ダンジョンに蒼の兄弟がいるのは間違っているだろうか。   作:やりも

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天使と階層主

「ミアハ様、これからソーンと共にゴライアス討伐に向かいますので数日留守にします。」

 

「そうかい、気を付けるんだよ。」

 

「え、何て言った?」

 

「これからゴライアス討伐に行ってきます!ではまた!」

 

 

ユーリエフ兄弟は急いで青の薬舗から出て行ってしまった。ナァーザは手を伸ばしたまま固まり、ミアハは楽しそうに笑っていた。

 

 

 

「なんで止めないんですかミアハ様!」

 

「いや、【英雄】になるために【偉業】を成し遂げたいと思うところは二人とも男の子なのだなと思ってしまってな。」

 

「はぁ…あの様子ならしばらく戻ってこなさそうですししばらくは細々とした生活を送らないとですね。」

 

 

ナァーザは諦めたような口ぶりでポーションの調合を始めた。ミアハもその様子を見て少し笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「そういえば数日後にロキ・ファミリアがまた遠征を行うらしいな。」

 

「そうなんですね、兄様は誘われなかったんですか?」

 

「誘われたが断った。この間のようなことがまた起きるかもしれないからな。」

 

「う…そうですよね…。」

 

 

ソーンはこの間の怪物祭のことを思い出した。あの時、誘拐された途中の記憶はあるがどうしてあそこに倒れていたのかはまったく思い出せなかった。アダムはソーンの『中にいるもの』がソーンを守ってくれたのだと考えていたが、そのことは本人に話していない。

 

二人はダンジョンに入り、着々と下へと向かっていた。周期としてはあと2日で復活するゴライアスを倒すべく、18階層へと降りた。18階層は安全区域でモンスターが生まれない階層でもある。そこにはリヴィラの町があるが二人は気にせず、少し離れた場所でキャンプを始めた。

 

 

「本当に不思議な場所ですよね、ダンジョンにモンスターが生まれない場所があって。しかも朝と夜もあるなんて。」

 

「ダンジョンは神々もすべて知っているわけではない未開の地だ。かつて存在したゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが到達した階層より下の階層がどうなっているかは誰も知らない。」

 

「神すらも知らない未知…それがダンジョンですか…。」

 

 

ソーンは頭上の光を放つクリスタルを見ながら今いる場所について未知の場所なのかと呟いた。

 

 

 

そして、階層主ゴライアスが再び出現する日、既に嘆きの壁の前でソーンとアダムは待機していた。

 

そこに後から遠征中のロキ・ファミリアとリヴィラの町の住人がやってきたが、既に二人の冒険者の姿がそこにあった。声をかけようとしたがそのとき、嘆きの壁が崩れてゴライアスが出現した。

 

 

「行くぞソーン!」

 

「はい兄様!」

 

 

アダムが走り出すのと同時にソーンも詠唱を始めた。

 

 

「【歌は届き、彼の地に安らぎを与える、その歌は神を讃える聖歌であり、平和をもたらす響となった】!」

 

「はぁぁぁ‼︎」

 

 

アダムはソーンの強化魔法をもらい、魔剣でゴライアスの右足を両断する。ゴライアスが暴れるが、距離を取って壁を走り始めた。

 

 

「ふぅ・・・【黒の魔術師は鳥の使いを放ち遠くを視た、鳥を通じ、空を制し、空間を掌握する者こそ、魔術師の頂点に君臨する】‼︎」

 

 

ソーンも詠唱を行うと、鳥のようなものが魔法陣からいくつも生み出され、ゴライアスに当たるとその部分から凍り始めた。更にソーンは詠唱を行う。

 

 

「【牢獄の守り手はろうそくを携え、練り歩き、暗闇を照らし続け、闇を払い光の導となるため、命ある限りその役目を務めた】【氷雪の魔術師よ、我の命に答えて封印された力を展開し、雪精の通り道となれ。】!」

 

 

ソーンの背から蝶のような翅が生え、地面に浮かぶ魔法陣から鎖がいくつも飛び出してゴライアスの動きを制限した。その隙を見逃さずにアダムは魔剣を新たに召喚して2本の魔剣で背中から叩き斬った。

 

ゴライアスは叫び、暴れようとするが鎖のおかげで腕も動かせない。

 

「【氷剣からは逃れられない、永劫の氷獄に囚われ、氷像としてその美しき姿を残し続けるといい、我は氷雪の支配者である】!」

 

「【第一拘束解除】!」

「【顕現せよ】‼︎」

 

 

アダムとソーンが詠唱を完了させると、ゴライアスは全身が凍りつき、アダムとソーンがそれぞれ一撃与えると砕け散り、ゴライアスは灰となった。その時間僅か4分で階層主ゴライアスは討伐された。

 

 

 

 

 

「や、やりましたよ兄様‼︎」

 

「そうだな、よくやったぞソーン。」

 

「えへへ、今回は全部成功してよかったです・・・。」

 

 

ソーンはアダムに頭を撫でられながら頰を緩ませた。そこにロキ・ファミリアが近づいてきた。

 

 

「嘆きの壁の前に誰かいると思っていたが君たちだったのか。」

 

勇者(ブレイバー)、遠征の途中で無駄な体力を使わずに済んでよかったですね。」

 

「そこは助かったよ。それに、中々いいものが見れたからね。」

 

「何この子可愛い‼︎もしかして蒼雪の騎士(グレイ・ナイト)とどんな関係なの⁉︎」

 

「あの、そのっ!」

 

「許可なくソーンに触れるなアマゾネス!」

 

「あ、残念取られちゃった。」

 

「助かりました兄様・・・。」

 

 

ソーンはベレー帽の位置を直しながら安堵のため息をついた。

 

 

「俺の弟だ、許可なく触れるなアマゾネスが。」

 

「はっ、蒼雪の騎士(グレイ・ナイト)は弟のために下層に潜らずここで階層主狩りか?」

 

「駄犬が喚くな。」

 

「あ、今なんつったか?」

 

「駄犬が喚くなと言ったんだ、ロキ・ファミリアは犬の教育すら出来ないのか?」

 

「スカしてんじゃねーぞ片目ナルシストがぁ‼︎」

 

「事実を言ったまでだ。」

 

「やめろベート!ここで無駄な争いをするな。」

 

「兄様、喧嘩はダメですよ。」

 

「チッ‼︎」

 

「すまないソーン、少し頭に血が上ったようだ。」

 

「お互い大変だなソーン。」

 

「あはは・・・そちらの方が大変そうな気がしますけどね。」

 

 

ソーンとリヴェリアはお互い顔を合わせて困ったような顔をした。

 

 

「さて、ゴライアスの魔石はかなり大きいですしリヴィラの町で換金しないとですが、よろしいですかね?」

 

 

アダムが後ろを向くとリヴィラの町の住民がいた。

 

 

「問題ないぞ。」

 

「ならヴァリスを受け取り次第俺らは地上に戻る。行くぞソーン。」

 

「分かりました!で、では失礼します!」

 

 

ソーンは急いで頭を下げて18階層に向かうアダムを追いかけた。

 

 

「それにしてもあの魔法はかなり強力だったね、一瞬にして敵を凍らせる。リヴェリアの魔法みたいだ。」

 

「いや、あそこまで一瞬で凍らせるのは私でも無理だ。」

 

「…強かった。」

 

「アイズもあの小僧たちが気になるのか?」

 

「うん…二人とも強かった。連携も魔法も剣も全部。」

 

「ソーン、弟の方は正直どれくらいの実力かは分からないけど蒼雪の騎士(グレイ・ナイト)は対人戦なら間違いなく猛者(おうじゃ)に勝てるだろうね。」

 

「え、そうなの⁉」

 

 

「元々人付き合いが狭いから彼のことを良く知らない人は多いだろうけど、間違いなく最強に近い存在だよ。」

 

 

フィンがアダムのことをかなり評価していることを知り、尊敬している者は少しだけ嫉妬した。

 

自分たちの団長と同じLv.6でありながらあの猛者(おうじゃ)を凌げるほどの強さを持つアダム・ユーリエフという存在が。そしてその弟のソーンは天使みたいな子だったと誰しもが思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ…こんなにヴァリスが手元にあるなんて、夢みたいです!」

 

「やはり階層主の魔石の値段はうまいな、これくらいなら借金はほとんどなくてよさそうだ。」

 

「極貧生活から脱却ですね!」

 

 

ソーンはくるくると回りながら嬉しそうに鼻歌を歌った。リヴィラの町でゴライアスの魔石を換金し、地上に戻ってからギルドで他の魔石を換金した。リヴィラの町だと魔石の値段をぼったくられるのをアダムは良く知っていたのであまり近づかないし物資自体地上で調達しているので寄る必要もないと感じていたからである。ソーンも兄の話であまり良くない印象を持っていたので18階層ではテントで止まることが多かった。

 

ギルドから青の薬舗へ戻ると、ミアハが店番をしていた。

 

 

「ミアハ様ただいま帰りました!」

 

「おかえりアダム、ソーン。」

 

「無事に帰還したこと、報告させていただきます。」

 

「どうやら無事に階層主を倒してきたようだね。」

 

「はい!兄様があっという間に倒してしまいました!」

 

「ソーンも支援していてくれたからあんなに早く倒せただけだ。主神様、早速で悪いのですがステータスの更新と、私たちのレベルアップをお願いしてもいいでしょうか?」

 

「構わないよ、さっそくしようか。」

 

 

ミアハは嫌な顔もすることなく奥の部屋へ向かった。まずソーンが上を脱ぎ、ベッドにうつ伏せになった。ミアハは神血(イコル)を使い、ソーンのステイタスを更新した。

 

 

●ソーン・ユーリエフ

 

Lv.3

 

 

力 D 460→573

 

耐久 B 723→749

 

器用 S 888→901

 

敏捷 C 672→683

 

魔力 SS 922→1014

 

 

 

魔導 H

 

魔防 H

 

 

 

 

「レベルアップできるね、するかい?」

 

「お願いします…!」

 

 

ソーンはミアハにお願いし、レベルアップをしてもらった。体の中から神の恩恵の気配を感じ、少しだけうとうとしたがすぐにその感覚は消え去った。

 

 

 

●ソーン・ユーリエフ

 

Lv.4

 

 

力 I 0

 

耐久 I 0

 

器用 I 0

 

敏捷 I 0

 

魔力 I 0

 

 

 

魔導 H

 

魔防 H

 

耐異常 H

 

 

《魔法》

【ミラーシ=イーニー】

・超短文詠唱式

・単節詠唱を繰り返すほど攻撃量が増す。

・詠唱式【穿て(アヴローラ)貫け(スウィーニー)砕け(スニェーク)吹雪いて(ツヴェイリ)凍えろ(ジマー)

 

 

 

【アイシクルロード】

・詠唱式【氷雪の魔術師よ、我の命に答えて封印された力を展開し、雪精の通り道となれ。】

・発動鍵【第一拘束解除】

 

 

【ハロードヌイ・バーボチカ】

・詠唱式【雪原の魔術師よ、我の命に答えて封印されし終焉の楔をの一柱をもって、敵の装甲ごと貫け。】

・発動鍵【第二拘束解除】

 

 

【イーニー・ラヴーシュカ】

・詠唱式【寒冷の魔術師よ、我の命に答えて封印されし終焉の獣の一端をこの地に埋め込み、生命の息吹すら生えぬ大地に変えろ。】

・発動鍵【第三拘束解除】

 

 

【グラード・ウラガーン】

・詠唱式【黒の魔術師は鳥の使いを放ち遠くを視た、鳥を通じ、空を制し、空間を掌握する者こそ、魔術師の頂点に君臨する】

 

 

【リオート・ヴルカーン】

・模倣魔法

・詠唱式【氷の魔術書よ、我の問いかけに答えよ】

 

 

【ヴェテロク・ツァーリ】

・詠唱式【牢獄の守り手はろうそくを携え、練り歩き、暗闇を照らし続け、闇を払い光の導となるため、命ある限りその役目を務めた】

 

 

【ソーカル・フェロー】

・詠唱式【歌は届き、彼の地に安らぎを与える、その歌は神を讃える聖歌であり、平和をもたらす響となった】

 

 

【ゼシータ】

・詠唱式【蒼炎に燃えゆく女皇はベールの下から聖域を望み微笑みかけた】

 

 

《スキル》

【終焉禁獣】

・任意発動(一部制約あり)

・逆境時発動、全アビリティ極限強化

・近くにいる生物の魂が尽きるまで解除不可

・起動鍵【第一・第二・第三拘束全解除、目覚めよグラナート

 

 

【恩寵天使】

・成長促進

・魔法関連のステータス・アビリティ強化

・想いが続く限り効果持続

 

 

【箱庭】

・領域内の魔法を模倣する

・魅了無効化

・自らが願う形に変化する

 

 

 

「新しいスキルが出現しているね。」

 

「なんでしょうか、『自らが願う形に変化する』って。しかも魔法を模倣するって…。」

 

「ソーンの近くで使われた魔法は模倣できるということではないでしょうか?」

 

「見る限りそうだろうね。だが、その領域とやらも分からないし…それに魅了無効化というのが少し気になるね。」

 

「美の女神に魅了をかけられたりしたのか?」

 

「えっと…どうだったでしょうか。」

 

 

ソーンは攫われたときの記憶はあるが誰と会ったか、何を話したのかはいまいち覚えていなかった。ミアハもそれは神の持つ嘘を見抜く力でも分からなかったので本当に覚えていないのは分かった。アダムは少し考え込むような仕草をしながら少しだけ心当たりがあった。

 

 

「…神フレイヤか。」

 

「え?」

 

「いや、昔俺にもちょっかいをかけてきたことがあったからな。神イシュタルや神アフロディーテは可能性が低い、それにあの女神はいつ接触してきてもおかしくなかったからな。」

 

「確かに、その可能性は高いだろうね。ソーンも気を付けなさい。」

 

「分かりました。」

 

 

 

ミアハはソーンに忠告をして、次はアダムの番となった。アダムもソーンと同じように上半身脱いでベッドの上にうつ伏せになり、ステイタスの更新とランクアップをしてもらった。

 

 

●アダム・ユーリエフ

 

Lv.7

 

力 I 0

 

耐久 I 0

 

器用 I 0

 

敏捷 I 01

 

魔力 I 0

 

 

 

狩人 E

 

魔防 F

 

精癒 G

 

破砕 G

 

覇劇 H

 

先制 I

 

 

 

 

 

 

《魔法》

【アイシクルコフィン】

・詠唱式【氷剣からは逃れられない、永劫の氷獄に囚われ、氷像としてその美しき姿を残し続けるといい、我は氷雪の支配者である】

・強化鍵【顕現せよ】

 

 

【レド・フィンブル】

・詠唱式【閉ざせ(グレイシア)

 

 

《スキル》

【魔剣騎士】

・自らに魔剣を宿し、それを召喚して戦うことができる

・魔剣を装備している間、精神疲弊しにくくなる

・【第一魔剣 サヴァイヴァーニ】【第二魔剣 カラドボルグ】【第三魔剣 ミスティルテイン】【第四魔剣 ティルフィング】【第五魔剣 ダーインスレイヴ】

 

 

【氷雪騎士】

・想う対象を想うだけアビリティ全補正

・想いが続く限り持続する

・生きている限り持続する

 

 

【青の従者】

・モンスターを一定数以上倒すと経験値増幅

・強敵がいればいるほど早熟する

 

 

「兄様は新しい魔法が発現してますね!」

 

「速攻魔法か、どんな効果だろうな。」

 

「それよりも先に、二人のランクアップ祝いだろう。」

 

「そんなことしなくて平気です!それよりも先に借金の返済をしましょう!今回のゴライアス退治でたくさんお金を貰えましたのでこれで全額返済できますよ!」

 

「いや、めでたいことだと思うのだが。」

 

「私たちはいいと言ってるんでいいのですよ、これが今回の冒険の成果ということで今すぐ借金を返して来てください。」

 

「わ、分かったよ…。」

 

 

ミアハは二人の勢いに負けて袋にたんまりと入ったヴァリスを持って借金をしているディアンケヒト・ファミリアへと赴いた。ユーリエフ兄弟は出かけた二人を待つ間、お茶でもしようと考え紅茶を淹れて待っていると先に帰ってきたのはナァーザの方であった。

 

 

「あれ、二人とも帰ってきてたんだ。」

 

「少し前に戻りました!」

 

「お疲れ様、そういえばミアハ様は?」

 

「今回の冒険の成果を持って借金返済に行かせました、あれだけあれば借金地獄からは解放されると思うぞ。」

 

「え、どれだけ稼いできたの?」

 

「借金全額返済しても少し余るくらいの額だったはずです。」

 

「これで我々も少しくらい贅沢な生活を送れますね、団長殿?」

 

「…そうだね、ありがとう二人とも。」

 

「これも家族のためですから。」

 

「そうですよ、ナァーザ殿。」

 

 

ソーンとアダムは湯気の立つ紅茶に口をつけるながら笑うと、ナァーザはくすりと笑った。

 

 

「二人には困ってるけどね。」

 

「うっ…。」

 

「おや、どこがでしょうか?」

 

「その猫かぶりとかね。」

 

 

ソーンはティーカップに紅茶を淹れ、ナァーザに差し出す。

 

零細でもわけありでも、仲間(ファミリア)は家族であると、そう犬人は思った。




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