或る独白   作:ダート

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或る転生者の独白

 ヘェ~。じゃあアンタは“転移”の方か。

 いや、まさか同郷に、それも異世界で会えるなんてな。

 

 俺?

 俺は“転生”だよ。クリフって赤ん坊に転生したんだ。だからまあ、もうそこそこ生きてるよ。

 

 ああ、俺も日本人なんだ。こんなナリだけどさ。アンタは分かりやすいなぁ、すぐにピンと来た。だから声をかけたんだけどな。

 

 あん? 本来のクリフ?

 さあね。特に存在を感じたこともないし、俺に“上書き”されたんじゃね? まあしょうがないよな。運がなかった。

 

 …………ふっ、ああいや、悪い。罪の意識なんて訊かれると思わなかったんだわ。

 

 無いね。皆無。いや、そりゃそうだろ。

 そもそも赤ん坊に個性だの人格だのはまだ無いって。何もなかったのとおんなじだおんなじ。

 だからアンタと変わらない。何もなかったところに現れた。んで、アンタもそう。何もなかったところに現れた。……だろ?

 

 まあこれは別に俺のせいでもないしさ、俺が選んだなら俺が悪いよ。けど俺は選んでないから、じゃあ俺は悪くないよな?

 

 ああ、うんうん。なるほどねぇ。

 アンタまだ日が浅いんだな。まだ“日本人”のつもりで言ってる。だから自責の念だの罪だの罰だの人権だの言えるんだ。

 

 “ここ”の住民の俺が保障するわ。

 アンタ長生きできねぇって、ソレ。

 

 んじゃ、もうイイや。

 俺は大体このくらいの時間に毎日ここにいる。

 生きてたらまた会おうぜ。そのときは、こんな下がる話はナシな?

 

 俺は……確か、そう……カトウ……カケル、だった。たぶん。名乗るなんて何年振りだこれ。名乗られたから名乗り返したけど、ここら辺であんまその名前はやめとけよ? いや、いいから。

 

 んじゃ、またな~。

 それ俺のオゴリだからさ、しっかり食っとけよ。この世界じゃフツーないんだぜ、こういうの。

 

 次があったら故郷の話でもしようぜ。同じ時代なのか? 俺たち。

 

 いや、いいか。じゃ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 えっ、あ、はい?

 ああ、ボクですか?

 

 えっ! あなたもなんですか?! ああ、確かに日本人だ! ああ、よかった……よかったぁぁ…………ぅ、ここ、ここなんなのか分かんなくて……みんなボクを“クリフ”って呼ぶんです!

 もう、わけがわからなくて……なんで生きてるのかとか、ここはどことか! 身体もこんな、しらないし……おっきいし……。

 

 昨日、ですか? いや、あなたとは会ってないですよね……だって、え? 昨日って、“どっちの”ですか? “あっち”なら、ぼくは塾が終わって帰ろうって……………………違いますか……分かんないです、気がついたらここにいて……もう、なにがなんだか!?

 

 ああ、ああ……そうですよね……落ち着かないと、すみません……へへ、けどよかった……あなたに会えて本当に安心しました。

 

 え? かとう……、じゃ、ないです、けど……。

 

 ああ、はい!

 

 ボクは立花建人っていいます!

 よろしくお願いします……!

 

 はい、なんですか?

 …………そう、ですか?

 なにかあるなら、もうなんでも言ってくださいね!

 

 ボクたち、日本人同士なんですし!

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