12歳でLv.3の実力を持つ魔導士である。

 

実力はあるものの12歳という幼い年齢なのでまだ年相応の幼さが残っていた。医療系ファミリアのミアハ・ファミリアはある件以降客が来ない店で店番をするのも退屈である。

 

 

店番を抜け出してしまおうか、そんな考えがソーンの頭の中に駆け巡ったが一瞬で霧散した。団長である犬人に怒られるのが脳裏によぎったのだ。怒られてしまえばさらに暇になる可能性もある。大人しく本でも読んで待っていようとすると入り口のドアが開いた。

 

 

「戻ったよソーン。」

 

「お帰りなさいませミアハ様!」

 

 

主神であるミアハが帰ってきたのでソーンは急いで近づき、持っていた荷物を受け取った、中に入ってるのは回復薬であるポーションの材料だ。それを一度カウンターの上に置き、紙袋からいつもしまってある場所へと移し替え始めた。

 

 

「ナァーザさんはまだおつかいですか?」

 

「そのようだね、ソーンはこのあとダンジョンかい?」

 

「そのつもりです!今日は兄様が一緒ではないので上層の一番下まで潜ってくるつもりです。中層まで潜るのは少し時間がかかるので。」

 

「賢明な判断だ。」

 

 

最後の薬草をしまい終えたソーンはカウンターの端に置いていた魔導書とカバンを掴んで本拠のドアに向かった。

 

 

「では行ってきますミアハ様!」

 

「気を付けるんだよ。」

 

 

ソーンは元気よくダンジョンへと向かった。途中でコートのフードを被り、人に自分の姿をあまり覚えられないよう細心の注意を払いながらバベルの入り口に滑り込んで一気に下へ向かった。

 

 

 

「さて、今日も袋いっぱいに魔石を集めます!」

 

 

魔導書を抱えながら意気込んだソーンは早速モンスターと遭遇した。ウォーシャドウが5体、ソーンに向かって襲ってくるが手を前に出しながら詠唱した。

 

 

「【穿て(アヴローラ)貫け(スウィーニー)砕けろ(スニェーク)】。」

 

 

ソーンの後ろから生み出された氷の矢はウォーシャドウを一撃で貫き、モンスターは塵になると魔石を落とした。魔石はどれもソーンの手のひらに収まるサイズではあるが集めて換金すればそれなりの額になる。一つも残さずに回収してダンジョンを歩き回る。歩き回ればモンスターに遭遇してそれを倒す。ソーンはその繰り返しを行い、魔石を着々と回収してまわった。

 

 

数時間ダンジョンに潜っていれば目標にしていた袋いっぱいの魔石が集まったのでそろそろ帰還しようと袋の口をしっかり縛り、それをカバンの中にしまい元来た道を帰ろうとした時だった。低いうなり声が後ろの通路から聞こえてきた。

 

ソーンが急いで臨戦態勢に入ると、こちらに向かって牛が突進してきた。

 

 

「ミノタウロス⁉なんで中層のモンスターが上層にいるんですか⁉」

 

 

ソーンは驚きつつも魔導書を構えながら詠唱を始めた。

 

 

「【氷雪の魔術師よ、我の命に答えて封印された力を展開し、雪精の通り道となれ】【第一拘束解除】!」

 

 

詠唱を終えるとソーンの背中から蝶のような氷の翅が生え、足元には氷でできた花畑が広がった。ミノタウロスはそんなことを気にせずに突進してくるが、ソーンの足元に広がった花畑に触れると一瞬にして氷像と化してしまった。ソーンは慣れたように魔導書を閉じ、ミノタウロスの氷像に近づいてそれに触れると、一瞬にして氷像は粉々に砕けた。ミノタウロスがいた場所には魔石だけが残っており、それを拾い上げる頃には足元の花畑も背中の翅も消えていた。

 

 

「ふぅ、拘束を解除すると加減ができませんね。」

 

 

思わぬ臨時報酬にソーンは浮かれ気味であったがもっと魔法をコントロールできるようにならないといけないと目標を立て始めた。そんな様子を一人の冒険者が覗いていた。

 

オラリオ最大派閥であるロキ・ファミリア所属、第一級冒険者であるリヴェリア・リヨス・アールヴは信じられないものを見てしまったかと目を疑った。短い魔法詠唱、それに加えてミノタウロスを一瞬で凍らせたと思ったら触れるだけで粉々に砕け散ったことを含め、魔導士の少年一人でダンジョンに潜り、あまつさえミノタウロスを倒してしまうとは思いもしていなかった。しかし自分たちの不手際が原因で上層にミノタウロスを逃がしてしまったので謝罪をしなくてはいけないということを思い出し、姿を見せた。

 

 

「そこの君。」

 

「ひっ、お、おばけぇぇぇ‼」

 

「私はおばけではない!」

 

「えっ、あ…すみません、取り乱してしまいました。」

 

 

ソーンは魔導書で顔を隠し、おばけを見ないようにしていたが相手はエルフの王族で冒険者の中でも上の存在。少しだけイラっとしてしまったが相手は子供なのと謝罪をしなくてはいけない相手であることを自分に言い聞かせた。

 

 

「すまない、驚かせてしまって。私はリヴェリア、先ほどのミノタウロスは私のファミリアが上層まで逃がしてしまったものだ、すまなかった。」

 

「いえ、僕としては臨時報酬ができたので万々歳ですしケガもしてないので気にしないでください。」

 

「そうか。一応名前と所属ファミリアについて伺いたいのだが・・・。」

 

 

リヴェリアがソーンに名前とファミリアを聞こうとしたがソーンは教えるか悩んでいた。ある約束をしていたからだ。

 

 

「えっと、ごめんなさい。主神様から無闇に名前と所属ファミリアを教えてはいけないって言われているので・・・もし何か用があればギルド経由で容姿を話してくれればわかると思うのでそちらにご連絡ください!それでは!」

 

 

ソーンはリヴェリアに頭を下げて、ソーンは急いでその場から離れて上層へと向かった。リヴェリアは唖然としてしまったが思わず笑ってしまった。そこへ金髪の少年がやってきた。

 

 

「リヴェリア、そっちのミノタウロスは片付けられたかい?」

 

「ふふっ、いや、別の冒険者が先に片付けてしまってよ。」

 

「そうか・・・もしかしてもう行ってしまったのか?」

 

「名前とファミリアを聞こうとしたが神に知らない人には教えるなと言われているようで教えてもらえなかった。」

 

「へぇ、随分と用心深いね。しかしこちらの不手際が原因でミノタウロスを逃してしまったから謝罪はしないとだね。」

 

「そのつもりだ、本人からギルドに容姿を伝えて貰えば分かると言われている。」

 

「そうか、どんな冒険者だ?」

 

「白いロングコートでフードを深めに被っている少年だが、ヒューマンか小人族(パルゥム)だか分からなかった。あとは魔導士ということだけは分かった。」

 

「白いロングコートの魔導士か・・・その格好で思い当たるのは『白妖の魔杖』だけど。」

 

「言っただろう、少年だと。流石にあの身長でヒューマンは怪しいから小人族(パルゥム)だとは思うが。」

 

「ギルドにちゃんと聞くのが一番だね。」

 

「そうしよう、でもしばらくは忙しいだろうし今度になりそうだなフィン。」

 

「そうだね、あのおかしなモンスターについてギルドに報告しないといけないからね。」

 

 

フィンと呼ばれた少年、いや小人族(パルゥム)の団長は親指にわずかの疼きを感じながらリヴェリアと共にファミリアの元へ戻った。

 

 

 

 

ソーンはギルドで換金をするために訪れた。ギルドの入り口から入ろうとすると真横を全力疾走で走り抜ける少年が視界に映った。その少年は自分より年上であると思うがまだ初心者で弱そうであるのと、何故かギルド職員の名前と愛を叫んでいたので怪訝そうな顔をした。

 

 

「あ、ソーンくんいらっしゃい!」

 

「こんにちはエイナさん、魔石の換金をしに来ました。」

 

 

ギルドに足を踏み入れると、ハーフエルフでギルド職員のエイナ・チュールと出会った。ソーンとはそこそこの付き合いではあるがまだ子供のソーンを気にかけてくれる人である。

 

 

「もしかしてまた一人でダンジョンに潜ったの⁉」

 

「はい、何かいけないことでもありましたか?一応上層までしか言ってませんから約束は破っていませんよ。」

 

「そうみたいだけど、あまり無茶しちゃだめだよ!君はまだ幼いんだから。」

 

「確かにまだ子供ですけどこれでも冒険者ですし、自衛の手段だってちゃんとあります!」

 

「うーん、確かにソーンくんは今のところ問題も大きなけがもしてないし…。」

 

「僕は中級冒険者ですし他の子どもと同じ扱いをされるのはあまりいい気分ではないです!それじゃあ僕は換金してきます!」

 

 

ソーンは拗ねながら魔石の入った袋を持って換金所へ向かった。エイナはその背中を見て少し心配しすぎてしまったかとため息をついた。

 

 

換金を済ませたソーンはミノタウロスの魔石という臨時報酬でヴァリスが入った袋がいつもより重いのを感じながら帰路についた。ギルドから本拠である青の薬舗はそれほど遠くないのですぐに着くことになった。

 

 

「ただいま帰りました!」

 

「おかえりソーン、怪我はないか?」

 

「五体満足で帰りましたよ!それに今日は臨時報酬があったのでいつもより多くヴァリスを貰えました!」

 

「臨時報酬って、なんかあったの?」

 

「実は、どこかのファミリアが逃がしてしまったミノタウロスが上層に逃げ込んだのでそれを倒しました!」

 

「一人でミノタウロスを倒したぁ⁉」

 

「近づかれる前に凍らせたのでケガもありませんよ。」

 

「それでも、ちゃんと逃げることも考えて!」

 

「僕が逃げたら他の人が襲われるかもしれません。僕も中級冒険者ですしミノタウロスくらい簡単に倒せますよ。」

 

 

ソーンが少しだけ憤りを感じていると、後ろから誰かに頭を撫でられた。振り返るとそこには尊敬している兄であるアダムがいた。

 

アダム・ユーリエフ、零細ファミリアであるミアハ・ファミリアの副団長でありLV.6の第一級冒険者である。二つ名は『蒼雪の騎士(グレイ・ナイト)』で、オラリオの中でも対人戦においてはあの猛者とも対等にやりあえると噂されている。

 

 

「兄様!」

 

「ただいまソーン、どうやらナァーザ殿に怒られているようだな。」

 

「僕は正しいことをしました、ナァーザさんもエイナさんも心配しすぎなんです!」

 

「確かに、ナァーザは少し過保護かもしれないがソーンのことを心配して言ってくれてるんだよ。」

 

「そうかもしれませんが僕も冒険者です!ちゃんと引き際は弁えてます!」

 

「あたしはソーンがケガしないか心配なの!」

 

「はいはいそこまでにしなさい、ソーンが言ってることもナァーザの言ってることも正しいがお互い熱くなりすぎだ。それに、ソーンもアダムもステイタス更新をしたいだろ?」

 

「私はお願いしようと思っていたところです。」

 

「僕もお願いします。」

 

「分かった、店番を頼むよナァーザ。」

 

「分かりました。」

 

 

ソーンはアダムと共にミアハの元へ向かい、ナァーザは店番をすることになった。青の薬舗の奥にあるベッドにソーンは上を脱いでうつ伏せで寝転ぶ。ミアハが親指をナイフで少し切り、流れでた血をソーンの背中に垂らし、その血を背中に染み込ませていく。ステイタスは「神の恩恵(ファルナ)」という神様たちの扱う「神聖文字(ヒエログリフ)」を神血(イコル)を媒介にして刻むことで対象の能力を引き上げる、神様たちにしか成せない技。一つ一つの軌跡が「経験値(エクセリア)」となって成長の糧となる。神聖文字(ヒエログリフ)が書き換わり、ベッドの横にあった用紙にステイタスを書き写した。

 

 

●ソーン・ユーリエフ

 

Lv.3

 

 

力 E 440→444

 

耐久 B 707→710

 

器用 A 861→870

 

敏捷 C 660→664

 

魔力 S 922→960

 

 

 

魔導 H

 

魔防 H

 

 

《魔法》

【ミラーシ=イーニー】

・超短文詠唱式

・単節詠唱を繰り返すほど攻撃量が増す。

・詠唱式【穿て(アヴローラ)貫け(スウィーニー)砕け(スニェーク)吹雪いて(ツヴェイリ)凍えろ(ジマー)

 

 

 

【アイシクルロード】

・詠唱式【氷雪の魔術師よ、我の命に答えて封印された力を展開し、雪精の通り道となれ。】

・発動鍵【第一拘束解除】

 

 

【ハロードヌイ・バーボチカ】

・詠唱式【雪原の魔術師よ、我の命に答えて封印されし終焉の楔をの一柱をもって、敵の装甲ごと貫け。】

・発動鍵【第二拘束解除】

 

 

【イーニー・ラヴーシュカ】

・詠唱式【寒冷の魔術師よ、我の命に答えて封印されし終焉の獣の一端をこの地に埋め込み、生命の息吹すら生えぬ大地に変えろ。】

・発動鍵【第三拘束解除】

 

 

【グラード・ウラガーン】

・詠唱式【黒の魔術師は鳥の使いを放ち遠くを視た、鳥を通じ、空を制し、空間を掌握する者こそ、魔術師の頂点に君臨する】

 

 

【リオート・ヴルカーン】

・魔法魔法

・詠唱式【氷の魔術書よ、我の問いかけに答えよ】

 

 

【ヴェテロク・ツァーリ】

・詠唱式【牢獄の守り手はろうそくを携え、練り歩き、暗闇を照らし続け、闇を払い光の導となるため、命ある限りその役目を務めた】

 

 

【ソーカル・フェロー】

・詠唱式【歌は届き、彼の地に安らぎを与える、その歌は神を讃える聖歌であり、平和をもたらす響となった】

 

 

【ゼシータ】

・詠唱式【蒼炎に燃えゆく女皇はベールの下から聖域を望み微笑みかけた】

 

 

《スキル》

【終焉禁獣】

・任意発動(一部制約あり)

・逆境時発動、全アビリティ極限強化

・近くにいる生物の魂が尽きるまで解除不可

・起動鍵【第一・第二・第三拘束全解除、目覚めよグラナート

 

 

【恩寵天使】

・成長促進

・魔法関連のステータス・アビリティ強化

・想いが続く限り効果持続

 

 

 

「相変わらず魔法関連のアビリティの成長速度が速いね。」

 

「スキルのお陰ですが、力のステータスが伸びないですね・・・。」

 

「魔導士なら仕方ないだろう、明日から少し剣を持ってダンジョンに行くか。」

 

「分かりました!」

 

「さて、次はアダムだね。」

 

 

ソーンと入れ替わりでアダムが入れ替わりでベッドにうつ伏せになると同じようにステイタス更新を行い、紙にステイタスが書き写された。

 

 

 

●アダム・ユーリエフ

 

Lv.6

 

力 A 832→850

 

耐久 C 626→640

 

器用 B 774→753

 

敏捷 S 900→911

 

魔力 B 725→730

 

 

 

狩人 E

 

魔防 E

 

精癒 E

 

破砕 E

 

覇劇 E

 

 

 

 

《魔法》

【アイシクルコフィン】

・詠唱式【氷剣からは逃れられない、永劫の氷獄に囚われ、氷像としてその美しき姿を残し続けるといい、我は氷雪の支配者である】

・強化鍵【顕現せよ】

 

 

《スキル》

【魔剣騎士】

・自らに魔剣を宿し、それを召喚して戦うことができる

・魔剣を装備している間、精神疲弊しにくくなる

・【第一魔剣 サヴァイヴァーニ】【第二魔剣 カラドボルグ】【第三魔剣 ミスティルテイン】【第四魔剣 ティルフィング】【第五魔剣 ダーインスレイヴ】

 

 

【氷雪騎士】

・想う対象を想うだけアビリティ全補正

・想いが続く限り持続する

・生きている限り持続する

 

 

【青の従者】

・モンスターを一定数以上倒すと経験値増幅

・強敵がいればいるほど早熟する

 

 

ソーンはアダムのステイタスを見ながら疑問に思っていたことを聞いた。

 

 

「兄様、もうランクアップできますよね?」

 

「できるが、もう少し今の状態にに慣れさせたいんだ。無闇にランクアップすれば体が追いつかなくなる。」

 

「なるほど、流石は兄様てす!」

 

「二人はスキル上ステイタスが上がりやすいしランクアップも早い。だが、無理と無茶は身を滅ぼすことになるから気をつけてくれよ。」

 

「分かりましたミアハ様!」

 

「しっかりと守らせていただきます、主神様。」

 

 

二人はミアハの言葉に同意し、服を着直した。

 

 

 

 

この二人が白兎と出会うのはまだ先の話。




コンパスのセリフやモチーフカードの内容や独自解釈を魔法の詠唱に組み込んでいます。


物語の流れを思い出しながらある程度進めていますが話が違うこともあるかもしれませんのでご注意下さい。
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