圧倒的かんしゃ〜!読んでくれてありがと!だいすこ!
研修から現場配備になって忙しくしてました。
まぁ、なんていうか私は元気です。
「会合にはウチのアオイが、仲介にシャーレ先生も出席する」
「今回の議題が何かは知らんが、私らは予備戦力として投入される予定だ」
ナギサの質問に私は答えた後、サンドイッチをケーキスタンドから取り出し齧り付いた。
生クリームとフルーツの上品な味がとても美味しい。
「なら、モネを先生の部隊に加える事はできますか?」
ナギサは私に問いかけると私の背後に居るであろうモネに微笑みかけた。
モネはご機嫌なのか私の背後から肩に手を置き撫でている。
ミツキが困惑した表情を浮かべてこちらを見ていた。
そんな目で見るな、俺悪い事してねぇよ…
「構わねぇけどよぉ…モネはどうなんだよ?」
背後の彼女に問いかければ心底ご機嫌そうな声色で微笑んだ。
彼女の翼が私を包んでいく。
「先生のお役に立てるのなら光栄です」
背後から彼女のねっとりとした声が耳に届き、対面のナギサがとても嬉しそうに微笑む。
ミツキはモネの様子に顔を顰めチハヤはご機嫌にサンドイッチを楽しんでいた。
調印式とシャーレ襲撃の一件でモネの中に何かしら負い目があるのだろう。
さすがの私も薄々気付いていた。
ナギサも彼女に配慮してのお願いだろう。
89式小銃を身体の正面に移動させ椅子に座り直す。
「じゃあ、チハヤとミツキ、モネか…」
今回の任務は随分と賑やかになりそうだ。
「ほかに人員は?」
ナギサの質問に私は考えを巡らせる。
現状、有事の際に備えて各勢力から連絡員代わりの生徒が編入されるのは想像に容易い。
あと編入されるとしたら正義実現委員会か…
怖い変顔して礼儀正しい委員長と全体的にデカい副委員長の顔が浮かぶ。
「多分正義実現委員会から、りーちゃんが来るべ」
遠野リイ、正義実現委員会所属。
条約調印式の一件で共に戦い、厄日ことシャーレ襲撃時に当番を担当していた。
調印式の時からゲヘナ学園風紀委員会のおかっぱとコンビで動くことが多く、シャーレ襲撃も二人で対応することとなる。
あの日シャーレビルの防衛が不可能と判断され、私と彼女達はヘリで脱出した。
しかし、カイザーの個人携帯型対空誘導弾発射機に四方から狙われ被弾。
D.U.区交差点に不時着、地獄の包囲戦が幕を開けた。
残弾が最後の1マガジンになり最期が迫ってきた時、一般生徒とヴァルキューレ警察学校の生徒で編成された部隊に私達は助けられ、何とか一命を取り留めることができたのだ。
私の背後から衛兵が通り抜けナギサに耳打ちする。
彼女は一瞬目を見開くと笑みを浮かべた。
「通してあげてください」
ナギサの言葉に衛兵は頷くと私の傍を通り抜けていった。
私は紅茶に口をつける。
口の中の糖分が中和された。
ペースの早い足音、テンポからして駆け出す寸前の早歩き。
私は椅子から身をよじり、後方を伺う。
モネは後ろを向こうとする私を気遣って少し離れた。
低めの身長、白いプレートキャリアと黒いセーラー服に赤いスカーフが映えている。
頭頂部の黒いベレー帽に黒い長い髪が風に揺れた。
目元を隠すような長い前髪の向こうの赤い瞳がちらりと見える。
「先生!」
こちらを認識した彼女は顔をほころばせた。
小走りで駆け寄る姿に私は手を振って出迎える。
「リーちゃん、久しぶり!」
チハヤが両手で手を振り声をかけるとミツキがお辞儀をし出迎える。
「先輩たちもお久しぶりです」
彼女も二人に向き直りお辞儀をした。
「あんだやリーちゃんや、まだその装備使ってたのか」
私は彼女の身に着けているプレートキャリアを指さした。
あの厄日の防衛戦時、当番の二人に着せたものだ。
連邦生徒会のワッペンが付いたベストには赤黒いシミが少し残っている。
あれは私の血だ。
「捨ててよかったのによぉ」
私の言葉にリイはムッとしたような表情を浮かべた。
「そんな事するわけないじゃないですか!」
そう彼女は怒ったように言うとベストを大事そうに抱きしめた。
「気に入っているなら新しいの貰ってくるからさぁ」
私の言葉に彼女は不満そうに首を横に振る。
「あら、なら私にくださいませんか?」
モネが揶揄うように言うとミツキが椅子から立ち上がった。
振動で茶器が揺れ音を立てる。
「先生、一応備品なんですから!」
「そんな事していたら無くなっちゃいます!」
ぷんすこと怒るミツキにモネは微笑む。
「なら、私が特務課に装備を提供すれば良いのですね?」
「特定組織からの支援は癒着になります!」
モネの反論にミツキが吠えた。
そう考えると私たちの組織は厄介な立場にいることを改めて実感させられる。
虚妄のサンクトゥム攻略戦やアトラ・ハシースの箱舟攻略戦では戦時体制だった為、ある程度は緩かった。
今思えば結構ヤバい事していたような気がする。
他学園から弾薬の供与、認可されていない戦闘及び武装の無制限使用…今考えればホントにヤバいな。
「私個人が行う先生への贈与…いえ、愛を込めたプレゼントなら良いわけですね」
ネットリとした口調で述べるモネをミツキが鋭く睨みつける。
チハヤとリイはあたふたと一触即発の二人を交互に眺めていた。
「なら、煙草にしてくれや」
「先生は禁煙してください!」
私の提案は間髪入れずにミツキに叩き落とされてしまった。
向かい側よナギサは微笑ましそうに私達を眺めている。
「先生、少し控えましょ?セリナ先輩も怒ってましたし…」
リイが困ったように笑いながら彼女の名前を出した。
鷲見セリナ、トリニティの救護騎士団所属。
学年は2年生、仕事が絡まなければ美人な頭救護の後輩でありチェンソーナースの先輩だ。
団長が壊して騎士団が治すで有名である。
「やめろリイ、本当に来たらどうするんだ?」
かつて禁煙をしない私を見かねてミツキが依頼した事があった。
思い出すだけで頭が痛くなる。
あの三人組に追いかけ回され、煙草が如何に身体に悪いかを数時間にも及ぶ説教をされた。
帰り際、団長が私の所持していた煙草を握り潰しやがった事は今でも覚えている。
お前ら、一箱幾らすると思ってるんだ…
その後も不定期で開催されるガサ入れに私は備えている。
一時期、自宅や出先の喫煙所にセリナが現れた時は本気で怪異なのではないかと疑ったほどだ。
こうして話していると
「先生、お呼びですか?」
そうそう、こんな感じに…おい、今のは幻聴か?
目を丸くするリイと驚くモネの顔に思わず振り返った。
桜のような淡いピンクの髪に同じピンクのラインが入った白い学生服。
胸元の黒いリボンが目についた。
「げぇ!本当に来ちゃったじゃん!」
「セリナちゃん!この人また煙草の本数増えてるの!」
思わず出た言葉とミツキの報告にセリナの目が細くなる。
「先生、それは本当なんですか?」
「えっ、いや…その…」
「先生?答えてください」
さらに目を鋭くして私を問い詰めるセリナ。
君、頭救護に似てきたね…
ミツキとセリナに取り囲まれ、お説教がはじまった。
それをみんなが少し可笑しそうに笑っている。
あの最終決戦から得たのは掛け替えのない日常だった。