女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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夏休みの宿題。
最初にやるか。最後にやるか。


18 夏休み!!(前編)

 

 

アレからまた数日。私達は廣井きくりさんのアドバイスを下に演奏に改良を加えて、ネオ結束バンドとして再びの路上ライブに挑んだ。

ぼっちちゃんはもっと自分の色を出しつつ自由に。

私達はぼっちちゃんが本気出した場合でもキッチリと合わせられるように練習を重ねて。

結果は、大成功。まだまだ細かいところは合わせられるだろうけど、自分達でも分かるくらいにバンドの纏まりが良くなった!と思う。

チケットも全て捌け(なんなら余計に売れたりした)後は本番。八月のライブに向けて練習するのみ!となっていた。

 

「…しかし、バンド内での実力差は顕著だよね」

 

「…確かにね。リョウ」

 

今日から夏休み。青空は高く、蝉の声が耳を劈く。

終業式を終え、じんわりと滲む汗を拭いながら私達はバイト先であるSTARRYへと向かっていた。

まだライブまで一カ月あるとはいえ、今の所結束バンドでは、ぼっちちゃんの実力が抜きん出ている。

何とかライブまでにこの差を少しでも埋めないと、演奏にも不具合が出るだろう。

 

「将来、私達がぼっちの足枷になってしまうかも…。それだけは、避けなきゃ」

 

「考えすぎだよリョウ〜。ぼっちちゃんもまだまだ危なっかしいというか、私達がいなきゃダメ!みたいなとこあんじゃん!」

 

リョウには敢えて明るく振る舞うけど、私も似たような懸念を抱いている。

ああ…。将来的にぼっちちゃんが、こんな下手くそだらけのバンドなんかいられない!辞めます!みたいな感じになったらどうしよう〜!こなちゃんとリョウは上手いから、もしそうなったら私の責任だよ〜!

 

「ふふ…。大丈夫だよ虹夏。ぼっちはそんな事言わないから」

 

「最近ナチュラルに心読んでくるよねリョウ」

 

「でもまあ、私もこのままで終わるつもりはない。ぼっちの足手まとい扱いなんてまっぴらゴメンだ。…上手くなろうよ虹夏。あのギターヒーローのバンドメンバーは全員化け物だ!って言われるくらいにさ」

 

「…そうだね。結局、やることは変わんないか!よっし!今日もバンド活動!頑張るぞ〜!」

 

割とシリアスな話題に取り敢えずの決着をつけ、ちょうどよく着いた目的地のドアを開ける。すると。

 

「は〜い!じゃあ今日の活動内容は!お出掛けです!コレは決定事項で〜す!!」

 

「いっえ〜い!パチパチパチ!!」

 

「い、いぇ〜いぃ…」どよんぬ。

 

結束バンドの残りの三人が、何故かお出掛けの計画を立てていた。どういうこっちゃ。

 

「おっ。来ましたね伊地知先輩リョウ先輩!!今日は皆でお出掛けしましょうよ!何処がいいですか!?」

 

音頭を取っていたのはこなちゃん。意外である。もしホントにお出掛けするならそういう音頭は喜多ちゃんが取りそうなものだ。

 

「い、いやいや!どうしたの急に!?何で急にお出掛け!?」

 

「夏休みですよ夏休み!一生に一度しかない女子高生一回目の夏休みです!お出掛けしないなんて馬鹿げてるでしょ!」

 

「きゃー黒井さん!一言一句同意よー!!バンド活動も楽しいけどきらきらきらら感が足りないわー!」

 

ま、全くもう。こちとらシリアスにバンドの今後を憂いていたというのに…!

 

「あのね、喜多ちゃん。こなちゃん。私達来月ライブだよ?遊んでる暇なんかないでしょ?まだまだ私達息合ってないし擦り合わせなきゃなんない部分なんて山程あるんだから!」

 

二人に対してそのように諭すと、喜多ちゃんはテンションを落としてシュンとなる。ご、ゴメン喜多ちゃん。でも分かって!

 

「いや?ちょうどいい機会だ。遊んできちまえよお前ら」

 

すると、後ろのカウンター席にて話を聞いていたお姉ちゃんが、意外なことを言いながら会話に割り込んでくる。

ちなみにその隣には、路上ライブの件でお世話になって以来、頻繁にSTARRYに遊びに来るようになった廣井きくりさんもいる。今日も間違いない赤ら顔だ。

 

「虹夏よ。学生の時間ってのは貴重なんだぞ?こんなに晴れ渡った日に何が悲しくって一日中暗いスタジオに篭って楽器と格闘なんかせにゃならんのよ?」

 

とはお姉ちゃん。こないだ手加減せず、一介のアーティストとして扱う。とカッコよく言ってたのは何だったのか。

 

「そーそー!妹ちゃん!そんなに焦って練習ばかりしてても上手くはいかないもんだよ!一流とは力の抜きどころも知ってるもの!こないだの路上ライブはうまくいったんでしょ!?頑張った後はご褒美に遊びに行くのもいいもんだよ〜!」

 

隣の廣井さんもその意見に同調する。アーティストとしての廣井さんは信頼できるけど普段の酒浸りの生活態度が私の中での信頼を揺さぶるんだよなぁ〜。

 

「ええ〜…!?で、でもなぁ…」

 

「虹夏。青春というものは一ページ一ページが非常に貴重だ。バンドもいいが、それだけで塗り潰しちまうのは勿体ないぞ?人生の先輩からの助言だ」

 

「そうだよ!バンドをやりたい!なんて思えるようになるぐらい仲良くなれた友達と過ごす何気ない時間!それが何より、大事なんだから!焦らなくていいんだよ、君達にはまだまだいっぱい時間があるんだし!」

 

言いながらカラカラと廣井さんが笑う。軽く言ったように聞こえて、その言葉には重みがあった。

…友達と過ごす、何気ない時間…か。

私は、ちらりと後ろにいる皆の様子を覗き見た後、問い掛けてみた。

 

「皆…。遊び、行っちゃう?」

 

「いえーーーーー!!!」

 

こなちゃんと喜多ちゃんが同時に反応しガッツポーズ!ぼっちちゃんは気が進まないのかあまりテンションは高くなかった。

 

「う〜ん。今日は久し振りに練習のモチベが来ていたんだが…。まあ、尊敬するベーシストの言葉。今日は休めって天啓かも」

 

「まあ、そだね。根詰め過ぎるのもよくないか!よしっ、そうと決まれば遊び尽くすよ!こないだ余計に売れたチケット代もあるしね!パーッと使っちゃおう!」

 

「おおおーーーーー!!!」

 

こなちゃん喜多ちゃんに加えてリョウが入って叫び声が三人分になる。単純にやかましい!

だが!降って湧いた皆と気兼ねなく遊べる日!私も否応なくテンションが上がる!

 

「そしたらさ、そしたらさ!何する!?皆のもの、意見を出しなさい!」

 

取り敢えず皆の意見をまとめるためホワイトボードを持ち出す。

 

「下北沢を散歩したいです〜!最近イソスタの更新滞っちゃって〜!いいねが〜!!」

 

「ハードオプ巡り!!」

 

「あっ、普通に帰宅とか…」

 

「海見に行きたいです!海!潮の香りを感じたい!」

 

みごっとに全員バラバラだな!

 

「ええ〜?そしたらどうするか…。もうっ!も少し結束感出していこうよ皆!」

 

「んなもんデュエリストじゃあるまいしいちいち出していられるか虹夏。そしたらさ。全部やるってのはどう?」

 

何やら言い出したぞうちの世界の山田が。

 

「リョウッ!!君の意見を聞こうッ!!!」

 

「そのまんまだよ。郁代の意見、私の意見、此方の意見にぼっちの意見…。全部まとめてやるんだよ」

 

つまり…どゆこと?

 

「そりゃあ、ええっと…。まず下北沢散策して色々食べ歩いた後ハードオプ。からのぼっちんち突撃お宅訪問。ぼっちの家は確か金沢八景でしょ?近くに海あるから此方の願いも叶えられる」

 

一同、一瞬の沈黙。からの。

 

「うおおおおおおおー!!!!!」

 

大歓声だ!いや凄い!まるで纏まりがなかった意見。秒で纏めてみせた!凄いよリョウアカデミー賞狙えるんじゃない!?

 

「えっそ、そんな皆さん…!私んちにお宅訪問なんて…!」

 

「嫌?ぼっち、一応帰宅ってぼっちの要望も反映してみたつもりだけど…」

 

「い、いえ!!嫌なんてそんな事!わ、私なんかと遊んでも楽しくないかなって!どうやって皆さんを楽しませたらいいんだ駄目だ何にも思い浮かばない!?ってなったら次第にテンションも低く…!み、皆さん。私んちに遊びに来てくれるんですか…?」

 

全く全く。ぼっちちゃんに直してもらいたいところの一番がコレ。自己肯定感が低すぎ。君はね、魅力的な女の子だよ、安心して。

 

「行きたいよぼっちちゃん!もしご迷惑じゃなければ、家の人に確認取ってみてくれないかな?」

 

「は、はいい…!!わ、私んちに友達が遊びに来てくれる…!?こ、コレは…夢…!?お、お泊りですか!?お泊りですよね!?」

 

「そ、そこまでは悪いからいいよぼっちちゃん!?ちゃんと帰るって!」

 

「あ、そ、そう…ですか…」

 

ああー!シュンとしている!!私弱いんだよ最近自覚した!ぼっちちゃんがシュンとしてるの見るの辛い!だからかついつい甘やかしちゃう!

 

「み、皆…。ど、どうしよう…」

 

「相変わらずぼっちに弱いな虹夏は。…先方が迷惑じゃないのなら私は吝かじゃない。この間私達抜きでお泊まり会やったみたいだからその埋め合わせにさせてもらおう」

 

「ひとりちゃんの家にお泊り!?凄く楽しそうです!ひとりちゃんのご両親とか、どんな方!?きゃー気になる!」

 

リョウと喜多ちゃんは乗り気みたいだ。だが、それ以上に凄まじいほど乗り気な女が一人。

 

「ひとりさんの家にお泊り…!!だ〜とぅ〜!?どうやら私は今日この時のために生まれてきたみたいですね定期解約してでも親を質に入れてでも行きます行かせてください!!」

 

「前のめり過ぎる!!怖いよこなちゃん!?」

 

「…伊地知先輩…。どうやらまだよく分かってないようですからハッキリと言葉にします。ギターヒーローさんのアレコレが見られるわけですよ私達憧れの!いつもの撮影シーンとか機材なに使ってるのとかファンならよだれダラダラになるような魅力的なコンテンツがいっぱい!いっぱい!!なんで逆に冷静さを保ててるんですか意味が分からない!」

 

「はあっ!?あっそうか!!ギターヒーローのアレコレがぼっちちゃんの部屋にはいっぱい…!」

 

確かに魅力的。どんな機材使ってどうやって撮影してるの?とか気になる部分はいっぱいあるけど…!私までここでこの子に同調したら、誰が目の前のこの暴走狂奔ガールを抑える!?自重しろ伊地知虹夏…!別にぼっちちゃんにギターヒーローのアレコレを聞くのは今日この機会じゃなくたっていい…!

 

「だめ…!駄目だよこなちゃん…!確かに魅力的だけど、私達はギターヒーローとしてではなく後藤ひとりちゃんとしてバンドに迎えたんだから…!友達んちに普通に遊びに行くだけ!へ、変にテンション上げないの!」

 

「むむ、お堅いな伊地知先輩は〜。ひとりさんは多少ヨイショしといたほうが嬉しがりますよ?」

 

的確にぼっちちゃんの性格を見抜いてるなこの子。確かにぼっちちゃんは可愛い女の子なんだけど、胸の中に飼っているであろう承認欲求はまるで可愛くない。ここは私が上手くストッパーになるしかないか。

 

「も〜程々にしなよ…?ぼっちちゃんが困ってたら止めるからね!」

 

「はい!伊地知先輩!頼りにしてますよ!」

 

ズルい子だ。暴走するかもしれない自分の手綱をいつの間にか私に握らせている。…まあ仕方ない。私の方が先輩だしね。

 

「み、皆さん…!り、両親に確認した所、どんどん連れてきなさいと許可をいただきました…!ゆ、夕飯作って待っていてくれるらしいです…!」

 

「話はっや!?」

 

こんな僅かな時間でお泊りの許可が出ることある?ぼっちちゃんのご両親も中々にロックな人達なのかもしれない…!

 

「それじゃ遊び倒しちゃおうか皆!まずは下北食べ歩きしてからのハードオプ巡り!!そのあと…!皆でぼっちちゃんちにゴー!!だよ!」

 

「タピオカ!クレープ!甘い物祭りですよ皆さん!!」

 

「ふふふ…。今日はどんな掘り出し物があるか…。ハードオプ巡りの魅力を皆に叩き込んでやろう…」

 

「ひとりさんの家!楽しみです!どんなお家なんでしょう!?」

 

「あう…!あまりハードル上げないで黒井さん…!フツーの一軒家だからぁ…」

 

皆それぞれにテンションを上げ騒ぐ夏休み一日目の結束バンド。その様子を羨ましそうに遠目に見ていた大人三人の姿があった。

 

「嗚呼…私にもあんなキラキラした青春あったんでしょうか…朝起きれないなんて下らない理由で退学してないでちゃんと学校行っとけば…」

 

「割と理由下らねえなPA。あんまりしっかり見るなよ目ぇ潰れるぞ」

 

「確かに…しっかり見るならサングラスが必要かもですねぇ。ああくそ。飲も」

 

「…程々にしとけよ、と言いてえとこだが…お前ら。営業終わったら付き合え。久し振りに飲みたい気分だ」

 

「おっおー!珍しいですねせんぱ〜い!行きましょ行きましょ〜う!!」

 

「あら。私も御一緒していいんで?」

 

「勿論だPA。しっかし…」

 

伊地知星歌はそこで言葉を切る。いまだライブハウスの入り口近くで今日の予定やらを楽しげに話している自分の妹を含めた少女達を眩しそうに目を細めて見つめて。

 

「いいよなぁ〜青春…」

 

「楽しそうですよねぇ〜」

 

「ちきしょー!!今夜は、いや、今夜もやけ酒だ!!」

 

三者三様に。もはや自分達の中からなくなってしまったものに対するある種の情景の様な感情を、きゃいきゃいとはしゃぐ五人の少女達に向けるのだった。

 

 

 






ちと長くなりそうなんでここで区切ります。
初めての回跨ぎです。
大人になると子供の夏休みが羨ましく感じる。
あれなんなんでしょうね。

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