女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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頑張れ結束バンド。オリジナルソングを完成させて、もう一度STARRYのステージに立つのだ。


14 「ギターと孤独と蒼い惑星」

 

 

私達、結束バンドの目下の目標は決まった。

取り敢えず、全員で協力してオリジナルの曲を創り上げ、その曲を引っさげてもう一度STARRYのステージに立つ事だ。

作曲はリョウ先輩のインスピレーション待ちだが、よしんば曲が出来たとしても、誰かが詞を付けなければ成り立たない。

今はSTARRYの楽屋っぽい場所で、リョウ先輩が持ってきてくれたサビに使おうとしている音源に皆で思い思いに作詞を付けている最中である。

 

ちなみに只今、結束バンドによる、チキチキ作詞ワングランプリも同時に開催されている。

リョウ先輩に一番のインスピレーションを与えた人が、今後の結束バンドの作詞をメインに担当する、というグランプリだ。

見事リョウ先輩のハートを射止め、結束バンドの作詞担当に就任するのは誰なのか!?こちらも要注目!である。

 

「さ、流石ですリョウ先輩!サビだけなのにもうカッコいいって分かりますよ!」

 

「ふふふ、郁代。見る目ある」

 

喜多さんがきゃいきゃいとリョウ先輩の曲を囃し立てる。全く。イエスウーマンめ。などと頭の中で悪態をつきたいところだが、確かにこの曲カッコいい。アップテンポで分かりやすい、キャッチーな曲調。リョウ先輩め、口だけじゃなくマジモンの才能ウーマンか。

 

「ふんふんふ〜ん。ずだんずだだだだん!だん!うーん…」

 

伊地知先輩は頭にペンを当てながら、口でドラムの音源のリズムを拾いつつ悩んでる。流石ドラマー。取り敢えずリズム拾ってから悩むんだな〜。

 

かくいう私も、作詞するなんてのは初めてだ。…朝御飯作る時に鼻歌歌うことあるけど、アレに歌詞付ける感じよね…。ふんふんふんふ〜ん。う〜ん。リョウ先輩の曲にどんな歌詞を付けるか悩んでいると、隣から呪詛が聞こえてきた。

 

「ぶつぶつ…毎日一人ずつ…呪っていくね…」

 

怖い!!ひとりさん怖い!?

 

「ちょっと待ってひとりさんどんな歌詞!?丑の刻参りの曲ってわけじゃないでしょう!?」

 

「えっ…?す、スミマセンこんな感じの歌詞です…」

 

コンコンコンコン打ち付ける。コンコンコンコン深夜二時。

 

いや丑の刻参りの曲だったわ!?

 

「あ…。スミマセン間違えました、これ私が中学の頃書いた詞だった…」

 

どんな中学時代!?そんなに呪いたい相手ばっかりだったのかしら。後藤ひとりさん、恐ろしい子…!

 

「ふっ…くくく…。やっぱぼっちは面白い。まあ皆。気負わず思い思いに書いてみてよ。なんだったら皆のいいとこ取りの合作でもいいし」

 

「う〜ん。なかなか難しいなぁ〜作詞って。ところでリョウは?作詞とかしてみないの?」

 

伊地知先輩がリョウ先輩に問い掛ける。確かに作曲した本人のほうが詩のイメージも浮かびやすいかもですね。

 

「まあ私が書いても良いんだけどさ。作詞作曲全部私だと近い将来印税関係で揉めるかなって」

 

「その根拠のない自信は何処から来るんだよ…」

 

曲が売れる前提で話すリョウ先輩。あまりの自信満々っぷりに伊地知先輩が呆れ顔だ。

 

「ま、それは冗談にしてもさ。私が自分で歌詞まで付けちゃうと、私の世界だけで曲が完結しちゃう気がするんだよ。誰かに歌詞を付けてもらったら、私が見たことない曲の一面を見ることが出来るかもしれないから。だから作詞は誰かにやって欲しい」

 

「へ〜、流石音楽バカ。考え無しみたいな感じで実はちゃんと考えてるんだね〜」

 

「虹夏。一言多いぞ虹夏」

 

確かに。この時に限らず、リョウ先輩は考え無しに見えて、その実よく考えている。音楽の事となると尚更か。私がリョウ先輩に対する評価を上方修正しようとした時。

 

「はいは〜い!私、出来ました!リョウ先輩!見て下さい!」

 

喜多さんがノートを掲げながら手を挙げる。映えある結束バンド初作詞の大仕事は喜多さんか。

 

「お、郁代。出来たか。よし、皆で読もう」

 

「えっ!?えと、リョウ先輩だけが読むんじゃ…」

 

「ちっち。郁代、私だけが読むより皆で読んだほうが効率的。皆、意見があったらどんどん言うように」

 

「う、うう。み、皆に読まれるのは、ちょっと恥ずかしいかもだわ…」

 

喜多さんは少し赤くなって俯きながらも、リョウ先輩にノートを手渡す。リョウ先輩はそれをテーブルの真ん中に置き、開いてみせる。

 

「…。へ、へ〜え!いいね!喜多ちゃん!そっか、こういう感じでやればいいんだ〜」

 

伊地知先輩が真っ先に感想を漏らす。確かにリズムに合ってるし、凄いな、なんかこなれた感じだな。…でも。何だろう。なんかこう…。リョウ先輩の意見はどうだろう。

 

「ふむ。郁代。面白い。らしい感じに明るくて、分かりやすい。表現したいことは伝わってくるよ」

 

「えっ嘘…!?意外に好感触…!?」

 

「惜しいのは、初めてだからまあしょうがないんだろうけど、表現が軽い。も少し深みがほしいね。でも、良いと思うよ、この調子でどんどん頂戴」

 

「あふっ!?そんなに甘くはなかった!でも、コレぐらいでめげる私じゃないですよ!先輩!どんどんいきます!」

 

「イイね郁代。その意気。結構この曲激しめだから、ちょっと歌詞も乱暴なぐらいが感情が乗っていいかもよ?」

 

さり気なく作詞のヒントをくれるリョウ先輩。激しめか…。良いアドバイスだが、それは次の作品に反映させるとしよう!

 

「リョウ先輩!次私の見て下さい!」

 

勢い良くリョウ先輩に声を掛け、ノートを差し出す。するとリョウ先輩は私の方を振り向きつつ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「来たか此方。よし見せてみろ」

 

テーブルの真ん中にノートを広げる。ふふん。自信作ですよ。こりゃあ結束バンドの作詞担当の称号は私のもんですかねぇ?

 

「………………………」

 

「え?え〜と、うん?」

 

「…わ、分かりにくい…!」

 

「へ、へへ…。ひょ、表現が独特ですね…」

 

一番上の無言がリョウ先輩。二つ目が伊地知先輩のリアクション。三つ目が喜多さん。最後がひとりさんだ。ていうかリョウ先輩。その無言でのマジかこいつ。って顔やめてくださいよ!

 

「いやいや此方!分かりづらいよ!厨二臭い上に回りくどい!一言で終わるとこ二周も三周もしてるよ表現が!」

 

「あぐふぅ!?」

 

なぜっ!?自信作なのに!リョウ先輩何かの間違いでしょ!?ほら見て下さいよこのアスファルトに染み込んだ雨粒をダークエンジェルと表現するこのセンス!

 

「…全く。此方には密かに期待していたのにガッカリだよ。まさか不治の病の罹患者だったとは」

 

うむむ、くそう。まだ時代が追いついてこないか!そういえば弟にも言われたことあるのよね。中学二年で感性止まってんのか?とか。誰が中二病よ!一人で頭の中の愚弟にツッコミを入れていると、伊地知先輩の動きが怪しい事に気付く。心なしか頬が少し赤い先輩が、ノートを所在なさげに出そうとしたり引っ込めたり。するとその動きに気付いたリョウ先輩が。

 

「おんやぁ〜?虹夏。出来たんじゃな〜い?」

 

「い、いや。まだ良く出来るかもだし」

 

「作りかけでいいから見せなよ〜、青い鳥なんか何処にも飛んでいないもんだよ〜?」

 

「う、うう…。わ、分かったよ。恥ずかしいけど…。はい」

 

ケッケッケと。ニヤつきながら伊地知先輩からノートを受け取るリョウ先輩。あの顔つき。微妙な出来だったら笑い飛ばす気だろうな、人でなしめ。などと考える。…だが。

 

「…へぇ。凄いや」

 

伊地知先輩の作詞を見て、私の口から素直な感想が溢れていた。

 

「えっ?こ、こなちゃん、それはどういう意味?」

 

「なんか、凄く分かりやすくて読みやすいです。意味がサラサラサラっと頭の中に入ってくるっていうか。頭が良い人の文章ってこんな感じなんだろうな〜って思いました」

 

「え…!?えっと…!?」

 

作詞には人格が出る。これはホントなんだろな、と、伊地知先輩の歌詞を見て思った。優しく、思いやりに満ちた柔らかい言葉たち。喜多さんの歌詞みたいに太陽のように明るいわけじゃないけど、満月みたいに暗闇を照らすような、真冬の人肌のような、暖かい表現。伊地知先輩らしいな。と思った。

 

「い〜ね。虹夏。灯台もと暗し、だな。キラキラした明るさじゃないけど、相手の気持ちに寄り添うような静かな優しさが虹夏らしいよ。一つ注文をつけるとするなら、優しすぎるかな。一応この曲ロックなわけだし。いつも私にしているみたいに暴力的に!」

 

「それは大体リョウが悪いからでしょ!?…で、でも、褒めてくれて…、ありがと」

 

ふいと真っ赤になった顔を逸らしながら伊地知先輩がお礼を言う。それを聞いたリョウ先輩は。

 

「お、おおう。虹夏が素直だ…」

 

なんか照れていた。締まらない先輩である。

 

「あ、あの…わ、私も出来ました…歌詞…」

 

お。最後だ。真打ち登場だ!後藤ひとりさん!…。とはいえなぁ。歌詞は期待できないかもなぁ、さっきの見る限り…。丑の刻参り2とか来なければいいけど。意外とロックとホラーは親和性高いみたいだが。

 

「最後はぼっちか。残り物に福アリ。私のインスピレーションを刺激してくれよ?」

 

「は、はい。が、頑張って書きました…。す、少し、暗い、かもですが…。小学中学と九年間、図書室で本ばかり読んでいた経験を活かして…へ、へへ…」

 

…。何故九年間も図書室に通い詰めだったかは敢えて問うまい。が、頑張れ私のカリスマ!例えどんな詩を書いてきても、私だけは貴女の味方ですからね!

 

だが、後に私はその心配は大杞憂だった事を思い知る。

 

「…え?す、すごっ…」

 

この呟きを漏らしたのは伊地知先輩。…ちなみに私も、まっったくおんなじ感想だ。

 

己の内側を叩きつけるような表現。心にヤスリをかけて削り取り、それを拡声器に乗せて叫びまわるかのような感情の発露。

 

随所随所に散りばめられている怒りは誰に対して?恐らくは、自分自身。

 

何かを理不尽を感じながらも、何も出来ない自分に対する怒りこそを原動力として、自身の内を吐き出し続ける様はまさにロックバンドの歌詞そのもの。…少なくとも、私にはそう感じられた。

 

「に、虹夏ちゃん…す、凄いというのは、凄く下手って意味ですかね、へ、へへ…ですよね誰も喋れる人がいないから逃げるように入り浸ってた図書室で語彙力なんか増えるわけないですよねお目汚し失礼しま…」

 

「ち、違うよ…!?違うって!!」

 

ぴいっと。ひとりさんが小さく鳴く。

 

「伊地知先輩。…気持ちは凄く分かりますが、どうか冷静に。声が大きくなってます」

 

「ご、ごめんぼっちちゃん驚かせちゃって!?で、でも…!凄いよこの歌詞!な、なんか!わーっ!て叫びたくなるみたいな!心の中が熱くなるみたいな!そんな感じ!」

 

「えっ!?虹夏ちゃん、それはどういう…」

 

可愛らしい語彙力で伊地知先輩がひとりさんの歌詞を褒め称える。私も続けて褒め倒そうとするとその前に喜多さんがカットインする!

 

「す、凄い…!ひとりちゃんが書いた歌詞…!一つ一つの言葉に怖いくらいに感情が乗っかってる…!!こ、この歌詞にリョウ先輩の曲が合わさったら…!ほ、本当にバズっちゃいますよ!売れちゃいますよ私達!」

 

もー!!!皆して私が言いたかったことを先回りして言ってくれちゃって!!私だってひとりさん褒め倒したい!…だが、残念ながら私の番は中々回ってこないようで。

リョウ先輩は普段の眠たそうな半目は何処に行ったのか?ぐらいの見開いた目をノートに落としている。口元を押さえているのは何時ものように笑いを堪えているからではないのだろう。表情が如実にそう告げていた。

 

「ぼ、ぼっち…。何か参考にした詩とかはあるの?」

 

「えっ…?い、いえ、特には…普段私が思っていても言葉には出せないようなことを折角だから歌詞にしてみました…、や、やっぱり暗かったですよね…」

 

この期に及んでひとりさんは自己否定的な論調を口にする。しかしリョウ先輩は華麗にこの言葉をスルー。

 

「つまり素でコレか…。とんでもないダイヤの原石だね。この曲の私のイメージにぴったり。凄くインスピレーション湧いてきたよ…!作詞大臣はぼっちに決まりだな。まさか異論ある人はいないよね?」

 

リョウ先輩にそう問い掛けられる。ない。あるわけない。

 

「ありません!流石はひとりさん!私のカリスマ!」

 

「うん!ぼっちちゃんで決まりだね!凄いよぼっちちゃん!」

 

「ひとりちゃん!頑張って!カッコいいのよろしくね!」

 

「えっ!?えっええっ!?わ、私でいいんですか!?」

 

「寧ろ。ぼっちがいい。ぼっちの歌詞は凄い個性だよ。自分では暗い、って思ってるみたいだけど、それはぼっちの個性。私や虹夏。郁代に此方。それにぼっち。バラバラの個性が一つになってバンドになる。どうかその暗さをなくさないで。暗くなりすぎたら私や皆が止めるから。安心して、ぼっちにはぼっちの好きな歌詞を書いてほしい」

 

バラバラな個性が集まってバンドになるか。

ひとりさんの個性的な歌詞に、凄腕のギター。喜多さんの顔に似合わない意外と低くて鋭く響くボーカル。リョウ先輩と伊地知先輩が支えるリズム隊の上にこれだけのものが乗っかったモノ。それが結束バンドだ。

…こりゃ私も振り落とされないように全力で弾かなきゃ!全員が全力を出して弾ききった向こうに、あるような気がする。私がバンドをしている時、求めているものが。

何となくだが、皆もおんなじものを求めているはずだ。

 

「よし!すまん皆!今日のバイト任せてもいいかな!?私今のインスピレーション忘れないうちに曲にしたいんだ!」

 

「ちょっとリョウそれはさすがに…!」

 

言いかけた伊地知先輩を私は手で制す。

 

「行って下さいリョウ先輩!今日のバイトは私が何とかします!曲をお願いします!」

 

しっかりと目を合わせてリョウ先輩に依頼する。どうやら私の今日の役割はリョウ先輩のバイトの穴埋めだ。ならば私はそれを全力で遂行するのみ!

 

「此方…!すまん恩に着る!必ず最高の曲を仕上げてみせるよ!」

 

言うや否やリョウ先輩は珍しくダッシュしてSTARRYを後にする。余程ひとりさんの歌詞に感銘を受けたようだ。

 

「あっちょっとリョウ!…行っちゃった。もう!お姉ちゃんに怒られるの私なのに!」

 

ぷんぷんと頬を膨らませて伊地知先輩が憤る。

 

「すいません伊地知先輩。私も一緒に謝ります」

 

元は私がリョウ先輩を行かせてしまったのが原因。私も一緒に行くのが筋だろう。そう思い伊地知先輩に申し出ると。

 

「私も一緒に行くわよ黒井さん!伊地知先輩!皆でやればリョウ先輩一人の穴ぐらい埋められるはずよ!」きたーん!!

 

「わ、私も行きます…!き、きっとこれが、皆で何かをするって事なんだと思うから…!り、リョウ先輩に曲作り頑張ってもらっている間に、私達は仕事を頑張りましょう…!」

 

「み、皆…!ありがとっ!それじゃお姉ちゃんにちゃちゃっと謝って、仕事もさっさとこなしちゃおっか!」

 

伊地知先輩が片腕に力こぶを作るような仕草をしながら号令をかける。それに私達は三者三様のテンションで応えるのだった!

 

 

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、全員で協力して何とかリョウ先輩の穴を埋めきり、バイトを乗り切った。

後日リョウ先輩は店長に詰められていたが、さすがにそれはどうにもできなかった。…許せ!リョウ先輩…!

それから更に数日が過ぎる。

私達は基礎の部分をもう一度皆で合わせつつ、演奏力をブラッシュアップさせる日々を続けていた。

リズム隊であるリョウ先輩と伊地知先輩の演奏に私達の演奏を合わせる。

…もっと。レベルを上げることはできるはずだ。きっと皆そう思っているのだろう。誰一人、現状に満足したような顔はしていなかった。

そんなふうに練習していた矢先、遂に私達に待ちわびていた吉報がもたらされる!

 

「皆ぁ!!曲出来たぞ!!」

 

スタジオのドアを勢い良く開けリョウ先輩が前のめりに宣言する!遂に来た。

 

「出来たの!?でかしたよリョウ!皆!一瞬練習中止!リョウの曲、皆で聴こう!」

 

伊地知先輩がそう号令をかけると、各々背負っていた楽器を丁寧に置いて、リョウ先輩の周りに集まる。

 

「んじゃ、かける。意見があったらどんどん言って。直すから。忌憚ない意見が聞きたい」

 

スマホを片手に握りながらリョウ先輩が何時になく真剣に皆に言う。

 

「了解しましたリョウ先輩。カッコ悪かったら遠慮なく言います!」

 

「頼む此方」

 

あれぇ?ボケたのにツッコミなし?…もしかして、リョウ先輩ちょっと緊張してる?そんな余計な事を考えている間に、リョウ先輩は自身のスマホの再生ボタンを押し、曲が流れ始めた。…おお。おおお!?おおおおおおお!!!

 

「わーっ!?す、凄い!!リョウ!今までで一番の出来だよ!」

 

伊地知先輩が興奮気味に叫ぶ!私も同じ気持ちだ。す、凄い。サビのイメージそのまんまにロックでキャッチーな、サビを盛り上げるためのメロディが小気味良く展開されていく。存分に盛り上げた後改めて聴くサビは、この前聴いた時よりも勢いとパワーを増したように感じられた!!

 

「ふ、ふふふ…!!わ、私は、最初から分かってましたよ!!リョウ先輩は!私のお母さんは!!凄いんです!!」

 

「ソレやめて郁代!!」

 

あまりのリョウ先輩の反応の速さに心の中で少し吹き出す。

 

「…ぼっち。ぼっちの歌詞が凄い刺激になった。…どうかな、この曲」

 

こんなにも凄い曲を創り上げてきたのに、リョウ先輩は何処か所在なさげだ。何でだろう…?ひとりさんにまだ感想聞いてないからかな?そう思いながらひとりさんのリアクションを伺う。

 

「す、凄い…。凄い凄い凄い凄い凄い!凄いですリョウ先輩!わ、私の歌詞がこんなにカッコいい曲に乗って流れてる!!あ、ありがとうございますリョウ先輩!!」

 

…ひとりさんの感想を聞いた後、心なしかリョウ先輩は肩の荷が下りたような。少し安心したような、そんな表情を一瞬だけ浮かべたのが印象的だった。その後いつもの顔に戻り、ひとりさんに語り掛ける。

 

「良かった。実は皆に。特にぼっちにどう言われるか不安でさ。バイト皆に任せてまで作曲してたのに、失敗したらどうしようって。…上手く出来たみたいで良かった…」

 

何やららしくない事を言い出すリョウ先輩。私以外の皆もそう思ったらしく、バンドの心臓とも言うべき、作曲という大事な作業を一人で担ってくれた功労者に口々に労いの言葉を掛ける。

 

「凄く良かったよリョウ!流石だね!良い曲作ったんだからもっとでん!と構えなよ!らしくないじゃん!」

 

とは伊地知先輩。

 

「やっぱり最高でした!わ、私!!頑張って歌えるようになります!皆で合わせて練習して!!全員でまた!STARRYのステージに立ちましょうね!!」

 

皆に振り返りながら喜多さんは笑顔で宣言する!心なしかその笑顔は、いつもの喜多さんの二倍、いや三倍輝いて見えた!

 

「り、リョウ先輩…、わ、私。喋るの苦手で。言葉にするの得意じゃなくて。だ、だからリョウ先輩。こ、この曲でのライブ、ぜ、絶対に成功させましょうね…!わ、私も及ばずながら、全力で頑張りますから…!」

 

実にひとりさんらしい。この曲をライブで成功させることが、リョウ先輩に対するお礼になる。きっとこう考えているんだろう。それはリョウ先輩にも伝わったはずだ。

 

「…練習しましょう皆さん!!この曲を練習して合わせまくって!!ライブで演奏してバズれば!!私達は人気バンドですよ!今度はメンバーにひとりさんを加えたこの五人で!喝采を浴びに行きましょう!!」

 

私は皆にそう呼び掛ける!皆は私の言葉を聞いた後四者四様に私に応えてくれる!

 

「応!此方!!」

 

「き、緊張する…!は、はい!黒井さん!!」

 

「私もやるよ!!皆で息を合わせて頑張ろう!!」

 

「きゃーバンドらしくなってきたわー!!やっぱり皆で目標に向かうって最高よねー!!」きたたーん!!

 

なんとかかんとか紆余曲折合って、遂に私達は一曲のオリジナルソングを完成させた。

新しく作詞担当大臣に就任したひとりさんが命名した曲名は「ギターと孤独と蒼い惑星」

うん。文句無しにカッコいい。

その後もサビ以外の作詞に苦労するひとりさんを全員でフォローしたり。

全員で通しの練習に明け暮れたりしながら、STARRYのステージに上がることを夢見た。

そして数日後。私達は転機を迎えることとなる。伊地知先輩が唐突に。

 

「よし!コレなら私達イケるよ!皆準備はいいよね!?そしたら私!どうにかSTARRYのライブに出れないか、お姉ちゃんに頼んでくるね!」

 

…遂にだ。

オリジナルソングを作ると決めてから試行錯誤して練習して。皆で合わせて演奏して。

今ならちゃんとしたクオリティの曲をお客さんに提供できる気がする。私たちが培ってきた力。今こそ試すときだ。

よし、やるぞう!!

私達も伊地知先輩に続いて店長さんに頭を下げに行く。

しかし。現実とはそう上手くはいかないようで。

 

「いや?出す気はないけど。このまんまならな」

 

そんなセリフを心なしかニンマリしながら店長さんが宣う。どうやらまだ乗り越えるべき壁は存在しているようだ。

次回、私達結束バンドVS店長伊地知星歌さん。デュエル、スタンバイ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






考えてみりゃ当たり前の話で。どんな曲やるのか分からんようなバンドをステージに上げるわけありませんな。やはり事前にどれだけやれるか見せる場は必要ですね。
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