女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
上のような事を喜多さんに言ったら一体どうなるのだろう。鉄拳制裁かな。それとも明るい表情からすんっと光が消えて、無視されちゃったりするのかな。どっちも恐ろしいな。
ふふふ。最近ギターヒーローさん探しが順調だ。なんとそれ繋がりでロインの友達が二人も増えた。ぽいずんやみさんと、廣井きくりさん。
この二人はギターヒーローさんについて何か分かったら連絡をくれることになっている。一人で当て所無く探していた頃と比べると格段の進歩だ。しかも片方の人は音楽ライター。音楽のことに関して顔が広いだろうし、手に入れた情報を分析する能力も高い。ギターヒーローさんが、金沢八景周りに住んでるかも!みたいな情報は彼女からもたらされたものだ。
もう一人の、廣井きくりさんも、腕利きのバンドマン。聞けば新宿はFOLTというライブハウスでワンマンライブを開催するほどの人気バンドの方なのだ!…凄い人と知り合いになったな。私。この二人が協力してくれれば、向かうところ敵なしよ!
さて、今日も今日とて、ギターヒーローさん探しだ。学校が何時もより早く終わった帰り道。今度は金沢文庫駅に向かうため、下北沢の駅へと足を向けていた。…のだが。
「はあ〜…」
その道すがらにある公園。その中にあるブランコに腰を下ろして、顔を下に向けあからさまに落ち込んでる、赤い髪の女の子の姿があった。背中には白いギグバッグを背負っている。…バンド女子か。
それにしたって凄い落ち込みっぷりだ。周りの植物まで生気を吸われて少し元気ないように見えるもん。なんか彼女を中心に黒い霧みたいなものが渦巻いているような…。そんなものまで幻視するような落ち込みっぷりだ。…バンド関連で何かあったのかな。
まあ。私もバンド活動での失敗。一度もしたことがないわけではない。弟がバンド組んでた時、何度かサポートとして駆り出された時とかに色々あったよそりゃ。どんなに頑張ったって、失敗する時は失敗する。切り替えが大事なのだ。…駄目だ妙に気になる。ギターヒーローさん探しはまた今度ね。
「どうしたの?大丈夫?」
もはや小さく震えているようにも見えるその肩に声を掛ける。出来る限り優しく。…すると、赤髪の女の子は私の声に反応して顔を上げた。
うわ。かんわいい。紛うことなき美少女。ウエーブが少しかかった赤い髪を小さく一束だけ束ねてサイドに流した髪型。コレでもかというぐらいに整った顔立ち。印象的な大きな目は、少し潤んでいるようにも見えた。…そして、その制服。見たことあるわ。秀華高ね。秀華高生だ。
「…え?わ、私?」
「そう。大丈夫?なにか悲しいことでもあった?ほら取り敢えず。涙、拭きな?」
そう言ってハンカチを取り出し、そっと手渡す。赤髪の美少女は唖然とした表情で私を見つめていた。
「あ、ありがとう…す、凄い格好しているのに、優しいのね…」
歯に衣を着せ忘れてるなこの子。まあいいけど。その後思い出したかのように渡したハンカチを目に当てて涙を拭く。
「あっ…ご、御免なさい…ハンカチ、洗って返すわね…」
遠慮がちに呟く彼女の手からハンカチを奪い取り。
「いいっていいって!貴女みたいな美少女に使われて私のハンカチも喜んでいるってものよ!…そんなことより、良ければ話してくれない?何があったのか。音楽関連なら、話、聞いてあげられるかも」
その言葉に少女は目を少し見開き。
「え…な、何で音楽関連って…」
「分かったかって?ギグバッグ背負ってるじゃん貴女。そんな子が落ち込んでるならそれは大体音楽関連なのよ」
続けて語りかける。
「一人で抱え込むより誰かに話しちゃったほうが心は軽くなるわよ。私も音楽やるから。実体験」
そう言ってヒラヒラと手を振る。少しでも彼女の気が軽くなるように。
「あ、ありがとう…。で、でも。私。もう戻れない。…取り返しのつかないこと、しちゃったから…」
むむ。これはもしかしたら私が思うよりずっと事は深刻なのかも。精々ギターをトチったとか。メンバーと口喧嘩しちゃったとか。ライトなとこから来るかな?って思ってたのに。…まあね。前回と同じよ。乗りかかった船!!覚悟を決めて言葉と共に前に出る。
「取り返しがつかない事なんて、実は意外と少ないものよ。諦めさえしなければ。…話してみて」
すると彼女は最初はおずおずと。しかし、私の目を見返して、私と同じく覚悟を決めたのか。少しずつ事の顛末を話し始めた。
♪♪
「…そういう理由なの。私。先輩たちに嘘ついて。挙句の果てに逃げ出しちゃった卑怯者なんだぁ…」
「へ、へ〜。ふーん。ほ〜ん」
彼女は己の罪を噛み締めるように、浸るように言葉を投げ出す。私は内心焦りながら、彼女の告白を聞いていた。
いや!!思った以上にやらかしてんなこの子!!聞いてた時点でアウトな部分が既に二つはある!!ツーアウトだよ、もう一つアウトでチェンジだよ!?
バンドしている素敵な先輩が居たからお近づきになりたくて、ギターが出来るって嘘をついてバンドに入って(ちなみに彼女の担当はギターボーカルだそうだ)挙げ句練習しても全く出来るようにならなかったから、ライブの当日になって逃げ出した!?だとう!?
まずね。ギターが出来るって嘘をついたこと。これが良くない。人によっては嘘をつくだけでアウトな人もいる。ほら。ひぐら◯の鳴く頃にの彼女とか。
後も一つ。ライブ当日に逃げ出す!これもアウト!行動が突飛すぎるよ、せめて何日か前にギター出来ません。って素直に告白できていれば先輩側にも選択肢あったかもしれないのに!当日じゃあ中止するしかない。
言いたいことが胸の中にオーケストラみたいに吹き荒んでいるけど、目の前の子の顔に浮かぶ色が濃い後悔を見ると私は、二の句が継げずにいた。多分私が思ったこと。それは彼女が一番分かっているのだろう。だからこそ、恥ずかしくて誰にも言えずにここで一人悔し涙を流していたのだ。
「…私だって。出来ることなら戻りたい。あの優しい先輩たちの下に。ああ、戻れるなら何だってしてやるわよ。ギターが出来る私なら、先輩たちのライブに穴を開けることもない。…でも私!どんなにギター頑張っても弾けるようにならなかった!!必死に頑張ったのに!!なんで!?なんでよ!?私には…!!才能が、ないっていうの…!?」
もはや隠すこともせず。大きな瞳が揺れて、涙がポロポロと溢れ出す。ともすれば漏れそうになる嗚咽を、口を真一文字に結んで必死に噛み殺すさまを見ていたら。分かってしまった。
ああ。この子は本気だったんだ。動機こそアホっぽいけど、先輩たちのライブに穴開けたくなくて、必死になって練習して。頑張って。それでも叶わなくて。悔しいよね。不甲斐ないよね…。『分かるわよ』
私が何でこの子を放っておけなかったか分かった。この子、ギターヒーローさんが絡んだ時の私に似てるんだ。キュッと視界が狭まって。目的以外何にも見えなくなって。時に間違ったり、ズレた行動をしてしまう。そして…。悔し涙を流す。そっくりだわ。
「…間に合わなかったのは、しょうがない。貴女は真剣だったのだから、ソレだけでも伝えに行きましょう。…私も、一緒に行く、ぐらいのことは出来るし」
ハッと彼女が顔を上げる。今度は顔に困惑の色が浮かんでいた。
「…なんで?なんで今日会ったばかりの私にそこまでするの?私にそんな価値ないよ…只の臆病風に吹かれた卑怯者だもん…」
「卑怯者は泣いてまで己の行いを後悔したりしないものよ。貴女はまだ諦めきれず。そこに立っているじゃない」
「!」
「それに。貴女似てるのよ。私に。他人の気がしないから手を貸したい。ただそれだけ」
「貴女が…私に…似てる?」
「そう。まあ、それは別の機会に話すわ。…因みに、そのライブっていつだったの?」
「えっ…?えっと。これからよ。今日の夜六時…」
!?それを聞いた私は自分のスカートのポケットに手を突っ込み、スマホを取り出し時刻を確認する!現在時刻…午後二時!
「なんだ。まだ全然何とかなるじゃない」
「えっ…!?」
困惑する彼女を尻目に思考を回す。私は曲がりなりにもギターヒーローに憧れてギターの腕を磨いてきた女だ。
「ならば。今日のライブ。貴女の代わりに私が出るわ。ギターとして」
「なっ!?だ、駄目よ!会ったばかりの貴女にそんな迷惑はかけられないわ!!」
予想通りの答え。だって多分私でもそう言うから。だから私は次の台詞で彼女の体のいい逃げ道を塞ぐ。
「そう言うでしょうね。でも。貴女にも役割があるわ。私はギターを弾くだけ。ボーカルは貴女がやりなさい」
「え、ええっ!?」
「貴女は私と似てると言ったでしょう?私なら、ギターが出来ないならボーカルだけでも!って思って、練習は欠かしていないはずよ」
「…それは!…そう、だけど…」
「さっき貴女は何でもすると言った。ならばココで私に誓いなさい。貴女は今日のライブのボーカルを務め上げる!そして、結果はどうなるか分からないけど、その先輩さんたちに事情を話して謝りなさい!貴女の心の中の後悔を清算するのよ!!」
「う、ああ…!う…!」
「…出来ないとは言わせないわよ?なにせ貴女は言った。戻れるならば、なんでもすると」
未だ困惑の色が根強い表情と目を見ながら、私はニヤリと笑ってみせる。確かに今日会っただけ。貴女にココまでする義理はないのかも。…でもね。たま〜に。私は理屈に合わないことをする!!そしてそんな自分の事が、たとえ成功しようが失敗しようが!!結構好きだったりするのだ!!
「…さて。返答は如何に?」
たっぷり三十秒ほどは見つめ合っただろうか?少しずつ彼女の視線は下がり、目は見えなくなってしまったが。私は知っている。見えなくなるその前の目は。少なくとも後悔や。自己嫌悪に塗れた、以前の目ではなくなっていたことを。
「…ありがとう。…行きましょう」
彼女は真っ直ぐと私の目を見返し、決意に満ちた表情でそう言った。私は口角を釣り上げながらこう返す。
「そうこなくっちゃ!!」
かくして我々は歩き出す。未知なる場所に。荒風吹き荒ぶ戦いの荒野に。
さて、次回いよいよSTARRY。おなじみのキャラたちが登場するぜ。
この小説、オリジナルな展開が多めです。苦手な方、お気を付けを。
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