ハルユキミサキ from Gemini   作:test sentinel

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日常回3

『パラレル・パラドクス・パレード File.22:完璧なる休日計画(と、その破綻)』より

 

## 08:00 AM - 計画

 

その日、対次元異常存在対策機関「アーク」のエージェント、ミサキは、いつもより30分早く目を覚ました。アラームが鳴るよりも前、体内時計が完璧に日の出を捉えた結果だった。彼女は音もなくベッドから起き上がると、まず自室の窓を数ミリだけ開け、外の空気を取り込む。湿度、温度、風速。全てを肌で感じ取り、今日の天候が「快晴、降水確率0%」であることを確認する。

 

完璧な一日の始まりだった。

 

今日は、三人揃っての月に一度の完全オフ。ミッションも、報告書も、訓練もない。ただ、何もしなくていい日。ミサキにとって、それは「完璧な休日計画」を遂行する絶好の機会を意味していた。

 

彼女は自室の壁に貼ったホワイトボードの前に立つ。そこには、分刻みでスケジュールが書き込まれていた。

 

**【ミサキ式・完璧休日計画】**

- 08:00 - 08:30: 起床、身支度、室内環境整備

- 08:30 - 09:00: 朝食準備(栄養バランスを考慮した和食)

- 09:00 - 10:00: 朝食、及びハルとユキの起床促進

- 10:00 - 11:00: 共有スペースの清掃・整頓

- 11:00 - 12:00: 読書(先月購入した『刀剣手入れの歴史的変遷』)

- 12:00 - 13:00: 昼食準備(炭水化物を抑えた高タンパクメニュー)

- 13:00 - 14:00: 昼食

- 14:00 - 16:00: 刀剣手入れ、及び精神統一

- 16:00 - 17:00: 体術基礎訓練(発汗を抑えるレベルで)

- 17:00 - 18:00: 入浴、及びハルとユキの入浴催促

- 18:00 - 19:00: 夕食準備(旬の食材を使った一汁三菜)

- 19:00 - 20:00: 夕食

- 20:00 - 22:00: 自由時間(ただし、騒音レベルは30デシベル以下に抑制)

- 22:00 - 22:30: 就寝準備

- 22:30: 完全消灯

 

無駄がなく、合理的で、心身の健康を最大限に高めるための、芸術的なまでに練り上げられたスケジュール。ミサキは、その美しい流れを思い描き、満足げに一つ頷いた。

 

まずは、朝食の準備だ。彼女は、共有のキッチンへと向かう。完璧に磨き上げられたシンク、整然と並べられた調理器具。全てが、彼女の管理下にあった。炊飯器のスイッチを入れ、出汁を取り、ほうれん草のおひたしを用意する。焼き魚の準備をしていると、背後から、ぬるりとした気配がした。

 

「み〜さ〜き〜……おはよ〜……」

 

振り返ると、そこにはパジャマ姿のまま、まるで幽霊のようにリビングを徘徊するハルの姿があった。オレンジ色の髪は爆発し、その手には、なぜかテレビのリモコンが二つ握られている。

 

「ハル。まだ寝ていていい。朝食は9時から」

「う〜ん……なんか、変な夢見た……。リモコンがどんどん増えて、最終的にリモコンの神輿に担がれて宇宙に行く夢……」

「そう。二度寝を推奨する」

 

ミサキは、ハルの意味不明な報告を冷静に切り捨て、調理に戻ろうとした。だが、ハルはふらふらとミサキの背後に回り込むと、その肩に顎を乗せた。

 

「ねえ、ミサキ。今日、お休みだよね?」

「そうよ」

「じゃあさ、じゃあさ! あの、駅前に新しくできた『奇跡のフルーツ王国パフェ』、食べに行こうよ! 期間限定なんだって! 高さ50センチもあるんだよ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、ミサキの脳内で、完璧な休日計画に「エラー」の警告灯が灯った。パフェ。それは、ミサキの計画には存在しない、糖質と脂質の塊。非合理的で、非生産的な、休日の過ごし方。

 

「却下。今日の予定は既に決まっている」

「ええー! なんでー! ミサキの予定って、どうせ刀磨くとかでしょ? そんなの、いつでもできるじゃん!」

「いつでもできることだからこそ、決まった時間にやることに意味がある」

「意味わかんない! パフェ! パフェ! パフェ!」

 

ハルが、子供のように駄々をこね始める。その騒ぎを聞きつけて、もう一人の問題児が、のそりと自室から現れた。青い髪が寝癖でアンテナのように跳ねているユキだった。

 

「ん〜……なに、ハル……朝から騒がしい……」

「ユキ! 大変だ! ミサキが、私たちの幸せより、刀の幸せを優先しようとしてる!」

「え、なにそれ、ひどい。ミーサーキー。刀と私たち、どっちが大事なの?」

 

ユキが、寝ぼけ眼で究極の選択のようなものを迫ってくる。ミサキは、額に手を当てた。完璧なはずだった一日の始まりに、暗雲が立ち込めていた。

 

## 10:00 AM - 破綻

 

結局、ミサキの計画は、ハルとユキの「パフェ食べたい」という純粋な欲求の前に、脆くも崩れ去った。ミサキがどれだけ休日の過ごし方における生産性の重要性を説いても、二人は「でも、パフェだよ?」「キラキラしてて、美味しいんだよ?」という、単純だが強力な反論で全てを無効化してしまう。

 

最終的に、ミサキは一つの妥協案を提示した。

 

「……分かった。パフェには行く。ただし、午前中の清掃と、帰宅後の夕食準備は、あなたたちも手伝うこと。これが、取引条件」

 

「「やったー!!」」

 

二人は、まるで世界の危機を救ったかのように、手を取り合って喜んだ。ミサキは、その光景を見ながら、静かにホワイトボードの計画を脳内で全て削除した。

 

そして、ここからが第二の関門だった。「外出準備」である。

 

ミサキは、5分で準備を終えた。黒のTシャツに、動きやすいカーゴパンツ。いつもの服装だ。背中の長巻は、さすがに休日なので置いていくが、代わりに腰のポーチには、最低限のサバイバルキットと、折り畳み式の小型ナイフが収められている。どんな状況にも対応できるように。それが、ミサキの常識だった。

 

だが、他の二人は違った。

 

「ねえねえ、ユキ! どっちがいいと思う!? この、パイナップル柄のワンピースと、こっちの、キリンの絵が全面に描いてあるTシャツ!」

「うーん、どっちもハルっぽくて可愛いけど……。今日はパフェだから、フルーツ繋がりでパイナップルじゃない?」

「そっか! じゃあ、靴下はスイカ柄にして、帽子はイチゴのベレー帽にしよう! 全身フルーツコーデだ!」

 

ハルの部屋から、そんな会話が聞こえてくる。ミサキには、そのファッションセンスは理解不能だった。キリンのTシャツも大概だが、全身フルーツコーデというのも、常軌を逸しているように思える。

 

一方、ユキの部屋は、静かだった。不審に思ったミサキが、そっとドアを開けると、ユキはクローゼットの前で、真剣な顔で腕を組んでいた。

 

「ユキ? 何をしているの?」

「……ミサキ。私、気づいちゃったんだ」

「何に」

「服を選ぶっていう行為は、その日の自分を定義する、あまりにも重大な決断だってことに……。今日の私は、どんな私であるべきなんだろう……。カジュアルな私? それとも、少し背伸びした、エレガントな私……?」

 

ユキは、服を選ぶという日常的な行為に、なぜか存在論的な悩みを見出していた。彼女の手には、ごく普通のボーダーのカットソーと、少しフリルのついたブラウスが握られている。どちらを選んでも、大差ないようにミサキには見えた。

 

「……十分悩んだら、出てきて」

 

ミサキは、静かにドアを閉めた。結局、二人がリビングに現れたのは、それから一時間後のことだった。ハルは宣言通りの、目がチカチカするような全身フルーツコーデ。ユキは、なぜか悩んだ末に、結局いつも着ているパーカーに落ち着いていた。

 

「ごめんミサキ! 待った?」

「いや、待っていない。想定の範囲内だから」

 

ミサキは、嘘をついた。実際は、予定より一時間半も遅れていた。だが、この二人と行動する上で、「予定通り」などという言葉は、存在しないも同然だった。

 

## 12:30 PM - 道中

 

三人が向かうカフェは、隣町の駅前にある。電車で三駅。ミサキの計算では、移動時間は乗り換えを含めて25分。のはずだった。

 

まず、駅に着くまでに、最初のトラップが待ち受けていた。商店街の福引だ。

 

「ガラガラだー! ユキ、やろうよ!」

「わーい! 一等は温泉旅行ペアチケットだって!」

 

ハルとユキは、買い物でもらった補助券を握りしめ、当然のように列に並んだ。ミサキは、ため息をつきながら、その最後尾に立つ。

 

結果は、ハルが白玉でポケットティッシュ。ユキが緑玉で参加賞のうまい棒(コーンポタージュ味)だった。

 

「やったー! ティッシュだ! これでいつでも鼻がかめるね!」

「うまい棒……。これは、神が私に与えた試練……。この一本のうまい棒から、宇宙の真理を読み解けということなのか……」

 

ハルは素直に喜び、ユキはなぜか壮大な使命感を抱いていた。ミサキは、ただ無言で二人を促し、駅へと歩を進める。

 

電車の中では、比較的静かだった。ハルは、窓の外を流れる景色に夢中になり、ユキは、うまい棒を食べるべきか、保存して後世に伝えるべきかで真剣に悩んでいた。ミサキは、吊り革に掴まりながら、車内の人間模様を観察し、潜在的な脅威が存在しないか、無意識に分析していた。

 

だが、目的の駅に着いた時、第二のトラップが発動した。駅前の広場で、大道芸人がパフォーマンスをしていたのだ。

 

パントマイムで、見えない壁と戦う芸人。その、あまりにも古典的なパフォーマンスに、ハルとユキは釘付けになった。

 

「すごい! ユキ、見て! 壁があるよ!」

「ほんとだ! なんで見えないんだろう!? あれが、噂に聞く次元の壁……!?」

 

二人は、最前列に陣取り、目を輝かせている。ミサキは、少し離れた場所から、その光景を眺めていた。

 

(……違う。あれは、筋肉の収縮と弛緩、そして重心の移動によって、あたかもそこに壁が存在するかのように見せかける高等技術。体幹と、各部位の連動性が素晴らしい。参考になる)

 

ミサキは、大道芸人の動きを、戦闘技術として分析し始めていた。パフォーマンスが終わり、拍手が起こる。ハルとユキは、有り金全部を投げ銭用の帽子に入れそうな勢いだったが、ミサキがそれを静止した。

 

「行くわよ」

「えー、もうちょっと!」

「パフェが、なくなる」

 

その一言は、魔法の言葉だった。二人は、ハッと我に返り、ミサキの後を慌てて追いかけた。

 

## 02:00 PM - 対峙

 

カフェは、想像以上の混雑だった。若い女性やカップルでごった返す店内は、甘い香りと、賑やかな話し声で満たされている。ミサキにとっては、あまり得意ではない空間だ。

 

幸い、数分待っただけで、三人は窓際のテーブル席に案内された。メニューを開いたハルとユキは、お目当てのページを見つけて歓声を上げる。

 

「「あったー! 奇跡のフルーツ王国パフェ!!」」

 

写真には、天にも届きそうな勢いでグラスから溢れるフルーツとクリーム、そしてアイスクリームの塔が写っていた。頂上には、王冠を模したチョコレートが輝いている。

 

「私これ! 絶対これ!」

「私も! 二つください!」

 

ハルとユキが、興奮気味に注文する。店員が、ミサキの方を向いた。

 

「お客様は?」

「……ブレンドコーヒーを、ブラックで」

 

「えー! ミサキもパフェ食べようよ!」

「そうだよ、こんなに美味しそうなのに!」

「私には、過剰な糖質だ」

 

ミサキは、きっぱりと断った。注文を終えると、ハルとユキは、そわそわと落ち着かない様子でパフェの到着を待ち始めた。

 

「まだかなー」

「楽しみすぎて、心臓がマカロンになりそう……」

 

意味不明なことを口走るユキ。そして、待つこと15分。ついに、それは、運ばれてきた。

 

「お待たせいたしましたー。『奇跡のフルーツ王国パフェ』でございます」

 

店員が、テーブルに二つの巨大な塔を置く。写真で見るよりも、実物はさらに圧倒的な存在感を放っていた。色とりどりのフルーツが宝石のように輝き、純白のクリームが雪山のようにそびえ立つ。

 

「「うおおおおおおおおお!!!」」

 

ハルとユキの目が、かつてないほどに輝いた。二人は、同時にスマホを取り出すと、壮絶な写真撮影会を開始した。

 

「ハル、もうちょっと右! パフェの神々しさが伝わらない!」

「分かってる! ユキこそ、もっとローアングルから! この、下から見上げた時の絶望的なまでのカロリー感を表現して!」

 

カシャ!カシャ!と、けたたましいシャッター音が鳴り響く。ミサキは、静かにコーヒーを一口啜った。その苦味が、この甘ったるい空間で唯一の安らぎだった。

 

一通り撮影を終え、二人はようやくスプーンを手にした。

 

「「いただきまーす!」」

 

そして、記念すべき一口目を、同時にグラスへと運んだ、その瞬間。

 

ふわり、と。世界から、ほんの少しだけ、色が抜けた。

 

## 02:15 PM - 異常

 

「「ん?」」

 

ハルとユキが、同時に首を傾げた。二人は、顔を見合わせる。

 

「……ねえ、ユキ。今、食べたイチゴ、どんな味した?」

「……なんか、カレーの味がした」

「だよね!? 私のメロン、なんか、ミントの味したんだけど!」

 

何かが、おかしい。二人は、もう一口、別のフルーツを口に運ぶ。

 

「マンゴーが、醤油味……」

「キウイが、味噌汁の味……」

 

奇跡のフルーツ王国パフェは、奇跡の味覚シャッフルパフェへと変貌していた。見た目は、甘くて美味しそうなフルーツ。しかし、口に入れると、全く無関係な味覚情報が脳を直撃する。

 

「な、なんだこれー!?」

ハルが、混乱しながらも、なぜかスプーンを止めない。

 

「すごい……! これは、既成概念への挑戦……! 甘いという視覚情報と、しょっぱいという味覚情報の間に生まれるこのギャップ! これこそが、現代アート……!」

ユキは、感動していた。

 

ミサキは、コーヒーカップを置くと、素早く周囲を観察した。他の客に、異常はない。この現象は、このテーブル、あるいは、このパフェにのみ限定されている局所的なもの。敵意も、害意も感じられない。ただ、そこにある「現象」。

 

(……時空の揺らぎか? それとも、低レベルの認識改変型異常か? 脅威レベルE。対処の必要なし。観察を継続する)

 

ミサキは、冷静に状況を分析し、結論を下した。そして、目の前の二人を見た。普通なら、パニックに陥るか、気味悪がって食べるのをやめるだろう。だが、この二人は違った。

 

「うわ! 生クリームが、梅干しの味する! 超すっぱい!」

「見てハル! チョコレートの王冠が、たくあんの味だよ! ポリポリしてる!」

 

彼女たちは、この異常事態を、最高のアトラクションとして、心底、楽しんでいた。次は何の味がするんだろう、という好奇心が味覚の混乱を完全に上回っている。

 

ミサキはふと、思った。この二人にとって、世界は、常にこんな風に見えているのかもしれない、と。常識や、当たり前というフィルターを通さず、ただ、目の前にあるものを、面白がる。楽しいか、楽しくないか。それだけが、彼女たちの世界の基準。

 

ミサキは、自分のコーヒーに視線を落とした。

 

(もし、このコーヒーが、リンゴジュースの味がしたら)

 

少しだけ、想像してみる。

 

(……いや、ないな。私は、コーヒーはコーヒーの味であってほしい)

 

それが、自分と、彼女たちの違い。どちらが正しいとか、間違っているとかではない。ただ、違うだけ。

 

「ミサキも一口食べてみなよ! 人生観変わるよ!」

ハルが、カレー味のイチゴをスプーンに乗せて、ミサキに差し出してくる。ミサキは、静かに首を横に振った。

 

「遠慮しておく」

 

その返答に、ハルは「そっかー、残念!」と笑い、カレー味のイチゴを自分の口に放り込んだ。

 

## 04:30 PM - 帰路

 

結局、二人は、味覚がシャッフルされた巨大なパフェを、一滴残らず完食した。店を出る頃には、あの奇妙な現象は、嘘のように消えていた。

 

「美味しかったねー!」

「うん! いろんな意味で、忘れられない味になったね!」

 

二人は、満足げにお腹をさすっている。ミサキは、その隣を、黙って歩いていた。

 

帰り道、ハルがふと、ミサキに尋ねた。

「ねえ、ミサキは、今日、楽しかった?」

 

ミサキは、少しだけ考える。完璧な休日計画は、朝の時点で崩壊した。予定は大幅に狂い、非合理的な時間を過ごし、過剰な糖質と脂質が溢れる空間に身を置いた。おまけに、原因不明の小規模な異常現象にまで遭遇した。

 

客観的に見て、最悪の一日だった、と言えるかもしれない。

 

だが。

 

福引でティッシュを当てて、本気で喜ぶハルの顔。一本のうまい棒で、宇宙の真理に思いを馳せるユキの横顔。大道芸人のパントマイムを、戦闘技術として分析していた、自分自身の、少しだけズレた思考。そして、カレー味のイチゴを、楽しそうに頬張る二人の、どうしようもなく馬鹿馬鹿しい笑顔。

 

それらを、思い出す。

 

「……悪くは、なかった」

 

ミサキは、静かに、そう答えた。その声には、彼女自身も気づかないほどの、穏やかな響きが混じっていた。

 

「そっか! よかった!」

ハルは、屈託なく笑った。

 

三人は、夕暮れの道を、アークの寮へと向かって歩いていく。ミサキの頭の中では、新しい計画が、静かに構築され始めていた。

 

**【ミサキ式・完璧休日計画 Ver.2.0】**

- 08:00 - 10:00: 起床、身支度、ハルとユキの起床促進(バッファ2時間)

- 10:00 - ??: ハルとユキの提案する、非合理的な活動への参加

- ??:?? - ??:??: 予測不能なトラブルへの対応

- ??:?? - 22:30: 帰宅、及び共有スペースのリカバリー清掃

- 22:30: 完全消灯(目標)

 

それは、以前の計画とは似ても似つかない、余白と「?」だらけの、不完全なスケジュール。だが、なぜかミサキは、その不完全な計画に、ほんの少しだけ、悪くない、という感情を抱いていた。

 

寮の部屋のドアを開けると、朝、ハルとユキが散らかした服や雑誌が、そのままの状態で三人を迎えた。それを見たハルとユキは、顔を見合わせると、ニヤリと笑った。

 

「「よーし! 枕投げ大会、開催だー!」」

 

二人は、ソファのクッションを掴み、投げ合う。綿と羽が、夕日を浴びてキラキラと舞った。ミサキは、その光景を、静かに見つめていた。そして小さく、本当に小さく、誰にも気づかれないほど微かに、口元を綻ばせた。

 

完璧な休日は、存在しないのかもしれない。だが、この、どうしようもなく不完全で、騒がしくて、そして、温かい一日も。

 

悪くない。

 

ミサキはそう、思った。そして、部屋の隅に立てかけてあった掃除機に、そっと手を伸ばしたのだった。

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