女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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姉御は何処にでも現れるから話を作りやすいな。酔い潰れて路上で寝るのは春や秋なら大丈夫。夏と冬はやめといたほうがいいですよ。マジでね。


3 酔っ払いにシクハック!!

 

 

ええっちょっ…!?人間に躓いた!比喩とかじゃなく!物理的に人間にけっ躓いた!人生で初めてかも!?い、いや!そんな事考えてる場合じゃない!お、お姉さん!そんなところで寝ていると蹴っ飛ばされちゃいますよ!?

 

駅前の人混みは行き倒れているお姉さんを中心に二股に別れて何事もないように事をスルーしていた。冷てえなおい!?いや私だって急いでいたらそうするかもだけど…。と、取り敢えずここはマズイ通りの真ん中だ。私は背負っているギグバッグと、お姉さんの背中にあったギグバッグを取り外して通りの端に避けると、お姉さんの手を自身の首と肩に引っ掛けて、渾身の力を足にこめる。あ、ちゃんと息はしてるな。よかっ…。うげあ!?酒クッサ!!んだよタダの酔っ払いかよ!?

 

フラフラとしながらお姉さんを担ぎなんとか通りの端まで移動する。少なくともど真ん中で行き倒れているよりマシなはずだ。…よし、任務完了!こんな事してる場合じゃない、ギターヒーローさんの捜索に戻らねば!!意を新たに振り返ろうとするとガシッと。シッカリとした力で腕を掴まれる。

 

「た…旅のお人や…後生じゃ…み、みず…水を…」

 

ケン◯ロウかなにかかよ。自分でコンビニで買えよこの酔っ払い!…だが、分かる。分かってしまう。どう見てもこの人、もう限界だ。そんな余裕はないのだろう。だからこそ頼んでるわけで。こういうときは何ていうんだっけ?乗りかかった船?毒を食らわば皿まで?うん。今の心持ちはそんな感じだな。仕方ないなもう!!

 

「水、買ってきます、お姉さん。楽にしてて下さい」

 

「…えっ、ありがとぉ…きみ、やさしいね…」

 

全く世話が焼ける酔っ払いだ。

 

「…ほんっと申し訳ないんだけど、出来れば頭痛薬としじみの味噌汁も一緒に…あたまがわれそうにいたくてさ…」

 

…。

 

図々しいなコイツ。全く全く!!世話が焼ける酔っ払いだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ずずず…。う、美味い…ううう、ありがとう…人の優しさが身に沁みるよ…」

 

しじみの味噌汁を啜りながら、涙目で感謝してくるお姉さん。大袈裟でしょ流石に。

 

「全く。気を付けて下さいよ飲み過ぎには。お酒は美味しいらしいですが、酒は飲んでも飲まれるな。という言葉もあります」

 

「うん…努力する…。…う、うおう」

 

?なんだろう。目の前のお姉さんと目が合った瞬間、お姉さんの目が見開かれた。顔に何かついてたかな?

 

「い、いや〜。さっきまで気付かなかったけど、君凄いロックな見た目してるね〜ピアスバリバリにタトゥーもビシーっといれちゃって!」

 

ああそっちか。確かに色々飾り付けてるもんな。

 

「はい、気合入れてるんですよ自分に。こんなにカッコつけてるんだ。下手なプレイは出来ないぞ?って。お姉さんのタトゥーとマニキュアもカッコいいですね!」

 

「アリガト。…へぇ〜。カッコいいね。キミ」

 

「カッコつけているだけですよ。いつかこのカッコに相応しい自分になれるように、努力あるのみです。ではすいませんそろそろ。私やらなきゃならないことがあるので」

 

簡潔にそう告げ、その場を後にしようとすると、先ほどより確かな力で手を握られる。

 

「ちょっとちょっと!?恩があるのにこのまま行かせられないよ〜!何か私にできることない?御恩返し!させて!」

 

御恩返しか…。立派な心掛けだが特には…。あっ、そうか。

 

「そしたら一つ。お姉さん音楽やりますよね?ギターヒーローさんってオーチューバー知りませんか?知り合いにいたりとか…」

 

お姉さんは目を見開いた後一瞬考え込んで。

 

「ん〜。ごめ〜ん知らな〜い」

 

「うーん。そうですか…」

 

「なになに?探してるのその人のこと?」

 

「はい。私が音楽を始めたキッカケの人なんですよ、憧れなんです!会ってみたいんです!」

 

「…へ〜え〜」

 

そう言うとお姉さんは私と目を合わせ、じっと覗き込んでくる。まるで私の心の裏側まで覗き込むように。…綺麗な人だなぁよく見ると。只の酔いどれだと思ってしっかり見てなかった。パーツ一つ一つが整った顔立ち。小豆色の髪を片側に三つ編みお下げにして纏め、グリーンのワンピースに、足元はなんと下駄。背負っていたギグバッグに入っているのはギターかベースか。どちらにせよ、恐らく只者ではない。お姉さんの目の奥を覗き込む限り、そんな気がしてならない。

 

「ふふ。目キラキラさせちゃって。ほんとに憧れているんだね。分かった…。私は知らないけど私のバンド仲間やお客さんが知ってるかもだよ!聞いといてあげる!」

 

「!!ほ、ホントですかありがとうございます!!や、やった…!!これは思わぬ収穫…!」

 

「いやいやこんなんでいいならいくらでもやるよ〜、なにせ私の命の恩人だからね!」

 

大袈裟ですよ頭痛薬と味噌汁奢ったくらいで。だが。恩を感じてくれているこの際。最大限利用させてもらおうかな。自分でも悪いことを考えていると自覚しながら、心の裏側でほくそ笑んでいると、お姉さんから願ってもない提案をされる。

 

「ねえ、カッコつけの君!ロイン交換しようよ!私貴女のこと気に入っちゃった!ギターヒーロー?のこと分かったら連絡するからさ〜!どう?」

 

カッコつけの君か。私にピッタリだな。いつか格好に腕が追いつくように頑張る。それが私の目標。この人私のことをよく見てる。

 

「い、いいんですか!?も、勿論お願いします!!え、えっと…!?」

 

「あ、そっか名前か!私、廣井きくり!誰よりもベースを愛する天才ベーシスト!!ヨロシクね!」

 

ベーシスト。ベースの方か。しかし。自分で自分のことを天才と呼ぶとは。…でも多分この人の場合は、言い過ぎってことはないんだろうな。只者ではないもん間違いなく。佇まいからして。

 

「私は黒井此方と申します!オーチューバーギターヒーローさんに憧れる、女子高生ギタリストです!!」

 

「此方ちゃんか!こなちゃんって呼んでい〜い?私のこともきくちゃんって呼んでいいから!」

 

距離の詰め方エグいな!曲がりなりにも年上の方にそんな気安い呼び方出来んわ!

 

「私のことはご自由にお呼び下さい。…きくりさん」

 

ここらへんが私に出来る最大限の譲歩である。

 

「…む〜。なんか距離を感じるな〜…まあ、仕方ないか…。ヨロシクねこなちゃん!いつか一緒にセッション!しようぜ!」

 

「はい!是非お願いします!!」

 

「うん!!…そしたら私、そろそろライブだから行くわ!…こなちゃん!またね!!」

 

「はい!!色々ありがとうございますきくりさん!!さようなら!!」

 

ビシッとハンドサインを作りながら金沢八景駅方面に去っていくきくりさんを見送る。…思わぬところでバンドマンの友達出来ちゃったな…!一気にギターヒーローさん見つかっちゃうかもな!なんて調子に乗った事を考えていると、一度去りかけていたきくりさんが戻ってくる。なんだ忘れ物かな?

 

「よく考えたら財布の中に今一銭もない!!ゴメンねこなちゃんさっきの含めてぜっっったいに返すから、電車賃貸して!!!」

 

そのセリフを聞いた途端、私の眉間に鋭い痛みが走る。…だいじょ〜ぶかなぁこの人。知り合ったメリットよりデメリットのがデカかったりしないだろうか。などと一抹の不安を感じながら、まあ。致し方ない。毒を食らわば皿まで!!の精神で、新宿までの電車賃をきくり姉に貸し付けるのだった。

 

 






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