女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
書いてる物の季節と今の気温が正反対。
寒すぎるチャムよ〜。
みーんみんみんみんみん!!!
じーじーじじじーーーーーー!!!
あっづい!暑すぎる!死ぬ!夏休みも最後の日とはいえこんなに暑くて大丈夫なのか!?日焼けとか通り越してるろ剣の志々雄さまみたいになる人いないか!?と私は独りごちる!
何処までも高い空。雲一つもない晴天。おかげで何処にも逃げ隠れ出来ない。
蝉はその種類ごとに鳴き方を変え、必死に異性への猛アピールを敢行している。
…アブラゼミってなが〜く鳴く時に一瞬溜めがあるわよね。そうしたほうがモテるのかしら?
最早暑さのせいで朦朧とした考えしか浮かばない…!は、早くSTARRYにたどり着かねば…!そうすれば、エアコンが効いた涼やかな空間が私を待ってる!
などと考えながら一路、早足で目的地に向かっていると、その目的地の玄関先の花壇に、ピンク色の何者かが座り込んでいる。いや、無駄に濁すのはやめよう。その正体が何なのか、私は知っている。
「ひ、ひとりさん…?ど、どうしたんです…?」
「さようなら…。さようなら…」
ざっざっ。
どだだだだっ!!ばあん!!
「皆さん大変です!!」
私は緊急事態を知らせるため、転がるようにSTARRYの階段を駆け下りドアを開ける!
「おいコラ壊すなよ?此方」
「すいません店長さん!で、でも!ひとりさんが変です!」
「あぁ、お前も見た?そうなんだよ、何やってんだあれ。出来れば店前だから止めてもらいたい…」
「な、何かにお別れを言いながら丁寧に土被せて埋めてましたよ…。あれはだいぶ病んでます…!」
「う〜ん…」
顎に手を置いて思案顔を作る店長。それと同時に、我が結束バンドの残りの三人がスタジオから出てきた。
「オッスこなちゃん!遅かったね!」
「伊地知先輩。伊地知先輩は見ました?様子のおかしいひとりさん」
「うん…見た」
最初に話しかけてくれた伊地知先輩に切り返すと、先輩も神妙な面持ちになり、こっくりと頷く。
「なに、なんかおかしいのぼっち。ぼっちが変なのはいつも通りじゃん」
相変わらず刺すときはブスリと刺すなこの人。
「リョウ先輩、そうなんですけど今回は別格な気がしますよ。話し掛けてもさようなら以外の反応がありませんでしたし…」
「決まったことしか言わないロープレのキャラみたい。ププッ受ける」
「私も見たわ黒井さん!何かメソメソと泣いてるかと思ったら急にサンバ踊りだしたりして!相変わらずひとりちゃんは面白いわね!」
面白いで済ましてあげないでよ喜多さん。
「限界すぎる!どしたんだろぼっちちゃん。いつも変だけど今日はいつも以上に変」
四人で首をひねって悩んでいると、店長が思い出したかのように私達に問いかける。
「あ〜。そういえば。お前らさ、誰かぼっちちゃんを遊びに誘ってやった?この夏」
店長に言われて考えるが、ひとりさんは私の憧れの人。他の人はどうか知らないが、私は憧れにはきちんと敬意を払う。おいそれと気軽には誘えない。
「わ、私は誘えてないですね〜。夏休み大体予定埋まっちゃってましたし、私の友達と一緒だとひとりちゃん萎縮しちゃうだろうし…」
夏休み満喫してるわね喜多さん。流石結束バンド随一の陽キャ。
「私もバイトとバンドの練習でどっか出掛けたりは…宿題とかもあったし…」
忙しくしてましたもんね伊地知先輩も。
「皆が誘ってるのかと」
ですよねー。リョウ先輩は一人が好きですもんね〜。
「いやな?こないだぼっちゃんと話してるとき休みの日何してる?みたいな話になったのよ。そん時ぼっちちゃん、予定は空いてるんじゃありません!空けているんです!って力説してたからさ。誰かに誘ってほしかったんじゃね〜か〜って」
「そ、それ早く言ってよお姉ちゃん!明らかに原因それじゃん!」
「後今日で夏休み終わりっのもあるんじゃない?いろいろ重なり合って嫌な感情が爆発したと。ププッ」
「笑ってる場合か!?」
店長と先輩方が原因特定に奔走する中、私は心中でほくそ笑み、喜多さんに話し掛ける。
「喜多さん喜多さん。今かも。皆で遊びに行くチャンス」
「あっそうか!み、皆さん!ひとりちゃんのために、今日はバンドの練習辞めて遊びに行きませんか!?夏休み最後の思い出を作るんです!」
目を輝かせて背景に炎を幻視させながら喜多さんが叫ぶ!
「…それしかないか!あんまりぼっちちゃんと夏休み遊べなかったお詫びも含めて!」
「ほう、遊びか、私は吝かではない。店長、給料前借りさせて」
「ちっ。しょうがねえなほらよ」
「マジで!?五千円も!?言ってみるもんだ…!」
「…私も、ぼっちちゃんが言ってた事お前らに伝え忘れちまったしな。それでぼっちちゃんにいい思い出作ってやってくれ」
「店長。太っ腹!」
「きっちりお前の給料から差っ引くからな。そこは勘違いすんなよ?」
「むう…!」
残念でしたねリョウ先輩。世の中都合良くは出来てないということですよ。
「そしたら皆さん!ひとりさんを加えて、何処行くか決めましょう!」
「よっしゃこなちゃん!久し振りに皆でお出掛けだあ!」
「「おおー!!」」
「行ってらっしゃ〜い」
店長のやる気のない見送りの言葉を背中に受け、我々はSTARRYの階段を、今度は登るのだった。
ガタンゴトンと小田急線に揺られる。目的地は江の島に決まった。下北から一本で行けるし、このクソ暑い日に海は丁度いい。
ひとりさんにも報告したのだが、相変わらず違う世界に行ってしまっていていまだに帰ってこない。
因みにひとりさんが埋めていたものはセミの死骸だった。セミの死骸の一つ一つに別れを告げながら埋めていたということになる。
…怖い!たまにひとりさんが怖い!
「こんなになるなんて…。よほど学校が嫌なんだね。…ダイジョブ?喜多ちゃん。ぼっちちゃん、学校でいじめられてたりしない?」
「私はもともと違うクラスで…。でもひとりちゃん喋らないから、扱い方が分からないって感じのほうが近いですかね?いじめられてはいないと思いますけど…」
「なんか珍獣みたいだね。ぼっちも、寂しいならもっと積極的に話し掛けたらいいのに」
「多分、それが出来たら陰キャしてないんじゃないでしょうか…?」
リョウ先輩に私はこう返す。悲しきぼっちの習性…。嗚呼。私が同じ学校なら、毎時間にもひとりさんのクラスに行って話し掛けるのに!
「喜多郁代!私がご一緒できない時、ひとりさんを頼むわよ!もしいじめようとする腐れ外道がいたら呼びなさい!そいつを生まれたことを後悔するような地獄に叩き落してあげるわ!」
「分かったわ黒井さん!私だってひとりちゃんがいじめられてたら黙ってないわよ!その時は二人で型に嵌めちゃいましょう!」
「二人共〜。ぼっちちゃんがいじめられてる前提で話を進めないの〜」
「ぷふっ。お。ほら皆の衆。そろそろ着く」
あ、ホントだ。話し込んでいる間に目的地の片瀬江ノ島駅だ。いまだ意識を回復させず、電車の揺れに合わせて首をかっくんかっくんさせているひとりさんに呼び掛ける。
「ひとりさん!起きてくださいほら!夏休みの思い出作りに行きますよ!」
「…」
ダメだこりゃ。口から何かわからぬ緑色の物を垂らしながら、物語の主人公はいまだ帰ってこない。
「こなちゃん!何とかしてぼっちちゃん連れてきて!」
「ええ!?」
なんと無体な。私以外の結束バンドの皆はさっさと降りちゃった。私一人でどうにかせいということか。そこは協力してくれる流れじゃないのか。
「…」
今一度、私がどうにかせねばならなくなった陰キャピンクを見下ろす。…割と華奢だな。そりゃそうだ女の子だもんね。おっし。これならば。
まるで龍宮城だ。真っ赤な屋根が目を引く建物の前に我々結束バンドは降り立つ。これが駅だってんだから恐ろしい。
「やってきました!片瀬江ノ島〜!!」
「きゃーっ!パチパチパチパチ!」
「なんかイッテQみたい」
私は取り敢えず両手を広げてグルっと回ってみる。江の島はあの橋を渡った先だね。よし、さっそく行こう…。あれ!?ぼっちちゃんとこなちゃんは!?
「まだ。虹夏が置いてくるから」
「やばっ。ぼっちちゃんが重くて連れてこれないのかな!?やっぱ手伝ったほうがよかったか…!」
そう言いながら駅の方角を振り返ると、フラフラとよろめきながらもこちらに向かってきている影を一つ発見する。…いや。よく見れば二つだ。
「ふんっぬ…!!ひ、ひとりさん…!も、もう少しですからね…!もう少しで、夏休みの思い出出来ますよ…!」
よくよく確認するとこなちゃんだ。こなちゃんがぼっちちゃんを、お、お姫様抱っこでこちらまで運んできている。
「こ、こなちゃん大丈夫!?」
「い、伊地知先輩…!大丈夫じゃないです…!ひ、ひとりさんを起こすの手伝ってください…!」
「よ、よし分かったよ!こらそこ二人!カメラ向けてないで手を貸して!」
「此方のぼっちお姫様抱っこ…。絵になるね」
「きゃー!イソスタ映えよー!」きたーん!
手を貸す様子がまるでねえ!仕方なくこなちゃんと二人でぼっちちゃんの顔を優しくぺちぺちと叩いていると。
「んはあ!?」
「ご帰還ですか!?我がヒーロー!」
「んあ…?あれ、黒井ちゃん…?あれ、わたし、どうして…?!?んきゃあ!?」
何とかぼっちちゃんが目を覚ました。自分がお姫様抱っこされてる事に驚いてるみたい。
「わっわあ…!?お、下ろして黒井ちゃん!自分で歩けるからぁ!?」
「はっ!す、すいません抱え心地のいい身体だったのでつい…!」
何だ抱え心地のいい身体って?サッと、こなちゃんがぼっちちゃんを足から地面に下ろす。綿毛を扱う様に優しく。
「あ、ありがとう黒井ちゃん…。え?ここは…」
「ぼっちちゃん!ここは海!江の島の海だよ!」
「潮の香りがするでしょぼっち」
「夏休み最後の思い出!ここで作りましょう!」
あっ。喜多ちゃんそれは。
「かふっ!?夏休み最後!?」
「あっ!?違うわひとりちゃん今のナシ!思い出作りましょ!ほら!楽しそうでしょ海に出店に!ほらぁ!」
そう言って喜多ちゃんが手で海を指し示す!それと同時に風が吹き、潮の香りが私達の周り一面に広がった。
「あ…。い、いい、かもですね。へ、へへ…」
「決まりねひとりちゃん!今日は江の島!余すことなく堪能しましょう!」
ようやく主人公の復活だ。ようし!
「皆行くよ!まずはアレだ!江の島に渡るための橋を探そう!」
「あのお天気カメラとかに映るアレだよね。…あっちかな?」
「サザン!江ノ電!何処までも広がる大海原!行きましょう皆さん!江の島探訪だ!」
我々結束バンドは気炎を上げる!夏休み最後の思い出を作るための戦いが、今ここに始まった!
「へえ〜い!可愛いおねーちゃん達〜!家の店寄ってかな〜い?」
「安くしとくよ〜?」
「へいへ〜い!」
パリピ三人衆が現れた!
ぱあん!!後藤ひとりは爆発四散した!
前途多難だなもう。
「…喜多さん。ひとりさん拾い集めて。ここは私が引き受けるわ」
「わ、分かった黒井さん。お願い!」
そう喜多さんに告げると私は、パリピ三人衆の前に一人で躍り出た。
「君は可愛いってよりカッコいい系だね〜!タトゥー本物ぉ?」
「おねーさんもどう?家の店!」
私は髪の毛を手で勢いよく横に靡かせた後、パリピ三人衆と目を合わせて。
「御免なさいね。私一人なら行ったかもだけど、仲間内の一人がそういうの苦手みたいなの。次の機会に寄らせてもらうわ」
そう告げた。これで引き下がってくれればいいのだが。
「おうけーい!次よろしくねぇ!」
「皆!江の島楽しんでくれよな!」
「お疲れふぅー!」
無駄に鍛え上げられた肉体のパリピ三人衆は去っていく。話が分かるわね〜!しかも良い人だし。
「皆さん!今のうちにひとりさん拾い集めて海から離れましょう!」
皆さんにそう提案する!
「こなちゃんカッコよかったよ!確かにアレみたいなのをこれから相手にするのは分が悪い!大人しく仲見世と神社の方に移動しよう!」
「伊地知先輩!ひとりちゃんこれで全部です!」
「でかした喜多ちゃん!」
「おっ。塩ソフト美味そう…」
「後にしろリョウ!」
私達はてんやわんやをしながら紙みたいに薄くなったひとりさんを抱えて海から逃げ延びるのだった。
「して!ここが仲見世か!」
弁天橋と呼ばれる、江の島へと続く長い橋を渡りきり、私達は巨大な鳥居の前に立っていた!
「凄いね!青い鳥居は初めて見たよ!」
「そこかしこから香る美味しそうな匂い…。も、もう我慢出来ない…!」
「イクわよひとりちゃん!ぷう〜!」
喜多さんはひとりさんの右手人差し指を口に加えて空気を送り込んでいる。するとペラペラに薄くなっていたひとりさんの身体に厚みが戻ってきた。改めて思う。どんな身体よ。
「き、喜多ちゃん、助かりました…。黒井ちゃんも、庇ってくれてあ、ありがとう…」
「大したことではないです!それより目の前のこれ!どうやって攻略しますか!?」
向かって左には、美味しそうな香りをこれでもかと撒き散らすお店。どうやら店頭で色々焼いているようで正直凄く惹かれる。
目の前には、伊地知先輩が言ったように青い巨大な鳥居。その真ん中をぶち抜くように、この上にあるであろう神社の参道が続いていた。そしてその左右にも店。店!店!!その店に群がる人、人!人ぉ!!
「そりゃ勿論、片っ端からでしょ?」
「もうもう」(そうそう)
もう食ってる!?口にイカの焼いたやつを突っ込んだリョウ先輩が伊地知先輩に同意した。
「よっしゃ!!私たちも負けていられませんよ!喜多さん!ひとりさん!」
「分かったわ!イクわよひとりちゃん!」
「は、はい!」
先ずはしらす丼。プリプリの朝獲れ生しらす達をこれでもかと白飯に乗っけた、江の島名物。
「江の島来たら一度食べてみたかったんだよね〜!いっただきまーす!」
伊地知先輩が口いっぱいにしらすを頬張る。…美味いですか?
「美味し〜!新鮮!全然生臭くなくて、これ生姜なしでも食べられるね!」
「これは美味い。シェフ呼んで」
「ホント!美味しいですね先輩方!キャーッイソスタ映えするわー!」
「あっ、ほ、ホントに美味しい…!」
つぎ。タコせん。
「ほれは、はこをひっほんのひからでふぶしてふくるんはって」
「口の中のもん飲み込んでから喋れ!リョウ!」
ボリボリと、既にそのタコせんを食べながらリョウ先輩が解説してくれる。因みにリョウ先輩の言葉を翻訳すると、このタコせんは、一トンの力でタコをぶっ潰して作るみたい。タコになんの恨みが。
その他にも、占いの館。ジーンズばっか売ってる店に、中学生が喜びそうなお土産(中二くさい剣とか)が売っている店とか、流石は参道。色々あった。そして、私達は何とか、色々寄り道をしつつ、参道の天辺まで登りきった。
「はあ、はあ。…中々キツかったですね皆さん」
「はあっ、はあっ…!も、もう無理です…!」
「わ、わたしも…ち、ちょっち疲れちゃったかな…?」
「ふー、ふー。余は満足じゃ。も、戻ろう、皆」
割と皆疲労困憊だ。十代のくせに情けない、だとう?じゃあアンタが登ってみなさいよ。キツイもんはキツイのよ全く。などと誰に向けたか分からない様な怒りを抱えていると、最後の一人。喜多さんが。
「皆さん!まさかもう終わりじゃありませんよね!江の島の最高到達点はこの先です!皆で登りましょう!」
下とは違って今度は赤い鳥居の真ん中に、何処まで続くか分からんぐらいに長く伸びた階段を指差しながら、天使のような笑顔で喜多さんが、悪魔のような提案をする。
「げぇ!?」
「ま、マジで!?」
「や、ヤダ!嫌だよ郁代!」
「う、うそ…!」
私達、結束バンドの江ノ島探訪は、まだ始まったばかりである。
長くなるから分けるぜ。
五千字六千時位がちょうど読みやすいって誰かが言ってた気がするぜメーン。
ついにお気に入りが100突破したぜ。
これもひとえに読んでくださる皆さんのおかげです。
ありがとうございます。大変励みにしております。
感想くれた方々もありがとう。一言一句隅々まで拝見しております!