鬼滅の刃・暁の剣士   作:八葉と黒神の剣聖

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心が感じるままに

 鎌倉から2日ほどかけて移動し、無事に故郷である刀鍛冶の里に到着した。

 この場所は、俺たちにとって必要不可欠な日輪刀を打っている場所である。

 その為、この場所を知っている人物は里の住人と一部の隠しかいない。

 更にこの地に来るには御館様の許可も必要なため、来る機会は殆どないだろう。

 里出身の俺と母様も滅多に来れないし。

 

 というわけで、一種の秘境となっている故郷に帰って来た俺は、早速実家に顔を出したけど、家の中には誰もいない。

 誰かと飲んでいるのかと思って周りを探ろうとすると、実家の裏にある鍛冶場から父さんの気配を感じ取り、足を運ぶと、鍛冶場では黙々と刀を打っている父親の姿があった。

 

 

「ただいま…父さん」

 

「ん…おぅ倅。生きてるみたいで何よりだ。まぁ座れ。」

 

「うん。おかげさまで。これ鎌倉土産」

 

 

 一本のお酒を父さんに見せると、父さんは作業を一旦止めてお酒を手に取って吟味する。

 さぁどういう反応するか期待して待っていると、父さんは小さく息を吐く。

 この反応は嬉しそうな感じだな。

 

 

「良い酒だな。たまにはアイツと飲むか。調子はどうだ?」

 

「カナエとしのぶのお陰で元気。近頃はしのぶの鍛錬も見てるし、凍った肺も9割ぐらいは戻ってるらしいよ。この調子だと一年位で全開じゃないかなぁ」

 

「流石嬢ちゃん達だな。お前の血もありそうだが。よし…嬢ちゃんの刀も見たいし顔出すかね」

 

「了解。じゃあ烏に…って今は屋敷だな。遥の件を伝えているんだった」

 

「ん…?誰だそいつは」

 

「おっと実はな……」

 

 

 鎌倉での出来事を話すと、流石の父さんも驚いていた。

 特に遥が2度も鬼に襲われた件に関しては『そんなこともあるのかねぇ』と内心疑問に感じてそうだが、息子が言った事あり、最後は信じてくれた。

 

 

「で…その痕跡は上弦の弐だったか?」

 

「違う。そもそもアイツが痕跡を残すような真似はしない。別の鬼だな」

 

「そう…か」

 

(父さん……)

 

 

 大きな溜息を吐く父さん。

 父さんの為にも早くあの糞野郎を地獄に送らないと。

 対策もカナエと考えて纏まって来たし、後は行冥さんや他の柱とも共有しないといけない。

 いつ遭遇するか分からないから。

 

 

「あまり根を詰めるな。お前は昔から一度決めると止まらん。母さんがやられた後だってそうだ。一日中型稽をぶっ倒れるまで続けて。起きたと思ったらまたぶっ倒れるまで続けて。心配するこっちの身にもなれ」

 

「でもそのお陰で無駄なく型は放てるし、それぞれの派生技も生み出せたし。何より…透けて見える(・・・・・・)のはいい事だと思うよ。先祖様みたいに」

 

「あー…最初に暁の呼吸を生み出した人か。当時の五大流派と日と…何とかの呼吸を元にしてるんだっけか?」

 

「そうそう。詳しい事までは残っていないんだ。輝哉に調べてもらったけどさっぱり。分かったのはご先祖様が滅茶苦茶強い剣士で、それと―――と。烏が戻って来たな」

 

 

 手紙を携えた烏が戻って来た。

 『お疲れ様』と声を労わってから手紙を確認する。

 内容はカナエが帰って来た事と遥の事。

 遥には必要最低限は教えてくれるらしく一安心。

 他にも色々書かれていたが、手紙の最後に恐ろしい文面があった。

 

 

『しのぶの刀が刃こぼれしたらしいわ。そんな鈍よく渡せたわね。とアイツに言っておきなさい。あと一発殴っておきなさい』

 

「こわー……」

 

「どした?」

 

「あー…これ」

 

 

 隠すわけにもいかないので手紙を渡すと、手紙を読んだ父さんから凄まじい怒りの炎が解き放たれる。

 この光景を里の住人は見たらとても慌てるのだが、俺にとっては日常茶飯事である。

 俺の刀が折れた時なんて一晩中喧嘩してたし。

 

 

「時雨。今晩にでも行くぞ。あの女に一発ぶちかます」

 

「はいはい。その前に俺の刀。仕上がってるって聞いたけど?」

 

「っとそうだった。ほらよ」

 

 

 壁に立てかけてあった長刀を渡してくる。 

 受け取った俺は早速抜くと、刀身が綺麗な橙色に染まり上がった。

 それを見ていた父さんは、満足そうな顔を浮かべているのがお面越しに伝わってくる。

 それだけ自信作って事なんだろうな。

 

 

「よし。じゃあ俺は準備してくる。お前は里の皆に挨拶してきな」

 

「了解」

 

 

 父さんと別れて向かったのは里長で鉄珍爺様の屋敷。

 会えるかどうか分からないと思っていたら運よく休憩中で、鎌倉土産を渡してから前に座り、世間話をしていると、お決まりの事を聞いてきた。

 

 

「そろそろ光鉄も爺さんかの?」

 

「んんっ!?何をいきなり!?」

 

「ん?孫はまだなのか?同居人の花柱と良い感じなんじゃろ?」

 

「普通です爺様。特に何も……何も……」

 

 

 あ、ダメだ。

 何もない事なんてない。

 むしろ思い当たることが多すぎる。

 里に来る前にカナエは頬に口づけしたし、藤の家では隣で寝て抱きしめて来るし。

 買い出しに行ったらくっついて離れないし……。

 と言うかその前に、誰から聞いてんた爺様。

 

 

「ちなみに爺様。誰から…?」

 

「桜から手紙が毎月届いての。お前の事でよくカナエちゃんが相談してくると。近頃は特に多いそうじゃ」

 

「母様かよ!」

 

「中々素直にならんのなら強硬手段もアリとか言ってたかのぅ」

 

「何言ってるんだ母様は!」

 

「自分の経験談。そういうところは光鉄似じゃから心配してるんじゃよ。ちゃんとカナエちゃんを見ているか?」

 

「似てるかな俺……それと爺様。カナエはとても眩しくて中々見れない」

 

 

 視線を逸らしながら爺様に言うと、爺様は優しい笑顔を浮かべる。

 厳しいことが多い爺様だけど、たまに優しい顔を浮かべる時も。

 そう言う時は大体、安心しているか嬉しい時かのどちらかだ。

 

 

「時雨なら大丈夫。心が感じて思ったままにカナエちゃんと向き合いなさい。子供の頃のようにの」

 

「…分かった。頑張るよ爺様」

 

「うん。ではそろそろ戻りなさい。今度はカナエちゃんと一緒にの。いい報告待っておる」

 

「うん。また来るよ爺様」

 

 

 床に手を置いて頭を深く下げてから部屋を退出して屋敷から去る。

 それから里の皆に挨拶をしてから実家に帰ると、準備が終わった父さんが待っていた。

 

 

「うーし帰るぞ倅。ちゃんと守ってくれよ」

 

「分かってる。父さんも離れるなよ」

 

 

 念を押してから屋敷に向かい始めるが、道中何もないわけもなく、鬼が出るわ出るわで大変だった。

 加えて任務もあったし、救援もあったしで、行きよりも帰りの方が時間がかかってしまう。 

 結局屋敷に付いたのは刀鍛冶の里を発って5日後の昼過ぎだった。

 

 

「た、ただいま……」

 

 

 ゆっくりと戸を開けると、中からカナエが駆け足で出迎えてくれたが、俺の顔を見るととても心配そうな顔を浮かべた。

 どうやら事情を知らないようで、手短に伝える。

 

 

「だから帰ってくるのが遅かったのね。ご飯食べた?」

 

「残念ながら昨日の昼から食べてません。父さんは食べてたけど」

 

「なら軽く作ってくるから部屋で待ってて」

 

「いいよカナエ。自分でやるし、君だって疲れてるだろ」

 

「私が作りたいの。だから待ってて」

 

 

 俺の部屋の方を指刺すカナエ。

 そういうことならお言葉に甘えることにしよう。

 

 

「了解。じゃあ待ってる。父さんは母様の所に行ってのなよ」

 

「おぅ。後でな」

 

 

 父さんと別れて自室に戻ると、強烈な睡魔と疲労感が襲ってくる。

 そういえば里からほぼ寝てないし休んでいないような…。

 ま、まぁ仕事だし、5日ぐらい寝ずに行動したところで倒れるような軟な体ではない…はず。

 

 

「まだ…寝ては駄目だ。遥にも顔を出さないといけないし、母様にも……」

 

 

 ゆっくりと腰を下ろして深呼吸しながら体を伸ばしていると、カナエがおにぎり三つとお味噌汁を持ってくる。

 それらを受け取ると、カナエは隣に座って里での事を聞いてきたので、食べながら話す事に。

 

 

「鉄珍様が…流石に良く分ってるわね」

 

「カナエとちゃんと向き合う事って」

 

「成程…で?どう私と向き合うのかしら?」

 

 

 顔を覗き込んでくるカナエ。

 少しの間視線を交えた後、何も言わずに朝食を食べ続けるが、カナエはその間、視線を全く逸らすことは無かった

 

 

「ご馳走様でした」

 

「あら完食ね。疲労で食欲が無いか心配だったけど良かったわ。それでさっきの質問だけど、どう私と向き合うの?」

 

「……その前にさ」

 

 

 食べ終えた食器をお盆に乗せて邪魔にならない場所に置く。

 どう向き合うか答える前に、カナエが俺の事をどう思っているのか知りたい。

 けど、それを正面から聞いてもいいのろうか?

 彼女の行動から大体分かるけど、言葉にしてくれないと分からないし。

 よし…勇気を出して聞いてみよう。

 

 

「カナエは俺の事、どう思ってる?」

 

「………え?」

 

 

 面を喰らった様な顔を浮かべるカナエ。 

 普段ニコニコしている顔しか見てないから、今みたいな顔は物凄く珍しい。

 それも一瞬の事で、カナエは少し困ったような顔を浮かべたと思えば真剣な顔になったり、表情が何度も変わる。

 きっとどういう意図で聞いてきたのか考えているのだろう。

 少し待っていると考えが纏まったのか、数回頷いて俺と目を合わせて真剣な顔で言った。

 

 

「それは秘密です。そういうことは殿方から言うべきだと思います。貴方は私の事をどう思っていますか?」

 

「……(そ、そう来たか……)」

 

 

 カナエらしい反撃に心の中で狼狽えてしまう。

 やってしまった、俺とした事が逆に自分の首を絞める事になってしまう。

 確かにこういうことは男の方から言うべきだろうが……。

 

 

(カナエの事をどう思っているか…か)

 

 

 彼女と一緒にいるととても楽しい。

 一緒に料理をして買い出しに行って。

 何より…カナエの笑顔を見ていると、心臓の鼓動が速くなって体が熱くなる。

 大胆な行動を取ってくる時も。

 そして俺は、そんな彼女をずっと守り続けたいと思ってしまう。

 

 

(何でそう思ってしまうんだろう?)

 

 

 考えても答えが出てこない。

 なら……今思った事をそのまま伝えよう。

 言わないよりずっといい。

 

 

「俺は…」

 

 

 今思ったことを伝えようとした時に、襖が開いて母様が入ってくる。

 物凄く間が悪いと少し落ち込んでしまい、母様も俺とカナエの様子を見て『あ、やっちゃった』と小さな声で言っていた。

 

 

「えっと…話あったけど…後の方がいい?」

 

「大丈夫だよ母さん(・・・)。カナエ」

 

 

 カナエに右手の小指を出す。

 今伝える方がいいかもしれないけど、もう少し考えを纏めてこの気持ちの正体を知ってからの方がいいとも感じた。

 ので、ここは一つ約束にする。

 

 

「もう少し纏まったら必ず伝える。だからその時まで待ってほしい。約束」

 

「……分かったわ。必ずよ。はい指切り」

 

 

 指切りを交わしてから、母さんの話を聞くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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