Black cat 黒猫 Re:   作:三毛子猫

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本作は、自分への挑戦として始めたリレー形式の小説です。
前半はAIによって生成され、後半は私自身が続きを執筆しています。


第五章-7《見られたくなかっただけ》&第五章-8《本心(ほんしん)》

本作は二次創作作品であり、キャラクター設定の一部は以下の作品を参考にしています:

『漫画:矢吹健太朗「BLACK CAT」』、

『ゲーム:Quantic Dream「Detroit: Become Human」』など。

主要な事件の構成は『ネットドラマ「CODE:浮士德遊戲」』に着想を得ています。

 

第五章-7《見られたくなかっただけ》(AI)

 

医務室は白く清潔な光に包まれ、薬の匂いが静かに漂っていた。余計な挨拶も、音もない。

 

トレーは診察台の端に座り、片手で上着を抱え、もう片方の手で額を支えていた。

うつむいたまま、顔は見えない。

 

零は消腫用の軟膏と包帯を準備していた。手際は良いが、どこか迷いが見えた。

 

「始めますね。少し上半身を起こしていただけますか……」

 

トレーは何も言わず、言われた通りにシャツを開いた。

 

その胸元には、鎖骨から肋骨にかけて大きな痣が広がっていた。

赤紫色の痕がまるでインクのように滲み、いくつかの古傷も混ざっていた。

 

零はその傷を見つめ、目を逸らすことができなかった。

 

「……本当に、気にならないんですか?」

 

ようやく、静かに問いかけた。

 

トレーは目を細め、だるそうに返した。

 

「痣のこと?痛いのは痛いけど、我慢できないほどじゃない。」

 

「そうじゃなくて……その、傷のことです。

いつも隠して、誰にも見せなくて、何も言わない。治療もしない。……本当に、それでいいんですか?」

 

トレーはしばらく黙っていた。そして、ぽつりとつぶやいた。

 

「……見られたくなかっただけ。」

 

心の中では、彼はずっと分かっていた。

自分は誰かに心配されるのが嫌いだった。

気遣われることも、慰められることも、ただ見られるだけでも、言いようのない苛立ちを感じた。

 

それは「温かさ」なんかじゃない。

「圧」だった。

近づかれることが、刺すように感じられ、心を乱す原因になる。

 

ずっと、自分はそれをうまく隠してきたつもりだった。

制服の下に、仕事と責任の裏に、きっちりと閉じ込めてきた。

 

けれど、零の前では、それがうまく隠せなかった。

 

彼女は無理に問い詰めたりしない。

けれど、なぜかいつも、自分の無防備な場所に立っている。

 

「どうしてですか?」零が問いかけた。

 

トレーは天井を見上げながら、独り言のように、あるいは逃げ道を探すように言った。

 

「……見られたら、説明しなきゃいけなくなる。

でも俺は、自分自身ですら説明できない。」

 

一瞬、空気が止まる。

 

零はそれ以上は何も言わなかった。

ただ静かに軟膏の蓋を開け、指先で少量を取り、トレーの肋骨の下に丁寧に塗りはじめた。

 

トレーは何か皮肉でも言おうかと思った。

「仮生人って、こういうこと気にするのか?」と。

 

けれど、その言葉は喉で止まり、ついに出てこなかった。

 

彼女の指先は熱くない。だが、不思議と安定していて、声を発さないままの寄り添いのようだった。

 

トレーはふと、この静けさが――

 

逃げ出したくなるようで、でも離れたくなくなるような――

 

そんな不思議な感覚を抱いていた。

 

矛盾しすぎて、自分でも理解できないほどに。

 

 

 

第五章-8《本心(ほんしん)》

 

――ザァァァ……

 

波の音が聞こえる。穏やかで、優しい音。

 

トレーは目を開けた。目の前には、果てしない海が広がっている。

 

海の中央に、見覚えのある人影。

 

彼女は横を向いて空を見上げていたが、ふいに背を向け、歩き出そうとした。

 

――待って!

 

トレーは追いかけようとする。

 

しかし一歩踏み出した瞬間、深い海へと落ちていった。

 

息苦しさを感じる暇もなく、周囲の景色が突然、見慣れた商店街に変わる。

 

沙耶の姿が、一瞬だけ角の向こうに現れた。

 

……もう、君のことは気にしないと決めたはずだったのに。

 

今でもまだ、君のことを思い出すたび、怒りが込み上げてくる。

 

一緒に過ごした日々があったのに、

 

君は、何も言わずに去っていった。

 

トレーは沙耶の姿を追って、角を曲がった。だが、そこは袋小路だった。

 

袋小路の奥には、突如として鏡が立っていた。

 

鏡に映る自分の顔は血の気が引いていて、生気のない表情。あまりにもやつれていて、自分でも気づいていなかった。

 

そのとき、鏡の中に沙耶の姿が映った。

 

トレーの背後に立つ彼女。

 

振り返ると、そこには誰もいなかった。

 

思わず鏡に手を伸ばすと、その手は鏡をすり抜けた。

 

トレーは、鏡の中の世界へと踏み込んだ。

 

そこでは、激しい雨が降っていた。

 

……俺って、本当にダメな人間だよな?

 

トレーはずぶ濡れになりながら歩き出す。

 

君がいなくなったのは……俺のせいなんだろ?

 

遠くに、沙耶の後ろ姿が見える。

 

トレーはその背中を追うように足を進める。

 

……俺は、本当は……

 

忘れたくない。捨てたくない。

二人で過ごした、あのすべての記憶を。

 

世界が突然揺れ始め、足元に大きな亀裂が走った。

 

それはまるで、心の傷のようだった。

 

トレーはその亀裂を飛び越え、沙耶を追いかける。

 

行かないでくれ。

 

俺を置いていかないでくれ。

 

ずっと心の奥底に埋めてきた叫びが、止まらなくなっていた。

 

水が道を覆い、前へ進むことが困難になっていく。

 

溺れるかもしれない。怖くても――

 

トレーは今回は、逃げることをやめた。

 

雨の中を、ただ前へと歩き続けた。

 

そこは、自分が誰にも触れさせたくなかった、

そして自分ですら向き合えなかった、一番脆い場所。

 

――もし、時間を戻せるのなら。

 

……俺は……

 

水かさが増し、沙耶の姿はもうすぐ沈みそうだった。

それでも彼女は足を止めない。

 

やめろ!

 

もう、行かないでくれ!

 

声が枯れるまで、叫び続けた。

 

悲しみを終わらせたかった。

 

ずっと知っていた。

全部、俺のせいなんだ。

 

君がいなくなったのは、俺が悪かったからだ。

 

わかってる。

 

最初から、ずっとわかってた。

 

君のせいにしていたけど、

本当は、俺が弱かっただけ。

 

認めたくなかった。

 

お願いだ……止まってくれ!

 

叫んでいるのに、声が届かない。

 

俺はずっと、

本心を隠してきた。

見ないふりをしてきた。

 

決心することもなく、

自分を偽り続けてきた。

 

でも――

 

今なら、認められる。

 

俺の心は、ずっと泣いていた。

 

情けなくて、

 

脆くて、

 

それでも――

 

君に伝えたかったんだ。

 

「ごめん……!」

 

その声は、世界を満たした。

 

水が引いていく。

 

雨も、止んだ。

 

トレーは、沙耶の後ろ姿を見つめていた。

 

その場に、ただ立ち尽くして。

 

……俺は、本当はずっと知っていた。

 

ずっと、君に伝えたかった。

 

でも――

 

一歩踏み出すたびに、

 

沙耶の姿が、少しずつ透明になっていく。

 

……もう、遅いのだろうか。

 

彼女のもとにたどり着いたとき、

 

そこには、何も残っていなかった。

 

ただ、自分の体から滴る水と、涙に濡れた服だけ。

 

そして、修復されることのない、ひび割れた道だけが残っていた。

 

俺が歪んでしまったのは、

 

君と、正面から向き合う勇気がなかったから。

 

でも今ならわかる。

 

今でも俺は……

 

君に会いたい。

 

そして、伝えたい。

 

ごめん。

……君が必要なんだ。

 

 

 




本作(第五章-8《本心(ほんしん)》)は【Novelbright】の「ツキミソウ」を聴きながら執筆したもので、楽曲の感情を反映しています。

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