女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
廣井きくりと結束バンドの邂逅の回。
頼れる先輩バンドマンだが、ド級の酒飲みでもある。
廣井さんも、書いていて楽しいなあ。
あ、完全に偶然だけど、廣井きくりさん。誕生日おめ!
「う〜ん。中々上手くいかないね〜」
後ろ頭をポリポリと掻き、照れ隠しをするように伊地知先輩が笑う。ココはライブハウスSTARRY。ダベリ場所兼作戦会議場所の定番と化した楽屋に、私達結束バンドは集結していた。
「本当ですね。中々買ってくれないもんだ…」
この間立案して、実行に移そうとした際、シデロスの連中に会ってしまい、やむなく中止した路上ライブ。
つい先日、それを敢行したのだが、中々チケットは売れなかった。というのも、無料であるからか、割とライブは聞いてくれる。足を止めてくれる人も多かったのだが、いざチケットを売ろうとすると、皆離れて行ってしまうのだ。やはりお金が発生すると二の足を踏まれてしまうのか?
「うぬぬ…。これは予想外。虹夏、売れ高は?」
「まだ半分いかないくらいだよリョウ。安直に、二回目をやれば売り切れるかな?」
私達のノルマはまだ半分近く残ってる。イマイチ売れないチケットも問題だが、他にも問題は山積だ。
まず第一。ホットな時間が意外と短い。学生や会社勤めの方を狙える夕刻あたりが狙い目なんだろうが、少しでも時間帯外すと全然人がいなかったりする。
第二に、意外とサツが嗅ぎつけてくるのが早い。こないだは三十分ライブしてただけなのに解散命令出された。優秀すぎるのも考えものね!
改めて思う。この状況下で普通に観客集めて成功させてたシデロス凄えな。流石は大槻ヨヨコ…。私が越えねばならない壁…。
「うーん。路上ライブに付加価値をつける、ってのはどうですか?ドリンク無料券つけるとか…」
「喜多ちゃん、私達が大赤字になっちゃうよそれは!」
ああでもこうでもないと、会議を続ける結束バンドの面々をよそに、私は思考を進める。…一つだけ、考えがある。だが、これは切り札。革命的ではあるが、失敗する確率を大いに含んだ危険な一手。だがしかし。他に思いつかない。
「皆さん。一つ提案が」
おずおずと手を挙げ、発言権を得る。
「どったのこなちゃん!珍しいね自信なさ気なの!」
にこやかに伊地知先輩に心の裏を看過される。
「私、実はある大物ミュージシャンにツテがあります。その方は経験豊富で実力も確かです。その方に路上ライブのコツを指南してもらう。というのは如何でしょう?」
私の提案を受けて、結束バンドの面々は思ってもいなかったかの様なリアクションを取る。
「えっ!?黒井さん凄いわね!いつ知り合ったのそんな人と!?」
「少し前です喜多さん。偶然ですがその人が酒に酔って倒れ伏していたのを介抱したことがあって、その縁で。ですが…」
「ですが?どうしたの?」
「…。まああの、人格に少し、…いやかなり問題がありましてその人。あまりあてにするのもどうかと。皆さんの意見を聞きたいです」
個人的には良い人だとは思う。ちゃんと貸した金も返してくれたし。だが、私が知ってる限りでも問題行動が多い。
「う、う〜ん。腕は確かなんだよね?その人!」
「はい。伊地知先輩。滅茶苦茶上手いです」
「…なら、習ってみようよ!少し怖いけどさ!前に進むためには、今立ち止まってる場合じゃないって!皆はどう!?」
伊地知先輩がバンドの皆に問う。
「私も大丈夫です!ライブチケットが売れなくて寂しいライブするほうが嫌ですし!ビシビシ!しごいてもらいましょう!」
とは喜多さん。
「ふ…。臨時コーチ、ってわけか。私も構わないよ此方。もしかしたら私達全体がパワーアップできるかも」
とはリョウ先輩。
「あ、あわわ…!こ、怖い…!で、でも…!こんなとこで逃げてちゃこの先何にも出来やしない!わ、私も大丈夫です黒井さん!」
とはひとりさん。…では招聘するか。最強のコーチを。…来てくれるかな〜。今昼間だけど最悪飲んでるパターンも考えられる。あの人に時間とか関係ないからな…。
スイスイと、スマホに指を滑らせメッセを送る。すると、ものの二十分で返信が来た。
(久し振りだねこなちゃん!路上ライブのコーチングだっけ!?暇してるから今すぐ行くよ!場所は下北沢のSTARRYってライブハウスでいいんだよね!?)
(うす、廣井さん。ご指導ご鞭撻。よろしくお願いします!)
(任せなさい!ちょっと会いたい人もいるしね!)
?誰の事だろう?…まあいいか、これで、最強コーチの招聘はなった。あとは私達が、レベルが高いであろう廣井さんのコーチングにどこまでついていけるかだ。
お誘いしてから三十分程、STARRYのドアを開け放ち、彼女は現れた!
「うぃ〜っす!!こんにちわ結束バンドの諸君!こなちゃん以外は初めましてだよね~!今回こなちゃんから路上ライブのいろはを教えてくれと要請を受けた誰よりも音楽を愛するベーシストこと廣井きくりだよ〜ん!!みんなよろしくね〜!」
相も変わらぬ赤ら顔全開での登場だが、私は少し安心していた。前に金沢八景でお会いした時のような酩酊状態では少なくともなさそうだ。
「…こなちゃん。大丈夫?未成年が関わっていい人?」
お姉さんの登場と同時に鼻を劈くアルコール臭に顔をしかめながら伊地知先輩がヒソヒソ話し掛けてくる。すると、隣のリョウ先輩が珍しく驚愕の色に顔を染めながら声を上げる。
「ひ、廣井きくりさん!?」
「お?なに?私の事知ってんだ?青髪の子〜。センスいいねぇ〜」
「し、知ってるも何も!大ファンです!し、新宿はFOLTにその人有りと謳われた、シクハックの廣井きくり!ベーシストで貴女を知らない人はもぐりですよ!!」
「嬉しいこと言ってくれんじゃん!後でサイン書いたげる〜!」
自分を知ってる人がいて、きくりさんはすっかり上機嫌だ。
「こ、此方…。凄い人連れてきたな。どうやって知り合ったんだ?」
「偶然ですよ偶然。ひとりさんを闇雲に探し回ってる時期に金沢八景で倒れてる所を介抱しまして」
「そうそ〜う!こなちゃんにはお世話になってさ〜!だから、その御恩返し?みたいな?」
「えっ何!?ホントに凄い人なんだその人!」
伊地知先輩。無理もないですが疑ってましたね?さり気に失礼な事を思わず口走る先輩を見ると、きくりさんも伊地知先輩を見やる。
「ふふ〜。君かあ。先輩、妹さんいるって言ってたもんね〜君、お名前は?」
「え、えと。伊地知虹夏、です」
そう伊地知先輩が答えた瞬間に、きくりさんの口角が上がる。
「やっぱり〜。可愛い〜!先輩を丸っこくしてちみっちゃくしたみたいな!でも芯の強さを残した目つきはそっくりで!一目みて分かったよ先輩の妹さんだって〜!」
そう言いながらきゅむ、と伊地知先輩を抱きすくめるきくりさん。伊地知先輩といえば、きゅっと目と口をキツく閉じ、アルコール臭を堪えていた。
「え、えと廣井さん。お姉ちゃんの知り合いなんですかうっぷ」
「うん!私がバンド始めるキッカケになった人だよ!うっぷ?」
鼻を突いているであろうエタノール臭に少しえづきながら伊地知先輩が確認する。
ほほう。世間は狭いものね。私が偶然助けた酒飲みお姉さんがバイト先の店長の知り合いだとは。
すると伊地知先輩から手を離したきくりさんが今度はコチラにやってきて。
「さてこなちゃん、貴女ほどの腕を持つギタリストが心酔する凄腕オーチューバー、ギターヒーローさんってのは何処〜?見てみたいんだ〜」
「ああ、それなら…」
「待ったこなちゃん!当ててみせる。えっとぉ…」
そう言いながらきくりさんは残る二人、喜多さんとひとりさんを見比べ始めた。
喜多さんは小首を傾げてされるがまま。ひとりさんは期待がかかっているのを敏感に察知して焦っている。
「…!分かった!ピンクの子でしょ!?」
大当たりきくりさん。
「凄いですね、なぜ分かったんです?」
「う〜ん、佇まい?的な。何となくなんだけど、彼女からは同族の香りを感じるよ。私とおんなじ。音楽狂いの香り。君は、名前は何ていうの?」
「はひっ!?ごごごご後藤ひとりです!す、すいません!」
「あはは!緊張しなくていいよ!ひとりちゃんか!うん!よし!握手!」
「えっ、あっ!はい!」
言われるがままひとりさんはきくりさんと、左手で握手を交わす。その際きくりさんはニギニギと、ひとりさんの左の指先を触っていた。
「ふふ…!思った通り。たくさん練習した手だね。君がこなちゃんの憧れの人か。会えて嬉しいよ!」
「あっはっはい、あ、ありがとうございます、で、でも、私なんかまだまだで…!こ、光栄なんです黒井さんみたいなホントに上手い人に目標にしていただいて…!」
「またまた謙遜しちゃって〜!憧れられるだけの事をやってきたってことだよ!誇っていいと思うよ!それに、まだまだだと思うなら自分が納得いくまで精進すればいい。そでしょ?」
「は、はいっ!」
「うん!いいお返事だ頑張んなよ!私、貴女にも注目してるから!」
バシッとひとりさんの肩を叩いてきくりさんが笑う。そして最後は喜多さんの方に振り返り。
「てことは君がこのバンドのボーカルか…」
「はいっ!廣井きくりさん!私、まだ音楽始めたばっかりで!右も左も分かりませんが、必死に食らいついていきます!ご指導ご鞭撻のほど!よろしくお願いします!!」
特大のきた〜ん!!!
「うわあああ!!目が!?目がぁ!?潰れる!!畜生今夜はやけ酒だ〜!!」
「何でそうなるんですかきくりさん!」
目を押さえながら急に今夜の予定を発表しだすきくりさん。何だ何があったんだ!
「何でもなにもないよこなちゃん!私だってさあ…!私だってキラキラした青春送りたかったよ!バンドに勉強に遊びにさあ!でも出来なかった!私の性分がそれを許さなかった!私も彼女みたいにさあ!明るくて可愛くてキラキラしてたら!違った青春あったのかな!?なんて考えたらもう飲むしかない!飲んで塩味の酒に溺れるしかないんだうわあ〜ん!!」
私、またなんかやっちゃいました?みたいな顔をして小首を傾げる喜多さん。大丈夫貴女何にも悪くないわよ。
まさかきくり姉さんにもひとりさんみたいな特大地雷が埋まっていようとは…。以外と学生時代とか陰キャだったのかな…?
隣のひとりさんは、仲間を見つけた!というように少し嬉しそうな顔をしていた。
「うう…。ゴメン少し取り乱した。彼女がボーカルだね?確かに華があって目を引くからピッタリな役回りかも。それじゃあ早速アドバイスだけど…」
一同「ゴクリ…」
「思えば君達の演奏聴いたことないから何アドバイスすれば良いか分かんな〜い!」
ずこーっ!
「だ、だってしょうがないじゃ〜ん流石に聴いたことないバンドにアドバイスなんか出来ないよ!つうわけで、なんか弾いて?」
きくりさんのリクエストもあり、私達は幾つか曲を演奏した。オリジナルの「ギターと孤独と蒼い惑星」
初めてSTARRYのステージに立った時にやったコピー曲を何曲か。
実際路上で演ろうとしていた曲達。
少し緊張したが、いつもの力を発揮できた。と思う。きくりさんの評価はどうだろう。
「ふむう…。やるね皆。素晴らしい。良いと思うよ?」
私からすれば、意外な評価だった。もっと厳しく言われるかと思っていたからだ。
「でも、路上ライブで足を止める、て程じゃないんだよな〜。やっぱこういうのってさ、インパクト勝負なとこあんじゃん?そこの観点からいくと、君達の音楽は真っ当でマジメすぎるね」
成る程。インパクト勝負か…。どうする。歯ギターでもかまそうか。
「手がないわけでもないけどね。その為には…。ひとりちゃん。わたしと、いっちょセッションしようぜぇ?」
不敵に笑いながら、ひとりさんにセッションを申し込むきくりさん。
「えっ!?わ、私ですか…?」
「そ。君。君は多分さ、バンドで皆で音を合わせることにまだ慣れてないね?」
「あ、あう…!な、なぜそれを…!」
「まだまだ合わせることにばっかりに意識の大半を割いちゃってるから。…君の動画。ギターヒーローだっけ?見させてもらったよ。動画の時は出ている君だけの音。バンドになるとそれが消えちゃってる。そこが良くないよね〜」
確かに。今のひとりさんの演奏は、多分まだそこまで余裕がないからなのもあるだろうが、一度聴いただけでそれと分かるくらい個性的なひとりさん独自の色や呼吸が消えてしまっているように思える。
「で、でも…。わ、私。家みたいな感じで演奏するとどうしてもリズム走っちゃうんですよ…!そ、それでまたバンドの皆に迷惑かけたら…」
成る程。ひとりさんは確かに本気を出すと演奏のクオリティが格段に上がるかわりに、リズム走り気味になるわね。この間のオーディションでの演奏がいい証拠か。
「確かにリズム走るのは問題だけど、路上ライブってのは、生なわけじゃん。足止めてくれる人達ってのは、そういうライブ感みたいなのも見たい人達なんだと思うよ?もっと君が周りに合わせる。というより、君が周りを振り回す、ぐらいに自由に!演奏してみなよ。今回は、私が君に合わせるからさ!」
そう言うときくりさんはぬらりと相方であるベースとバチを取り出しながらひとりさんに笑いかける。
「わ、分かりました…。い、家にいる時みたいに、ですね…?」
「そそ。ギターヒーローの動画を収録してる時、みたいに!」
いつしか私達はステージを降り、ひとりさんときくりさんの二人だけが残されていた。二人は向き合ってそれぞれの楽器を持って構える。
「どんと来いひとりちゃん。自由に、肩の力を抜いて、いつものひとりちゃんの演奏を見せてよ」
「は、はい。分かりました…いきます!」
そう言うとひとりさんは、ギターにピックを振り下ろした。
その後に展開される暴力的な音。他のすべてを飲み込んで蹂躙するような圧倒的な音圧。
まさしく、ギターヒーロー。私が憧れたカリスマの演奏だ。
だがしかし。そんな音を聴いて尚、きくりさんは悠然と佇んでいた。
そして、一瞬遅れてきくりさんがベースでリズムを合わせだす。
先程までひとりさんのギターだけで完結している。とまで錯覚していた音楽。
それの足りない部分を次々と補完するようなきくりさんの演奏。
けしてギターの前に出ず、むしろその強みを生かすように。支えるような演奏に、ひとりさんは弾きながら目を見開いていた。
(す、凄い…!ホントに好き勝手に弾いているのに、全くズレずに合わせてくれてる…!そ、それどころか…!どう弾けばいいのか教えてくれてるかのような…!まるで手を取って導いてくれてるかのような…!私の演奏を確実に支えてくれてるんだ…!こ、これなら…!!)
すると、更にひとりさんのギターのボルテージが上がる。
凄いな、とんだ暴れ馬ね。私達とやってた時は牙を抑えていたんだ。
当たり前か、あのギターヒーローさんなのだもの。
…私達リズム隊は本気になったひとりさんに合わせられるかしら…。難しいかも。
でも、それが出来れば…!きっと魅力的な演奏になる。きくりさんはきっとそう言いたいんだ。
(げげっ!?まだ上があるのこの子!?大したもんだよ高校生の分際で!でもね!世の中上手い人は一杯いるもんだよ!見せてあげるよひとりちゃん!君が全力出したって!私は完璧に合わせられるってとこ!)
本気になったひとりさんの演奏に、何の問題もなく合わせて更に高いレベルの演奏へと昇華するきくりさん。
凄い。どちらも、化け物だ。
その後も暴れ回るような演奏のひとりさんをキレイに導き切ったきくりさん、二人のセッションが終わる。
「はあっ、はっ、はあっはあっ…!!」
乱れに乱れているひとりさんの呼吸。キャパ以上の力を発揮してしまったせいだろう。ふらついて片膝をつきそうになるところに。
「ぼっちちゃん!」「ぼっち!」「ひとりちゃん!」
結束バンドの三人がステージの上のひとりさんに駆け寄る。私はというと、息一つ乱さず少しだけ額に滲んだ汗を拭って、まだまだ余裕の表情を見せるきくりさんを眺めていた。
「ふっふ〜ん!まだまだ若いもんには負けないよ!まあ、勝負じゃないんだけどね!…今の演奏を通じて、私が言いたかったこと、伝わったかな?」
息も絶え絶え、結束バンドの他の三人に支えられながら、ひとりさんは僅かに思案したあと、きくりさんに答えた。
「わ、私らしく…でしょうか。わ、私の思うがままに…?」
「そう!君は自分を抑えすぎてる気がした!まあ今の演奏ほどはっちゃけちゃうと流石に皆ついてこれないかもだけど、周りに合わせすぎるつまらない演奏なんて君には似合わない!もっと自由に!もっと破天荒に!ね!」
「はあっはあっ…!は、はい!や、やってみます…!」
乱れたままの息で、精一杯の笑顔をきくりさんに向ける、ひとりさん。その笑顔に、きくりさんは前髪を掻き上げた後、ニヤッと笑って返した!
「す、凄いよぼっちちゃん!あんなに上手い人相手に全く引かない演奏…!こ、こんなに上手かったんだねぼっちちゃんは!」
「ぼっち。惚れ直したぜ…。あの廣井きくりを相手にまるで見劣りしない演奏だった…。流石、ギターヒーロー。伊達じゃないみたいだね」
「す、凄い!凄いわよひとりちゃん!まだ私音楽の事はよく分からないけど、弾いてる二人見ていたら胸の中がカーっと熱くなったわ!」
三者三様にひとりさんに労いと称賛の言葉を掛ける結束バンド。私はステージの上の結束バンドの皆とひとりさんに、称賛の拍手を送った。
「でもね皆。ひとりちゃんが一皮むけるだけじゃ駄目だよ。妹ちゃんやリョウちゃん。そしてこなちゃんのリズム隊。そこがひとりちゃんとバッチリ合わせることが出来て初めて、レベルアップって事だからね!ボーカルの、喜多ちゃん!君もその楽器隊の演奏に負けないように、まずは声を張り上げること!君達は基本は出来てると思う!今私が言った事実践できれば、路上でもいけるよ!チケットも売れる!!」
断言するきくりさん。この人にコーチング頼んでよかったな。物凄い真っ当なアドバイスくれたわ。
「きくりさん!ありがとうございます!バンドとして一皮むけるよう!頑張ります!」
「うむ!こなちゃん!多分君はかなり難しいポジションだと思うんだけど、不思議とこなしてしまいそうな信頼感があるんだよね!頑張んなよ!」
そう言ってきくりさんとサムズアップを交わし合っていると、STARRYの扉が開く。
「う〜い、結束バンド、お疲れ。何やってんだ?ステージになんか上がって。何かあった…」
コンビニのレジ袋を下げた、店長の登場だ。すると、ステージの上にいたきくりさんを見るたび、店長のセリフが止まる。そして、きくりさんも店長の姿を見るや、目を輝かせて!
「せんぱ〜い!!お久し振りです元気でしたか〜!?」
「うおう!?お前…廣井か!?な、何してんだこんなとこで!?」
元気一杯にステージの上から店長にぶんぶんと手を振るきくりさん。店長は驚いているようだ。すると伊地知先輩がフォローするように。
「お姉ちゃん!廣井さんに私達の演奏を見てもらってアドバイスしてもらってたんだよ!」
「ここじゃ店長と呼べと…。成る程な、お前ら世話になったのか」
「うん!!」
「へえ…。廣井、お前そんな事する奴だったのか…やるじゃん。まあ、積もる話もあるだろ?降りて来いよ。ビール一杯つけてやる」
「うえ!?先輩なんか優しくない!?こりゃ雨が降るな!」
「うっせーな、ビールなしにすんぞ」
「うそうそ嘘!!す、すぐ行きます待って下さいよせんぱ〜い!」
なんだかんだ会話しながら二人でSTARRYのカウンター席に座るお二人。廣井さんが言っていた会いたい人。ってのは、店長の事だったのか。
「しかし、世間は狭いもんですね。伊地知先輩のお姉さんときくりさんが知り合いだったとは」
「ホントだね!なんかお姉ちゃん嬉しそう!」
「虹夏…あの廣井きくりと家族ぐるみで知り合いとは羨ましい」
「い、今の今まで知らなかったんだけどねリョウ!」
「兎に角、廣井さんのおかげで、私達がやらなきゃいけないことが明確になった。皆、ぼっち。頑張ってチケット売り捌こうぜ」
そう言いながらリョウ先輩は、ひとりさんを見る。いつの間にか一人でちゃんと立っていたひとりさんは(なんか紛らわしい)リョウ先輩の視線を見返して。
「はい!わ、私…!もっともっと頑張ります!もっともっと自分を出して、それでいて皆さんと合わせられるように!よ、よろしくお願いします!」
大きな声で宣言するひとりさん。決意表明の時の声の大きさで、ひとりさんの成長具合が分かるというものよ。素晴らしい。着々と成長していらっしゃる…。
「ぼっちちゃんだけじゃ駄目だよ皆!私達も成長して、本気出したぼっちちゃんに合わせられるようにならないとさ!廣井さんにも言われたでしょ!」
「そうですね!私も負けません!まずは大きく声を出すことから!ボーカリストの基本ですよね!」
「壁は高ければ高い程燃えると言うもの…!待ってろぼっち。すぐに追いついてやる」
決意を次々に表明し、目標を定める結束バンド。それをカウンター席で酒を飲みながら見つめていた、店長と廣井きくりが同じタイミングで、同じ言葉を溢した。
「あ〜、若いっていいねぇ〜」
きくりさんはまだ十分。いや、店長だって全然。
「若いけどね」
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