格納モジュールの天井が大きく裂け、星空が覗いていた。
格納庫の右の一隅、両足を投げ出して座るガンダムに、ドウジマが同じ体勢で身体を預けていた。
「うし、ガンダムの中身は無傷だ。あとは、俺らの居住モジュールのブースターを取り付ければ……翔べる。」
ドウジマが浅い呼吸をしながら、へへへと笑う。
「なあ、カズキ。これ見てくれよ」
ドウジマが震える手で防護服のポケットをまさぐる。デブリを組み合わせて造形された小さなキーホルダーを取り出す。
「俺もレムみたいに作ったんだよ。」
掌の上で、カラフルに塗装されたモビルスーツが躍った。
「……カッコイイですね。」カズキが涙を滲ませて微笑む。
「だろ。……だれにもやらねえよ。」
ドウジマは春のこもれ陽の中で遊び疲れた子どものような笑顔で、穏やかに眠りについた。
――
カズキは粛々と居住モジュールの2基の推進ブースターをガンダムの両脚に取り付けた。彼の首元に小さな斑点が浮かんでいる。
ガンダムのコクピットに乗り込み、推進装置の動作確認をする。動作正常。
ほっと息をつき、コクピットのスピーカーを掌で撫でる。何もきこえない。……きこえない。息が浅くなる。動悸。汗が噴き出す。…父さん!……母さん!……おばあちゃん!……ドウジマさん! タケル! みんな! レム!
「おい、レム。まーた何くっつけてんだ?」タケルの呆れた声がスピーカーからきこえる。
コクピットの画面とガンダムの目から照射された空間ディスプレイに、こちらを見て何か手を動かすレムの顔が映った。「ドライブレコーダー。」
「ごめん!ほんとうにごめん!拭くから!自分で拭くから!」
「ポン!」「リーチ!」「ツモ。四暗刻単騎、字一色。ダブル役満、16000点オール。」「ドウジマさん強すぎー!カズキも頑張れ!」
「じゃすとわいるびー♪こみにーけいしょ〜ん♪」
次々と再生される映像。フフッ。カズキの口元にも笑いが漏れる。
――
ガンダムに向き合うカズキ。ガンダムの胸の装甲、「LEM」と誇らしくペイントされたすぐ右に、デブリによる深い傷が2本「//」と痛々しく刻まれている。
レムたちは抹消された。
でも。
カズキは右手に刷毛を握り、左手に持つバケツから黄色いペンキで書き付けた。「ON」。
――ガンダムLEM//ON(レモン)
俺たちのガンダムだ。
―第十章 終わり―
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