第一次月面戦争が終結し、残っていた妖怪達は八雲の賢者の能力によって逃げるように退散した。しかし数日経っても少年は1人戦場のクレーターの中心で眠っていた。
「上からの命令…ですが」
「あまりにも危険。そう言いたいのでしょう?依姫」
「はい」
月の都の上層部は地上の生き物ではない少年を解剖、解明しようと都の中心部に近しい研究所へ送られることになった。だがいつ目覚めて襲いかかるかわからない少年を都に連れて行っても大丈夫なのだろうか。
「八意様達を信じましょう依姫」
「はい」
姉様は部下に少年の拘束を命令し、私達は八意様が居られる都の中心部はへと向かった。月面にはもう妖怪が居らず、部下の兵士達もそれぞれの持場へと戻っていった。
中心部に近しい建物、その中にある多いな庭の小さな小屋の中に八意様が居られた。理由は少年や怪物の出現により想定外の死傷者が出てしまい、起こるはずがなかい被害が起きてしまったからその後始末らしい。
「八意様、ただいま戻りました」
私達に気付くと八意様は先程まで硬い顔をしていたが柔らかい表情に変わり、よくやったと頭を撫でて褒めてくれた。
「今回の件、八意様の過失ではありません。我々がもっと警戒し兵に命令をしていれば起こらなかったことです」
「いいえ、それは違うわ依姫。実は―――」
八意様曰くこの第一次月面戦争では八雲の賢者の能力を塞ぎつつ、穢れを打ち払う武器を用いて妖怪達を弱体化させ、逃げ場を失わせて月面で全滅させる予定だった。しかしこの作戦を考えている時に《とある来訪者》が現れたらしい。
「その者は名を名乗らずただわたしにこう言ったわ。『この第一次月面戦争では兵士を下がらせない。余計な被害を出したくないのならね』と。わたしはこれを無視した。その結果がこれよ」
その来訪者は今回の襲撃者である少年と怪物の存在を知っていた?それに厳重な警備があるこの月の都、その中でも特に厳重な中心部に居られる八意様に会えるなんて。
「その者はいったい…」
「わからないわ。でも今回捕らえた人間…じゃなかったわね。少年とは関係がありそうね」
そこへ一人の兵士が現れ少年の移送が完了した報告を受ける。八意様は立ち上がり、研究所へと向かうことにした。
「貴方達は一度家に帰りなさい。戦争が終わったのよ、家でゆっくり休みなさい。特に依姫、訓練も大事だけど今は豊姫を見習って休んでおきなさい」
「わ、わかりました」
家に帰り八意様に言われた通りに姉様を見習って休むことにした。姉様を見習うということはちょうど庭の木に成っている桃を食べ、ソファーでくつろぐ。
「え、よ、より、依姫?わたしそんなにだらけているかしら?」
「今の姉様を真似ているのですが…」
「そ、そう…」
あれから数日、八意様にお呼ばれして研究所の中へと入る。今回呼ばれた理由は件の少年についてだろう。彼が何者なのか、何が目的なのか。我々ははっきりとさせないといけない。
「二人ともいるわね。早速だけど難しい話は後にして結論だけ言うわね」
八意様は資料を少し見ながら私達に言い放った。
「彼についてはなんの情報をえれなかったわ」
「なっ!?」
「では彼はいったい…?」
「わからないわ。何も喋らないから得られた情報は一切なし」
そう言い、八意様は研究所の奥へと向かう。私達もその後をついていく。通路を歩きながら八意様は説明してくださった。妖力、霊力、神力が測れず今のところ妖怪、地上の民、神ではないということだけわかった。
少し歩くと観察室のようなところに出た。そこは檻のような小さな空間に彼が入っていた。
「ずっと座って動かないの。なぜ動かいのかわからなくて困ってるのよ。それにブツブツ何かを言っているだけで会話もろくにできないわ」
八意様の言う通り彼は何かをずっと喋ってはいるけど何を言っているかは聞き取れない。
「こちらから何度話しかけても聞こえていないようね」
「あの、なぜ少年を私達に見せたんですか?」
「貴方達の役目は月と地上の関係を保つこと、地上の監視でしょ?彼は地上から来た可能性が高いため、落ち着きを取り戻してからは貴方達に監視してもらうことになったの」
しかしここで引っかかることがある。地上の民ではないとつい先程八意様が言っていたのに地上から来た可能性があるのはおかしいのではないだろうか。
「単純よ。彼の衣服から地上の土を検出したわ。彼は地上から何かしらの力によって月に来たのよ」
あの妖怪の賢者とは違う方法で月に?
「それで本題に入るけど二人には彼を監視してほしいの。あの来訪者は今回の襲撃を予期していた、彼は来訪者の仲間もしくはそれに近い何かだと思うの」
「その来訪者は今どこに?」
「わからないわ。突如都内に現れ、忽然と消えたわ」
この都のセキュリティをかいくぐり八意様のところへ?そのようなことが可能なのでしょうか
「あなたたちは前にも一度地上の人を保護したことがあったでしょう?」
「うっ...わかりました。彼はこちらで監視、保護します」
「頼んだわよ」
まさかあの時の話を持ち出されるとは...