【完結】女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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貴女に憧れた。折れずに曲がらずに頑張り続ける貴女の背中に憧れた。そして、その背中を見て、歩いてきた。


1 黒井此方!!

 

 

 私は黒井此方。この小説の主人公。ある夢のためにギターを頑張る勤勉な女子高生ギタリストである。

 

 もう言っちゃうけど、その夢とは私の憧れであり、私がギターを頑張り続ける理由でもあるオーチューバーギタリスト、ギターヒーローさんとバンドを組んでみたいのだ!! 

 

 殆ど私がギター始めたのとおんなじぐらいのタイミングで動画を上げ始めたギターヒーローさん。最初こそもしかしたら私より下手くそかもで私は共感したり、モチベーションにしたりしながらギターを頑張っていた。

 

 ところがこのギターヒーローさん。とんでもない人で、日に日にどんどんギターが上手くなっていった。そりゃそうだ。概要欄見る限り一日六時間も練習するんだもん。私にゃ無理だ! 世の中にゃ凄え人も居たもんだ。

 

 私は打ちのめされると同時に、ナニクソと奮い立った。自分とおんなじくらいの女の子がココまで頑張っているのだ。ここで私が辞めてしまったら、このギターヒーローさんにも。音楽にも、そして自分にも負けた弱々人間が誕生してしまう。それは嫌だった。

 

 齧りつくように練習しギターヒーローさん程ではなくとも、練習時間も長くなっていき、いつしか私もギターヒーローさんが上げている動画の曲は人様に聴かせられるようなレベルにまでなってきた。頑張り続けた甲斐があった……。

 

 そうして動画とギター練習漬けの中学時代を過ごしていた私は、段々ギターヒーローさんに対して崇拝にも近い感情を抱くようになっていった。私の前を何時でも背中を見せながら走ってくれるギターヒーローさん。私より下手くそだったのに諦めず折れず練習し続けていれば、いつか絶対に上手くなれる。そう私に示してくれたギターヒーローさん。私は、貴女みたいな凄い人とギターを弾いてみたい! バンドが一番理想なのだが、もちろん対バンでも! セッションでも! 形は何でも構わない! 音楽を通して、こんな凄い人と関わりを持ちたいのだ!! 

 

 私は自分を飾り立てる。ピアスもタトゥーも、ギタリストとは。ロックガールとは? と、自問した結果であり、そうあるべきと自分に課した結果だ。まあ? 素行が悪いだの。世間体が悪いだの。周りからクドクド言われたが知るか。ンなもん気にしてロックンロールが弾けるか! 

 

 派手に入れた右腕のタトゥーも(剥がせるシールのやつだけど)バチバチに左耳を飾り立てるピアスも(穴開けなくていい挟むタイプのやつ)私の覚悟の証。たとえ今はカッコだけでも、いつかこのカッコに似合う本物のロックギタリストになるように。ギターヒーローさんに並んで立てるようになるために!! 

 

「さあ!! 今日も今日とて、探しに行くわよ愛しのギターヒーロー様!! 何処にいるのかしら!?」

 

「姉貴ー。帰りに醤油と、油買ってきてくれ〜。当てのない探し物のついでに〜」

 

「……」

 

 んむう締まらない。弟についでにお使いを頼まれてしまったわ。仕方ないから買っていくけど。お使い以外は何時もの通り、意気揚々と。下北沢のボロアパートから私は、自分の通う下北沢高校へと足を向けるのだった。

 

 ギターヒーロー。オーチューブアカウントのギターを弾いてみた動画でカルト的な(主に私に)人気を誇るギタリスト。野暮ったいピンクジャージに、スーパーカッコいいギブソンレスポールとまるで不釣り合いな和室で掻き鳴らす、雷鳴の様な音。いつも一言二言くらいしか添えられていない演奏動画で登録者数はもう三万人近く。ちっ、後追いどもが……。ギターヒーローさんを最初に見つけたのは私! ファンなんか私一人居りゃいいのよ、駆逐してやろうか……。オットいかん話が逸れた。

 

 なんとか私はこのギターヒーローさんに会ってみたい。会ってリアルな演奏を聴きたい。人となりを知りたい。そしてあわよくばバンドを組んでみたい!! でもあまりに手がかりが少なすぎる。全身ピンクのジャージ姿に恐らく、桃色の髪。そしてブラックレスポール。同い年くらいの女子……。演奏している姿さえ見れれば一発で判別する自信はあるが、よく考えりゃこのイカれたカッコで外界を闊歩してるわけないわよね。

 

 嗚呼!! もどかしきこの青春の日々!! もしかしたらもうバンド組んで活動しているのかと過去の動画の発言(概要欄)を漁ってみてもバスケ部エースの彼氏がいるだのロインの友達登録千人だのどうでもいい情報ばかり……!! 何か……! 何かないかしら!? 

 

 分かっている……。こんな探し方じゃ限界があること。この東京という都市だけで一千万人人がいるのだ。如何にギターヒーローさんが目立つ格好してようがこの中から探すのは砂漠に落としたコンタクトレンズ拾うくらい途方がない。……ソレでもほかに方法があるわけでもなし。今日も闇雲に街に出て、ピンクジャージと桃色の髪という、ペー、パー師匠の一人娘か!? ぐらいなファッションのオーチューバーさんを探す。

 

 この下北沢は音楽の街だ。……もしギターヒーローさんがバンドを組みたいなら、ココだって活動拠点の候補に上がってくるはず。今日も今日とて元気な若者達の路上ライブを聴き漁りながら、ソレらしき人が居ないか目を光らせたり……。

 

「まあ。無理よね」

 

 ドカリとテーブルに注文したポテトとコーラを放り出し、不機嫌に座ると頭をガシガシ掻く。無理だ。途方もなさすぎる。一生見つかんないこんなんじゃ。……私は、ギターヒーローさんに会えないのか……? 諦めるつもりなどサラサラないが、流石に少し疲れた。弱った心に思考を支配され、視線を意識したわけではなく彷徨わせる。その時だ。偶然、目に入った。私の真ん前に座っている人。ピンクのパーカーに黒髪のツインテール。首には包帯の所謂闇系? みたいなファッションの人のスマホの動画。間違いない……!! あれは……!! 

 

「ぎ、ギターヒーローさん!?」

 

「うわあ!? なになに!? びっくりした!!」

 

「あっ! す、すみませんいきなり……! で、でも、一つ聞かせて!? その動画! ギターヒーローさんですよね!? ファンなんですか!?」

 

 訝しげにコチラを覗き込んでくる妙齢の女性。年下にも見えるし、立ち振る舞いからして年上にも見えなくもないような。どっ、どっちだろう。年上なら失礼のないように立ち回らないと。既に不躾に声掛けてる時点で失礼千万な気がするけど!? などと頭を回していると女性は私を怪しみながらも答えてくれる。

 

「なになに? 貴女も興味あるの? ギターヒーローさん。上手いわよね!」

 

 ああ! 嗚呼!! 私以外に初めて見つけた! ギターヒーローさんのファン!! さっき駆逐しようなんて思ってゴメンナサイ!! めっちゃ嬉しい!! そして。ついに掴んだぞ! ギターヒーローさん!! この子なら。いや、このお姉さんなら。私の知らない、ギターヒーローさんの情報を知っているかも。コレきっかけでギターヒーローさんの手掛かりを掴めるかも。私はかつてないほどワクワクした!! 

 

 






暴走狂奔ガールの当て所ない旅の始まりです!
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