The Reminiscene of Exellia ver.SS   作:ho9tocraft222

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#3「浄罪の劫火」

 生憎と、私は物語を書き記すのが苦手だ。

 故に、こうして数千年もの間、私は日記に手をつけるのを怠っていた。

 だって仕方ないじゃないか、私は日課をこなすのが大の苦手なのだから。

 …ともあれ、私は少し変わったように思う。

 召喚獣の力を十全に使いこなし、人ならざる者、アルテマを宿す器となった。

 ―――まではよかったものの、食あたりを起こしたかのようにアルテマが弱体化した。

 どうも、私を彩る自我が障害となり、完全な合一は不可能であるらしい。

 私は少し考えた後、彼に『世界の終末の真実』を話した。霊子の魔眼が捉えた、創造生物たちの実験場で起きた出来事を。

「…つまり汝は、我らの世界が滅んだ原因が、終末にあると言うのか?」

「ああ。そして、失ったものはもう、戻らない。だが、これから訪れる終末を払い除けることはできる。そう…自我が生み出す、想いが動かす力ならば」

そう言って、私は彼に同意を求めた。

「自我が生み出す想いの力、か…。我には理解の出来ぬ力だ。

 だがそれは、真であろうな?もし仮に真実でないならば、汝の自我を消してでも、《完全生命魔法レイズ》で同胞を蘇らせるぞ?」

疑うようにして彼が言う。構わない、と言うと、アルテマは考えるようにその手を顎に当てる。

「…汝らの言葉では、これを『呉越同舟』というのだったか?汝らにとって、我の存在は疎まれるべき者だ。だがそれでも、終末を祓うことを願い、我と共にすると?」

「…ああ。そのために、私は何度も足掻いてきた」

私は手を差し伸べる。…疎まれることであると知って尚、私はアルテマを裡に入れた。

 

 …それから暫く経って。色々あったが、私は4人の子を成した。

 長女にして第一王女、セリーヌ。双子で生まれ落ちた空と、第二王女の蛍。そして、火防の役を得た暁…。

 アウェア家の当主は女となる通例故に、空と暁は王権を得ることはできない。

 だが、それを訴えてくる者がいたことを、私は覚えている。

 


 

 彼との最終的な決着は、3年前。

「僕の作る『野生の律』こそが、この世界に相応しいと思うんだけど」

と、彼は言っていた。

 野生の律―――すなわち、法律や主権というものに関わらず、繁殖のみを主眼とした、人の知性を蔑ろにした律だ。彼はそれを、『この世界に在るべき律』と考え、行動していた。

 …いや、同じアウェア家の人間だ、きっとそれは、彼の先祖からの伝来なのだろう。

 彼の先祖は、火の時代が終わるその前に、火防女…私の姉を犯した。孕むことこそなかったものの、そのことを重く見た当代の聖王によって、家を追放されていたはずだ。

 それが、何年も追放だけで終わった結果、こじれたのだろう。

 だからこそ、『イングラム』の者達は他のアウェア家に忌み嫌われる。

「私はそうは思わない。法による治世がなければ、そこにあるのは独裁だ。

 聖王としての王権は、戦乙女が生まれる女にこそあるべきだ。女尊男卑を成すわけではない。これはただ、アウェア家の伝統に従っただけだ」

と私は返した。

 しかし、彼―――アリヒロは言った。現状と野生の律、何が違うと。

「違うよ。何もかも。お前が目指しているのは、女尊男卑の解決じゃない、より凄惨な暴力だ」

私は彼が放った術式を、即座に解体する。

「へぇ。君、そこまで魔力を高めていたんだ」

「何度も言わせるなよ。私は1億2000万年を生きた聖王だ」

術式が解体・分析され、アリヒロに弾き返される。しかし効果はない。当たり前だ、彼は一度『死んだ』ことで、この魔法への抗体を得ている。

 言うなれば、『術式解体』に対する『術式解体』のようなものだ。

 解体後の魔法に、術式解体が適用されているのだ。

「でも…1億2000万年を生きたとしても、君はその理から逃れることはできなかったみたいだね。繁殖を望む、野生の律から…!」

アリヒロの、痛い言葉が耳を劈く。

 分かっている。真に王の座に就くならば、子を成すのをやめたほうがいいことぐらい。

 だが、私だって有限の命を持つ身だ。この宇宙が終われば、それこそ不死であっても死んでしまう。

「…私は、相応の覚悟を以て、繁殖という手を取った。この手を取るには、中々に考えることがあったぞ、主にお前のせいでな」

それに対し、己の結論をぶつけることで、それに対する『回答』とした。

「…アリヒロ・イングラム・ヘルツォーク・アウェア。お前の意見に対する返答を、ここに示す。

 ―――くたばれ、変態」

そう言って、私は文字通り『顕現』する。己の外側に、『コズミック・クェーサー』の外殻を生成する。

「コズミック・クェーサー…。その姿になるなら…封じの術式が強く反応する…!」

嬉々とした態度で、アリヒロは再び術式を組み立てていく。

 ―――野生の律には、生命育む女の命は重要だからだ。そして、それは子を成したエクセリアであればなおのこと。子を産み続ける生体ユニットにしてもよし、と彼は考えてさえいた。しかし、ナニカがおかしい。

 なぜ、フェニックスの力をも顕現させている?

『この炎で焼き尽くす…!』

いつの間にかアリヒロは掴みあげられて、灼熱の真っ只中にいた。

「おいおい、僕を殺したところでなにかを生むわけではないのだぞ?」

『分かっている。だから…、殺すと同時にお前を喰らい尽くす…!』

―――ああ、忘れていた。彼女もまた、祝福無き者…別の世界であれば『アシエン』などと呼ばれうる存在であることを。

 私は、そうしてアリヒロを喰らうことで過去を焼き尽くした。

 

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