The Reminiscene of Exellia ver.SS   作:ho9tocraft222

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#2「始原の十四席」

 ―――陽光の如き光と、地獄の烈火にも似た獄炎を操る、無名の双刀術士。

 その言葉を聞いたとき、エクセリアは耳を疑ったように、目の前の黒髪の男を見た。

「その話、どこで聞いた?」

「我々はこの星の血となり肉となる者。同胞の噂話なら既に上がっている。なにも、凶暴化した創造生物たちを鎮めるのに一役買っているそうじゃないか」

と、議長は答える。果たしてこれを答えと言っていいのかとは思えど、誰かしらから「無名の双刀術士の噂話」を聞いていた彼らは、双刀術士、すなわち今のエクセリアについて識った誰かがいた、ということだ。

 だが、エクセリアには分かりかねる話だった。そもそもの話、この場、つまり家から出る頻度が少なすぎて、なぜ知られているのかも理解出来ない。

 というよりは、エクセリア自身が、そのことについて理解するつもりが毛頭ない。

 とどのつまり。エクセリア視点で言えば、「唐突に自分として思い当たるであろうことを理由に国の偉い奴らが押しかけてきた」ということになるのだろう。

「私は顕現こそできても転身はできない。というより、お前達が片手間に使う創造魔法なんざ、術式を読んでないから使えない。だから、お前達とは歩んでいけない」

そう言って、彼女は男たちを家から出そうとする。

「まぁ待て。よく聞け、少女よ。

 我々《委員会》に属するものでも、この星の中の隅々まで、情報を集めて回る役職に就きたがろうとする同胞がいないのだ。彼らは皆、こう言ったのだよ。

 『あの双刀術士にやらせればいいだろう』と」

そう言って、面倒な役職を押しつけようとする彼ら。至って真面目に懇願しているようだが、エクセリアの目には別のものが見えていた。

 いや、()()()()()のだろう。

『こいつを委員会に迎え入れたら、俺達の仕事が少しは減る。問題を捌くのは我々だ、彼女はただ集めてくるだけだ。楽な仕事に違いないはずだ』

『ああ、我々だけでは限度があるからな、私達の仕事を減らすことができれば、星を運営する仕事も多少は楽になる』

その、悪意しかないものを視たエクセリアは、根底の闇に悍ましささえ感じ―――

「態度を改めてから出直せ。私は、お前達のような腐った思考をする奴に協力するつもりは更々ない。もしこれを受けて、私を攻め滅ぼそうと言うのなら…、相応の対応を以て迎え撃つと誓おう」

と告げる。

 唐突に宣告され、困惑した『議長』と『冥王』は、机を叩く。

「なぜ、あなたほどの人間が、私達の仕事をそこまで低く評価している!?

 第一、なんだその服装は!」

「お前達のほうこそ、服装を見ただけで不審者であるように見えるが?」

『冥王』の怒りに、彼女は軽口を叩くかのように言葉を走らせる。

 第一、その服装に文句の付け所があった。黒法衣なのはまだいい。そこは問題ない。

 だが、その仮面とフードはなんだ。フードを被る分には、私とてそういう腹を着ているから分かる。だが、顔に仮面をつけるのはどういうことだ。それは、不審者の特徴を○○と継承するようなことではないのか。

「私はここでのんびりと隠居することにしているんだ。姉への弔いもしなければならないしね。だから、近隣の住民が助けを求めた場合なら応じるが、《委員会》等という政治的機関の命令には従うつもりはない。

 それがいやなら…少しは誠意をみせろ。フードを降ろして、仮面も外してな…」

他人が見れば、現実換算で「14歳の少女」とも言うべきエクセリアが、ドスを効かせた声で『議長』と『冥王』を威圧する。

 それに怯んだのか、それともみっともないプライドが許さなかったのか。

「…今日は保留と言うことにさせてもらおう。だが、お前の力は頼る気でいることを覚えておけ」

と『議長』に言われる。そのまま、『議長』と『冥王』はその場を後にした。

 家を出た彼らを見送った後、エクセリアはため息をつくように、肩を落とした。

「お前らみたいな奴を相手するのは苦手なんだよ」

文句をぶつぶつと垂れつつ、彼らが置いていった《委員会》に関する書物を読む。

「非の打ち所を見つけるためにも、まずは彼らから齎された書物を当たるとしよう」

 

 そうして、2週間ほどが経過した。

 綺麗事しか書かれていない書物を見て、エクセリアは吐き気を催すような状態になっていた。彼らの思想や、願いはよく分かるものだ。否定はできない、だがどういうわけか、吐き気を催す何かを本能が感じている。

「…腐れ外道が。星に不都合な生命を処分して、星を善くするだと…?なにが、世界を要する星の細胞だ…!」

エクセリアにとって、「産みだした命に対する冒涜」が、何よりも気に入らなかった。

 だからこそ、この問題を直接示すためにも、彼女は『委員会』に入ることを決めた。

 しかし…、結果はどうだ。誰もこの事実を提示されて尚、変えようとしなかったのだ。

 だからこそ、信頼を置ける誰かに、受け取った『第十四の座』を譲り渡すことにした。

 

 十四人委員会として、籍を置く日々の、その一部で。

「おかあさん…」

道ばたに、蹲る黒法衣の少女がいた。

 その少女は、エクセリアを見ると寄ってくる。

「どうしたんだ、若いの」

「おかあさん…星に還っちゃった…」

と、少女は言う。少し憤慨しつつも、エクセリアは彼女を見据える。

「私はね、少し重要な役回りの人間でね…」

 

 数年後。

 第十四の座を、その少女―――否、ヴェーネスが継承することになった。

「あなたは星に還るのですか、エクセリア?」

「…いや、還る術式が効かないらしくてな…、私はまた、実家に戻って墓守をするよ」

そう言って、エクセリアは『十四人委員会』を抜けた。

 それから、3000年後。世界を襲った終末の災厄は、生き残った人々に、癒えることのない心の傷をつけた。絶望し、楽園への回帰願望を口にするようになり、それが民の総意となったそのとき…、エクセリアは、徐に実家から出た。

 終末のアーモロート、ゾディアークを顕現させ、民を捧げ続ける古代人の前に、エクセリアは現れた。明確な憎悪と、それを御す理性という、この世界の人々に欠けたすべてを以て。

「壊そうというのかね、この美しき世界を」

祈りを捧げ続ける古代人のうちのひとりが、エクセリアを見て言う。

 エクセリアは左腕に魔力を流し、怒りに震える眼を目の前の汚物に向ける。

「柔らかな人の感情だけでは、この世界を御することはできなかった。万人にとって善い世界など、この宇宙のどこを当たってもありはしない。星に還るとして、目をそらしていた死に、星に善くないとして創造生物たちに向けていた殺意に、誠意を持って目を向けるときが来たんだ」

声が震える。しかし、彼女が黒い靄に包まれるようなことはなかった。

 いや、何かに包まれるという意味では、確かに包まれているのだろう。

 それが炎であるということを認識したのは何人だろうか。

「受け入れろ。自分を、己のすべてを。お前達が原初より犯した大罪、傲慢により殺し続けた獣たちの怨嗟を、その身でしっかりと味わえ…!」

エクセリアが纏った炎は、彼女の外側に体を生み出す。

 その後、ヴェーネス派がハイデリンを顕現させ、2体の光は、過たずにゾディアークごと世界を分断した。

 

 分割後、浮かぶ月を背に…ハイデリンと珖焔の竜は対面していた。

「あの子の夢が、こんな形で叶うだなんて」

と、ハイデリンが言う。珖焔の竜―――クェーサーは、その眼を数秒閉じる。

 クェーサーとして顕現していたエクセリアは、ハイデリンとして同胞を糧に顕現したヴェーネスに語りかけるように言う。

「それで、お前はどうするんだ?エーテルを喰らう蛮神に成り下がったわけだが」

終末は遠ざけられ、空に青が戻った。しかし、ハイデリンは言った。

 ―――未来から来た彼女と、終末に対して共に答えを突きつけるまで、死ねない。

 エクセリアは沈痛な表情を浮かべつつ、面と向かって言葉を紡ぐ。

「分の悪い賭けだな。嫌いではないが…到来するまで、ずっと待ち続けるのか?」

その声には、呆れというか、失望というか…凡そ知人に向けるべきものではない語気が混じっていた。

 …その問いに対する回答を聞いたエクセリアは、憤慨して腰の大剣を抜く。

「人が終末を乗り越えるその日まで、星海の最奥でのうのうと生きようって言うのか…!だったら、お前は生かしては置けないな…!死んでもらうぞ、ヴェーネス!!」

異物の介入までの3ヶ月間を、闘争に費やす日々が始まろうとしていた。

 光が放たれ、光の津波を紅蓮の炎が焼き尽くす。

 ハイデリンを炎が、剣が、爪が、傷つけていく度に、エクセリアの脳裏に雑念が混じっていく。

 

「『歴史が大きく変わる時、ラーズグリーズはその姿を現す』。

 私達の故郷には、そんな伝承があったのですよ」

と、彼女は言っていた。

「はて、なんのことだかな。今人が抱いた幻想の類なのではないか?」

私はそのように言い、それに対して何ら追究するする気にはなれなかった。

 しかし彼女―――ヴェーネスは、続けた。

「―――『はじめには、漆黒の悪魔として。悪魔は、その力を以て大地に死を降り注ぎ、やがて死ぬ。しばしの眠りの後、ラーズグリーズは再び現れる』。

 これって、あなたのことではないんですか?」

 

(何を考えているんだ…!今、私が成すべきことは…、奴を仕留めることだろうが…!)

過去の記憶を蹴り飛ばすように、ハイデリンの胸元目がけて業炎を放つクェーサー。

 確かに、その伝承は今こそ合致するのかもしれない。だが、それを真とするのは違う。

 この世界に神はいない。それ以上に、いらない。

 だからこそ…

「オォォォォォ!!」

死力を尽くしてでも、ヴェーネスを止める…!

 荒廃した地面に、ハイデリンが叩きつけられる。

「これでトドメだ…!私は、喩え弟子であろうと容赦はしない!」

剣を納刀しつつも、溢れんばかりの闇をその手に顕現させる。

 再び、魔法障壁を展開するハイデリン。しかし、エクセリアが使ったのは、単なる闇属性の魔法ではない。

「これは…!」

「そうだ、これは古の時代の闇…すなわち、深淵の魔法…!

 昏き大澱の中へと沈め、ハイデリン…!そして二度と、世界に干渉するんじゃねぇ!」

そう言って、闇が炸裂する。間一髪回避して見せたようだが、影響は大きいだろう。

 

 そんなとき、空を3本の流星が裂いた。

 3本の流星は、世界を浄化し、荒廃した大地を再生させ、新たに命を芽吹かせた。それは、まるで『世界の再創世』のようで…。

 光が止み、世界の再創世が成された時に、エクセリアは地上にいた。彼女は、己の内に留めておいた魂を取り出し、それに器を与える。

「…灰の方…?」

「ああ、ルーソフィア。久しぶり」

久しぶりの知己を見て、エクセリアは涙を流しながら答えた。

 ―――しばしの眠りの後、ラーズグリーズは再び現れる。

 『英雄として』現れる。

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