カヤはかっこかわいい   作:モレ(一般人?)

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かっこいいおじさん概念


暁のホルス

 灼熱の砂漠の風が、古びた校舎の隙間を吹き抜ける。

 その風は、長い間に積もった哀しみをも運んでいるようだった。

 

 アドビス高校に残された生徒は五人。

 だが後輩たちは、先の戦闘で負った傷が癒えず、銃を手に立つことすらできなかった。

 守るべき後輩たちを前に、盾を背負うのはホシノただ一人。

 

 先生はあいにく別件で居なかった。いや、それを見越しての攻撃だったのだろう。砂嵐のように迫る掠奪者たち。一人に対して、その数…………。

 

 

=================================

 

 ホシノは盾を背負い、乾いた唇を舐めた。

 その瞳には、過去の影がちらついていた——。

 かつて大切な先輩と、最後に言葉を交わした日の激しい言い争い。

 そのまま先輩は砂漠で行方を絶ち、戻らなかった。

 

 すべてが私のせいだった。

 その事実が心に深く刻まれ、長い間、彼女は「私」という言葉を捨て、無機質な「おじさん」口調で自分を隠してきた。

 

「おじさんが行くから、みんなは教室で待ってて」

 

 いつも通りののんびりとした口調。

 だが、その背中に負う盾は、今までにないほど重かった。

 

 砂煙が近づき、やがて数十の影が姿を現す。

 黒いヘルメットを被った掠奪者たち。銃口からは不穏な光が零れ、砂漠の陽光が反射してちらつく。

 

 

 

 やがて、第一声の銃声がただ一人、高校を守らんとするホシノへと鋭く切り込む。

 

 ——カンッ!

 

 弾丸が盾に叩きつけられ、硬質な衝撃が腕から肩を伝って体を揺らす。

 脳裏に、かつての記憶がちらついた。

 あの日、取り返せなかった背中。

 

 だが今は違う。

 

 盾をぐっと押し出し、体を前へと傾けた。

 砂を大きく蹴り上げ、敵の視界を遮る。

 

 次の瞬間、ホシノのショットガンの銃口が炸裂した。

 

 轟音とともに、砂埃が舞い上がり、敵の一人が真横に吹き飛ぶ。

 銃口の火花と共に、反動がホシノの肩を打ち抜き、痛みが瞬時に脳裏を走る。

 

 だが、それを気にする暇はないとばかりに盾を回し、次の狙いを逸らす。

 敵の銃口が動くのを見逃さず、鋭く盾を押し当てた。

 

 銃声は遮られ、敵は一瞬ひるむ。

 

 その隙に、ホシノは左手でハンドガンを抜く。

 銃床を相手の肋骨に叩き込み、距離を詰める。

 狙いを定め、二発、三発と確実に撃ち込んだ。

 

 薬莢が砂に落ちる音が、静かな砂漠に鳴り響く。

 

 

 

 呼吸は荒くなる。

 だが、それは恐怖ではない。

 集中と覚悟の証だった。

 

 心の奥で、彼女の言葉が震える。

 

「……私が守る。」

 

 小さな呟きは、炎のように心を照らし、全身に力を漲らせた。

 

 動きが変わる。

 盾が生き物のように柔軟に動き、弾丸を弾き返す。

 ショットガンの重い銃声が、敵の群れに連続して響いた。

 

 盾を軸に回転し、敵の銃弾をかいくぐる。

 背後からの攻撃も察知し、腰を捻ってハンドガンで狙い撃つ。

 

 「なにあれ……普通じゃない!」

 

 敵の声が動揺と恐怖を帯びる。

 彼女らは、かつての「暁のホルス」の名を知らない。

 ただ、圧倒的な動きに慄いているだけだった。

 

 ホシノは砂の匂いを感じながら、次々と敵を切り伏せていく。

 盾は傷だらけ、手は熱を帯び、喉は乾ききっていたが、動きは止まらなかった。

 

 最後の敵が逃げ去ると、砂漠は静寂を取り戻した。

 重い息を吐き、盾を降ろす。

 

 

 

 後輩たちが恐る恐る駆け寄ってくる。

 

「ホシノ先輩……ありがとうございました!」

 

 ホシノはゆるく笑みを浮かべ、照れたように顔をそらすと、ぼそりとつぶやいた。

 

「ふへぇ……おじさんも、まだまだやれるんだよ~」

 

 後輩を安心させるためにつぶやいた、そのホシノの言葉には、確かに過去の痛みを乗り越えた”強さ”が宿っていた。

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