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それから特に何事もなく翌日を迎え、目覚ましのアラームより先にごく自然と目覚める。寝惚け眼を擦りつつ寝床から這い出た後にボンプ用の充電器に居るセリカの方を見れば、充電器から動く事なく目を閉じている為まだ寝ているのだろう。
その為、偶にはゆっくりさせてやろうと物音を立ててセリカを起こさないように気をつけつつ適当に身支度を済ませた後。一週間前に借りていたビデオを片手に六分街にあるレンタルビデオ屋『Random Play』に足を運ぶ事を決め、出来る限り音を立てないようにそっと自宅の扉を開けた時だった。
「……ンナ? ンナナン? (……ラグナ? 何処かに行くの?)」
「ん? 嗚呼、起こしちまって悪ぃな。セリカ」
「ンナ…… (大丈夫……)」
微かに響く扉を開ける音で起こしてしまったのか、セリカが俺の足元までやって来ていた。起きたばかりでまだ寝惚けている為か
セリカを置いて自宅から出てすぐに空を見上げれば、雲ひとつない空に日が登っているのが視界に入った。そこから差し込む日差しが寝惚け眼に痛い程に染みるが、日差しが必要以上に入って来ないよう薄目にしたりしながら我慢しつつ、道中で見かけた自販機から缶珈琲を買って一息に飲み干し、起きてから今の今までしぶとく残っていた眠気を無理矢理吹き飛ばす。
「……よし。眠気は吹っ飛んだし、行くとするかね」
飲み干した珈琲のお陰で未だに寝惚けていた頭が
ヤヌス区の一画である六分街には今の俺が本業としている『仕事』の関係で個人的にお世話になっている兄妹が経営しているレンタルビデオ屋の他にも様々な店が点在し、賑わいを見せている。小さな下町なのだが比較的治安が安定しており、新エリー都の中でも住み易い街年間ランキングの上位常連なのも納得だ。
それから特にこれといった問題が起きる事もなく歩を進めていれば、そんなに時間が掛かる事なくRandom Playの店前に辿り着いた。店内に入る前に懐からスマホを取り出して時間を確かめた後に扉の取っ手に手を掛け、扉を開けて店内へと足を踏み入れる。
「おや、ラグナさんじゃないか。いらっしゃい、今日は早いんだね」
「おはようさん、アキラ。借りてたビデオ、返しに来たぜ」
俺がRandom Playの店内に入ったと同時に声を掛けてきたのは、Random Playを経営している兄妹の内の一人であり、あの伝説のプロキシ《パエトーン》の片割れである灰色の髪の青年。名を『アキラ』という。
普段であればRandom Playのカウンターには18号やとある常連からは18先輩とも呼ばれている、白文字で「18」と描かれたオレンジのスカーフを巻いたボンプが立っているのだが、今日は18号と一緒にアキラがカウンターに立っていた。珍しい事もあるもんだなと多少驚きつつも、世間話を交えつつ借りていたビデオの返却手続きをお願いする事に。
それから滞りなく返却の手続きを終えて料金の支払いも済ませた後、次は何のビデオを借りようかと考えつつ、朝早い時間帯なのも相まってか俺以外に客が居ない店内でアキラと談笑を交えていた時の事。Random Playの二階へ続く階段から微かに足音が聞こえてきた。
そういえば店に入ってから今の今までもう一人の店長の姿が見えなかったなと思いつつ、一旦談笑を区切ったアキラと共に其方の方へ視線を向ければ見慣れた青髪が見える。
少しして俺とアキラの前に姿を見せたのはRandom Playのもう一人の店長にしてパエトーンの片割れであり、アキラの妹である『リン』だ。リンはつい先程起きたばかりで眠気が強いのか、Random Playに向かう道中で缶珈琲を飲む前の俺と同じように寝惚け眼を擦っていた。
「ふぁぁ……お兄ちゃんおはよー……」
「おはよう、リン。ラグナさんが来てるよ」
「───えっ?」
欠伸をしながらアキラと挨拶を交わした後、アキラにそう言われたリンは寝惚け眼を擦っていた手を止めてぼやけたままの視界を凝らして正面を見る。そして、寝惚け眼のまま俺と視線が合うや否や一気に眠気が吹き飛んだのか、半開きだった目を見開いた後、傍から見ても分かる程に慌て始めた。
「え、あ……ら、ラグナさんだぁ!? こんな早い時間帯にこっちに来てるなんて珍しっ!?」
「お、おう。すげぇ驚きようだな……いや何、この前借りてたビデオを返しに来たついでと言っちゃなんだが、アキラとリンに会いに来たんだよ。ここの所顔出しに来れてなかったしな」
「あ、そうなんだ……って、アレ? そういえば、今日はいつもラグナさんの近くに居るボンプの姿が見えないけど……ラグナさん、あの子はどうしたの?」
「いつも居るボンプ……嗚呼、セリカの事か。セリカの奴なら、今日は休みも兼ねて自宅で留守番させてるよ。彼奴もここの所無茶ばかりしてたし、いい加減もう休めっつっても何故か知らねぇが頑なに首を縦に振らねぇし……こうなりゃ半ば強引に休ませてやらねぇと駄目だと思ってな」
「なるほど。ラグナさんと何時も一緒に居るボンプの姿が見えなかったのは留守番をお願いしたからなんだね。でも、一人にして大丈夫なのかい? 今頃寂しがってる筈だよ」
「あー……それはまぁ、否定出来ねぇ。アキラの言う通り、彼奴をこのまま一人にさせておくのは心配だな……っと、そうだ。手ぶらで帰るのも二人に悪いよな。ついでにと言っちゃなんだが、オススメの映画はあるか?」
「ふむ、オススメか……それなら、最近入荷したばかりの新作はどうだろう? リン、幾つか見繕ってくれるかい?」
「新作だね、まっかせて! あっ、そう言えばラグナさんってどういうジャンルを好んで観るんだろ? この前ラグナさんが借りてたのはボンプも楽しめるコメディ映画だったけど……今度、それとなく聞いてみようかな」
リンを交えた三人でそんな事を話していれば、Random Playの出入口を隔てる扉が大きな音を立てながら勢い良く開かれる。こういう時は大抵
そんなに勢い良くやったら壊れるんじゃないかと内心ヒヤヒヤする程の大きな音と共に開いた扉の先に居たのは、ウサギのように黒のリボンで束ねた桃色のツーサイドアップの髪型と正直に言って目のやり場に困る服装の女性。便利屋『邪兎屋』の社長を務める『ニコ・デマラ』だ。
「いらっしゃい、ニコ。次からは優しく開けてくれると嬉しいかな……」
「あっ、ニコ! 来てくれたんだね!」
勢い良く開けられた扉を横目に苦笑いを浮かべるアキラと元気よくニコを呼んだリンの両名と顔を合わせ、声の代わりに力無く右手を上げて挨拶の代わりにするニコ。此処に来るまで全力疾走でもしていたのか、肩で大きく息をして乱れた息を整えている最中だった。
彼女との出会いは邪兎屋の従業員である知能機械人と呼称される機械生命体の『ビリー・キッド』と背中にバッテリーのような物を背負った銀髪の少女『アンビー・デマラ』の二人を仕事で入ったホロウ内で偶然助けた後、二人が連れていた『イアス』と呼ばれるボンプと共にRandom Playに戻って来た時、Random Playの店内でアキラと二人で帰りを待っていた彼女と邂逅したのが初めての出会いになる。
ニコと出会った当初、彼女の髪型が前世の記憶に残っていたとある人物と酷似していた為、彼女を見た俺は思わず『……ウサギ?』と小声ながらも口に出してしまっていた。耳が良いのかそれが聞こえたのか、ニコは『ねぇ、そこのアンタ。さっき私を見てウサギって言ってたわよね? それってもしかしなくても私の事?』と俺に聞いてきた為、慌てて誤魔化すように何度か咳払いをしてから『いや、何でもねぇ。さっきのは聞かなかった事にしてくれや』とだけ告げて有耶無耶にしたのを覚えている。
その後は軽く自己紹介をし、お互いにお互いの事を何も知らないから、とアキラとリンを交えて質問攻めにあった。それだけならまだ良かったのだが、アンビーが首を傾げつつ俺をまじまじと見た後に
アンビーが呟いた死神という単語に反応を示した事に気づいたアキラとリンの援護を受けたアンビーから矢継ぎ早に繰り出される質問をのらりくらりと躱してはいたものの、このままだと埒が明かねぇと思った時にはニコが強引に質問タイムを打ち切ってくれたお陰で何とか誤魔化せた為、ホッとしたのも事実。
然し、何時までも俺の正体について誤魔化し通せるとは思っていない。時が来たら嫌でも話さなきゃならない事も理解していた。その切っ掛けになるであろう、今となっては此処新エリー都では既に都市伝説のようになっている
(アンビーの奴が本当にかつての俺……『死神』を知っているかどうかは知らねぇ。あの時は有耶無耶になっちまったが、後でアンビーの奴に『死神』について知っているかどうかを聞いてみるか……いや、此処は無理に聞かずに有耶無耶にしたままの方が良いか。聞いたら聞いたで面倒な事になるかもしれねぇし)
「───ねぇ、ちょっとラグナ? 聞いてるの?」
(アンビーは兎も角、かつての俺……『死神』を知る奴はもう居ない筈だが、知っている奴が居るとすれば一人だけ心当たりがある。旧都陥落の切っ掛けになった零号ホロウが暴走する前の旧都で邂逅した、手練れの暗器使い。彼奴、名前はなんつったっけか……? かなり前の事なのもあってか殆ど忘れちまってるが、多分サヤやノエルと同じ金髪の女だった筈だ。彼奴なら『死神』と呼ばれていた頃の俺を知っててもおかしくねぇ。まぁ、彼奴が今でも俺を覚えてたらの話にはなるが……)
「───ラグナさん?」
(……そういや、あれ以来彼奴の姿を見かけてねぇな。まぁ、彼奴と初めて出会った時から薄々思ってたが、そう簡単に命を落とす奴には見えなかったし、多分どっかで生きてるとは思うから大丈夫だと思うが……彼奴、今は何してるんだろうな。もし
「───ラグナさんっ!」
アキラの隣でニコを見つつ、彼女と出会った当初の出来事といずれ話さねばならない己自身の事、それに付随する形で思い出した、かつての己自身の事を知っているであろう人物の事を考えていれば、思考の外から声を掛けられる。
アレコレ考えていたせいでごちゃごちゃしてきた思考を他所に声のする方へ顔を向ければ、心配そうに此方を見ているリンが視界に入る。リンの傍らにはリンと同じように心配そうな表情を浮かべているニコとアキラも居た。
どうやら俺がアレコレ考え事をしている内に、アキラとリンとニコの三人は一通り話を終えていたようだ。話が一段落した後で途中から何か考え事をしていたのか、何も言わずに何かに集中していた俺に気づき、それぞれ声を掛けてきたと思われる。
ニコと初めて出会った頃の出来事を皮切りに、昔の事柄を次々と思い出していたせいでごちゃごちゃしてきた思考を強引に打ち切り、完全に明後日の方向へ向いていた意識を無理矢理引き戻すように咳払いをしてから三人の方へ向き直る。
「ラグナさん、大丈夫かい?」
「あ、嗚呼。少しばかり考え事をだな……いや、三人の様子からして少しどころじゃねぇか。兎も角、三人には心配かけちまって悪かった。もう大丈夫だからよ」
「何だ、考え事をしてただけだったんだ……良かったぁ」
「全く……私が来てからずっと黙ってたから何事かと思ったわ。心配かけないでよね」
「……すまねぇな」
俺がただ単に考え事をしていただけだと知ったリンはホッと一息ついた後に安堵の表情を浮かべ、ニコは半ば呆れたような表情を浮かべていた。それに対して直ぐさま謝り、一先ずは事なきを得たが、それはそれとしてとリンは次の話題を持ち出してきた。
「あっ、そうだラグナさん。この後って時間あるかな?」
「時間? んまぁ、今日は特に予定とか入れてねぇからセリカの奴と一緒にゆっくりするつもりではいたが……その様子だと、何か頼みたい事でもあんのか?」
「うん、そうだよ! 此処だとちょっと大きな声で話せないんだけど、ラグナさんに手伝って欲しい事があるの。ニコを呼んだのもそれ絡みなんだ」
「……あん? 此処だと大きな声で話せない事……嗚呼、なるほどな。そういう事か」
リンの言う『手伝って欲しい事』。それに加えて大きな声で話せない事となれば、普段はRandom Playの店長として働く二人の裏の顔とも言えるプロキシ業に関わる事だろう。プロキシもホロウレイダーと同じ裏の仕事というのもあり、大きな声で話せないというのも納得である。
あの日、偶然彼等に出会い、二人の目的を聞いた上で協力関係を結んでいるだけでなく、更に言えば仕事の関係で個人的にも大いに世話になっている凄腕のプロキシであるパエトーンの依頼を断る理由が俺には無い為、二つ返事で了承した。
そうと決まれば後の話は別の部屋でした方が良いだろうと、そろそろ他のお客が来る頃合なのもあり、接客を18号に任せる事にしたアキラと俺を含めた四人はRandom Playのカウンターのすぐ側に設けられている『STAFF ONLY』の扉のドア番をしているボンプと目線を合わせ、間もなくしてボンプがドアを開ける。
ドア番をしているのは白文字で「06」と書かれたオレンジのスカーフを巻いているボンプなのだが、ドア番という割には何処か抜けている。その証拠にと言ってはなんだが、ドアを開けたら閉じる事なく開きっぱなしにしている事が多々あるからだ。
その為、アキラとリンの二人がプロキシ業を行う際の裏部屋へ全員が足を踏み入れ、アキラがドア番のボンプの代わりに扉を閉めた後、改めてリンの言う『手伝って欲しい事』の詳細を聞く事にした。
◇◇◇
───旧都付近の工事エリア「カンバス通り」と新エリー都を繋ぐ地下鉄を完全に飲み込む形で発生した共生ホロウであるデッドエンドホロウ。そこの主だった要警戒エーテリアス《デッドエンドブッチャー》が、デッドエンドホロウに踏み込んだエージェント達の手で討伐されてから暫くの時間が過ぎた頃の事。
ホロウの主であるデッドエンドブッチャーを喪った事によるエーテル活性の低下によって半径数十メートル規模の縮小が確認されたデッドエンドホロウは、規模こそ縮小したものの完全には消滅しておらず、更にそこから分裂する形で生まれた規模の小さい共生ホロウが幾つかあった。
デッドエンドホロウから分裂する形で生まれた共生ホロウの内の殆どは何者かの手によってエーテルの活動を沈静化させられ、既に消滅していたが、その内の一つはまだ誰の手も入って無かったのか、はたまた他と比べて比較的小さかったが為に勝手に消滅するだろうと見なされたのかは定かではないが、未だ健在だったのだ。
健在とはいえ、いずれは消滅するであろう小さな共生ホロウ内部にて、白文字で「01」と書かれたオレンジのスカーフを巻いているボンプと何処かの学生服を模した衣装を着たボンプの姿があった。更にそのボンプ達の後を着いて行く人らしき影が五つ。五人の人影の内、四人は邪兎屋のメンバーであるニコ、アンビー、ビリー、猫又。
後一人は白文字で「01」と書かれたオレンジのスカーフを巻いたボンプ『イアス』と感覚同期をしているリンとそのサポートをしているアキラの二人と協力関係を結んでいる、何処かの学生服を模した衣装を着たボンプ『セリカ』を連れた謎多き人物ことラグナ=ザ=ブラッドエッジだ。
彼等はインターノットに貼られた依頼を元にホロウへと潜り込み、その依頼を達成し終えて出口へと向かっていた所だった。然し、その間の道中でもエーテリアスは出没する。進路を塞ぐエーテリアスを倒しつつ、イアスの案内で出口に繋がっているであろうホロウの裂け目があると思われる奥地へとたどり着く。
出口が見つかった事に一息つきたい所だったが、ホロウ内部でホロウ調査協会に所属する人達に見つかると色々厄介な事になる為、一息つくのはホロウの外に出てからにしようという事となり、続々と裂け目へと飛び込んだ。
『皆、今日はありがとう! 無事に依頼は達成出来たし、助かったよ〜』
裂け目を通れば、眼前に広がるのは見慣れた新エリー都の光景。それを見て各々がホッとした後にイアスからリンの労いの言葉が聞こえ、それぞれが返事を返す。その後、特にこれと言った問題も起きずにリンとアキラの二人が待っているRandom Playへと戻ってきた。
先日リンが受けた依頼は無事に終わった為、邪兎屋の面々とは一旦別れる。後に残されたのはパエトーンの二人であるリンとアキラ、ラグナとセリカの三人と一匹。用事も済んだ事だし長居するのも悪いだろうと
「……嗚呼、忘れるとこだった。ビデオを借りようとしていた所だったんだよな。帰る前に気づけて良かったわ。アキラ、リン。時間はまだ大丈夫か?」
ラグナの問いにアキラとリンの二人は肯定の意味を込めた頷きをし、リンが事前に見繕っていた入荷したばかりのビデオから気になった物を幾つか借りた後、二人に礼を告げたラグナは改めて店の外へ出た。
彼を最後に店内にはお客の姿が見られなくなり、時間も良い頃合となった為、今日はもう戸締りをしようかとアキラが出した提案にリンは乗っかり、店の外に出る。
日が沈みかけている空を横目に扉に掛けてある《OPEN》の札を《CLOSE》にひっくり返してから二人で閉店後の作業に取り掛かり、日が完全に沈んだ頃。もう少しで片付けも終わるという所でふと、リンがボソリと呟いた。
「あっ、そう言えば……前々から思ってたんだけど、ラグナさんって一体何者なんだろう? 前にアンビーがラグナさんを見て『死神』って言った時は一瞬だけその単語に反応したように見えたけれど、多分ラグナさん=死神って訳じゃ無さそうだし。それに、『
「それは僕も気になったから、ラグナさんについて
「……あれ、そうなの? え、ちょっと待って? お兄ちゃん、いつの間にラグナさんについて調べてたの!? 私、それについては全く知らなかったんだけど!?」
「え、えーと……いつだったか、リンが先に寝ちゃった日があっただろう? その時に頼んでおいたんだ。それと、これはラグナさん本人から聞いた事なんだけれど、ラグナさんが普段使っている力は『蒼の魔道書』の力を反映した物だと言っていた。それ以上の事は教えてくれなかったけどね」
「私に内緒にFairyに頼んでおいて、それを秘密にしてたのはどうかと思うけど……まぁ、いいや。『蒼の魔道書』、だっけ。それを使う前のラグナさんは勿論強かったし、使った後のラグナさんはより一層強さを増してたなぁ……でも、あの力を使ってる間のラグナさんはちょっとだけ、怖かったけど……」
「……怖かったのは僕も同じだ。デッドエンドブッチャーと一戦を交えた時を皮切りに、イアス越しとはいえ何度かこの目で見たけれど……ラグナさんが持っている力、『蒼の魔道書』は一個人が持つ力にしてはあまりにも強大過ぎる力だ。仮に例えるとするならば、街一つを簡単に消せる程の厄災の一端とでも言うべきだろうか。それこそ……『蒼の魔道書』はあの零号ホロウに匹敵かそれ以上に強大な力かもしれない。まぁ、コレはあくまでも僕の憶測の域を出ないけどね」
零号ホロウ。その単語を聞いた途端、リンの表情は少し強ばる。それはアキラも同様だった。それもその筈、『コードネーム:
アキラの憶測の域を出ないとはいえ、あの零号ホロウに匹敵かそれ以上に強大な力と思われる『蒼の魔道書』をその身に宿す謎多き人物、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ。
基本的な情報と『蒼の魔道書』という強大な力を宿している、という事以外には殆ど情報が無い彼の謎はますます深まるばかり。彼について一瞬だけ不穏な考えも過ぎりはしたが、その考えを忘れるように頭を振ったリンは、あと少しとなった店の片付けをしながら話を続ける。
「あの零号ホロウに匹敵かそれ以上の力を持つ厄災の一端と思われる力、『蒼の魔道書』か……ラグナさんは、あの力を一体何処で身に付けたんだろう? 『蒼の魔道書』についてはFairyも分からないって言ってたんだよね?」
「うん、そうだね。Fairyでさえ分からないと言っていた謎多き力である『蒼の魔道書』。現状、ラグナさんがあの力について詳しく話してくれない以上、『蒼の魔道書』については分からない事だらけだ。ニコ達と比べたらまだ日は浅いとはいえ、付き合いがそれなりに長くなってきた僕達にさえ頑なに話さないって事は……多分、ラグナさん本人も他の人にはあまり話したがらない事なんじゃないかな」
「そうかもしれないね……ラグナさん、今は何も話してくれないけど、ラグナさんの持つ力、『蒼の魔道書』については……いつか私達に話してくれるのかな」
「……確証が無いから多分、としか言えないけれどね。『蒼の魔道書』について無理矢理聞かれるのはラグナさんも嫌がるだろうし、今は無理に聞こうとせずにその日が来るのを待とうか、リン。大丈夫、その日が来ればラグナさんはきっと話してくれるよ」
「……うん、そうだね。お兄ちゃん」
依然として謎の多い人物ことラグナ=ザ=ブラッドエッジについての話をしながら店の片付けを終えた二人は一旦話を切り上げ、休む事にした。だが、二人はまだ知らない。
あの零号ホロウかそれ以上に強大な力と思われる『蒼の魔道書』を宿す謎多き人物ことラグナ=ザ=ブラッドエッジが、自身の持つ力ついて話す日が来るのは、意外とすぐそこに迫っている事に。
ようやく、完成した……難産だった(´・ω・`)
次はヒロイン回、になるかも? その後は一話か二話くらい戦闘回を挟んでから本編に絡めれば良いかな……
それはそれとして、今回もお読み下さりありがとうございました。また次回(_´꒳`)_