或る独白   作:ダート

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或る不死者の独白

 やあ。20年ぶりの再会だね。随分と衰えてないかい? かわいそうに。

 なんでも病が悪さをしたそうじゃないか。終わりが近いだなんて、寂しいね。

 

 いや聴いたよ。聴いたとも。なんでも私には理解の難しい、なんとも尊い話をしているらしいじゃないか。

 なんだったかな……ああ、そうそう。キミたちは命が短いからこそ美しい?みたいな妄想だよ。

 

 ああ、そうだったね。ごめんよ間違えたようだ。我々のように寿命など持たない者より、完結する美しさがあるんだったかな?

 

 確かに、共感する者は多いらしいね。実際、死を排する術を得たとして、我々のような不死者にはなりたくないらしいじゃないか。ま、そんな術は無いから、妄想で自己正当化を図る可愛らしい行動かと思うよ。

 

 ふむ。ではキミは、私がさらに5年間の寿命を与えようと言ったらどうするかな。

 うん、仮の話だよ。我々のように不死者にするより現実的な仮定だろう。どうするかな。

 

 ほう、キッパリ断るかは分からないか。受け取るかもしれない? いいねぇ、それはそうだと思うよ。

 しかし、永遠の寿命は……いらないと。ああ、なるほど。

 

 では10年ならどうか。私がさらに10年の寿命を授けようというんだ。どうするかな。

 なるほどねぇ、これも難しい問いか。まあ悩むくらいなら受け取るだろうね。受け取らない理由は何かあるかな? …………ちょっと出てこないか。はは、可愛らしいな。

 それでも永遠はいらないわけだろう? ふむ。分かってきた。

 

 100年や1000年だと————いらないだろうね。ほらきた。分かってきた、はは!

 ははぁ、そうかい。200歳になるまでには死にたいと。歪に感じるわけだ。

 

 断言しよう。仮に10年の寿命を与え、また10年後にもう10年の寿命を与えると言った場合、キミは受け取るよ。

 それを10回繰り返しても、100回繰り返しても。尋ねるたびに、キミは受け取るよ。

 それは結果的に100を超え、1000を数えることになるだろうとも。それでもキミは受け取るよ。

 

 それは妙な話だと思うだろうね。200歳どころではないのだしね。

 いや、本当に可愛らしいよ。キミは単に、200歳という彼方の自身が想像できないだけなんだ。

 自己同一性が断絶して感じ、自分だとは思えないから死なんて言葉が出てきているだけ。

 

 そうだなぁ……ああ、良い例がある。

 キミたちの幼体……せいぜい20歳前後までの人間は、30歳までに死にたいというような発言をしがちだろう。キミから見ても痛々しかったり、あるいはその幼さが愛らしかったりする言動だ。

 

 要するには、それと同じだよ。今のキミは。

 死を目前に縋る“美しさ”とやらが、結局はそんな幼さ故の幻覚とは可愛らしいじゃないか。

 

 ええ? 寿命を授ける術?

 はは、無いよそんなものは。仮定の話と言ったじゃないか。

 

 わっはは! そう泣くものじゃないよ!

 美しくないぞ。まったく。

 

 キミの語る“美しさ”はてんで話にならないが、まあキミたちは私のように()から眺めはできないからね。

 

 キミにとっては喜ばしいことに…………『あの世』は実在するぞ。

 私には無縁だがね。

 

 ああ————キミたちは美しいな。友よ。

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