うん、分かった。
加藤くんさ、ちょっと止まってくれる?
ごめんね。ちょっと訊きたいんだけど————あ、みんなも落ち着いて! そんなこと言わなくていいはずでしょ? 今は加藤くんの失敗は関係ないよね。
……ありがとう、みんな。ありがとう。
……加藤くんさ、今回の議題って分かってるかな。
————うん、分かったよそれは。言いたいことはもう十分言ったと思うんだ。ちゃんと聴いてたよ、私。
もちろん、こんなことも究極的には意味がないよね。
だってやってもやらなくても卒業できるし、成績にも関係ない。
頑張ったからって受験で有利にもならないよね。
……う~ん。私は加藤くんほど賢くないからさ、あんまり理解できてないところがあるんだけど。
加藤くんさ、よくそうやって「意味がない」みたいなこと、言うよね。
…………そうだよね。本当のことだもんね。私も、少しは気持ち分かるから。落ち着ける?
ああ、ごめんね。落ち着いてるもんね。ごめんなさい。
ううん、全然バカになんてしてないよ。見下してもいないんだ。
まあ、加藤くんはよく「現実は」とか、「そもそもいつかは」とか、好きでしょ?
じゃあさ、加藤くん。
加藤くんは、どうして生きているのかな。
……………………あっ、違うよ?! 死んじゃえって話じゃないからね?
だから、つまりさ、いつか卒業するからこんなことに意味がないとか、いつか別れるんだから意味がないとか、言うでしょ?
この前の体育祭でも、参加したくないって言ってさ、いつか死んじゃうのにこんなことに時間を使うのは……ごめんなさい、ちょっとすぐには思い出せないけど、加藤くんと話すと最後に行き着くあれ。
終わりがあるから無駄、みたいな……そんな感じだったよね?
ならさ、いつか死んじゃうのになんで加藤くんは生きているんだろうな、て。
加藤くんの言う通りだと、私もどこかで思うよ?
だから、分からないの。
自分は死なないのに、これはくだらないんだなぁって。
加藤くんはさ、どうせいつか死んじゃうのに生きるんだよね?
いつか終わるのにアニメは観るし、いつかできなくなっちゃうゲームをしてるよね?
違うの。矛盾してるって責めるんじゃないの。
加藤くんも、ちゃんとそれができるって、できてるんだって言いたいの。
どうせ終わるって知ってても、加藤くんは楽しめる人なんだよ!
……一人の方が、楽しいの? そう……有意義なんだ。
でも……体育祭もさ、参加しなかった間に勉強してたわけでも無かったよね? あくびしながら石をいじってたの、見てたから。
みんなは一生懸命になれた時間を、加藤くんは————そうかな? 確かに過去問題集を持っていたのは見てたけど、開いていたのは最初の5分くらいだったよ?
ほら、一人だけやらないって、とてもつまらなくて孤独なことなんだ。
だからさ、もっと一緒に、どうやったら楽しめるかを考えよ?
そんなことないよ。
加藤くんが話したから、そのせいでみんながつまらなそうにしてるんじゃないよ。
どうやろうかって考える場で、そもそもやる意味ないっていう、いまさら前提を無視する発言が嫌なんだよ。
だって加藤くんも分かっているはずだけど、やるのは決まっているんだよ?
なのにそれを無視されたら、聴く意味が分からないでしょ?
邪魔をしたら嫌がられるのはさ、誰がやっても同じだよ。その文脈を見ないで単純化に逃げちゃったら、いつまでも本当から離れちゃうでしょ?
えっ、違うの! 違うよ私、別に論破なんて、そんな恥ずかしいことしないよ!
してないってば。加藤くんと口論なんて、しないよ。
ああ、うん。強いんだよね、加藤くんは。よく言ってるの知ってる。
う……んと、それは何も言い返せなくて黙ったとか、勝てないから無視したとかじゃない、と思うかな……。
この前の佐藤くんとのことだよね?
あれは口論じゃなくて、議論の場だったと思うんだけど……加藤くんの言ってる口論って、あれのこと?
あ~~、のさ………………議論する場でもさ、加藤くんってよく「でも正論だろ」で頑張ろうとする、でしょ?
けどね? 議論では正論は大前提なんじゃないかな?
正論を突き合わせて、より良い結論に近づこうってことをしたいんだよね?
それが議論だから、「正論」で止まってたらダメなんだと思うんだ。
みんなは無視したんじゃなくて、その続き。「で、どうなのか」を求めているんじゃないかって。
待っているんだよ、きっと。それが無視に見えちゃうんだと、私は思うな。
これって、他の人の話をちゃんと聴いてたら気づけたって思うんだ。加藤くん、賢いから。
他の人も「正論」だなって気づけたらさ、「自説は正論だ」で終わるはずないって分かるもんね?
だから、加藤くんがみんなのことを無視してたところってあると思う。次からはきっと大丈夫だよ!
ね、そうでしょみんな?
みんなが加藤くんに思っていたことって、こういうことだったんじゃないかな。
誤解があったんだよね!
————あれ、みんな? どうかした……の……。
……………………ん……??