女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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黒井彼方は、コスプレ大好き。そして、正体が分からないものも大好きです。仮面のヒーローとか、ピエロとか。でも、お化けは苦手。ホラーはジャパニーズホラーよりアメリカン派。


46 邂逅 四獣相!

 

 

光が、人の輪郭を影絵みたいに映す観客席を見下ろす。汗がじんわりと滲んで、上がった息を自覚するも、何故か少しも気にはならなかった。

 

「うおおー!!すげーぞーっ!!」

 

「まさかこんなちゃんとしたロックバンドを拝めるとは…!」

 

「きゃーっ!皆、可愛いーっ!!」

 

盛り上がってるお客さんの声も、何処か遠い世界の出来事のよう。霞のようにぷわぷわと浮つく身体と心。それとは逆に、力強く脈打つ鼓動だけが、今の私のリアルだった。

 

「あ、ありがとうございました!!結束バンドでした!せーの!東武!!西武!!池袋〜!!」

 

喜多ちゃんがそう叫んでライブを締める。今のはいくつか前にライブしてたアイドルさんたちの決め台詞のアレンジだろうか。

 

「おしっ!皆撤退!今日はかなり良いライブだったよ!!」

 

虹夏ちゃんの声で我に返り、ステージから退く。…私はちゃんとできたかな。なんか大分、気持ちが盛り上がって恥ずかしいこと叫んじゃった気がするけど…!そんな事を考えていると、楽屋に捌けるさい、リョウ先輩に肘で脇腹をツンツンとされた。

 

「熱いじゃんぼっち。…あんな事思ってたんだ」

 

「へっ!?い、いやあの!な、なんか!す、すいません台本にもないことを!」

 

反射的に頭を下げる。でも、気のせいでなければ、リョウ先輩から感じる雰囲気は柔らかいままだった。

 

「そ、それはいいんだけどさぼっちちゃん。なんであのタイミングだったの?台本もなしに一人で喋るなんて…。らしくなさすぎてびっくりしちゃったよ!」

 

少し困惑したような笑顔で虹夏ちゃんから質問を受ける。当然だ。ちゃんと説明しないと。

 

「ええとその…な、なんていうかですね、その…に、逃げ場をなくしたかったんです。自分の。こういう公の場でい、言っちゃえば、いくら意気地なしの私でも、実行せざるを得ないというか…!す、すみません皆さん…勝手に巻き込んでしまって…」

 

言いながら上目遣いでこっそり虹夏ちゃんの表情を盗み見る。すると虹夏ちゃんは目を少し丸めた後、くしゃりと表情を崩し、私の肩に手を置いた。

 

「…かっこよかったよ、ぼっちちゃん。気付かされた。…そうだよね。どんなステージでも、全力で向き合った先にきっと、夢はあるよね!流石、ギターヒーローだ!」

 

…ほんと?虹夏ちゃん、私は上手く、ギターヒーローをやれてる?分からない。でも。

 

再び私は、客席に目を向けてみる。思い上がりではなく、さっきの私たちの演奏で盛り上がってくれたであろう熱を目の当たりにして、この光景だけはけして、嘘ではないと。ようやく眠りこけていた自身の心の底から湧いてきた思いを、噛み締めるのだった。

 

「…。いや、黒井さん。分かったから。そんな、ひとりちゃんのこと親指で指して、うちのギタリスト、見なよ…?みたいな顔しなくていいから」

 

「…ふふふ!今日も今日とて、最高でしたよひとりさん!!流石私のギターヒーロー!!」

 

うん。うん!皆!私はギターヒーローだ。皆の夢を、守ってみせる。その先に、メジャーデビューや、STARRYを有名にするっていう、夢はあるんだよね!!私は、皆の顔を順番に見比べた後、力強くサムズアップを返した!

 

 

 

 

 

 

 

「…結束バンド。中々のパフォーマンスだったな?」

 

「そうねリーダー。可愛い私には及ばないけど、悪くなかったんじゃないかしら?」

 

「ほんと…。君らのその自信はどこから来るの?そこまでいくと羨ましいぐらいだよ…」

 

「照れるぜ」

 

「あっら〜ん!褒めてもなんにもでないわよ?」

 

「褒めてねえよ…」

 

「………………」

 

「さてと。ラストは俺らだ。いっちょいくぜ?例のヤツ」

 

「…やっぱやんの?リーダー。可愛い私は、可愛く拒否したいんだけど…」

 

「僕もアレは賛成できないな…」

 

「…」コクコク。

 

「うるせー!!いつかコレを分かってくれるやつが出てくるまでやるからな俺は!!オラ構えろテメエら!イクぞ!!俺たち!!」

 

「「「四獣相!!!」」」ばばっ!!

 

…。結束バンドが捌けた後、ステージ上に謎のバンド現る。

 

一人、馬。やたらパンキッシュなスタイルで身を固めた馬。

 

狐とウサギのコスプレしているイカれた男女。筋骨隆々のマッチョウサギの方は何故かタンクトップである。怖い。

 

そして、迷い込んだ場末のバーでマジックショーでも披露してそうなホワイトフェイスの奇術師。

 

そんな男女四人組のバンド…。バンド?が、さながら日曜朝のヒーロー戦隊が番組で披露してそうな、決めポーズを見事にキメていた。

 

結束バンドのおかげで盛り上がっていた会場が、氷水でもぶっかけたかのように一気に静まり返る。

 

…ぷっ。おいおいなんだよアレ?

 

勘弁してくれよ盛り上がりかけてたのに。

 

またイロモノー?もういいよー。

 

浴びせられる冷ややかな声。これには些か四獣相の面々も動揺…。

 

してはいなかった。動揺していたのはリーダーだけだ。

 

「な、何故!?何故だ!!このウルトラスペシャルビューティフルなポーズの美しさが何故分からない!?」

 

「当たり前でしょこんなクソダサいポーズ!!可愛い私になにさせてんのよ毎度まいど!!」

 

「僕…。この馬のお面。今だけつけてて良かったって心から思うよ…」

 

「………」クソデカため息。

 

舞台上で何やら漫才を披露してる面々を見上げて、あらゆるところからため息や失笑が漏れる。隣と雑談を始める者。スマホに目を落とすものさえいた。顛末を見守っていた伊地知星歌と、ぽいずんやみも、呆れ気味に吐き捨てる。

 

「…おいおい。なんだありゃ?トリがあんなんでいいのかよ?」

 

「はあ。漫才がしたいなら来る場所が違うでしょ。ほんっとさいあく…」

 

二人の言葉にもトゲがまじる。だが、それを聞いてなお、不敵に男は呟いた。

 

「俺が奴らを呼んだのは、外見や喋りが理由じゃない。そこは、ご安心を」

 

会場の空気や、自身の発言を受けてなお、まるで揺らがない柳のセリフに、星歌は気を引かれる。そういえば、この男。適当な言葉や態度で不誠実なブッキングをすることはあれど、自分が目を掛けたバンドに対する審美眼だけは確かなのだ。それを思い出した。

 

「おい。それはどういう─」ドッパァァァン!!!!!

 

─音は光より遅い。言うまでもないことだが、まるで、その音は光すら置き去りにしてしまうのではないか?そう錯覚してしまうほど、鋭く、そして速かった。会場の誰も。話し途中だった星歌ですらも、音の出所が分からず目を彷徨わせる。

 

そして、見つける。

 

ステージの上のドラムスから、その音は発されたのだと。

 

息つく間もなく展開されるビート。粗く乱雑に叩いているのかと思いきや、メトロノームのように正確なリズム。そのドラムスに、ベースが複雑に絡みつく。ドラムのリズムを補完し、まるで音楽が可視化されたかのようだ。立体的に、多角的に、ロックの枠組みが浮かび上がる。

 

そうしてしっかりと現れた土台を、まるで破壊し尽くしてしまうかのように、キーボードとギターは暴れまわる!どこまでも自由に!どこまでもセルフィッシュに!!だが、ベースとドラムスが築き上げた強固なる土台がある故、好き勝手に暴れているように聴こえるギターやキーボードが一つのサウンドとして、まるで虹のようなグルーヴを奏でる!!

 

「…は?」

 

誰の言葉かは分からない。誰かが呟いたことは確かだが。

 

そして、そのグルーヴに、奇術師がボーカルを添える。

 

気怠げながらも良く通る声で、一つ一つの音を大事に運ぶように。伝えるように。時に静かに。時に情熱的に。

 

呆気にとられる会場を置き去りにして、方々に暴れ回った獣たちの、一曲目が終わる。最初のフレーズに再び戻り、ギターがダウンストロークで力強く締め、フィニッシュだ!!

 

「…せんきゅう!!」

 

ピックとともに右腕を突き上げる。ボーカルのその言葉の後、訪れたのは長い沈黙。まるでその空間だけ音を忘れてしまったかのように、誰も彼も何も発さなかった。

 

「…え?す、すごっ…」

 

その言葉が皮切りだった。会場は、割れんばかりの大歓声に包まれた!!

 

ひょっとしたら、今日一番盛り上がっていた、結束バンドのライブの後よりも。

 

「な、なんだよコイツラ!?」

 

「バケモンかよ!?とんでもねえ!とんでもねえとしか言えねえ!!」

 

最早よそ見をしているものは皆無。あるものは拳を突き上げ。あるものは目の前の光景を思い思いの言葉にし。あるものは大声で叫び!まるで予測せず目の前に湧いた熱に酔いしれていた!!

 

それを受けて、一曲目を歌い終えたボーカルが、マイクを持って話し始める。

 

「あー。皆さん。改めまして。俺たち、四獣相と申します。以後、お見知りおきを」

 

そう話すと、客席から大きな歓声が返った。一曲歌う前とえらい違いである。

 

「何故か俺考案のナイスポーズは、どこでも受け入れられないので」

 

「当たり前でしょあんなクソダサポーズ!」

 

喋り終わる前に狐耳のキーボードの少女からカットイン。

 

「ぐっ…!!ま、まあ。ならばうちらの音楽を聴いてもらって!しかるべき後に、カッコいいなと思って頂ければ…」

 

「いや、僕の価値観では、あのポーズをカッコいいと思うときは一生来ない」

 

「だーっ!!うるせーぞ、馬!!もういい次だ次!!えー皆さん!俺たちは二曲分しか時間頂いてませんので、大変残念ですが次の曲がラストになります!」

 

この発言を聞いた後、会場がざわつく。何故なら、今まではどのバンドも三曲ずつ演奏していたのだ。

 

予想以上の実力を持っていた四獣相と、思った以上に早く別れねばならない。そんな名残惜しさも、ざわつきに一役買ったのかもしれない。

 

「他の人たちよりも短い分だけ魂込めてやるんで!ぜひ聴いてください!!いきます!!」

 

そんなボーカルの言葉の後には場内は静まり返る。最早誰も、ステージ上の変なバンドをイロモノ扱いしてはいなかった。一瞬だけの静寂の後に、響いたのはギターのアルペジオ。

 

一音ずつ丁寧に、折り重なるように紡がれる音。ステージ上をギターの音だけが占める中、静かにボーカルの歌声がつけ足される。

 

少しずつ曲が進む度に、最初はドラムスが。次にベースが。そしてキーボードが。サビに近づくにつれてギターボーカルに合流し、一曲目とはまた違ったグルーヴを奏でた。静かに、低く。美しく。

 

 

 

 

 

 

なんで?なんでなんでなんでなんでなんで?

 

何も分からない。おかしいよ。今、こんなにステージの上の歌声に酔っている人たち。とてもじゃないけど、歌を聴くような空気じゃなかったはずなんだ。変なバンドだって。イロモノだって。何も期待されないで淀んでて。

 

風が吹いたみたいに、一瞬で塗り替えちゃった。絡みついた蔦みたいな空気を、一瞬で切り開いて。呼吸しやすい風穴を開けちゃった。

 

涙ぐんでる人がいる。口を抑えて嗚咽を漏らしてる人がいる。

 

少なくとも私では、あんな淀んだ空気の中、マトモな演奏なんて出来はしない。なのに、彼らは…。

 

なんでだよ。なんで、なんでそんなに…。

 

 

 

 

 

 

 

四人とも、楽しそうに、演奏するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ロングトーンのシャウト。喉を絞った、ビブラートが効いた声がグラデーションをつけてどこまでも伸びていく。

 

そして叫び終えた後、ギターソロが展開された。高速のコードチェンジとチョーキングで様々に色を変える音色に、ドラムが、ベースが、キーボードが合流し、ネックを上げたギターボーカルの合図で爆音を引き起こす!!

 

それが、ライブの終わりの合図。

 

「…ありがとう、ございました!」

 

閃光にも似た音の後、静まり返っていた場内に響いたボーカルの声。それが引き金。蜂の巣をつついたかのように。導火線の短い爆竹に火をつけたみたいに、客席は狂喜乱舞した!!

 

「いや!やべえ!!やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「おかしいってコイツラ!?」

 

「俺今凄いライブに立ち会ったんじゃねえか!?」

 

怒号のような歓声。割れんばかりの大歓声を、ステージ上の四人はしかし、涼しい顔で見ていた。そして。

 

「ありがとう皆さん!!最後に、メンバー紹介します!!この時間の為に二曲だけにしといたのさ!!」

 

その言葉に歓声が起こる。空気は完全に支配された。最早、ワンマンのライブ会場のようである。

 

「まず、ドラムス!!ドラムス、ラビット!!」

 

先のライブから散々見せていた閃光のようなバチ捌き。荒々しさと高いレベルで同居する、正確無比なプレイングで、ビートを刻む!そして最後は、バチを二本、天井付近まで投げ上げ。

 

ズパアアアアアアアン!!!

 

キャッチと同時にシンバルを破壊せんほどの勢いで叩きつける!控えめに言って、超絶技巧だ。

 

「…!!っすっご…!!」

 

パフォーマンスを見た伊地知虹夏は、ただ一言、そう呟いた。

 

「次は、…ベース!!ベース、ユーマ!!」

 

「ハイよ!リーダー!!」

 

ばきびきべべべべぼんばきばきべべばんばぼんぼぼん!!

 

疾い。目にも留まらぬスラップで様々な音階を披露する。先程までの周りを立てるプレイスタイルから一変。彼は一人のときはセルフィッシュになるらしい。

 

「…上手い」

 

山田リョウは、無意識にそうこぼしていた。

 

「ほいで!!キーボード!!キーボード!ぽくしー!!」

 

指を差された瞬間、キーボードの左から右に指を滑らせる!!その後、頭を振りながら情熱的なフレーズを披露する彼女は、このバンドの紅一点だ!

 

「可愛い私を目に焼き付けなさい!!」

 

「…そして、この俺。ドーケシだ。四人合わせて四獣相。よろしくぅ!!」

 

ギターを横に除け、気取ったポーズでお辞儀しながら奇術師が会場を見据えると、再三の歓声がまたも起こる。最早完全にこの会場の空気は、四獣相のものだった。

 

「…マジかよ。こんなバンドが隠れてやがったのか…」

 

少々面食らいながら星歌が本音を溢す。彼女の言葉は偽らざる本音。ただ単純に、レベルの高すぎるバンドの出現に、驚きを隠せていなかった。

 

「…。あんた!!ちょっと!!あんた!!」

 

「うわわ!?なんすかゴスロリのおねーさん!?」

 

星歌の隣にいたやみは、何を思ったか柳に詰め寄る。

 

「アンタズルいわよあんな凄いバンド独り占めして!アイツラ何者なのアンタの知ってること話しなさい今話しなさいすぐ話しなさいさあ話しなさい!!」

 

胸ぐらをつかんで頭を前後に振り回す!

 

「ぐええ〜!!そ、それは多分これから教えてくれるんじゃないすかねー!!」

 

「おいこらロリ女!お前結束バンドのフォロワーじゃなかったのかよ!?」

 

「ゔっ!?くっ…!?た、確かに結束バンドも凄いけど…!コイツラも凄かったのよ!記者魂にビンビン来ちゃった!!コイツラになにも食指動かされないのはアンテナ死んでるいい証拠よ!」

 

余りにも正直なやみの言葉。だが、納得しかなかった。それほど圧倒的なステージだった。恥ずかしながら、ライブハウスの店長の端くれとして、このバンドの情報を何も仕入れていない自身を恥じたほどだ。

 

「虹夏たち…。大丈夫かな…」

 

初めての地元以外のライブにしては上出来だった。あのバンドは完全に想定外だっただけでお前たちもいいライブしてたぞ。だから、胸はって帰ってこい!

 

星歌は、胸の中で独り言をこぼすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼方ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

 

アンタ進化しすぎだろ誰がここまでやれと言ったよ!?

 

「…完全に想定外だった。四獣相…。なにもの…?」

 

「す、凄い…!と、とんでもない腕前のバンドだね!!誰なんだろホント!全員凄く上手かった!!」

 

弟がスンマセン!!お騒がせをしとります!家ではただの思春期男子高校生です!!バンドしているときに正体隠す癖があります!

 

「す、凄いですよね…。私なんか完全にイロモノさんだと思ってたのに…。さ、最後の曲、良かったなぁ…」

 

喜多さんの目が完全に輝いている。クソ。音楽の才能に全振りの男め!裏ではただのエロいこと大好きな普通の男子高校生のくせに!そんな事を考えているとステージを降りてくる彼方と、目が合う。

 

アイコンタクト

 

(…上がってこい。ここまでな)喉元トントン。

 

(アンタほんっとにあの漫画好きよね中二病がぁ…!!ぶっ倒す!!)首をかき切る仕草。

 

満足げに嗤う白塗りピエロ。うぜぇ…。

 

「ちょっと此方!?何今の!?アレと知り合いなの!?」

 

「嘘!?こなちゃんマジ!?誰誰誰なのあの人!!」

 

やっべぇぇぇぇぇ!!気付かれた!どうしようこれ!?

 

(やっべ。姉貴任した。適当に誤魔化しといて!俺の正体はバラすなよ!)

 

(フザケンナコラ!!なんでそんなにバレたくないのよ!!)

 

(ポリシーだ!)

 

再びアイコンタクト。 この間も、0.5秒。

 

だが、足早に逃げようとする四獣相の面々に、私の中では、最も意外な人物が噛みついた。

 

「ま、待ってください!!」

 

中々の声量故、四獣相の他にも、観客が何人か声の方に目をやる。そこには、胸を押さえて、息も荒い、いかにも無理してます感満々な、後藤ひとりが立っていた。

 

「しゅっ、四獣相の皆さん!!わ、私は、あ、あなたたちには負けません!!もう私は、誰にも負けたくないと!!皆の夢を守るって決めたんです!!だから!!」

 

叫ぶ。紅潮した顔で、目には涙さえ溜めて。ただ、胸の中のものを、…私たちの思いを、護るために。

 

誰か教えてよ。あの姿以外の何を、ヒーローと呼ぶの?

 

「…。へ〜?気弱だって聞いていたけど、中々どうして…。度胸あるじゃん。後藤ひとり。…いや、ギターヒーローと、お呼びしたほうがいいのかな?」

 

ざわりと。リョウ先輩や伊地知先輩、喜多さんに動揺が走る。彼方こいつマジシバこうかな。カッコばっかつけやがって!後先考えてんのかホントに!

 

「えっ…!?な、なんでそれを…!!」

 

「アンタだけじゃない。…ざはむきたすの山田リョウ」

 

「っ!?」

 

「その友人で、ライブハウスSTARRYの店長の妹でもある、伊地知虹夏」

 

「へっ!?」

 

「…ほんで、ボーカルは喜多郁代に、リズムギター、黒井此方か。ライバル調べるのは当然だろ?」

 

笑みを深くするホワイトクラウン。その様に気圧された我がヒーローが、少しだけ後ずさる。

 

「あ、あなたは…な、何者…?」

 

「くくく…さあてね。面倒くせえから教えてやらねえ」

 

ニヤニヤと笑いながら腰を折り、頭に指を当てるポーズをして、こちらを挑発してくるピエロ。

 

「…後藤ひとり。ピエロってのは可哀想だよなあ?」

 

「ふあ?」

 

余りにも予想外だったのだろう。間抜けな声を出すひとりさん。大丈夫。貴女は普通よ。そこのピエロがおかしいのよ。

 

「皆を楽しませるためにこんなメイクまでしてんのに。やれ無機質だ。やれ表情が読めないだ。映画の題材になったらホラーばかり。主役になんざなれやしない。なあヒーロー。俺は、ヴィランだぜ?」

 

「っ!?」

 

「アンタラも出るんだろ?未確認ライオット。負けたくないって?上等じゃねえか。俺のこの白塗りの下が見たかったら、未確認ライオットで俺たちに勝ちな!」

 

こちらに人差し指を突き刺し、その指をチョイチョイと自分の方に曲げて煽る。後ろではラビットが両手を広げて嘆息。ユウマは頭を抱えていた。ぽくしーは、頭の横に指を置き、くるくる回す。

 

「っ〜!!か、勝ちます!!絶対に!!あなたには負けないっ!!」

 

そう、ひとりさんが返した瞬間、観客が一気に歓声を上げた!

 

「うおおーっ!!盛り上がる!!なんだコレ誰か裏で台本書いてんのか!?」

 

「何で勝負するって!?未確認ライオット!?なにそれフェス!?」

 

「私は結束バンド!」

 

「バカ言え四獣相だろ圧倒的だろうが!」

 

最早興奮の坩堝と化した店内。その混乱に乗じて、今度こそ四獣相がステージから捌ける。

 

「じゃあなギターヒーロー!!吐いた唾飲むんじゃねえぜ!?」

 

「うぐっ…!そ、そっちこそ!!」

 

「ははははは!!面白え!!楽しみにしてるぜ!!あばよ!!」

 

踵を返して去っていく。…ホントに、嵐のような連中だ。

 

「虹夏!!みんな!大丈夫か!?」

 

「えっ!?お姉ちゃん!!来てくれたの!?」

 

「ああ、やっぱ心配でな…!だが、杞憂だったみたいだ。お前たち、いいライブだったぞ!!」

 

「〜っ!!う、うん!!ありがとうお姉ちゃん!!」

 

「ホント、大した成長よねギターヒーローさん。一年前じゃこんなの考えられないものね」

 

「やみさん!来てくれてたんですか!」

 

「当然よ此方。それに…。思わぬ大収穫よ。まさかあんな怪物バンドが野良に隠れてるなんて…。しかもあいつら、未確認ライオットにも出てくるらしいじゃない?試練ね、アンタたち」

 

「こ、こなちゃん!もしかしてこの人が、こないだ言ってた私たちを評価してくれたってライターさん?」

 

唐突に登場したやみさん。この場に結束バンドもいるため、ようやくながら初めての遭遇となる。

 

「そうだぞ虹夏。この人は台風の初ライブの時も今回も、お前たちのライブを見に来てくれた古参だぜ?こういうファンは大事にしなきゃならねえ。…え〜と。ところでアンタ、名前なんだっけ?」

 

「が、ガーン!!あんなに親しげに話してたのに!?」

 

「し、仕方ねえだろずっと聞きそびれてたんだから…」

 

「やみ!ぽいずんやみよ!フリーのライター!!」

 

「やみ…?何ゆえにそんな罰ゲームみたいな名前を…?」

 

「キィー!!わ、若気の至りよ若気の至り!!」

 

ドタバタと五月蝿い喧騒。盛り上がる観客たち。だが、それらが遠くに感じるほど、心臓が脈打つ。ドーケシ。そして…四獣相。

 

負けません。私の。私たちの夢のために。私の夢を守ることが、虹夏ちゃんの、リョウ先輩の、喜多ちゃんの、そして、黒井ちゃんの夢を守ることに繋がるなら。

 

胸の前で痛いほど、拳を握りしめて、後藤ひとりは前を向いた。

 

 






読まなくていい裏設定。四獣相の演奏は、トータルで見ればシデロスにちょっとだけ劣るけど、グルーヴは上回るくらいです。だからステージの上では同格くらい。

評価、感想くれ!!くれると凄い嬉しいぜ!!

低評価でも全然構わないんですが、理由を教えてくれると、改善しようとする俺の糧となります!最近無言の1評価ばかりで悲しいぜ!できれば理由も教えてくれ!!

読んでくれてありがとうございます!次回も頑張る!
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