国内安全保障執行局〈D.S.E.D.〉〜再会したお姉ちゃんは、私のことを覚えていないようです〜 作:暁天花
序章 姉妹の約束
それは、遠い過去の記憶。
私がまだ小学三年生の頃の、今の私に救済と生きる糧を与えてくれた少女の背中の記憶だ。
アメリカのとある小中一貫校の校舎裏で、その少女は上級生の男子数人に囲まれて泣いていた。
この国でよくある、人種差別を思考の根底とするような虐めではなかった。彼女の髪は綺麗な
原因は、その少女の持つ天性の姿容と家庭環境にあった。
可憐としか言いようのない容姿に、頼み込んだら断れなさそうな臆病な性格。その上家庭環境は劣悪の極みであり、いつお金が尽きて学校を辞めることになるのかも分からない極度の貧困状態だった。
挙句、彼女の母は身体を売って日銭を稼いでいるときた。
たやすく籠絡できるとでも思っていたのだろう。そんな少女に目を付けた彼らは、お金と引き換えにお前の身体を寄越せと迫った。
もちろん少女は拒否した。けれども、彼女を取り囲んだ男達はそれを許すような温和な性格はしていなかった。
少女は強引に手を掴まれ、そのまま組み伏せられた。“何か抵抗しないと”と頭の中では思っているのに、恐怖で身体が動かなかった。怖くて怖くて、涙を流すしかできなかった。
そんな時だった。
“ボクの妹に手を出すな”的なことを叫びながら、お姉ちゃんは私を組み伏せていた男子を思いっきり蹴飛ばした。
その光景に狼狽える他の男子たちへと平等に一発ずつ溝打ちを突き込み、慌てて四方八方へと退散する彼らの背中によくない言葉を叫んでいたのを覚えている。……何を言っていたのかは覚えていないけれど。
嵐のような登場に呆気にとられる私の前で、彼女は――私のお姉ちゃんは振り返って、
「大丈夫だった?」
「……ちょっとやりすぎだったんじゃないの?」
「いいのいいの。あーいうやつにはこれぐらいが丁度いいの」
そう言ってにっと笑うお姉ちゃんの顔に、とても安心したのを今でも鮮明に覚えている。
そしてその後に交わした会話も。鮮明に。
「……ありがと、お姉ちゃん」
「いーよ、別に。お姉ちゃんが妹を守るなんて当然のことなんだし」
「……そうなの?」
こくんと首を傾げる私。そんな私に、お姉ちゃんは格好つけるようなウインクをして、
「そうなの。……誰が相手だろうと、ボクはぜーったいにエレナの味方だよ」