女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
くそう。今年の桜を見損ねてしまった。
桜見ながら一杯やるのが乙な季節なのに!!
どうも皆さんこんにちは。前回に引き続いて、後藤ひとりです。もうすっかり春です。
うららかに桜が咲き誇り、空気は暖かく緩んで、新しく訪れた季節を祝福しているかのようです。
…がらっと話変わるんだけど、私は最近九字に頼りすぎてる気がします。切りまくっています。
完成した未確認ライオット用の新曲、グルーミーグッドバイ。そのデモテープをポストに投函したときも。
バンドの宣伝のためにグルーミーグッドバイのミュージックビデオを、結束バンドのファン一号と二号さん(どうなんだこの呼び方)に協力してもらって撮って、その動画の投稿ボタンを押すときも。
私も奇跡的に二年生に進級できたので、クラス替えがあったのです。そこでも切りました。どうか!どうか怖い人と一緒になりませんように!
その甲斐あってか、災いを避けるどころか福がやってきました。喜多ちゃんと一緒のクラスになれたのです!
喜多ちゃんだけじゃない…!さっつーさん!赤石さんに青井さん!知ってる人は全員!ああ、友達が何人もクラスにいてくれるなんて…!安心感が違うよ!今年は何か良いことありそう…!二年生になって初めての放課後、私は教室の隅の自席で喜びに打ち震えていました。
「ひとりちゃ〜ん!やったわね一緒のクラスよ〜!」
「あっ、き、喜多ちゃ…!」
「誰々〜?喜多ちゃんの友達〜?」喜多ちゃんの友達1
「知らない子だ〜!」2
じゅっ!!
「ああっ!?ひとりちゃんが灰に!」
日の光にいきなり当たったドラキュラかよ。
…だ、駄目だ…。物理的な距離が近くなっても、私と喜多ちゃんでは心の距離がありすぎる…。これが陰キャと陽キャの差…!思い上がってすいません…!
「相変わらずウケるなこの生もの」
少し前までひとりだった灰をニヤニヤしながら棒でつつく、この緑髪のギャルは、佐々木次子。喜多の親友であり、ひとりの友達。
「ひとりちゃんカッコいいのに、相変わらず自分に自信ないよね〜」
「そ、そこも可愛いと思う…よ?」
この二人は赤石さんと青井さん。前述の喜多と次子の活躍でできたひとりの初めてのクラスでの友達。言っちゃ悪いが特徴がないのが特徴の普通ガールズ。
「ふふふ…。貴女中々見る目あるじゃない…。合格よ。私が筆頭を務める、ひとりさんファンクラブへの入会を許可するわ」
ピシッ。空気が止まる。青井の肩に手を置きつつ現れた、異質な存在によって。
何が異質か?まず、制服が違う。クラスが違うとかそんなアレじゃない、制服が違う。何者なのか。だが、ここにいる三人はこの右腕タトゥーに左耳ピアスの異質な女の正体を知っていた。
「よっす〜。確か、黒井さん。おひさ〜」
「お、そちらは、さっつ〜。おひさ。流石貴女のクラスメイトね。ひとりさんのファンになる素質、十分よ!」
突然の展開に、黒井をよく知る喜多ですら固まる中、次子と黒井だけが何事もないように会話を先に進める。次に再起動したのは、意外にもひとりだった。机の上に乗っていた灰が集まり、一瞬でひとりを形作ると、そのままの勢いで黒井此方の両肩に正面から手を置く!
「ど!どこから生えたの!?」
「生えたって失敬な人をキノコみたいに〜。入ったってことなら、校門から堂々とですよ?警備員さんがソッポ向いてる隙に!」
「うちの学校のセキュリティ!!」
頭を抱えながら膝をつく。あ、地の文さんありがとう、意識が戻ってきたので引き継ぎます。
「あ、相変わらずひとりちゃん絡みだと倫理観ないわね貴女…」
「ヤダな〜喜多さん!褒めても何も出ないわよ〜?」
「褒めてないわよ」
何に照れているのか顔を赤くして手を振る黒井ちゃんに喜多さんが温度の低い目を向ける。私の胸の内の温度と同じだな、などと思っていると、いきなりガラッ!!と、勢いよく教室の扉が開かれた。
「ゴラァ!!黒井此方とか言う女はどこじゃい〜!!」
驚いて視線を上げると、その先には、一様に怒りに顔を歪めた男子が五人ほど立っていた。
「見つけたぞこの呪言師が!この間貴様に妙な呪言を吹き込まれたせいで俺は三日ぐらい後藤ひとりサイコーとしか喋れんくなったんだぞどうしてくれんじゃ!!」
「そうだそうだ!!家族とかにも変な目で見られたぞ!」
「コンビニとかでも首振ることでしか意思疎通できんのだぞ不便じゃ!」
白目を剥いてツバを飛ばしながら切れ散らかす男子たち。私は思わず頭を抱える。文化祭の時のアレか!な、なにしてんだー!!
「やっべぇ。逃げよ!皆さん!また次回!」
シュタッと右手を上げて黒井ちゃんは男子たちが塞いでいる反対側の扉から逃げていく。
「待たんかこんのダラズがぁ!」
「極の番でも領域でも何でも展開してみやがれ!!」
「恨み晴らさでおかんぞぉ!!」
半狂乱になった男子たちがそれに続いていった。まさに嵐だ。春嵐。それを指さしながらさっつーさんはゲラゲラと笑い、喜多さんは遠くを見る目。赤石さんと青井さんはドン引いていた。
「は〜!笑うわ〜。喜多の友達ってほんっと、エキセントリックなヤツが多いよな〜!」
「やめて。さっつー。心外。マジで心外」
「でもたまに喜多ちゃんあんな感じになる時あるわよね」
「ウッソでしょ!?青井さん!?いつ!?いつよ!?」
「あははは!!」
楽しそうな四人の声を何処か遠くに聞く私は、がっくりと手を床について項垂れた。黒井ちゃん。彼女は、まるで人の形をした未知の生物のよう。まるで思考が読めないよう…!私は本気で、将来黒井ちゃんに手籠めにされないか、心配になるのだった。
「ま、全く…!く、黒井ちゃんはホントに…!め、滅茶苦茶です…!」
「ホントにね〜。ひとりちゃんが絡むとビックリする行動とるわよね!毎度の事だからもう慣れたけど…」
場所が変わって通学路。STARRYへと向かう道すがら、桜が舞い散る帰り道。私は喜多ちゃんに結局戻ってこなかった黒井ちゃんの愚痴を聞いてもらっていた。
「あの、物凄く怒ってた男子たちが言ってたことは何だったの?なんか、呪言がどうとか…」
「あ、えっと…。なんか黒井ちゃんがギターヒーローの啓蒙活動とか言って、うちの校門で適当に捕まえた生徒に、ご、後藤ひとりサイコー、と、とか吹き込んでいたのを恨まれたんだと思います…」
言ってて私が頭痛くなってきた。何故か喜多ちゃんは私のことを可哀想なものを見る目で見てくるし。違うよ喜多ちゃん。私がやったわけじゃないからね?
「く、黒井さんもあれでマトモなところもあるのよね。一部が狂っているだけで」
「一部の負債が大きすぎる気がします…」
「それは、そうよね」
渋い顔をした喜多ちゃんに頷かれる。わ、私だって黒井ちゃんの悪口を言いたいわけではない。で、でも、あの人は、私が絡んでいなければ凄くマトモな人なのに、私が絡むと何故か発狂する。しかも大変残念な方向に。
「はあ〜。あれさえなければカッコいい人なのに…」
思わず溜息に本音が混じる。だってそうなのだ。あれさえなければ黒井ちゃんはとってもカッコいい。芯があって、物怖じしなくてどんな場面でも冷静沈着。私とは正反対だ。…憧れちゃう。
「…へえ〜。ひとりちゃんも、黒井さんのことカッコいいって思うんだ…」
喜多ちゃんに問いかけられて、遅れてから気付く。あれ?さっき私大分恥ずかしいこと言った?
「ち、違うんです喜多ちゃんカッコいいってそういう意味じゃなくて、かっこ、そう!囲いができたらしいんですよ黒井ちゃんちに!これで柿泥棒が来ても安心だみたいな!」
「ひ、ひとりちゃん、誤魔化し方が余りにも古典的よ…」
だ、駄目か!恥ずかしい!黒井ちゃんも私ごときにカッコいいなんて思われても嬉しく…!いや、コレばっかりはむしろ別の心配をしたほうがいいのか、と、そこまで考えて、先の会話に引っ掛かりを感じたので、喜多ちゃんに素直に聞いてみる。
「え、えっと…、喜多ちゃん。も。って…」
その問いを投げかけた時、喜多ちゃんは振り返った。それと同時に一陣の南風が吹き、アスファルトの花びらと喜多ちゃんの髪を同時に舞い上げる。花びらの隙間に浮かんだ喜多ちゃんの微笑みが余りにも絵になっていて、私は少しの間、息をするのを忘れた。
「ひとりちゃんっ!そこの公園で、ちょっとお話しない?」
「わ〜!懐かしいわ〜!」
手を広げながら回る喜多ちゃんと、二人で気まぐれに入った公園。椅子が一つのブランコに、ベンチ。作りは実にシンプルだ。何か、既視感を感じるのだが、気のせいだろうか…?
「き、喜多ちゃん…、この公園、来たことあるんですか…?」
「うんっ!あ、ひとりちゃん!そのベンチ!座ろ!」
指し示されたベンチに二人で腰を下ろす。柔らかく降る日差し。微かに鼻腔をくすぐる花の香り。目の前には落ち着いた空間が広がるのに、何故かソワソワするのは私だけだろうか?
「…ふふ。懐かしい。この公園で初めて会ったのよ。私、黒井さんに」
「…あ、そうなんですか」
「うん。バンドを逃げ出して、どうしようもなくなって、そこのブランコで途方に暮れて…自分勝手な話だけどね、あの時私ホントに絶望しちゃって。もう、無理なんだ、取り返しつかないんだ。なんて不誠実なことをって。…自分が悪い癖に」
遠くを眺めている瞳に気付かれないように、背筋を正す。コレは、恐らく懺悔だろう。喜多ちゃんの。
「…そしたらね、黒井さんが声掛けてくれて。まだ何とかなる。本物の卑怯者は自分の行いに悔し涙を流したりなんかしない。私の後悔を、一緒に精算しに行こう。って」
その言葉に私は息を呑む。…全く、あの人は本当に。決めるときとそうでないときの差がひどい。
「その言葉のおかげで私は、もう一度ステージに挑むことが出来た。…あの時、黒井さんが私に声を掛けてくれてなかったら、私は逃げたギターのままだったと思う。…黒井さんだけじゃない。こんな卑怯者の私を、待っていてくれた伊地知先輩。リョウ先輩…」
…挟みたい言葉があった。でもやめた。…目の前の人が、あまりに儚く、いまにも消えてしまいそうだったから。
「…ねぇ。ひとりちゃん」
「…はい。喜多ちゃん」
「ひとりちゃんは前言ってたわよね。皆の夢を守れるようなギタリストになりたいって。それが私の夢だって。…私は。私の夢はね…。結束バンドの皆に報いたい」
「…報いる」
言葉を反芻する。放り投げるように遠くを見る喜多ちゃんの表情からは、何も読み取れなかったから。…やがて、少しの沈黙のあとに喜多ちゃんは言葉を続けた。
「伊地知先輩の優しさに。リョウ先輩の信頼に。黒井さんのお節介に。…それが出来てね、私は初めて。過去の弱かった。卑怯だった自分を、許せる気がするの。…胸を張って、私は皆の仲間だって。そう言える気がするの…。だからね。これが私の夢」
そう言葉を締めて、喜多ちゃんがこちらを覗き見る。…その瞳は少し震えているようにも見えた。…ああ。喜多ちゃん。そんな小さな身体の何処にそんな重たいものを隠していたんだ。キラキラと楽しそうに笑って。明るく皆を引っ張って。…全く気付けなかった。ずっと喜多ちゃんは、自分の罪悪感と戦っていたんだね。
…ほら。言えよ。後藤ひとり。…さっき言いかけた、掛けなきゃならない言葉が、あるだろ。私の言葉じゃ喜多ちゃんは納得しない。否、言葉で納得できるならば、とうにしてる。なら、言う意味ないじゃん。だと?
五月蝿い。分かってたって、言うんだ。こんな時に、仲間に声も掛けられない様な口なら、いっその事縫い付けてしまえばいい。
「あ!あのね!喜多ちゃん!」
あっ失敗した。陰キャ特有の声量調整ミス!喜多ちゃんビックリしてる!ええい、構うか!
喜多ちゃんの肩を掴んで視線を合わせようとする。いつもは、程よく目にかかって外界にフィルターをかけてくれる前髪が、やけに今日は邪魔に思えた。
「あ、あのね!私ね!く、口下手で!思った事口に出すの苦手だから!一つだけ!喜多ちゃん!喜多ちゃんは、卑怯者なんかじゃないよ!!」
見開かれる喜多ちゃんの大きな目。その視線は私の視線と合わないまま、中空を彷徨い、寂しそうに下に落ちる。
「…皆と、おんなじ事を言ってくれるのね…ひとりちゃん。…でも、私は…」
「いーえ!!ダメです!喜多ちゃん!決めました!私が!決めました!!」
「へっ?」
「喜多ちゃんは卑怯者じゃないんです!そんな事言う奴は私がギターの弦で思いっ切りシッペしてあげます!」
「えっえっえっ!?」
「喜多ちゃん!喜多ちゃんは言ったよね!胸張って私たちの仲間っていうのが夢だって!じゃあ今の喜多ちゃんは私たちの仲間じゃないの!?」
「…あ」
「私嫌です!家族なんでしょ!?リョウ先輩の、娘!なんでしょ!?喜多ちゃんが仲間じゃないなんて、私、やだよ…!」
言いながら何かが溢れそうになる。違う。今そんな時じゃないだろ我慢しろ。ああもう、ホント弱くて。拙くて。嫌になる。よくヒーローなどと思い上がったものだ。そのままにしてると零れそうだったから上げていた顔を、私はゆっくり戻して、恐る恐る喜多ちゃんを見た。
「…ぷっ」
「あっははははははははは!!!!!」
「ええ!?」
わ、笑っとる。爆笑だ。私なんか面白いこと言った!?
「あははははっ!!あはははは…あっ、あああうああ〜…う、うああ…あ〜あ〜…!」
「ちょっ!?えっ!?喜多ちゃん!?喜多ちゃんってば!ど、どっか痛いの!?」
嘘!?今度は泣いてる!だ、誰が泣かせた…!?わ、私!?この場に私しかいないから私だよねそりゃ!?なんでなんでなんで!?
「は、はわわわわ…!!き、喜多ちゃん…!!な、何か失礼があったのならば謝りますからど、どうか泣かないで…!!」
私はとっさにポケットからハンカチを取り出して喜多ちゃんの涙に押し当てる。
「よ、よければ使ってください…!」
「う、うう〜…、ひっく、う、うう〜…!!」
おずおずと私からハンカチを受け取って、目に押し当て続ける喜多ちゃん。大きく上下していた肩は、時間が経つにつれて声とともに少しずつ落ち着いていった。私は、手持ち無沙汰であったため、喜多ちゃんの背中をさすり続けていた。
「き、喜多ちゃん…。だ、大丈夫…?」
「ふ、ふふっ…。ひとりちゃん、さすり方優しい…。さすが、お姉ちゃんだね…」
「へっ!?あ!?すみません無意識にとんだ無礼を!?」
「ううん。いいの。…は〜。凄い。凄く、サッパリしちゃった!」
「長いこと溜め込んでいた物が、笑いと涙と一緒に出てっちゃった感じ!ひとりちゃんのおかげよ!」
「へ!?そ、そうですか…?よ、良かったです…?」
「ふふっ!」
私は少し困惑しながらも、まだ赤い目をした喜多ちゃんを見る。その喜多ちゃんは、涙でぐしゃぐしゃになってしまったハンカチを見ながら苦笑いしていた。
「ご、ごめんねひとりちゃん!ハンカチ洗って返すわね!」
「い、いえいえ!!喜多ちゃんの如き陽キャさんに使っていただいて私の陰キャハンカチも喜んでいると言いますか!どうかお気になさらないで下さい!」
そう返すと、喜多ちゃんは一瞬ぽかんとした後、またクスクスと笑い始める。
「そ、そんなとこまで一緒なんだ…。あはは、おっかしい…!」
い、一緒。何がだろう。
「えと、喜多ちゃん。一緒、とは…?」
「あ、ゴメンね。…前、この公園で黒井さんと会ったときにも、私泣いてて。その時、黒井さんにもハンカチを借りたのよ。しかも、洗って返すって言った時のリアクションまで殆ど同じで!おかしくなっちゃって!」
「そ、そうだったんですか…」
再び笑う喜多ちゃんを眺めながら相槌を返す。その表情に先程までの影はもう差していなかった。…よかった。
「はあっ…。ありがとねひとりちゃん。流石ギターヒーローだね。私、助けられちゃった」
「い、いえあのっ!私如きで力になれたならこれ幸いといいますか!よ、よかったですほんとに!」
「うんっ!あ、そうだ!ひとりちゃん!ひとつ、質問!私は、もう皆の仲間?」
答えは分かってる。でも、口に出さなきゃ分からないことだってある。なら、私は何度でも同じ言葉を紡ごう。
「もちろんです。バンドの皆も全員!そう言います!絶対です!!」
「うんっ!!ありがとう!!」
そう言って喜多ちゃんは笑った。影が差していない、彼女の本当の笑顔を見たのは、実は私は、初めてかもしれなかった。
〜さいどやじうまども〜
ひとりたちが話していた公園の入り口付近。木の陰に野次馬の姿あり。
「ひぐっ…!ぐすっ…!ひとりさぁん…!!流石私のギターヒーロー…!!喜多さんの心の闇を見抜いて氷解させるだなんてぇ…!!貴女は何処までカッコよくなれば気が済むんですかぁ……!!」
「う〜わ泣いてるよこいつキモ」
「それはそれとして美少女同士の涙ながらの和解シーンは良いものだ…。そう思わないか同胞…」
「ん御意っ!!」
「アンタラはなんでまだいんのよ帰りなさいよ!!」
「うっせ呪言師。お前の指図はうけねー」
「おいこら呪言師。俺等の制裁を回避したお前には任務を与える。これ以上あの子たちを、泣かすなよ?」
「少女は涙を流してもいい…。結末で、笑ってさえいれば…!」
「それでは、さらば!!」
バレぬように音を立てず走り去っていく男子ども。…。相入れはしない。でも、利害は一致しているわね。もちろん。誰も泣かせる気なんかないわよ。全部一緒くたに纏め上げて上手いこと、ハッピーエンドに着地してやるわ。見てなさい。
…さてと。せっかくあの二人。いいムードなのだ。邪魔しちゃ悪い。コッソリと。クールに!黒井此方は去るぜっ!!
最近私出番少なくない!?
春嵐とは、何も怒り狂った男子学生たちのことだけを指すわけではない。
自身の罪悪感を乗り越えた喜多郁代にも、道を指し示した後藤ひとりにも。
夢に向かってひたすらに牙を研ぎ続ける、伊地知虹夏と山田リョウ。黒井此方にも。
等しくそれは訪れる。まるで、前に進むことを何者かが強制するように。
「み、みんな!!大変だよこのメール見て!!」
明くる日のSTARRY。そのメインフロアに虹夏の声が木霊する。
事態が著しく動き始める時、そこには常に。
風雲急を告げる、嵐が吹く。
ひとりちゃんは、本気で何かを伝えるときは、あまり吃りません。あとたまに敬語が抜けます。