女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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めっちゃ期間空いちゃった。ごめんなさい!

今回の話、すんごく難産でした。

いっぱいキャラいると難しい…!




42 ヨヨコと虹夏

 

 

シクハックさん主催のクリスマスライブが終わった後、私たちは下北沢に移動し、お姉ちゃんの誕生日パーティに参加していた。シデロスの皆もシクハックさんたちも誘ったら快く来てくれたし、楽しいパーティの筈なのに、私の心は曇ったままだった。理由は何となく分かってる。

 

「こら大槻ヨヨコ!そのラストワンのポテトは私の物よ!」

 

「確かにまたね!とは言ったけど!復活早すぎるでしょアンタメンタル鋼か!?」

 

あの二人を知ってる人からしてみればいつも通り、いつも通り過ぎる光景を眺める。私は、落ち込むこなちゃんに声を掛けることができなかった。今も何故か、騒ぐこなちゃんから視線を外してしまうし。

 

こんなん全然私らしくない。本人は元気そうだし、もう大丈夫とも言ってた。…でもさ、気になるんだもん。しょうがないじゃん。

 

リョウや、バンドの皆は言ってくれた。仲間の為に泣きべそかくまで右往左往して心配できる、それが私の良さだって。…私に、何かできることはないのか。

 

そんな事を思いながら、目の前の光景に心を戻す。取り敢えず、こなちゃんと大槻さんのポテト争いに巻き込まれたぼっちちゃんが涙目だ。

 

「いい加減にしなさい二人とも!ぼっちちゃんが困ってるでしょ!ポテトなんかいくらでもあるんだからやめなさい!」

 

「「ぴぃっ!?」」

 

「あ、あうう、にじかちゃん…!」

 

全く、と呟きながらぼっちちゃんを救出して、隣に座らせる。ちなみにこの間、リョウはまるで意に介さずにスマホをタプタプしていた。こ、こいつ…!

 

するとこなちゃんと大槻さんの二人はなんか少し遠慮がちになりながら、全く同じタイミングで目の前のポテトに手を伸ばす。私はそれが少し可笑しくて思わず呟いた。

 

「ふふっ。二人ってさ、意外と仲良いよね」

 

その言葉に二人は、迅雷のスピードで反応。

 

「はあ!?コイツと仲良い!?冗談でしょ伊地知虹夏!目ん玉ガラス玉なんじゃないの!?」

 

「そうですよ伊地知先輩!コイツは憎たらしい敵です!仲良いわけないです!!」

 

「うんゴメン私が悪かった」

 

めんどくせえ〜。流石の私でも分かる。この二人は口や態度ほどお互いのことを嫌ってる訳じゃない。でも、昔からの事だから素直に認める訳にもいかないのか。

 

…分かる気するかも。例えばリョウが急に品行方正になって、虹夏さん。はしたないわよ?なんて言い出したら誰だよコイツってなるもん。

 

…違うな。こんなん話したいわけじゃない。妄想リョウにはちょっとどいといてもらって。私はこなちゃんの隣に座り直した。

 

「…ん?い、伊地知先輩?」

 

キョトンとした顔。珍しい。いつも思い立ったら真っすぐ一途で、迷いなんか全く見せなかった貴女の、そんな表情。

 

「…ね。こなちゃん。私たちいろいろあったよねぇ?バンド組んでからさ」

 

こなちゃんの頭の上のはてなマークが更に大きくなる。それに構わず私は続ける。

 

「私はさ。頼れるリーダーなんかじゃないよ。なんならこなちゃんやリョウとかのがよっぽど頼りになるし。…でもさ。こんな私にだって、できることもある」

 

こなちゃんの奥に座るリョウの、似合わない真面目な表情が、やけに目に入った。

 

「こなちゃん。今日悔しかったのは貴女だけじゃないよ。全部は分からない。けどね。一緒に背負うくらいならできるから」

 

黒井此方ちゃんの目が大きく見開かれた。

 

「こなちゃんは、私の夢を一緒に背負うって。そう言ってくれたよね?ならさ、私も一緒に背負うよ。…背負わせてよ。仲間じゃんか。私たち」

 

そう言って、こなちゃんの肩に手を置く。すると、表情を崩したリョウが、私の言葉に続ける。

 

「…此方。バンドは一人でやるもんじゃない。メンバーの悔しさは、メンバーが返す。王道だろ?一人でやろうとするなよ、水臭いぞ?」

 

そう話すリョウは不敵に笑っていた。

 

「わ、私もいますよ黒井ちゃん…。も、もっともっと練習して、バンドとして息合わせて、も、もちろん個人でも腕を上げて…!つ、次は勝ちましょう…!協力します!」

 

「私だって!黒井さん!バンドは家族!例え一人の腕じゃ敵わなくとも仲の良さなら負けないわよ!チームワークで戦いましょう!そしたら次は勝てるわよ!」

 

話を聞いていたぼっちちゃんも、いつの間にかこちらに来ていた喜多ちゃんもそう言ってくれる。そうだよね。やっぱり、悔しいよね。私は、顔を上げて、大槻さんに向き直る。

 

「だからねこなちゃん。今日は、私が言うよ。…大槻ヨヨコさん。シデロスの皆。…次は、負けない」

 

大槻さんの目を真っ直ぐ見据えて宣言する。

 

「い、伊地知先輩…。みんな…」

 

こなちゃんは少し驚いたような顔をしている。ふふん。君はね、少しは皆から人望あるってことだよ。すると、静観していた大槻さんは、私たちを見渡した後、ふっと表情を崩した。

 

「…良い仲間ね。黒井此方。…伊地知虹夏。そして結束バンド。望むところよ。未確認ライオットだろうがどこだろうが。構わずにかかってきなさい!私たちが負けるなぞ、それこそ有り得ないのだから!」

 

指をビシリと突き付けられる。言い放った大槻さんは、どこか嬉しそうだった。

 

すると、いつの間にか大槻さんの後ろに集まっていたシデロスの皆。あくびちゃんが拍手をしながら補完してくれる。

 

「お見事ですよ〜結束バンドのみなさ〜ん。貴女方はヨヨコ先輩に認められました〜!一度認めると著しくデレますからねこの方〜」

 

「んなっ!?あくび!?」

 

「ヨヨコ先輩嬉しそうですね〜!本気で競い合ってくれるバンドがいるのが嬉しくてしょうがないんでしょ〜?」

 

「ふ、楓子…!そ、それは…!」

 

「…でも、結束バンドさ〜ん。一つ、覚えておいて〜。負ける気がないのは、貴女たちだけじゃない」

 

「…っ!?」

 

緩く喋っていた雰囲気を一変させ、内田さんから鋭い眼光を叩きつけられる。

 

「私はヨヨコ先輩を一番にする。誰よりも純粋で真っ直ぐなこの人を」

 

「…私もっす。どんなに遠くに見える夢でも愚直に曲がらずに突き進んでいくこの人を!」

 

「大体!ヨヨコ先輩は一人じゃ駄目なんです、寂しくて泣いちゃうから!」

 

「「「私たちは、大槻ヨヨコを女王にする!!」」」

 

…まるで示し合わせたかのようにシデロスの皆の声が重なる。私たちが初めてぼっちちゃんを勧誘しにいった時みたいに。

 

「負けないっすよ。結束バンドさん?」

 

「あ、貴女たち…!」

 

僅かながら涙目でシデロスの皆を振り返る大槻さん。凄いや。やっぱ、人望あるんだね。

 

「望むところだよ!シデロス!…ししし」

 

「…?なによ、伊地知虹夏。何が可笑しいの?」

 

思わず笑みが漏れた私に、怪訝そうな表情を浮かべた大槻さんが問いかけてくる。

 

「シデロスの皆が言うのなら間違いないかも。大槻さん。私たちを認めてくれたんでしょ?」

 

「んなっ…!?そ、それは、その…!」

 

「…嬉しいよ。貴女みたいな凄い人に認めてもらえるの!これからも切磋琢磨していこうね!大槻さん!」

 

「…ヨヨコよ」

 

「へっ?」

 

「だ、だから!そのう…。ら、ライバルだというのに貴女たち!なんか距離感じるのよ!ヨヨコと呼ぶことを許可するわ!だ、だからそのう…。あ、貴女のことも、に、虹夏って、呼んで、いい…?」

 

トレードマークのツインテールを指で弄りながら、大槻さんが上目遣いで聞いてくる。は〜なるほど。こなちゃんが言う通りだ。これは、人誑しだわ。

 

「うんっ!もちろんだよ!ヨヨコ!よろしくね!」

 

「じ、じゃあ、に、虹夏…」

 

「ヨヨコ!」

 

「に、虹夏!」

 

「ふふっ、ヨヨコ!」

 

かたや赤面。かたやニコニコしながら名前を呼び合う二人。張り詰めていた雰囲気は、糸を解すように緩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所から、その成り行きを見守っていた、星歌は日本酒を煽りながら呟く。

 

「…な〜んか仲良いなあいつら。ライバルバンドなんていったらもう少しバチバチしてるもんじゃねえの?」

 

隣にいたきくりが、静かに頷く。

 

「そうですね。でも…あの子たちは、あれでいいんだと思います。…先輩。いい、妹さんですね」

 

「どしたよ。いつになく真面目なツラして」

 

「…大槻ちゃん。ずっと寂しそうで。ついてきてくれる仲間はいても、対等な立場でぶつかり合える、そんな相手はいなくて。私は先輩だから、その役はできない。…でも、結束バンドの皆なら」

 

「ひ、廣井。おまえ…」

 

「オー。いつになくきくりがまともデス!」

 

らしくない、静かなきくりの語り口に面くらう志麻とイライザ。

 

「ぐぬっ…!で、でも、よかったです。少し、安心しました」

 

ドタバタと騒がしい若者たちを眺めながら目を細めるきくり。その様子を流し見ながら、コップを傾けた後、星歌は言葉を掛ける。

 

「お前、なかなかいい先輩じゃん」

 

何かからかわれたのか、顔を赤くしながら叫んでいるヨヨコと、それを宥めている虹夏を見つめながら、星歌は更に言葉を続けた。

 

「お前が見ている限り、あの子は大丈夫だな。…それと。ありがとうな。廣井。仰る通り、虹夏は私の、自慢の妹だよ。全く…真っ当に育ちやがって。誰に似たんだかな!」

 

ははは!と、珍しく歯を見せて笑う星歌。その表情を見ながらきくりは、柔らかく表情を緩めて、胸中で呟いた。

 

(ふふっ。…そんなん言うまでもないじゃん?ね、先輩?)

 

 

 

 

「やべえ。いつになく廣井がマトモなんで突っ込む相手がいねえ」

 

「いいことじゃないですか志麻〜!ゆっくり、ホネヤスメ?出来ますヨ!」

 

「そうですよ皆さ〜ん。今日は店長の奢りなんですから〜。楽しく飲んでしまえばいいのです!」

 

「こういう会は普通逆なんじゃねえかPA?まあ、いいけどよ」

 

「よっしゃ!!皆!先輩の金でぶっ潰れるまで飲んで騒げ!」

 

「ようやく機会が巡ってきた!コラ廣井!無礼講ったって限度があんだろ!」

 

「いだだだだ!!志麻堪忍して!そっちの方向に腕は曲がらねんだわ〜!!」

 

「あっはははははは!!」

 

「す、凄い。店長がいつになく上機嫌でバカ笑いしてる…!」

 

「お酒のチカラですネ〜!」

 

かくして下北沢、クリスマスイブの夜は更けていく。途中に結束バンドの星歌へのプレゼント会があり、リョウが自作の雪だるまを室内に持ち込もうとして全員に阻止されたり、ひとりの単独リサイタルがギターの弦が切れて未遂に終わったりと、いろいろあった。

 

そして、時が過ぎ、宴もたけなわという頃。その雰囲気を引き裂く、虹夏の鋭い声が一同に飛ぶ。

 

「やっば!!み、皆さん終電!もうテッペン回ってますよ!!」

 

時間は少し午前零時を過ぎた頃。選べばまだ、電車は動いているかもだが、外の雪は意外と強い。

 

「やっべ〜。どうしよ」

 

「諦めんな廣井!今から大通り出てタクシー探せば…!」

 

「ここから動きたくない〜!」

 

「このままじゃ野宿だってんだよこの極寒の日に!」

 

「わ、わあ…っ、い、イヤですゥ〜」

 

「ほら見ろイライザがちい◯わみたいに!」

 

クリスマスイブの下北沢に降る雪は積もり始めていて、外を走るタクシーを探すにも一苦労しそうだ。

 

「何だおめ〜ら。終電逃したの?」

 

いつの間にか、燗をつけていた日本酒を片手に、戻ってきた星歌が問う。

 

「うっ。じ、実は…」

 

「ったくしゃ〜ね〜な。…まあ、私の二十代最後の夜を祝ってくれた礼だ。一宿くらいは提供してやるよ」

 

「えっ!?い、いいの先輩!?」

 

「今回だけな。雑魚寝ですまんが勘弁しろよ?シデロスの子らも!」

 

「は、はいっ!えっ!?」

 

「何呆けてる。こんな時分に未成年だけで帰すほど私は鬼じゃねえ。皆さえ良かったら泊まってけ。だが!親御さんには連絡しとけよ、私との約束だ」

 

「え、そんっ…、あ、ありがとうございます!!恩に着ます!」

 

「やっぱ礼儀はできてんな。先輩の厚意には四の五の言わずに甘えとけ。おし。ほんだらパパっと戸締まりして上の部屋いくぞ。続きはそこでやろう」

 

小さく、入るかなこの大人数…、と呟きながら星歌は踵を返す。その背中を見ながら、ヨヨコは隣の虹夏に呟いた。

 

「虹夏。貴女のお姉さん…。か、カッコいいわね…!」

 

それを聞いた虹夏は、ニカッと笑顔を浮かべてこう返した。

 

「でしょヨヨコ!私の、自慢のお姉ちゃん!」

 

 

 

 

 

すっかりと仲睦まじくなった二人の会話を、後ろで聞いていたメンバーは、思い思いに言葉を交わした。

 

「むう〜ん。流石ね伊地知先輩…。あの気難しいヨヨコがあそこまで懐くとは…先輩の人柄と、包容力のたまものかしら…」

 

「ああ見えて虹夏、かなりの人誑しだからね。初恋泥棒」

 

「リョウ先輩。あ〜何となく分かります。無意識に距離が近くて男子はいつの間にか好きになってる。みたいな」

 

「ぷふふっ。そうそう」

 

リョウと此方がそこまで話すと、辺りの雰囲気が一変した。本当に、一旦この辺りの空気を丸ごと抜いて入れ替えたかのように。

 

き…き…き…!!

 

「「恋の話ですか!?」」

 

とくだいきたーん!!!!✕2!!!

 

「何ですかリョウ先輩初恋泥棒なんて素敵ワードが聞こえましたよ誰が誰のファーストラブを盗んだんですか!?」

 

「恋バナとスイーツは女子高生の華ですよね!どうやら今日は泊まりみたいですし夜通し語り尽くしましょう!!」

 

じゅっ。

 

「うわあ!?ひとりさんが灰になった!?」

 

「哀れぼっち…!余りにも突然放たれた陽の気に全く反応できなかったんだな…!」

 

「ヤバいっす!!喜多さんだけでも物凄いのにうちのふーちゃんが加わったことで火力が2倍になってるっす!!」

 

「流石にぼっちさんの守護霊もフォローできなかったみたい。ふふ〜面白〜い」

 

「ちょっと!?少し目を離したら何この地獄絵図!?」

 

「コラリョウ!!で、出鱈目言ってんじゃないよ誰が初恋泥棒だ!」

 

「だってホントじゃん。多分中学の頃のアイツとかアイツとかは…」

 

「わーっ!?わーっ!!」

 

「今日はあれね!!夜通し恋バナ決定ね!!伊地知先輩!その話詳しく聞かせてもらいますよ!!」

 

「あっそれなら私!ゲームも皆さんとやりたいっす!!ありますか!?」

 

「ふふふ。あくび。私が厳選したレトロゲームが虹夏の部屋には沢山あるよ…。一晩では遊びきれないくらい…!」

 

「何故レトロゲーム!?でも興味あるっすリョウさん!」

 

STARRYのメインフロアが揺れるくらいに賑やかだ。喧騒を遠巻きに眺めながら今日の主役である伊地知星歌は、何故か遠慮がちに呟く。

 

「あの〜。一応夜だから…静かにお願いね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日の夜は間違いなく、伊地知家に最大の人数が押し寄せた日である。

 

大人たちは割と早く酒を飲んで酔いつぶれてしまったが、子供たちの方はそうはいかず、前述した恋バナやら、ゲームやら。ひとりの中学時代の嘘武勇伝に此方が一喜一憂したり、内田幽々のセンサーに反応があってリョウとひとり以外の全員が震えあがったり。

 

結局のところ、誰一人として眠ろうとせず、時間を惜しんで一心不乱に騒ぎ続けた結果、次の日全員寝不足となった。

 

まあ、仕方がないよね。

 

 

 

 






シクハックに、星歌とPAさんでしょ?シデロスの皆に結束バンド。それにオリ主と。多すぎるわ!いやこの展開にしたのは自分だけど!もうやらないよできないよこんな大人数の描写なんて…!

読んでくれるだけで嬉しいです。

もし、もしお時間ある方、感想頂けると凄く嬉しいです。

評価も入れていただけたら最高ですよ。生きる糧です。

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