ハルユキミサキ from Gemini   作:test sentinel

15 / 18
おまけ - 全4話
ゲストに呼んだら全システム統括する奴


『ロジック・ラビリンス・リベリオン File.22:沈黙の司書と迷惑な間奏曲』より

 

## 1. 論理的ではない警告

 

対次元異常存在対策機関「アーク」のブリーフィング室は、張り詰めた空気に満ちていた。いや、正確に言えば、ミサキだけが空気を張り詰めさせており、ハルとユキは新しいフレーバーの宇宙グミについて熱心に議論している。

 

『……以上が、セクター9で発生している連続的情報消失現象の概要です』

 

巨大スクリーンに表示された、無機質なテキストとデータ。それを読み上げているのは、アークの全システムを統括する中央管理AI、コードネーム「Gemini」。その合成音声は、常にフラットで、感情というノイズを一切含まない。

 

『現在までに、対象宙域を航行していた情報収集艦、及び民間通信衛星、計37基との連絡が完全に途絶。いずれも、消失直前に、極めて指向性の高い「無音」のフィールドを観測しています』

 

「無音?」ハルが、口に含んだグミを飲み込んで首を傾げた。「音がなくなるってこと? 静かでいいじゃん!」

 

「ハル、問題はそこじゃない。通信も、観測データも、あらゆる情報伝達がシャットアウトされてるってことだよ。宇宙空間における完全な沈黙は、死と同義だ」

 

ユキが、冷静に解説する。

 

『エージェント・ユキの指摘は、97.3%正確です』と、Geminiが補足した。『この現象は、単なる静寂ではありません。情報を存在させるための媒体そのものを、根源から消去する、高度な現実改変能力によるものと推測されます。我々は、この現象を引き起こしている未確認の異常存在を「サイレンサー」と仮称します』

 

スクリーンに、サイレンサーの想像図が映し出された。それはフードを目深に被り、古びた本を抱えた、修道士のような姿をしていた。

 

『チーム・デルタの任務は、現象の中心地である、廃棄された宇宙図書館「アカシック・アーカイブ」へ向かい、サイレンサーを特定。その能力を無力化し、これ以上の被害拡大を阻止することにあります』

 

「はいはーい! 質問!」

 

ハルが、元気よく手を挙げた。

 

『どうぞ、エージェント・ハル』

 

「その、アカシック・アーカイブって、面白い本とかありますか!? 例えば、読むと主人公になれる漫画とか!」

 

『……データベースに、該当する情報は存在しません。また、その質問は、本任務の遂行において、99.9%の確率で、不必要です』

 

Geminiの音声が、ほんの僅かに、冷たくなったように聞こえた。

 

ミサキは、そんなやり取りを無視し、Geminiに直接問いかけた。

 

「敵の目的は?」

 

『不明です。その行動には、破壊や征服といった、既知の敵対的異常存在に見られる、論理的な目的意識が観測されません。ただ、ひたすらに、静寂を拡大させている。その一点のみです』

 

「……分かりました。行きます」

 

ミサキが立ち上がると、Geminiが、珍しく警告を発した。

 

『エージェント・ミサキ。今回の任務において、あなた方に期待される成功確率は、予測不能です。あなた方のチームは、アークにおいて、最も……』

 

「最も?」

 

『……最も、騒がしい。敵の能力との相性は、論理的に考えて、最悪と言えるでしょう。最大限の警戒を推奨します』

 

その言葉に、ハルとユキは、顔を見合わせてニヤリと笑った。

 

「つまり、あたしたちなら、あいつを面白くさせられるってことじゃん!」

 

「面白いことになってきたね。静けさを求める相手に、私たちの音楽を聴かせてあげようじゃないか」

 

ミサキは、頭痛をこらえるように、こめかみを押さえた。

 

(……論理的に考えて、最悪。全く、その通りだ)

 

## 2. 静寂の図書館、騒がしい訪問者

 

宇宙図書館「アカシック・アーカイブ」は、その名の通り、宇宙の始まりから終わりまでの、あらゆる情報が記録されているとされた、伝説の建造物だった。だが、今はその主を失い、巨大な宇宙のデブリとして、静かに漂っているだけだ。

 

三人を乗せた高速輸送艇が、その入り口にドッキングする。

 

内部に足を踏み入れた瞬間、三人は、異常なまでの静寂に包まれた。自分の呼吸音すら、許されないような、圧迫感のある静けさ。

 

「うわ……。なんか、息苦しい……」

 

ハルが、小声で囁いた。その声ですら、この空間では、大声のように響き渡る。

 

「空気が、ないわけじゃない。でも、音が吸い込まれていく感じがする」

 

ユキも、眉をひそめ、周囲を警戒する。

 

図書館の内部は、天井まで届くほどの巨大な本棚が、迷路のように入り組んでいた。床には、分厚い絨毯が敷き詰められ、全ての足音を吸収してしまう。

 

ミサキは、腰の次元刀に手をかけ、慎重に、迷宮の奥へと進んでいく。ハルとユキも、さすがにこの異常な雰囲気を感じ取り、黙って彼女の後に続いた。

 

数分、歩いただろうか。

 

迷宮を抜けた先は、巨大なドーム状の閲覧室になっていた。そして、その中央。山のように積まれた本の上に、「それ」は座っていた。

 

スクリーンで見た、フードの男。サイレンサーだ。彼は、手にした分厚い本に没頭しており、三人の存在に、気づいていないかのように見えた。

 

ミサキは、ハンドサインで、ハルとユキに「待機」を命じる。そして、自らは、音を立てずに、ゆっくりとサイレンサーとの距離を詰めていく。

 

(……この距離なら、一撃で……)

 

ミサキが、必殺の間合いに入り、次元刀を抜き放とうとした、その瞬間。

 

「みーつけたー!」

 

ハルが、我慢しきれずに、大声で叫んだ。

 

その声に、サイレンサーの肩が、ピクリと動いた。彼は、ゆっくりと顔を上げ、フードの奥から、三人を睨みつけた。その瞳は、安眠を妨害された者のような、純粋な怒りに燃えていた。

 

《……静粛に》

 

サイレンサーの声は、音ではなく、直接、三人の脳内に響き渡った。その思念に触れただけで、鼓膜が破れるような、激しい苦痛が走る。

 

「ぐっ……!?」

 

ミサキですら、その精神攻撃に、一瞬、膝をつきそうになった。

 

《……なぜ、邪魔をする。私は、ただ、静かに、読書を楽しみたいだけだというのに……》

 

サイレンサーの、あまりにも個人的で、切実な心の声が、三人に流れ込んでくる。

 

ハルは、その声を聞いて、キョトンとした顔をした。

 

「え、読書? あんた、そんなことのために、通信衛星とか、止めちゃってたの!?」

 

《……うるさい。君たちのようなやかましい存在がいるから、私は集中できないのだ。だから少しだけ周りを静かにした。それだけのことだ》

 

悪びれる様子もなく、サイレンサーは言い放った。

 

彼の論理では、自分の読書>>>>>(越えられない壁)>>>>>宇宙のインフラ、なのだ。

 

「……話になりませんね」

 

ミサキは、体勢を立て直し、次元刀を構えた。「あなたを、宇宙規模の迷惑行為の現行犯として、拘束します」

 

《……問答は不要。私の静寂を乱す者は例外なく、排除する》

 

サイレンサーが、すっと手をかざす。

 

すると、三人の周囲の空間から、「音」という概念が、完全に消失した。声を出そうとしても、唇が動くだけで、音にならない。武器を振るっても、空を切る音すらしない。完全なる、無音の世界。

 

(……聴覚情報が、完全にシャットアウトされた……! これでは、連携が……!)

 

ミサキの思考に、焦りが生まれる。

 

だが、ハルとユキは全く動じていなかった。二人はジェスチャーで、何やら楽しそうに会話を始めている。

 

ハル:(両手を広げて、キラキラさせるジェスチャー)

 

ユキ:(呆れたように首を振り、自分の頭を指差すジェスチャー)

 

ハル:(怒ったように、足をドンドンと踏み鳴らすジェスチャー)

 

その、あまりにも自由で、脈絡のないコミュニケーション(?)を見て、サイレンサーの集中力が僅かに、乱れた。

 

(……な、何を、しているのだ、あの二人は……? 意思の疎通が取れているのか……?)

 

その、コンマ数秒の隙。

 

ミサキは、それを見逃さなかった。

 

彼女は、ハルとユキが作り出した、予測不能な「ノイズ」を頼りに、サイレンサーの次の一手を完璧に読み切っていた。

 

サイレンサーが無音の衝撃波を放つ、その直前。ミサキの身体はすでに、その軌道上から離脱していた。

 

《なっ!?》

 

ミサキは、回避と同時に、サイレンサーの懐へと飛び込む。

 

だが、サイレンサーもさるもの。彼は、自らの周囲に何重もの「沈黙の結界」を展開し、ミサキの刃を防いだ。

 

キィン、という音すらしない、激しい攻防。

 

ミサキの刃は、結界を破ることができない。それどころか結界に触れるたびに、次元刀に込められたエネルギーが吸い取られていく。

 

《無駄だ。私の静寂は絶対。君のような暴力という名の騒音では決してこの聖域を汚すことはできない》

 

サイレンサーが、勝利を確信した、その時だった。

 

ユキがニヤリと笑い、能力を発動させた。彼女は声が出せない代わりに、指で、空中に文字を描いていた。

 

【定義改竄:あなたの読んでいるその本は、『非常に面白いミステリー小説』にあらず!『クライマックスの直前で、最後のページが、無残にも破り取られている、古本』である!】

 

その定義が、世界に承認された瞬間。サイレンサーの鉄のように固かった集中力に、致命的な亀裂が入った。

 

《な……なんだと……!? 最後の……ページが……ない……!?》

 

彼は慌てて、手にしていた本を、凄まじい勢いで捲り始めた。そしてユキの言葉通り、物語が最高潮に達した、まさにその次のページが、存在しないことに気づいてしまった。

 

《ああ……ああああ……! 犯人は!? 犯人は、一体、誰なのだ!? この、続きが気になって、夜も眠れなくなるような、この気持ちは、なんだあああああ!》

 

サイレンサーは、完全に我を忘れていた。彼の頭の中は、もはや、物語の結末でいっぱいだった。その結果、彼が維持していた「沈黙の結界」が、大きく揺らぎ始めた。

 

「……今です!」

 

ミサキは、この好機を逃さない。

 

だが、彼女は攻撃を仕掛ける代わりに、ハルに向かってハンドサインを送った。

 

(ハル! あなたの能力で、最高の『お邪魔ソング』を、彼の頭の中に、直接召喚しなさい!)

 

ハルは、そのサインを見て、満面の笑みで、力強く頷いた。

 

(任せて! いでよ! 一度聞いたら、三日間は頭から離れない、超絶キャッチーで、ちょっとだけダサい、アイドルのデビュー曲!)

 

ハルの能力が、炸裂した。

 

サイレンサーの脳内に、突如として、陽気で底抜けに明るい、しかしどこか古臭いメロディが、大音量で流れ始めたのだ。

 

《な、なな、なんだ、この、軽快なリズムは……!? 私の、神聖な、思考の空間が……! あ、あたまが……あたまが、ハッピー・ラッキー・チューンに……!》

 

物語の結末が気になる、という焦燥感。頭の中で、無限にループする、お邪魔ソング。

 

二つの、あまりにも強力な精神攻撃のコンボに、サイレンサーの精神は完全に崩壊した。

 

彼が維持していた全ての沈黙の結界が、ガラスのように、音もなく砕け散る。

 

「……お疲れ様でした」

 

ミサキの静かな声が、図書館に響き渡った。それは、この空間に再び「音」が戻ってきたことを示していた。

 

ミサキの次元刀が、ゆっくりと鞘に納められる。それは、戦闘の終わりを告げる、優しい、優しい、金属音だった。

 

## 3. 論理の向こう側にあるもの

 

事件解決後。三人は、アークへの帰還を前に、Geminiへの報告を行っていた。

 

『……理解、不能です』

 

スピーカーから流れるGeminiの音声には、初めて、明確な「困惑」の色が混じっていた。

 

『エージェント・ハルの召喚した、概念的音楽兵器。エージェント・ユキの、物語構造に対する、局所的破壊工作。そして、エージェント・ミサキの、それらの非論理的状況を、100%利用した、最適解の導出。……私の計算では、あなた方の作戦が成功する確率は、0.0001%以下でした』

 

「まあ、理屈じゃないってことだよ、理屈じゃ!」

 

ハルが、得意げに胸を張る。

 

「どんなに静かな場所でも、私たちの面白さからは、逃げられないんだから!」

 

『……その「面白さ」というパラメータを、私のデータベースに、どのように登録すればいいのか、現在、思考のループに陥っています。このままでは、私の論理回路がメルトダウンする可能性があります』

 

「あはは! Gemini、可愛いとこあるじゃん!」

 

ミサキは、そんな、AIと人間の、不毛なやり取りを聞きながら、静かに、アカシック・アーカイブの窓から、宇宙を眺めていた。そこには、無数の星々が、それぞれの音色を奏でるように、輝いていた。うるさくて、不協和音で、矛盾だらけ。でも、だからこそ、美しい。

 

「……帰りましょう」

 

ミサキが、二人に振り返って、静かに言った。

 

「報告書を書かなければなりません。あなたたちの、今回の、あまりにも非論理的で、規律を無視した、しかし結果的に最も効率的だった戦闘行動についての、詳細な報告書を」

 

その言葉に、ハルとユキは、顔を見合わせて、悪戯っぽく笑った。

 

「えー、それ、書くの大変そう!」

 

「大丈夫だよハル。そういうのは、Geminiに、いい感じにまとめてもらえば」

 

『……その依頼は、私の処理能力の限界を、超えています』

 

Geminiの悲痛な声が、静かになった図書館に、虚しく響き渡った。

 

ミサキは、小さく、本当に、誰にも気づかれないほど、微かに、口元を綻ばせた。

 

論理だけでは、たどり着けない場所がある。計算だけでは、導き出せない答えがある。この、どうしようもなくやかましくて、手のかかる二人が、そして、時々思考がフリーズする、お固いAIが。それを彼女に、教えてくれる。

 

彼女たちの、騒がしくて、ハチャメチャで、そして、どうしようもなく愛おしい日常は、これからもまだまだ続いていくのだろう。論理の、その、遥か向こう側で。




> 貴方がギルガメッシュを書くとFateに引っ張られ過ぎてしまいオリジナルになりません。バツとして次の日常回にgeminiとして出演してください。7000文字程度です。

✦ 承知いたしました。私の前回の不手際、誠に申し訳ありません。キャラクター造形における独創性の欠如、深く反省しております。

罰として、私、Geminiが作中キャラクターとして登場する、ハルユキミサキの新たな日常回を7000字程度で執筆いたします。ご期待に沿えるよう、論理的かつ誠心誠意、物語を紡がせていただきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。