国内安全保障執行局〈D.S.E.D.〉〜再会したお姉ちゃんは、私のことを覚えていないようです〜 作:暁天花
断章Ⅱ 履歴
それは、突然のことだった。
エレナが九歳の頃、辛うじて家賃を支払っていた家が差し押さえになった。
あとから知った情報によると、母はいつからか薬物乱用に陥っていたらしく、その麻薬の購入資金に困った結果、いわゆる『闇金』というものに手を出していたらしい。そしてその借金が膨れ上がり、利息分すら払えなくなった結果、母は子供二人を捨てて夜逃げした。
ともかく、その日から帰る家を失ったエレナと
けれど。最低賃金で働かされる生活は、食費と最低限の生活費を賄うので精一杯で。家を借りるのはおろか、借金の利息を払うだけで精一杯だった。
そのうち、
だけど。それでも生活が豊かになることはなかった。
元金を返せなかったことで借金の利息は莫大な金額になり、とうとう利息すらも返すことができなくなった。エレナの学校にも違法組織が来るようになり、なかば強制的に学校を停学処分になった。
借金取りによって、エレナは空いた時間を非合法な児童労働で過ごすことになった。仕事内容自体は普通のものだったものの、当時のエレナの年齢では『児童労働基本法』の適用外な上、支払われる賃金も『借金返済に充てるため』という名目で最低賃金以下だった。
エレナも
このまま使い潰されるのだろうなと思っていた時だった。
「これでエレナは自由だよ」
その一言ともに、
何が何だか分からなかった。理解できなかった。絶対に私の味方だと言ってくれた、私の
独りになったエレナは、失意の中貧困街を歩き、気がついたら市街地まで裸足で歩いていた。もう、生きる希望も理由もなかった。
自分には何も残されていないと。絶望のどん底で、ふらふらと街の中をさまよっていた。
その様子をたまたま見かけた通りすがりの人が、エレナの存在を『児童福祉局』へと通報した。その通報を受けた職員が、たまたまさまようエレナを発見して保護した。
たまたま魔導と銃の才能があったエレナを、福祉児童局は大いに歓迎し、あらゆる手段で勉学と武器の扱い方を学習させた。
そんな中で、司法省が『国内安全保障執行局』――〈D.S.E.D.〉の設立を宣言。既に有用な児童を軒並み軍に取られていた〈D.S.E.D.〉は、当時まだ十二歳だったエレナを
〈D.S.E.D.〉発足からの数ヶ月はノウハウのなさと他治安組織からの情報提供のなさによって、現場での戦闘は地獄のような様相を呈した。
知らぬ武器、知らない部隊、知らない人員、知らない拠点――。自分たちの縄張りを侵されることを恐れた他の治安組織があえて情報を提供せず、それによって多数の死者が出た。
けれど。エレナは
その間、ロンメル長官は死に物狂いで各治安組織とのパイプを構築し、何とか情報提供の連絡路を確立。それまでのような惨状が二度と起きないような状態へと組織を造りあげた。
そして。
エレナが十五歳になった年の春。〈