女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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後藤ひとり、勇気を出すの巻。

さっつー、登場だぜ。


28 ひとりで、出来るもん!

 

 

「ぼっちちゃん!友達作りなよ〜」

 

「えっ?と、友達…ですか…?」

 

夏休みも終わり、私にとっては地獄の二学期が始まったある日のSTARRYのメインフロア。いつもの如くバイトの始まる時間まで皆でダベっていると、虹夏ちゃんが唐突にこんな事を言い出す。

 

「そ、それは皆さん結束バンドは友達ではないということでしょうかそうですよねただのバンド仲間ですものねということは私は昔から何も変わってないんだ一人ぼっちのままなんだ私に皆さん以外の友達なんてなんてなんて…」

 

「す、ストップぼっちちゃん!!そんな事一言も言ってないから!私達ちゃんと友達だよ!?ねっ!」

 

「虹夏よ。ぼっちはデリケートなんだぞ…。もっと繊細に扱いなさい」

 

「…な〜んか江の島行った以来ぼっちちゃんに優しいよねリョウ…。何かあったでしょ…?」

 

唯一とも言っていいぐらいの心の柱を引き抜かれ、頭が真っ白になっていた所に、虹夏ちゃんの鋭い指摘。

 

アリアリと思い出される江の島での記憶。高校一年生にもなって、迷子になったぐらいで少し泣きが入った挙句、リョウ先輩に子供をあやすように慰められたなんて…!あ、穴が…!穴があったら入りたい…!

 

そこまで思い、不意にリョウ先輩に顔を向けてみると、リョウ先輩も顔を少し赤らめて、ふいっと目を背けてしまった。

 

「やっぱ何かあったんだ!こら!リョウ!ぼっちちゃん!キリキリ白状しなさい!」

 

ああああ!不味い!バレたら皆さんに泣き虫ぼっちだと思われちゃう〜!ふ、普通に恥ずかしい!ど、どうすれば!?

 

「伊地知せ〜んぱい?ひとりさんが困っているでしょ〜う?やめてくださ〜い?いや…虹夏、姫?」

 

ピシリ。黒井ちゃんのその言葉を聞いた途端、追及の構えを見せていた虹夏ちゃんの表情が固まった。そしてギギギと首を黒井ちゃんの方に向けて。

 

「や、やめます…!追及しませんからどうかその事は…!」

 

「分かればいいのですよ分かれば〜。ふふふ〜」

 

あちらはあちらで何かあったらしい。一つ謎が増えたが、黒井ちゃんのおかげで何とか追及の手は弱まった。

リョウ先輩と顔を見合わせ、胸を撫で下ろす。すると、今度は頬を可愛らしく膨らませて、明らかに不満気な顔をしている喜多ちゃんが目に入った。

 

「むーっ!何なの皆さん!私が知らない事情ばかりで通じ合って!私は仲間外れ!?仲間外れですか!?ズルいズルいズルいです!!」

 

わあああ!?今度は喜多ちゃんの不満が爆発だ!漫画の機関車みたいに蒸気を発し、分かりやすく憤る!

 

「落ち着け喜多女史…結束バンド広しといえど、私の家に上がり込んだのは貴女だけよ…?」

 

「く、黒井さん…!」

 

「へえ〜。郁代、此方んち行ったんだ?」

 

「あ、はい!リョウ先輩!私達凄く家近かったみたいで!あれからちょくちょくお邪魔してるんです!ねっ!黒井さん!」

 

「そうよ喜多さん…!貴女だけ仲間外れ、なんてことはないわ…!」

 

ほっ。喜多ちゃんの機嫌は直ったっぽい。ジェットコースターみたいな起伏。

 

「ごめん皆。大分話脱線した気がする。何の話ししてたっけ?」

 

あ、あれ…。なんだっけ?わ、私に関係ある話だったような…。

 

「虹夏、虹夏。アレだよぼっちのぼっち卒業大作戦」

 

「ああーっ!そうだった!ぼっちちゃん!クラスで話す子とかいるの?」

 

そうだった!胸が痛くなるこの話題!入学以来何も変わらずぼっちですすみません!

 

「伊地知先輩!ギターヒーローさんは孤高でいいんですよ!そもそもそこら辺の一般ピーポーにひとりさんの気高さも!崇高さも理解できるはずがないのだ!」

 

「ゴクウブラックみたいなこと言ってんなこいつ。えっでもぼっちちゃん、寂しいでしょずっとクラスで一人だと」

 

わ、私としては黒井ちゃんの意見に賛成…。は冗談としても。

 

「わ、私には皆さんがいればと、友達なんて…へ、へへっ」

 

言いつつ、頭を掻く。胸にほんの少しの引っ掛かり。

 

「う〜ん。でもさでもさ!ぼっちちゃんは面白い子じゃん!きっと皆気付いてないだけだよ!知ってさえ貰えたら友達なんかすぐ出来ると思うな!」

 

優しい言葉が何故か的確に刺さる。…高校に入学してから今まで、受け身の作戦でなにかが上手くいったかな?

 

…なにかしたいことがあるのなら、自分から動かねば。

 

私にとって、皆さんに結束バンドに誘って貰ったこと、これはもう奇跡に等しいのだ。

 

「で、出来るでしょうか…?わ、わたしにと、友達…」

 

「ぼっちちゃん!うん!きっと出来るよ!思い切って話し掛けちゃえ!」

 

凄いなあ虹夏ちゃんは。何か虹夏ちゃんの笑顔と明るい声で、途方もない事でも、実現出来てしまいそうな。そんな気になる。

 

「郁代郁代。ぼっち一人だと凄まじく心配。さり気なくフォローしたげて」

 

「勿論ですリョウ先輩!」

 

ヒソヒソとこんな話が展開されたのだが、後藤ひとりは知る由もない。

 

よ、よし。やってやるぞ…!に、二学期はたくさん友達作るんだ!

 

こうして、後藤ひとりによるぼっち卒業大作戦は開始されたのだった。

 

 

 

 

余談ではあるが、その夜、私は眠れなかった。

 

 

 

 

 

 

時は九月、夏休みが明け、クラスメイトたちの雑談する声が教室中に満ちる、後藤ひとりの昼休み。

 

私はいつもの如く、誰と話すでもなく、机に突っ伏していた。だが、今日の私は一味違うぞ。大いなる目的があるのだ。

 

そう!クラスメイトの誰かに話し掛けて友達になるという大いなる目的が!人いきれでむせ返る教室を、乾く口と、滲む汗を必死に押し殺しながら見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ひとりちゃん。…大丈夫かしら…」

 

心配になって様子を見に来てみれば。狩人の目してるわよひとりちゃん。とても友達作る人のそれじゃないわ。

 

「つうかまじでピンクなのね、アンタの友達。あんな派手なカッコで引っ込み思案って笑えるわ〜」

 

「全く…茶化しに来たの?さっつー?」

 

隣でクスクス笑う緑髪ギャルは佐々木次子。昔からの悪友。愛称さっつー。私のバンドメンバーを見たい!なんて言うから連れてきたのにこの言い草である。

 

「ゴメンゴメン。今のは性格悪かったかも。あの顔を見れば本気なのは伝わるしね。…アンタのバンドメンバーの友達作り、私も協力するよ」

 

「…頼んだわよさっつー。偶にひとりちゃんって私の想像の斜め上をかっ飛んでいくから…」

 

「ヤバい。その展開に少し期待してしまう自分がいる…」

 

「ほんっとに勘弁して…」

 

廊下からこっそりと教室の中を伺う。すると、少しの間を挟んで、ついにひとりちゃんが動いた。

 

「あっ!?」

 

「おっ」

 

椅子が擦れた音。意を決して立ち上がり、ターゲットは前で今流行りのバンドの話をしていた女の子の二人組みに絞ったようだ。

 

「あっ…ああああああのっ!」

 

吃りまくり。廊下の私達にも緊張が伝わるって事は、話し掛けられてるあの二人はもっとだろうか。

 

「お、後藤さんが話掛けてきた」

 

「珍しいぞ」

 

…凄いわあの二人。あんま動揺してない。しかもひとりちゃんの事をちゃんと認識してる。これはイケるかも…!

 

「はっあっ…!あっ、はっあっ…!」

 

あれ!?呼吸がおかしい。…これは、ヤバい!

 

「さっつー。次私がさっつーの肩叩いたら作戦、強制終了、ひとりちゃん回収よ」

 

「うえっ!?早くない!?」

 

「早くないのよこれが…。一手遅れたら大変な事になるのだから…。手負いの虎、もとい、手負いのひとりちゃんを侮ったら駄目よ…」

 

「マジかよ…」

 

まあ勝手に負った傷なのだが。油断なく状況を注視していると、急にひとりちゃんがギグバッグの方に振り返り、ファスナーを下ろしてギターを取り出そうとしている。それを確認して、私はさっつーの肩を迷いなく叩いた。

 

「行くわよさっつー!」

 

「ええっ!?」

 

困惑するさっつーをよそに、私はひとりちゃんに向かい一目散に駆ける!

 

「うおおお!一発芸やります!相撲の行司さ…!」

 

「させるかぁ!!」

 

ひとりちゃんのセリフに強制カットイン!ひとりちゃんの体を引っ掴み、強制的に教室から連れ出す!!

 

「…え、ええ〜…」

 

「…」

 

後には、困惑の表情が濃い話し掛けられた二人組みと、追いかけてきた佐々木次子のみ残された。

 

「あ、あはは〜」

 

取り敢えず愛想笑い。そんぐらいしかやる事がない。

 

「えっと…。貴女は確か、佐々木さん…。隣のクラスの…」

 

「う、うん、私。佐々木さん。ゴメン二人共。今のは見なかったことにしてやってくんない?多分、本人も悔やんでると思うから」

 

「そ、それはいいけど…」

 

「ゴメン、ありがとう。それじゃ!」

 

シュタッと手を掲げ、佐々木次子も二人組みのもとから去っていく。

 

「…嵐みたい」

 

「…ね」

 

残された二人組みは、そう呟いたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって。ここは私がひとりちゃんと一緒にギターを練習する時によく使う空き教室。取り敢えずの緊急避難先。

 

「はあっはあっ…!ひ、ひとりちゃん!何をしようとしたの!?」

 

「えっ!?こ、渾身の一発芸を…!」

 

「相撲の行司とか聞こえたわよ!?女子高生に相撲の行司ネタが通じるかぁ!よ!」

 

「マジやばー。後藤ってホントに斜め上かっ飛んでいくなあ…」

 

私達二人のリアクションを見てひとりちゃんは、叱られた子供のような表情になる。

 

「あ、だ、駄目でしたかね、一発芸…」

 

う。罪悪感。でも、これは言わないと。でないとまたやる。

 

「駄目駄目よひとりちゃん!あのギャグじゃ女子高生のハートは掴めないわ!」

 

「が、がーん!!」

 

「…まあ、相撲の行司はなあ…」

 

いや、ネタが云々の問題じゃないんだけどね、さっつー。

 

「…取り敢えず、作戦立てましょ。ひとりちゃん台本ないと喋れないでしょ?」

 

「は、はい。な、何か喋らなきゃ、ってなった時に頭が真っ白に…」

 

「それで一発芸?かっ飛び方が異次元だな、ごと〜」

 

「う、うう…。て、ていうか、貴女は…?」

 

「あ、そっか。私、佐々木次子。喜多の友達。アンタの友達作り、私も協力するよ」

 

「え…、あ、ありがとう、ございます…?ご、後藤ひとり、と申します…」

 

「堅っ苦しいな〜。よろしくなーごとう」

 

そういえば二人共自己紹介まだだったのね。…あれ?これもうさっつーが新しい友達ってことで良くない?…いや駄目ね。さっつーひとりちゃんと違うクラスだし。

 

「ひとりちゃん。作戦というかね、おまじないを授けるわ。私は会話の達人じゃないから、あの子達が言ってくることを完璧に予想なんか出来ない。だからね、ひとりちゃんが最初に話す一言、それだけ教えるわ」

 

「…。は、はいっ」

 

「あの二人、バンドの話をしてたでしょ?だからね、最初に、音楽、好きなんですか?こう、聞いてみて。あの二人なら、必ず何らかのリアクションを返してくれる。後は、…冷静に相手の話を聞いてみて。大丈夫よ。あの子達は、きっと怖くないから」

 

そうして私は笑う。ひとりちゃんの緊張を少しでも和らげるため。

 

「…まあ、頑張りなよ後藤。アタシ達もフォローするからさ」

 

さっつーも柔らかく笑いながら、ひとりちゃんの肩に軽く手を添えた。

 

「さ、さっつーさん。喜多ちゃん…」

 

少しずつ、ひとりちゃんの散っていた視線が集まり、目に意志が宿ってくる。

 

「…も、もう一回、頑張ってみます…!」

 

それを聞いた瞬間、私とさっつーの言葉は揃った。

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ日。今度は放課後。またも私達はひとりちゃんのクラスを訪れていた。相手方の二人にプレッシャーを与えたくないため、昼休みと同じ様に廊下に隠れて様子を窺う。

 

「何してんだろな…あれ」

 

「喜多ちゃん達、昼休みも来てたよね〜」

 

うう…。み、見られてる…。これはひとりちゃんには早く決めてもらわなきゃ…。

 

「注目集めてんな〜」

 

「…我慢して、さっつー。ひとりちゃんの為よ」

 

「…お。動いたぜ」

 

その言葉とともに、教室に目を移す。ひとりちゃんは再び、あの二人組みの前に立っていた。…昼休みの時にはあった、強張った表情は、今はない。

 

「あ、あの…」

 

「うん、後藤さん」

 

「来ると、思ってたよ?」

 

「お、お二人は、音楽…好きなんですか?」

 

…ファンファーレの一つでも吹き散らかしたいくらいの良い気分ね!見た!?うちの子、やったわよさっつー!

 

「誰目線だよ喜多?まだ喜ぶには早えって」

 

…そうだった。さっつーの言葉に気を引き締め直す。

 

「好きだよ!後藤さんの事もずっと気になってたんだ!」

 

「ギグバッグ背負ってるから…。ひょっとしたらバンドやるのかな!?バンド女子なのかな!?カッコいい!って!」

 

「えっ!?えっとその、あのう…!」

 

「…ゴメンね、話し掛けられなくて。怖かったんだ」

 

「…えっ?」

 

「ううん違うの、後藤さんが怖いわけじゃなくてね?何か後藤さん…繊細そうで。無神経に触ったら崩れちゃうんじゃって思って」

 

女の子達とひとりちゃんの間に瞬間の沈黙が降りる。

 

「…だからね、話し掛けてもらえて、嬉しい…。ご、後藤さん。後藤さんさえよければ、これからもお話しよ?」

 

「えっ…、そ、それはつまり…?」

 

「うんっ!私達と、友達になって!」

 

その言葉を聞いた瞬間、ひとりちゃんの背中が反る。床に膝をついて、両手は天井に突き上げて。まるで有名映画のワンシーンのようだ。

 

「やっ…!やったあああああ…!!」

 

「さ、流石に大袈裟だよ後藤さん!?」

 

ここまで見届けて、私達は二人組みとひとりちゃんの前に出て行く。拍手をしながら。

 

「ブラボー、おお、ブラボー…。貴女達の優しさも、ひとりちゃんの勇気も、全部見せてもらったわ…!」

 

「黒幕みたいな登場だな喜多。ゴメン二人共。盗み見てた。さっきぶりだな」

 

私をよそに、さっつーは二人組みの女の子達に挨拶。

 

「うん、佐々木さん。…丸見えだったよ?」

 

「うぐっ…。武士の情け、感謝する」

 

「ううん、感謝なら私達も。ありがとね、後藤さんと引き合わせてくれて」

 

この子達、凄く良い子ね。ひとりちゃん、見る目あるわよ。

 

「後藤さん。私、いつか貴女が弾くギターが聴いてみたい。期待してるからね!」

 

「ウンウン!頑張って後藤さん!」

 

「あ、ありがとうございますお二人とも…!ぎ、ギター、触ってみます…?」

 

「え〜?いいの〜?ありがと〜う!」

 

楽しそうに話す三人を見ながら、私は成功の余韻に浸った。

 

「良かったじゃん喜多。上手くいって」

 

「…さっつー。私今赤ん坊が初めて歩いたのを見た気分」

 

「だから誰目線なんだって…」

 

そんな会話を交わしてると、ひとりちゃんが会話を一段落させてコチラに声を掛けてくる。

 

「き、喜多ちゃん。さっつーさん…。き、今日はありがとう…、わたし、ひとりじゃ絶対できなかったと思う…」

 

その言葉を受けて、私より早く、さっつーがひとりちゃんに言葉を返した。

 

「謙遜すんなし。最後勇気出したのは後藤だよ?私達は背中押しただけ。やるじゃん!」

 

「…!あ、ありがと、さっつーさん…」

 

温かい言葉に、ひとりちゃんの頬が緩む。私といえばさっつーの言葉に、私が以前黒井さんに掛けられた言葉を思い出していた。そっか。黒井さんも、こんな気持ちだったんだね。

 

「喜多さん!佐々木さん!私達ももう友達だよね!」

 

「うんっ!勿論よ!ひとりちゃんの扱いに困ったらロインして!余すことなく対処法を教えるから!」

 

「珍獣扱い!ウケるわ〜」

 

五人で会話しながら、私は今日一日を振り返る。最初こそどうなることかと思ったけど、ひとりちゃんが一歩前に進んで、結果としては凄く良かった。これは結束バンドの皆さんにも、いい報告が出来そうだ。

 

夕闇の迫る教室に、五人分の笑い声が響く。

 

二つ目の余談になるが、後藤ひとりちゃんがこの二人に、いや…。全校生徒にギターを披露する機会が近付いている事は、今は全員、知る由もなかった。

 

 






原作にもいたひとりちゃんに話掛けられた二人組みをイメージして作りました。…名前は、どうしようかな?

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