鬼滅の刃・暁の剣士   作:八葉と黒神の剣聖

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稽古と手合わせ

 今日は朝から道場にて遥の稽古を行っている。

 最終選別まであと半年に迫っているが、稽古は物凄く順調である。

 道場である程度刀の使い方を学んでいた影響か、僅か一月で水の呼吸の型を会得し、呼吸の使い方もある程度は良くなってきた。

 というわけなので、本来なら最終選別後に教えようと思っていた全集中・常中を教えるの事に。

 簡単に説明すると、常に全集中の呼吸であること。 

 これがまぁかなーりしんどいもので、カナエとしのぶも物凄く苦労していた。

 しかし、これが出来ると出来ないのでは大きく変わってくるので、完全習得まではいかずとも、ある程度はこなせるようになっていて欲しい。

 なので、現在は基礎的な体力・筋力強化訓練を行いつつ、合間で打ち込み稽古を行っていた。

 

 

「そうそういい調子。そのまま続けて」

 

「っ―――」

 

 

 息を吐く間もなく木刀を打ち込んでくる遥。

 その木刀を的確に防ぎつつ、助言を行って太刀筋を調整させる。

 荒い所は削っていき、正確な太刀筋は褒めて伸ばす。

 子供の頃に母さんに教わったやり方で。

 

 

「うっ…あ…やばい」

 

「あ……」

 

 

 糸が切れたように倒れる遥。

 やや過呼吸気味で苦しそうに胸を押さえていたので、優しく背中をさすりながら声を掛ける。

 

 

「大丈夫か遥?」

 

「だ、だだ大丈夫ですよ。よ、弱音は絶対に吐きませんし、兄様の継子になる身です。こ、この程度…うぅ…」

 

「確かにそう言ったけど、きつかったら言ったらいいよ。俺も母さんもそこまで鬼じゃないし…」

 

「は、柱であられる兄様について行きたいので……」

 

「そ、そう……」

 

 

 そういう事なら止めはしないけど…というか昔も似たような光景を見た気がする。

 カナエとしのぶも似たようなことを言ってたな。

 

 あぁそれと、今遥が言った通り、先日の柱合会議で正式に柱に任命されました。

 任命されたといってもやることは普段と変わらない。

 担当区域の見回りや大規模作戦の指揮に蝶屋敷の運営。

 前者に関しては鬼殺隊に入隊して間もない頃から母さんの担当区域を見回りしていたし、蝶屋敷の運営に関してはカナエが行っていて軽く手伝う程度(献血や薬の材料の買い出し)。

 なので、普段の生活ががらりと変わったりすることは無い。

 

 

「そういえば兄様。先日音柱様とどこかに行かれてましたね」

 

「あぁ。天元とは同い年でな。柱の就任祝いで飯行ってたんだよ。久しぶりに行ったから思いのほか盛り上がってな。三人いる奥さんの話しとか、遥の話しもしたな(というか復活早いな)」

 

 

 音柱・宇随天元。

 元忍びの家系の出身という鬼殺隊の中で珍しい人物。

 年が一緒ということもあり、たまに飯行ったり一緒に鍛錬したりなどとても仲がいい関係である。

 彼の奥さんとも交友があって、時々ご馳走になったりこちらがご馳走したりと、結構交友があったりする。

 

 

「ささ。体が動くなら鍛錬の再開だ。分からないことがあれば今のうちに聞いて」

 

「えっと…兄様も全集中・常中は会得に苦労しましたか?」

 

「いや?気付けば出来るようになっていたぞ。暁の呼吸の各型は正しい呼吸をしないといけないからな。ぶっ倒れるまで続けていたら出来るようになっていた。そういうのはカナエに聞いた方がいいぞ。あの時は色々あったからなぁ」

 

 

 カナエ達と一緒に暮らすことになった切っ掛けの任務。

 彼女達とは最終選別で会って、その後も任務で一緒になったりとそれなりに交友があったのだが、ある任務でしのぶは傷だらけになって、カナエも左腕を大きく斬られるということがあった。

 鬼は後から駆け付けた俺が倒したけど、二人の傷は酷くて一時期家で治療していた時がある。

 当時から母さんの体調がよかったら隊士の治療していたし、ある程度なら俺も診察していたしね。

 

 

「成程…そこから一緒にお住まいになられているのですね」

 

「うん。母さんがえらく気に入ったのと…この話は本人に聞いたらいいぞ」

 

 

 道場の入り口に視線を向けると、戸が開いてカナエが入ってくる。

 羽織を着ていない所を見ると診察でもしていたのだろうか。

 

 

「あら…朝から鍛錬?」

 

「今は休憩中。ちょっと昔話」

 

「へぇ…いつの話し?」

 

「カナエ達が家に住む事になった時」

 

「あの時の…懐かしいわね」

 

 

 とても懐かしそうに微笑むカナエ。

 カナエにとってもいい思い出になっているのかな?

 だとすれば嬉しいけど。

 

 

「あの時は助かったわ。本当に死ぬかと思ったもの」

 

「別に。俺も感謝してるよ。二人が来てくれたから母さんも元気になったし」

 

「助けてもらったし当たり前よ。私達としても帰る場所があった方が嬉しいから。それに…あの時の貴方の言葉が印象に残ってるもの」

 

「そんなに印象残ってるのか……」

 

 

 今思うととても恥ずかしい事を言った様な気がする。

 母さんの後押しもあったとはいえ、女性によくもまぁ言えたものだ。

 

 

「兄様はなんと仰ったのですか?」

 

「聞きたい?いいわよ。耳を貸して頂戴」

 

 

 カナエはニッコニコで遥にそっと囁くと、聞いた遥の顔がとても輝いた。

 同じ女性だから、何か通じる事があるのかも知れない。

 しかし…あれからそれなりに経ったな。

 このまま変わらない生活が続けばいいけど…難しいか。

 俺もいつ死ぬか分からないし。

 

 

「そうだ時雨。折角だし私と手合わせしない?」

 

「良いけど…どうした?」

 

「私の花の呼吸は水の呼吸の派生。貴方の暁の呼吸にも水の呼吸の技が入ってるから。遥にもいい勉強になると思って」

 

「時間あるのか?」

 

「大丈夫よ。アオイの治療も済んだし」

 

「アオイ…?」

 

 

 聞き覚えの無い名が聞こえて来たので聞くと、昨晩の任務で保護した子らしく、家で面倒を見る事になったらしい。

 既に母さんに話は通しているらしく、時間の間で見てもらうとか。

 心配な部分もあるらしいから、時間をかけてゆっくり育てるらしい。

 

 

「後で会ってあげて」

 

「分かった。じゃあやろうか。木刀を渡してあげて遥」

 

「はい姉様。どうぞ」

 

「ありがとう。負けた方が今日のお昼全員分ね」

 

「いいよ。いつでもかかってきな」

 

 

 長刀型の木刀を両手で構えると、カナエは一呼吸置いてから一気に間合いを詰めて来た。

 

 

「花の呼吸伍ノ型・徒の芍薬」

 

 

 九つの斬撃が急所を的確に狙ってくる。

 その斬撃を正面から防ぎつつ後ろに下がり、突き技の体勢に入る。

 

 

「暁の呼吸弐ノ型・極光三段突き」

 

 

 一呼吸の間に三つの突きを同じ位置に打ち込む技。

 本来突き技では鬼の頸は取れないが、この技は鬼の頸を弾き飛ばす防御不可の技で、鬼を討伐することが出来る。

 この技をカナエは当たる瞬間に高く飛んで回避し、俺の背後に移動する。

 

 

「当たらなければ問題ないわ」

 

「やるね。じゃあちょっと本気出そうかな」

 

 

 今度はこちらから間合いを詰め怒涛の連撃を放つと、カナエはやや厳しそうな顔をしながら防ぎ、合間で反撃してくるが、押しているのは俺の方だ。

 

 

「どうしたカナエ?このままだとお昼がカナエの奢りだぞ」

 

「まだまだっ!」

 

「―――っと!」

 

 

 斬撃を防ぎながら一歩ずつ近づいて来る。

 花の呼吸の弐ノ型・御影梅。

 攻撃の受け流しにも使える便利な技だが、こういう使い方もあるのか。

 このままだとカナエの間合い入られる。

 間合いに入られると長刀の俺はやや不利になりかねん。

 

 

「間合いに入れない。シッ―――」

 

「ここよ!」

 

 

 横薙ぎの一撃をカナエは再び飛んで回避し、そのまま体を回転させて攻撃してくる。

 

 

「花の呼吸陸ノ型・渦桃」

 

 

 回転力を生かした攻撃で俺の手首を狙ってくるが、長刀を短く持って柄で弾き落す。

 カナエは取ったと思っていたのだろう。

 この防ぎ方を見たカナエはとても驚いていた。

 

 

(柄で防がれた!?)

 

「隙あり」

 

 

 それから背後に回って脇原に木刀を当てると、カナエはとても悔しそうな顔を浮かべながら俺の方を向く。

 

 

「また負けたわ。たまには負けてくれてもいいじゃない」

 

「俺に本気を出させたら負けって事にしてやるぞ」

 

「どうしたら本気出してくれる?」

 

「そうだな……」

 

 

 本気を出していいなら出したい所。

 カナエの為にもなるのだが、耀哉に止められているので本気を出せない。

 本当に命の危機が来ない限り、本気を出さない様に言われている。

 

 

「死にそうになったらか。あるいは……」

 

 

 カナエの顔を見て、それから遥の顔を見てからしのぶ達、今一緒に暮らしている人や幼馴染の顔を思い浮かべる。

 例外があるとすれば…この辺りか。

 特にカナエの身に何かあれば……。

 

 

(…あれ?何で今…)

 

「どうかした時雨?」

 

 

 心配そうに顔を覗いてくるカナエ。

 その彼女の顔を見て、心にちくっと何かが刺さったような感覚がした。

 カナエの心配そうな顔より、もっと笑った顔が見たい。

 

 

「大丈夫。大丈夫だからそんな心配そうな顔をしないで。お昼は俺が出すから皆で美味しいご飯を食べに行こう」

 

「ならいいけど…じゃあみんなに声を掛けて来るわね」

 

 

 ニコッと優しい笑顔を浮かべてから道場を出るカナエ。

 うん、やっぱりカナエは笑っていないと。

 元気が出るし、疲れとか一気に吹き飛ぶ。

 

 

「俺達も準備して行こう遥」

 

「……はい。行きましょう兄様」

 

「間があったけどどうした?」

 

「いえいえ。兄様は姉様とお話ししているととても楽しそうで。良い顔ですよ」

 

「そうかな」

 

「はい。お館様や煉獄様とお話なさっている時と同じぐらい良い顔していらっしゃいます」

 

「そうか」

 

 

 出会ってまだ日が浅い遥が言うなら間違いないのだろう。

 少しずつだけど、昔の様に接することが出来るようになっているのかな。

 

 

「二人共ー。早く来て頂戴ー」

 

「分かったカナエ。今行く」

 

「今行きまーす」

 

 

 待っているカナエ達の所に駆け足で向かうのであった。

 

 

 

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