女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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注意喚起です!原作とは人物の関係性が、かな〜り異なります。

まあ、今更かな?


45 魑魅魍魎(読めない)池袋ライブ!!

 

 

流石だね、ギターヒーロー。片鱗、見せてもらったよ。

 

び、びっくりした。ぼっちちゃんってホントにヒーローなんだね…!

 

助けられちゃった!流石ねギターヒーロー!

 

いついかなる時も、貴女は最高ですね!ギターヒーロー!

 

 

 

 

 

 

 

私、後藤ひとりはいろんな人の言葉で成り立っている。ギターヒーロー。自分で付けた名前だけど、とってもじゃないが私はそんな柄ではない。

 

…でも、最近いろんな人にそう呼んでもらえて、少し自覚も出てきたんだ。

 

私の夢は、ヒーローとして、皆の夢を守ること。虹夏ちゃんと、そして、結束バンドの皆の夢を。

 

黒井ちゃんは、シデロスの演奏を見て、俯いてた。喜多ちゃんは、自分自身の罪悪感とずっと戦ってた。

 

私は、皆のそんな顔をもう見たくない。そのためには、例えどんな場所だろうが。未確認ライオットだろうが、もう負けたくないんだ。

 

私は強くなる。そして、皆の夢を守る。もう、誰の悲しい顔も、見なくて済むように。

 

 

 

 

 

 

 

「た、大変だよ皆!これ見て!」

 

ここは、STARRYのメインフロア。バイト終わりに片付けを済ませ、さあこれからバンドの練習という所、突然、虹夏ちゃんの声が響く。どうしたんだろう。

 

「見せて虹夏。…ふむふむ、ライブのお誘いだねこれは」

 

「え〜っと、結束バンド様、音源聴かせて頂きました。私池袋のライブハウス、ブッキングマネージャーの柳と申します。この度ハードでロックな結束バンドさんの音楽性に感じるものがありぜひ当ライブハウスへのご出演をお願いしたい〜!?す、凄いですよ!間違いなくライブへのお誘いですよね!きゃーっ!やったわねひとりちゃん!!」

 

「あ、そ、そうですね…!」

 

ヒィィ…。慣れない箱でのライブ怖い!…なんて、いつもの私ならビビるとこですが、ヒーローになるって曲がりなりにも決めたんだ!こ、こんなことで怖がってなんかいられないぞ!後藤ひとり!

 

「おお!ぼっちちゃんも珍しく乗り気だ!…よし、いっちょ参加してみる!?未確認ライオットの前哨戦だ!」

 

「いいですね!出てみましょうよ先輩!」

 

「あ、う〜!うぐっうっ…い、胃が…!は、はい!虹夏ちゃん!」

 

「ぼっちちゃんはホントに大丈夫!?」

 

うう。虹夏ちゃんに心配されてしまった。なんて情けないヒーローだ。人は急には変われない!胃から酸っぱいものが上がってくるよう…!

 

「…どう見ます?リョウ先輩」

 

「此方。…ふむ。出てみるのも一興だよね。私たち、路上ライブ沢山こなしたりだとかこないだから色々とやってるけど、やはり圧倒的に経験値が足りない。店長も言ってたけど、一発勝負のフェスで結果を出すには、とにかく場数を踏んで、どんな時でも実力を出し切れるようにしないといけないから。こういう、未知の箱でのライブとかはまさにおあつらえ向き。…でもな〜」

 

「?何?何か気になることでもあるの?リョウ」

 

顎に指を当てて考え込むリョウ先輩に虹夏ちゃんが不思議そうに話しかける。何か黒井ちゃんも難しい顔をしている。珍しい、気が進まないのかな?

 

「文面が気に食わん」

 

ズルっと。リョウ先輩の発言にみんなしてずっこける。

 

「だって、ハードロックって言ってるよコイツ。私はロックを生み出した覚えはあるけど、ハードロックな曲なんて今の結束バンドにはないでしょうよ」

 

眉にシワを寄せながら苦言を呈すリョウ先輩。

 

「わ、分かるけどぉ!細かいよそんなとこ気にしてる場合じゃなくない!?チャンスだよコレは!色んな人に結束バンドを知ってもらえる!」

 

「まあね。ライブ出演自体は吝かではないよ…此方は?何をそんなに難しい顔してんの?」

 

割とサラリと出演を認めたリョウ先輩と対照的に黒井ちゃんは、ずっと首を傾げている。

 

「…まあ、勘働きです。ブッキングライブらしいじゃないですか。会場の雰囲気とかどうなんだろうって」

 

「あ〜。確かに。どんな人たちとやるんだろうね?」

 

「私たちのことハードロックバンドなんて言っちゃうマネージャーが組んだライブだぜ?地下アイドルとか出てくる闇鍋ライブかもよ?」

 

両手を広げてリョウ先輩がため息をつく。闇鍋ライブかぁ。こ、怖いなぁ。

 

「皆さん!それならそれで、いいじゃないですか!!普段ロックなんか聴かない人たちにも、私たちの音楽を聴いてもらえるチャンスですよ!会場がどんな雰囲気とか関係ありません!私たち色に染め上げて、皆さんに結束バンドの名前を覚えてもらいましょう!」スーパーきた〜ん!!

 

じゅっ。

 

「うおおっ!?目が!!目があ!?」

 

「で、出た!喜多ちゃんのスーパー陽キャ人!ま、眩しすぎるぅ!」

 

「ああひとりさんが死んだ!もう喜多郁代!その形態になる前に予告しなさいよひとりさんの命がいくつあっても足りないでしょ!?」

 

「えっええ〜!私今いいこと言ったと思ったのに!?」

 

ああ…。こんな、なんて…!なんて威力だ流石迷いを振り払った喜多ちゃん…!思い上がりでもいい。貴女の迷いが振り払える一端になれたならこれ以上はないよ…!プスプス…。

 

「で、でも喜多ちゃん!流石良いこと言ったよ!そうだ!会場どんな空気でも関係ない!大暴れして爪痕残して!ファンを増やしてこよう!」

 

虹夏ちゃんが右腕を突き上げると、皆がおおー!っと追従する。すると、それをいつものカウンターから背中で聞いていた店長さんが振り返り、こう言った。

 

「池袋の柳、か…。なかなか厄介なのに目をつけられたなお前ら」

 

「へ?おねーちゃんこの人のこと知ってんの?」

 

「ここでは店長と呼べと…。ああ、昔のことだが、ノルマのことしか気にしないクソブッカーで名を馳せたやつだ。まだやってやがんだなアイツ」

 

「ええ!?クソブッカー!?マジで!?」

 

「ああ。演者のことなんざまるで考えてやがらねえから変な雰囲気のライブになることも珍しくもねえ」

 

私たちの間に少しの動揺が走る。だが、それより早く、店長さんは言葉を紡いだ。

 

「…でも、お前ら。さっきの啖呵は中々だったぜ?フェスで、いや、これから様々な場所で演奏すんなら、会場の空気にビビってる場合じゃねえ。喜多。虹夏。少しは成長したんじゃねえか?」

 

「て、店長さん…!」

 

「おねーちゃん…!」

 

その返しに店長さんは虹夏ちゃんをキッと睨んで何かを言いたそうだったが、やがてため息とともにそれを吐き出し、フッと笑う。

 

「今のお前らなら、どこでだってやれんだろ。覚悟決めて、やってみろよ。STARRYの名を、池袋に知らしめてこい!」

 

 

「お…!」

 

「おぉ!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!」

 

盛り上がる虹夏ちゃんたち。私はというとその流れに乗り遅れ、変に事を冷静に見守っていたため、店長とPAさんの次のやり取りを聞き取れた。

 

「…とはいえ、中々の食わせ物が相手だからなぁ…。こっそり見にいってやろう。PA。その日店頼めるか?」

 

「素直に皆にそう言えばいいのに。はあい。店長。いってらっしゃい」

 

店長さんは相変わらずのツンデレさんだ。…ま、まあ、店長さんが見ていてくれるなら、闇鍋ライブになっちゃっても少しは安心かな?などと私はヒーローらしからぬ他人頼りな思考を巡らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、月日は過ぎ、本日は、池袋のブッキングライブ。その当日。

 

このライブでどのバンドよりも目立って爪痕を残し、結束バンドの名を。STARRYの名前をこの池袋に残すべく、私の気合はいつも以上に空回り!!

 

「はああああああ……………!!!!!」

 

ドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!

 

「相変わらずとんでもないビートだねぼっち。テンポがバイテンぐらい走ってるよ」

 

「でもそのお腹に響くみたいな低音はいい感じ…。じゃない!?ぼっちちゃん大丈夫!?プレッシャーだよねやっぱ!?」

 

こ、呼吸が乱れる!心臓がうるさい!うう、くそ!ヒーローはこの程度でビビったりなんかしないのに!

 

「大丈夫よひとりちゃん!周りがどんなだろうと関係ない!私たちは私たちに出来ることをやりましょう!」

 

柔らかく私の肩に手を置いてそう言ってくれるのは喜多ちゃん。それを少しだけ口角を上げて見ていた黒井ちゃんが目に入った時、ようやく私は少しだけ冷静になれた気がした。意を決して強めに自身の胸を叩いてから、周りに目を配ってみる。

 

カツラがズレちゃってる壮年のソロギタリスト。

 

メイクがバッチリ決まっている、見ただけでプレイスタイルが想像できる、デスメタルバンド。

 

…見ているだけで目が焼けそう。皆がみんな、黒髪の、キラキラした衣装に身を包んだ、恐らくアイドルの人たち。

 

そして…。あの、その…。な、なに?

 

楽器持ってるから、バンドなのだろう。でも、四人中三人のカッコが余りにも特殊だ。コミックバンドなのかな。

 

一人の人は、頭が馬だ。なんか、ドン・◯ホーテに売ってるみたいな、馬のお面。それも妙にリアルなやつ。怖い。

 

タンクトップにバキバキの筋肉。ヒゲのフェイスペイント。そして頭にはウサギ耳がついたカチューシャ。…こ、怖すぎる。な、何者?

 

唯一マトモなカッコの女の人でも、犬耳?いや、あれはキツネ耳かな?フェイスペイントでヒゲ描いてるし、やっぱコスプレバンドみたいだな…。

 

そして、一番異質な人。紫のスーツに身を包み、紫のテンガロンハット。ホワイトクラウンのフェイスペイント。まるでその出で立ちは、出来の悪いショーの奇術師のようだった。

 

この四人は、色物が揃ったこのライブハウスの中でも一際、異彩を放っていた。

 

(彼方!?)

 

(いよう姉貴…!会いたかったぜぇ…!)

 

(相変わらずイカれたカッコねドン引かれてるわよ皆に!)

 

(うるせえ正体が分かんねえほうがカッコいいだろ!?これは俺のポリシーだ!やっと一緒のステージでやれるな…!お手並み拝見だぜ!)

 

(全く…!上等よ!かかってきなさい!)

 

アイコンタクトのみ。この間0.5秒!だが、実の姉弟であるこの二人にはそれで十分だった!

 

そう。このイカれたバンドの正体は、四獣相。黒井此方の弟、黒井彼方のバンドである!全くの偶然だがこの池袋のブッキングライブに居合わせていたのだ!

 

「な、なんか凄いね…。あの人たちもだけど、皆個性的…!わ、私たち没個性かな?」

 

「全く…。まだまだだな虹夏…。他のバンドがどんな格好してようが関係ない。私たちの全力で、爪痕残すんでしょ?やることは変わんないよ」

 

「…そうだね!!よっし!私たちの全力で!このライブハウスの屋根ぶっ飛ばしてやろうぜ!!」

 

「い、伊地知先輩それはちょっとやりすぎ…」

 

皆の楽しそうな声。プレッシャーはなさそう。…先のブッキングマネージャーである柳さんも、私たちのことなど何も気にかけてないような様子だった。…そうだ。この会場の誰も、私たちのことなど気にしていない。リョウ先輩や喜多ちゃんが言ったように、私たちのやれることをやるだけ。

 

…だから。皆。巻き込んじゃってごめん。これは、私の、勝手な決意表明。

 

あれよあれよとライブは進み、私たちが演奏する番。一曲目、私は少し緊張で手が震えたけど、皆がとても楽しそうに暴れてくれたおかげで、私も後半は、波に乗っていけた。あまりにもファン層が被らないライブのため、ノリ方に困っていたお客さんたちも、盛り上がってくれたように思う。

 

そして、一曲目と二曲目の幕間。皆にも話していない。私は台本にはない、私自身の本音を口にする。

 

「え、えっと…す、すみません。皆さん、少し、お時間いいですか…?結束バンドの、ご、後藤ひとりと申します…」

 

私の言葉を聞いたとたん、会場が、にわかにざわつく。

 

「へ?ぼ、ぼっちちゃん…?」

 

ひとりには見えていないが虹夏がひとりの背中に心配そうな視線を送る。それを、ひとりの目を覗き見たリョウが、少し口角を上げながら、大丈夫。というように、視線で虹夏を制した。

 

「わ、私は、す、少し前まで、人の目も見られない、だ、誰も友達がいない、所謂、ぼ、ぼっちでした…」

 

ざわざわ。声ちっさw 震えてんじゃん大丈夫〜?

 

エムシーと呼ぶにはあまりにも小さい声に、会場からはガヤが飛ぶ。

 

「そ、それでも、今ここにいる皆と、奇跡的にバンドを組めて、い、一緒に戦っているうちに、私に一つの思いが浮かびました…」

 

浮かぶのは、皆の悔し顔。私が、リードギターとしてもっとしっかりしてれば、そんな顔はさせなかったかもしれないのに。

 

「も、もう誰にも、負けたくないなと。戦って、勝ち抜いた先にある、皆の夢を守りたい。わ、私は、そう思って、練習してきました…」

 

ヒュウと口笛を吹くリョウ。少し俯いて、口角を上げる虹夏。少し驚いた顔で振り返る郁代。口を押さえて目を潤ます此方。

 

語りながら、少しずつ、ひとりの声には熱が籠る。

 

「この先、例えどんな場所のライブでも、悔いなく、全力でやり切る先に、夢がある。そ、そんな思いは、きっと私たち全員、おんなじなんだと思います!だ、だから…」

 

その言葉とともに、ひとりは今まで思いを重ねて戦ってきた仲間たちの方を振り返る。郁代は、ウインクをしながら頷き、虹夏は笑顔とともにサムズアップ。リョウは不敵に口角を上げながら目を閉じた。此方は、似合わない真剣な表情でひとりの視線を受け止めた後、静かに頷く。今の彼女は、かつてのように、名前のように、もう、一人ではなかった。

 

「わ、私たちの…け、結束バンドの結束力を、…見て、下さい!!」

 

ピックを振り下ろすとともに、演者の顔に、全く似合わぬ凶悪な音を叫ぶギター。会場全体を揺り動かすようなチョーキングに、先程までの気弱な喋りからは想像もつかないような力強いストロークに、見に来ていたものは耳を、そして視線を奪われる。

 

「が、ガチのロックじゃん!?すげ〜!」

 

「場末のライブハウスだけど、見に来てよかった〜!」

 

「ほう…。ガチメタラーであるこの俺を痺れさせるとは…あのピンクの少女何者…」

 

このギターソロも、無論リハにもないぶっつけ本番だ。だが、結束バンドのメンバーは、ひとりがソロを本番で急に展開するのを見るのはこれが初めてではない。

 

以前は出来なかった、ひとりはメンバーの視線を、虹夏とリョウはひとりの視線を、呼吸を、慎重に読みながら、次曲のイントロへと違和感なく繋ぐ!

 

展開したドラムスとベースにアクセントをつけるリズムギター!黒井此方だ。そして出来上がった曲の土台に、喜多郁代が声の彩りを添えることで、結束バンドの曲として、美しくグルーヴを奏でる!!

 

ヒートアップする観客!拳を突き上げ熱狂するものまでいるその中、最後列で冷静に、しかしどこか感慨深そうに呟く人影が一つ。

 

「…はあ〜。成長、したわね〜」

 

フリーライター、ぽいずんやみだ。黒井此方にライブをする旨の連絡を受けて、このライブハウスに駆けつけていたのだ。

 

(ギターヒーローさん。このバンドが駆け出しの時なんか、リズムの取り方が壊滅的だった。昨日今日始めた、素人みたいな子だったのに。とても今目の前で演奏してる子と同一人物だとは思えない。ホントに、若い芽の成長は早いわ…)

 

ギターヒーローさんだけじゃない。伊地知虹夏ちゃんは、ドラムスとして揺らぎが少なく、間違いなくこのバンドの屋台骨になっている。基礎的な練習を毎日欠かさず、愚直にやり続けたんでしょうね。小手先のテクニックばかり磨いても、バンドの基礎であるリズムを取れなきゃダメ。それがよく分かっているプレイだわ。

 

元々上手い山田リョウや、黒井此方も、それに驕ることなく更に進化している。

 

そして、圧巻なのは喜多郁代。最早、別人ね。余程優秀なコーチに巡り合えたのかしら。発声法が段違いに良くなってる。声の質はもともと良かったから、更に通るようになって、一段、演奏の質を更に上に引き上げているわ。

 

間違いない。この子たちならきっと…!どんな場所だって!!

 

ステージを見つめながらなにか確信めいた視線を送るぽいずんやみに、声を掛ける人影があった。

 

「…あ〜。ライブ楽しんでるとこ悪い。ちょっといい?」

 

その声に、やみは振り向く。その先には、黒の帽子を目深に被り、サングラスで入念に目線を隠した、だがその奥には隠しきれない鋭い視線が浮かぶ、金髪の美女。

 

「こないだの台風の時も、あいつらのライブ、見に来てくれてたよな?」

 

突然声を掛けられ少々面食らうが、目の前の女性にやみは見覚えがあった。結束バンドの初ライブ。台風の中わざわざ見に行った際にライブハウスのスタッフとして働いてた女性。

 

「…え、えっと…あ、そうか…。貴女は、店長…、伊地知星歌、さん?」

 

「あ、ああ…。知っててくれたんだな」

 

サングラスで表情こそ見えづらいが、どこか恥ずかしげに頬をかき、星歌は言葉を続ける。

 

「…あんな大変な天候の日も、今日のこんな場末のライブハウスにも見に来てくれてる。…ありがとう。あんな、素人同然のバンド、気にしてくれてさ」

 

その言葉に、やみは、一度星歌から、視線を外してステージを見上げる。

 

「…そうね。…最初は、ただの偶然。やたら元気がいい知り合いが所属してるバンドってだけで見てた。でも、私の一番の推しが加わって。そして練習を、ライブを、ずっと見ているうちに、あの子たちから、もう目が離せなくなっていたわ」

 

「皆、とても練習熱心で。どんどん上手くなっていって。…全く。いつこんな沼にハマったのやら。こちらこそよ。店長さん。おかげで退屈しない記者ライフを送れているわよ!」

 

そう言うとやみはニカッと笑う。やみに少し大人びた雰囲気を感じていた星歌は、その屈託のない笑顔に目を見張った。

 

「…驚いた。あんたそんな顔で笑うんだな」

 

「子供っぽく見られるのは仕様で〜す。貴女と話してる今の方が素で話しやすいわ。…それにしても…」

 

「…ああ。それにしても、だな」

 

和やかに話していた中、突然二人は雰囲気を変え、同じ方向に振り返る。その視線の先には、このライブを企画したブッキングマネージャー、柳が、パイプ椅子に座り込んで豪快に船を漕ぐ姿があった。

 

「「いいライブしてんだからちゃんと見ろ!!」よ!!」

 

「うわあっ!?」

 

声を叩きつけ、本来盛り上がるべき場所で眠りこけてる不調法者を叩き起こす。

 

「あんたのブッキング!演者にもスタッフにも評判最悪よ!マネージャーってのはライブ開催するだけが仕事じゃないの!ちゃんと共演する演者やファン層にも気を配って、また来たいなって思わせるようなそんなライブを組みなさいよ!だからあんたの箱は評判悪いのよ!」

 

「えっあっはい、すんません…」

 

起き抜けに至極真っ当な正論を叩きつけれ、大の大人が一言も返せずしおしおと小さくなる。まあ、やったことがアレなのでまるで同情はできないが。

 

「…ぷっ!」

 

「な、なによ…?なんか変なこと言った…?」

 

「いやいや。あまりに正論すぎて、可笑しくなって、ついな。…オイコラ柳」

 

「ひぃ!?せ、星歌さん!?」

 

「おう星歌さんだ。テメエ今だに舐めたブッキングしてやがるみてえじゃねえか。次はねえぞって言わなかったか?頭スポンジかコラ」

 

「ひいいいい!も、申し訳ございませ〜ん!!」

 

グラサンを下にずらして凄む星歌。見る人が見たらチビリそうな迫力に、さしもの柳も平謝りするしかなかった。

 

「…ったくよ。すまんなあんた。腐り果てても知り合いが迷惑かけて」

 

「…いや、私は別に…知り合いだったのね、あなたたち」

 

「…昔ちょっとな。こんなんと知り合いとか、普通に嫌だが」

 

ため息をつきながらゲンナリとする星歌に、下げていた頭はそのままに目線だけを上げた柳が問う。

 

「あれ?でも星歌さんがここにいるってことは、誰か知り合いのバンドでも出てるんで?」

 

「勝手に喋んなコラ。その通りだよ、よりによってうちの妹に粉かけるとはな。覚悟できてんのかおい?」

 

そう言いながら指をバキバキと鳴らす。額には怒りマークが浮かんでおり、はっきりと彼女の今の感情を表していた。

 

「ひい!?ま、待ってくださいよ〜!確かに適当にスカウトした人たちも出てますが、今出てる結束バンドの皆さんは、本当に出てほしくてオファーしたんす〜!」

 

「助かりたいからって口からデマカセこくなコラ」

 

「ホントですって〜!いい音鳴らしますよね彼女ら〜!経験としちゃまだ浅そうすけど、うちの箱のいい起爆剤になってくれれば〜って思って〜!」

 

ビビりながらもそう説明する柳。すると。

 

「…な、なかなか分かってんじゃんお前」

 

ずこーっ!!嘘でしょ店長さんチョロすぎない!?適当言ってるだけでしょあんなん!…だが、柳は、星歌の妹の所属は分からないはずなのに、結束バンドの名を口にした。あながち誤魔化しばかりではないのかもと、やみは心の中で呟くのだった。

 

「お二人さん。結束バンドさん以外にも、今日の俺の肝いりはいますよ。もしよければそいつらも是非、見てあげて下さい」

 

いつの間にか頭を上げた柳は、乱れた髪を整えながら息をつく。その様は、少しドヤ顔にも見えた。

 

「うるせぇぞ調子に乗んな。…だが、そいつらの名前は?」

 

結局聞くんかい、と。再び胸中でツッコみながらも、やみ自身も少しだけ気になっていたため、黙って聞き耳を立てる。

 

「もう出てきますよ。結束バンドさんの次です。最後の大トリ」

 

 

 

 

 

 

 

………。流石にやるな、姉貴。うちのバンドにいた頃より更にプレイスタイルが洗練されてやがる。他のメンバーも学祭の頃から比べて、更に上手くなってる。相当鍛えてきたようだな…。

 

だがな、それは俺たちも同じ。…どっちがこの闇鍋ライブの客を攫うか、勝負といこうじゃねえかぁ…!くく、ひひひ…!ヒィ〜ヒッヒッヒッヒッヒッ!!!

 

キャラ設定は完璧だ。顔を抑えて、けたけたけたと、実に愉快そうに、道化師は嗤う。

 

 

 






すみません大分遅れてしまいました。

四獣相が出てきたので、そろそろこのシリーズも佳境です。

星歌は、柳と知り合いという設定です。昔、STARRYに出演してくれたバンドが、柳のライブに出て酷い目にあわされた為、星歌が柳に直接報復したという感じ。

読んでくれるだけで嬉しいです。感想や、評価なんざ頂けたら感無量です!!

もしよろしければまた、皆さん次回もお願いいたします!
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