女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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さ、三人称難しい…!!出来たほうがいいかなとチャレンジしてみたが、ああでもないこうでもないとやってたらなんか一ヶ月近く…!!

すいま千円二千円(謝る気はなし)




48 やみ夜に垂れる蜘蛛の糸

 

 

 

未確認ライオット、その第二次審査。一次審査であるデモテープ審査を突破したバンドが、全国で100組。それらのバンドを特設サイトから、どのバンドが次へと進んで欲しいか、ファンが投票するのが第二次審査だ。

 

平たく言えば、人気投票である。普通の人気投票と違うところは、一日待てば既に投票した人にも投票権が復活するところだが、とどのつまり本質には変わりはない。

 

ネットを介して、はたまたは現実の活動で。どれだけバンドとしての知名度を得ているか、それが試される、狭き門だ。

 

この二次審査を突破できるバンドは、たったの上位30組だけ。

 

「よし!次はつまるところ人気投票だよね!?どうやって投票してもらう!?」

 

ここはお馴染みSTARRY。最早結束バンドの面々の指定席になったダベリテーブルの前で、ホワイトボードをマジックで叩きながら伊地知虹夏がメンバーにアイディアを募る!

 

「ち、ちょっとズルいかもですけど、知り合いの人たちに投票してもらうのはどうです!?私、学校の皆に声掛けてみます!」

 

喜多が体を揺すりながら手を挙げて意見を出す。彼女の綺麗な赤髪が、その動きに合わせて上下に揺れていた。

 

「いいね!喜多ちゃん!ガンガンやろう!取り敢えずこのSTARRYにもフライヤー刷りまくって貼りまくろう!他には!?」

 

「布教」

 

「!?…こなちゃん!一応聞くけどその心は!?」

 

「知れたことですよ伊地知先輩…。我が心の師、すなわちひとりさんの御尊顔をプリントしたありがたきポスターを使い捨てティッシュとでも一緒に下北沢の駅前で配りまくるのです!ついでに結束バンドよろしくねとでも言っておけば!」

 

背中に炎を立ち上らせ力強く拳を握り、黒井此方が断言する。この女はいつだって大マジだ。それを察しているかの如く、引き合いに出されたひとり本人が秒で反応。

 

「や、やめてホントにやめて黒井ちゃん!!」

 

「聞いて損した真面目にやってよこなちゃん!」

 

「失敬な私は大真面目ですよ!」

 

「知ってるよだから怖いんだよ!もう!こなちゃんはちょっと黙ってなさい!お姉ちゃん!」

 

「あん?」

 

話題がいきなり急カーブして向かってきたことに、少し怪訝な表情を浮かべながらも、伊地知虹夏の姉、星歌はいつものカウンターの椅子ごと振り返る。

 

「私たちがここでやってるライブの映像とか残ってる!?」

 

「モチロン。宣伝に使うのか?」

 

「うん!片っ端から上げちゃおう!少しでも再生されて知名度上げないとお話にならないし!」

 

「おうけい。動画サイトに適当に上げといてやるよ」

 

「うん!未確認ライオットのサイトにもお願いね!…後はあ…」

 

むむむ…。と、他にも何かやり残したことはないかというように頭に手を当て俯きがちに虹夏が考えを巡す。その流れを冷静に見守っていた山田リョウが、静かに手を挙げた。

 

「私の親にも頼んでみるよ。病院やってるから無駄に老人に顔広いし」

 

「ロックだよ!?おじいちゃんおばあちゃんに聴かせて大丈夫かな!?」

 

「ダイジョブダイジョブ。あの人たちの世代は何かって言ったらストだ、革命だって世間に反逆してきた人たちだから。ある意味一番ロック」

 

「偏見!!…いや、もーいいや!この際やれることは何でもやろう!」

 

思い付いた事をボードに箇条書きにしながら盛り上がる結束バンド。それをカウンターで頬杖をついて、何処か冷めた目で伊地知星歌は見つめていた。その雰囲気を訝しんだPAが、星歌に歩み寄る。

 

「どうしたんですか店長。具合でも悪いんです?」

 

「…いや、まあ。虹夏は確かに間違ってねえ。やれる事を何でもやる。そりゃ当たり前だ」

 

「当たり前なら大変よろしいのでは?それすら出来ないのなら、この審査、勝てないんじゃ…」

 

イマイチ星歌の言うことが腑に落ちないPA。そこそこ付き合いが長いお陰で、今の星歌が何かを危惧している。そんな空気を感じ取ったからだ。

 

「まあ、当たり前なら、他のバンドもおんなじ事をやってくるだろ?多分な」

 

「…あ」

 

はたと、PAは目を見開いて口に手を当てる。

 

「…私の思い過ごしならいいんだが。当たり前のことをやるだけで勝てる程、勝負の世界は甘くない」

 

星歌は傍らに置いていたマグカップに手を伸ばして一つ息をつく。

 

「…勝つためには、抜け出すためには、何かしらのキッカケが必要だ。始まったばっかだ。まだ全然、分かんねえんだけどな」

 

自分自身のことではないのに、何故か少しだけ救いを求めるような気になりながら、PAは尋ねる。

 

「…そのキッカケって、何でしょうね?」

 

「はっ。んなもんが分かるかよ。それが分かったら私にだって教えて欲しいもんだぜ。…だが一つ言えるのは、今世に出ているバンドは、例外なく、そのキッカケを。チャンスを掴んできた奴らだ」

 

椅子を回して背中を向け、手をヒラヒラと振りながら星歌は話す。

 

「実力なんざ、あって当たり前。…跳ねるには、もう一つプラスアルファが必要、…実力があってもキッカケがなくて沈んできた連中なんざ山程見てきた。アイツラが漕ぎ出したのは、そういう修羅の海だ」

 

星歌の背中を、PAは見つめる。かつてバンドの沼にどっぷりと浸かり、海千川千のバンドマンたちとやり合ってきた者の言葉には、重みがあった。

 

「…虹夏。見せてみろよお前の覚悟。アーティストとしての覚悟をよ」

 

厳しい。だがけしてそれだけではない視線を虹夏に向けながら、星歌はほんの僅かに口角を上げた。

 

 

 

 

 

っしくおねがーしまー!(ひとり特大ポスター配りー)

 

結局やってる!?黒井ちゃんやめてええ!

 

こなちゃんやめろゴラ!ぼっちちゃん嫌がってんだろが!!

 

 

 

 

 

 

 

喜多ちゃん!結束バンド投票したよ〜。

 

あ、ありがとう!何度も投票できるから気が向いたら引き続きお願い〜!

 

 

 

 

 

 

リョウが頼んできたよ?かーさん。

 

ホントねとーさん。病院休んで街宣車で娘の曲ガンガンかけながら色んなところを巡りましょう♪

 

や、やめっ…。やめろっ!!

 

 

 

 

 

 

 

配信の皆〜今日もありがと〜実は私最近気になるバンドがあってね〜。結束バンドって言うんだけど〜。このフェスに出てるんだ〜!皆よければ投票してあげて〜。

 

 

 

 

 

 

 

カチッ。カチカチッ。カタタタタ…。タンッ。…。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれ、皆で思い思いにやれる事をやる。そんな一週間が過ぎて。

 

中間結果の発表日を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ち、中間結果48位〜〜〜〜〜〜〜〜!!!???」

 

いつものダベリテーブルに集まって、虹夏のスマホを囲みながら結束バンドの面々が声を上げる。

 

「…あらら」

 

「店長の懸念…、当たっちゃいましたね…」

 

その様子を少し離れた場所で見ながら、星歌とPAはそれぞれ、少し温度差がある感想を漏らした。

 

「つか、どうしたんだよお前。らしくねえじゃんか。ケッコーヘコんでるように見えんぞ?」

 

珍しく感情が出ているPAの雰囲気を察した星歌が、意地悪な笑みを浮かべながら問う。うぐ、と、痛いところを突かれたかの様に声を漏らした後、PAは呟くように答えた。

 

「…分かんないんですけど、成功して欲しくて。…あの子たちが悲しむとこ、見たくないなって…。何とかならないですかね?店長」

 

「んな縋るような目をすんなよ…。私だってそうだよ、そりゃ。何とかしてやりてえのは山々だ。だがな〜。こればっかりは…」

 

そう言いながら星歌は、意気消沈する結束バンドの面々に視線を投げた。

 

「なんで〜!?上手くいきそうな流れだったのに〜!!」

 

「…くっそ。何が足りないんだ…!」

 

「く、黒井ちゃん…」

 

「凄い…!シデロスは3位…!」

 

「マジか。やっぱり知名度高いんだなシデロス…」

 

「うううっ…!あんなに皆に協力してもらって色々やったのに、過半数ちょっと上回ったぐらいなんてぇ〜。これじゃあ後一週間で30位なんて無理だよぉ〜!」

 

この場の誰もが思っていた不安を叫び、虹夏は項垂れる。

 

「…あ。そういえばさ。アイツラはどうなったの?何か、池袋の」

 

「あ、ああ!!四獣相!!どうしたんだろうそういえば…」

 

唐突にリョウがこの間対バンしたバンドの事を口にする。虹夏はその突然さに少し驚きながらも確認しようとスマホを操作した。

 

「…58位だ…」

 

「えっ嘘っ!?」

 

虹夏の言葉にいち早く此方が反応する。それに次ぎ、結束バンド全員で画面を覗き込んだ。

 

「ぷふっ。偉そうに喧嘩売ってきたくせに。ダメじゃんあのバンド。こりゃ私たちの不戦勝だな」

 

「マジか…。な、なんでだろ。あんな凄いライブをするバンドなのに…」

 

全員で少し考える。あの時の池袋のライブ。箱の空気を完全に持っていかれたほど、四獣相のライブは図抜けていた。そんなバンドが何故…?だが、それに関しては、喜多がすぐに答えに行き着いた。

 

「あ、当たり前ですよ。こ、このバンド、バンド名以外何もサイトに上げてないんですよ…」

 

「えっ!?」

 

「…マジだ。デモテープの音声以外は何も上がってないね…。逆に、それだけの情報でこの順位か…」

 

虹夏が驚愕の声を上げ、リョウが感心する。デモテープの音源だけで、40組近くのバンドをごぼう抜きにしている事になるが、このまま何も策を弄さない場合、敗退は決定的となる。

 

(どうしたってのよ…!?彼方…!!)

 

誰にも知られる事がない仄かな動揺を、黒井此方は一人、胸中で呟いた。

 

「…でも。自分で言っといてなんだけど、他のバンドに構ってる暇ないよ。自分のバンドを何とかしないと、このまま敗退だよ…」

 

リョウが力無くため息を吐くと、それは結束バンド全体に伝播する。全員で地の底の様な唸り声を上げ、下を向いて考え込んでしまうのだった。

 

その様子を見かねて、ため息交じりに星歌が声を掛けようとした。その時、勢いよくSTARRYの扉が開かれ、元気な女性の声が二つ、飛び込んでくる。

 

「みんなー!!」

 

「ひとりちゃん!頑張ってるね〜!!」

 

「あっ…1号さん、2号さん…!」

 

声の主はきくりに教えを請うて路上ライブをやった時にできた古参ファン、ファン一号、二号と呼ばれる女性たちだ。因みに、本人たちは気に入っている。

 

「順位は48位か…苦戦してるみたいじゃないの」

 

「や、やみさん!」

 

そして、もう一人。その二人と比べると冷静な声。オーバーサイズのピンクのパーカーを身に纏った黒髪の、やみと呼ばれた女性。ゆっくりとした歩調で結束バンドの前にやってくる。

 

「おいおい。まだ開店前なんだが…」

 

「まあいいじゃないですか店長。何か新しい物を吹き込んでくれるかも」

 

「ちっ、まあそれもそうか…」

 

一瞬星歌が抗議の声を上げかけるも、PAがすかさず彼女たちをフォロー。目の前の光景を黙認する。

 

「皆が苦戦してるみたいで私!いても立ってもいられなくなって!何か手伝えることない!?」

 

「結束バンドはこんなとこで落ちるようなバンドじゃないよ!私たちにできることないかな!?何でもやるから!」

 

今まで、行き止まりのような雰囲気を感じていた結束バンド。だが、この二人が持ち込んだ風に、何か勢いを。再走のキッカケを得られそうな、そんな気配を感じていた。

 

「み、皆さん…!」

 

「す、すっごく嬉しいよ二人とも!!何かあるかな!?リョウ!」

 

「…このお二人、確か映像編集得意だよね?こないだのMVもお世話になったし。未確認ライオットのサイトに上げたライブ映像の編集頼めないかな?」

 

「モチロンだよ!可愛くカッコよく仕上げてあげる!!終わりまで諦めないでよ!応援してるから!」

 

ドタバタと忙しく作業に入る両名。それを右頬を掻きながら見送った後、結束バンドの面々に向き直るやみ。それを迎えるように、黒井此方が歩み寄る。

 

「あのお二人と知り合いだったんですね、やみさん」

 

「今さっき、そこで偶然ね。目的一緒だったから一緒に来たってわけ。…こんなとこで負けんじゃないわよ結束バンド。私も、こないだ見たアンタたちの池袋ライブ。レビュー書いて上げてみたわ」

 

「おお!ありがとうございますやみさん!」

 

「バズるかどうかは保証できないんだけどね。皆のライブの出来に、見合うような物を書いたつもり」

 

言いながらもこちらを見やるその表情には、プロのレビュアーたる自信が満ちていた。それを聞いて虹夏が、目を輝かせて問い掛ける。

 

「や、やみさん。そ、それって今見れますか!?見たいです!」

 

「う…!見れるわよ…?でも、思えば自分の書いたレビューを本人に読まれるのは初めてかも…!」

 

先程までの自信は何処へやら。所在なさげにわたわたとするが、やがて視線を一度下げたあと、覚悟を決めたように顔を上げる。

 

「よ、よし!こうなったらどうにでもなれ!読んで頂戴!そして、感想聞かせて!できれば甘口で!」

 

「お前自分のレビューは名前通り毒ばっかな癖にな」

 

「う、うるさいわよ星歌!」

 

出会ったばかりのはずの二人の間には、何故か昔からの知己であるかのような空気が流れていた。それはさておき、突き出されたやみの右手に握られているスマホに、結束バンドは注目する。

 

「……………。えっ、凄っ…!う、嬉しい…!すっごい評価してくれてる…!」

 

「あ、当たり前よ虹夏。私はあの会場じゃ、貴女たちが一番輝いて見えたから。それが出来る限り伝わる文にしたつもり」

 

「ふふん!やみさんは本当に、皆さんを高く評価してくれてるんですよ!ようやく伝えることが出来て私も嬉しいです!」

 

「よ、余計なこと言わないでよ此方…。は、恥ずかしいじゃない…!」

 

何故か此方が胸を反り返して自慢げ。やみは顔を赤らめて反らす。その様子に、虹夏は口元を少し緩める。

 

「…ふふん。やみさん、流石じゃん。よく見てるね」

 

前髪をサラリと払い、得意げな笑みを浮かべるリョウ。いつもの何処から来るのか分からない根拠不明な自信は今日も健在のようだ。

 

「顔色と音色が七色の結束バンドの飛び道具!発射されたら何処に着弾するか分からない、で、でもその起爆力は本物の、結束バンドの核弾頭!え、えへへへへへぇ〜!!!」

 

「は、半分くらいディスられてないひとりちゃん…?あ、でも。…。ある時期を境に一皮剥けた?天真爛漫な明るさの裏にある誠実さと実直さで成長し続け、今や結束バンドになくてはならないフロントマン…。っ〜!」

 

喜多が口を抑えて息を呑む。容姿や他の面では褒められ慣れている彼女も、何故か音楽の事となると別のようだ。思わぬ絶賛に面食らっている喜多に、やみは笑いかける。

 

「喜多郁代さん。此方から貴女のことはよく聞いてる。…ギターヒーローさんと、此方と一緒に練習してる姿も、見させてもらったわ。たまにヘコむことだってあっても、腐らずに曲がらずに真っ直ぐ進み続ける、凄い子だって。…私も、そう思う」

 

「え、えう…。えっ…?」

 

ハッと此方を見る。最初こそ照れくさそうに視線を外していた此方だが、観念したように喜多に視線を合わせ、ニッと笑ってサムズアップを送った。すると今度は喜多の両肩に片方ずつ手が置かれる。それぞれの手の主は、虹夏とリョウだ。

 

「ふふっ、当たり前だよ~。喜多ちゃんはね!あまり皆にそういうとこ見せないけど、凄く努力家なんだよ!私はよく知ってるんだから!」

 

「結束バンドのフロントマンは郁代。最早それ以外考えられない。これからもよろしく頼むよ?」

 

最早言葉は出てこない。目一杯に見開かれた大きな瞳は揺れ動いていた。その目を彷徨わせると、今度はひとりと目が合う。ひとりは、少し前まで苦手だったであろう満面の笑顔を浮かべた。

 

…心なしか、その表情には、ほらね!!と。書いてあったように思える。

 

「み、皆さん…!わ、私。貴女たちで良かった…!!皆に会えで、あ、あのひ、にげだざなぐで、よ、よがっだでずう〜!!」

 

「うええっ!?な、なになにどしたの喜多ちゃん!?大丈夫!?」

 

「い、郁代!?どうしたの何があったの!?」

 

虹夏の胸に飛び込み、顔を埋める喜多。突然の涙の理由が分からず、ただただ困惑する二人。その事情をある程度知っているのが、此方と、ひとりだ。

 

「良かったですね…!喜多ちゃん…!見てくれてる人は、見てくれてるんですよ…!」

 

「うっ…!ひぐっ…!ひ、ひとりちゃあん…!あ、ありがとっ…、ほ、ほんと、ありがとねっ…!!」

 

「え〜何々全然わかんない…」

 

「右に同じく」

 

目の前の事態についていけず目を白黒させる先輩二人。此方は喜多の髪の毛を撫でてあげながら、口を開く。

 

「…お二人が、喜多さんの心の中にわだかまる最後の楔を抜いたのですよ」

 

「くさび…?ま、まさか!喜多ちゃんまだ気にしてたの逃げたこと!?」

 

此方の言葉に思い当たる物があり、虹夏は驚く。なにせ喜多が逃げ出した事件は結束バンド結成当時のこと。最早笑い話にできるくらいに消化した出来事であったからだ。

 

「はあ〜。郁代も大概生真面目というか。しつこいというか…」

 

「ゔゔ〜っ…!ぜ、ぜんばいのいじわる〜!」

 

「ああはいはいも〜!でっかい赤ちゃんだよ全く〜!」

 

今だに虹夏の胸に頭を埋めて肩を上下させている喜多を、ヤレヤレといわんばかりのジェスチャーで眺めるリョウ。しかし視線にはどこか慈愛のようなものが混じっていた。

 

「…どれだけ他の人に許してもらっても。自分自身を許してあげるのは並大抵のことじゃない。貴女みたいに真面目で真っ直ぐな気質ならなおさら。…喜多郁代。貴女は、結束バンドの最高のフロントマンよ。自信持って!」

 

「ううう…!!黒井さん〜!!」

 

「私にも来るの!?」

 

「あ〜もうめちゃくちゃだよ」

 

喜多を中心にドタバタとすったもんだする結束バンド。基本的に泣いている喜多を皆であやしているのだが、不思議と誰一人迷惑そうな顔はしていなかった。それを遠目に眺めるやみと星歌が言葉を交わす。

 

「結成当初から見てるけど…。ほんっと仲良いわよね」

 

「まあな。それがアイツラの強さかも。誰かしら挫けてもフォローできる。今だって」

 

感慨深げに妹のバンドを見やる星歌を、横目で見たやみは、口角を少しつり上げ、再び視線を結束バンドに移した。

 

「そうだね…。あの子たちならきっと。どんな波にも強風にも負けない。きっとこの、ネット投票にだって!」

 

ファン一号二号も作業の手を止めて微笑ましげに、PAもいつもの目を細めて口元に手をやる笑顔で視線を送る。その視線の先には、弾けるような笑顔をようやく取り戻した、喜多と結束バンドの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

〜更に一週間がたち〜

 

 

 

 

 

 

 

「さ、最終結果28位〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?」

 

同じ場所、同じメンツで集まり、戦いの結果を確認する。ギリギリの順位での突破に、STARRYのフロアは湧き上がった。

 

「すっごい!20も順位上がったよ!?何が起きたの!?」

 

「それに関しちゃ私の記事よ結束バンド!ほら見てこれ万バズ!!」

 

嬉し半分困惑半分で叫ぶ虹夏に、星歌から強奪したノートパソコンのモニタを指で指しながらやみは胸をそらす!その指は少し震えていた。

 

「ま、万バズなんか久し振りだから指も震えるわ…!流石私!こうやって堅実な仕事していればいずれは大手の仕事だって…!!」

 

「す、凄いです!!やみさん!ありがとう!!」

 

ブツブツと独り言を呟くやみに、結束バンドの面々は頭を下げる。それを受けてやみは少し動揺しながらも言葉を返した。

 

「わ、私だけの功績じゃないわよ!?み、未確認ライオットの公式に動画のっけた彼女らの仕事も大きいんじゃない!?」

 

いきなり話題を振られ、一号は右手をぶんぶん振りながらも。

 

「いやいや私たちなんてそんな!?ただ見てられなかったからやっただけですよ!!」

 

謙遜する。だが。隣の二号は。

 

「いや!いい機会よこれでただのファンから一皮剥ける事ができるわ!私たちこそ幻のシックスマン!六人目の結束バンドよ!ただのファンとは違うのよ!!」

 

「ごめんなさいなんかこの子最近怖いんです!ただのファンじゃなくて拗らせたファンなんです!」

 

目に炎を宿して暴走する二号を抑える一号。その様子を苦笑いで見やりながらも、虹夏は万感を握り締めるように両手を構えて、一気に上に突き上げた!

 

「いやったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!結束バンド未確認ライオット第二審査!!!突破だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「いえぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!」

 

虹夏の叫びを皮切りに、再び湧き立つSTARRYのフロア内。口元を隠す独特の笑みでその様子を見ていたPAは、感情が漏れ出るような呟きをこぼした。

 

「よかったですねぇ。皆」

 

それを耳聡く聞いていたのは、伊地知星歌。フッと息を吐きカウンターから立ち上がると、PAに問い掛ける。

 

「なんだよ?お前も結束バンドのフォロワーになったのか?ファン何号なんだよ?」

 

ニヤニヤしながら見やる星歌を一瞥したPAは、後ろに手を組み、星歌に背を向け二、三歩前に歩み、その後に振り返った。

 

「何号でもい〜ですよ〜。それにそれは、店長も。でしょ?」

 

「抜かせ。…やるじゃん、虹夏。見せてもらったぜ。必死で頑張ってるヤツには、風も吹くし味方も現れるってことかな?」

 

結束バンド、未確認ライオット第二審査通過。最終順位、28位。

 

 

 

 

 

 

 

〜その頃のシデロス〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとあくび!?結束バンドの最終順位は!?」

 

「待って下さい今…!来た!28位だ突破ですよ!?」

 

「やった!凄い結束バンドちゃんたち!」

 

「…何故そんなに結束バンドの順位が気になるのか〜?幽々には分からな〜い」

 

「い、いやほら。私たちだけ突破してもライバルがいなきゃつまらないじゃない!?」

 

「またまたヨヨコ先輩は。素直に結束バンドにも頑張ってほしいからって言いなさいよ」

 

「きぃ〜!!あくび〜!!」

 

「ま、まあまあはーちゃんもヨヨコ先輩も〜!!私たちも突破したし結束バンドちゃんたちも突破したし〜!最高の結果じゃないですか〜!?」

 

新宿のとある地下に潜ったライブハウスの一角で、繰り広げられるすったもんだ。それを遠目に、紙パックのおにころを啜り上げながら眺めていた、廣井きくりは呟いた。

 

「おめでとう、結束バンド。シデロス!楽しいライブ審査になりそうだね…!」

 

そう。次の審査はライブ審査。いよいよ直接対決だ。まだ結束バンドもシデロスも、知る由ではない。

 

シデロス。最終結果3位。押しも押されぬ結果である。

 

 

 

 

 

サイド・四獣相(機械音痴どもの憂鬱)

 

「あ〜!疲れた!!お疲れぃ!!」

 

「これで何日連続の路上ライブ!?可愛い私も流石に疲労の色を隠せないわよ…!お肌にシミができちゃいそう…!」

 

「し、仕方ねえだろバンドのメンバー全員機械音痴すぎて誰一人動画上げるどころかイソスタとかの情報発信できねえんだから…」

 

「ハアハア…。だ、だからといって場所を移動しまくって、休まずに路上ライブってのは、パワープレイが過ぎるような…」

 

「るせーぞ馬!!仕方ねえだろ他に思いつかなかったんだから!義一!!いやラビット!そろそろ出てるだろ最終順位いくつだ!?」

 

「………………」スマホスッ。

 

「…おお!」

 

「いよしっ!」

 

「ふう〜、アブね〜」

 

四獣相。第二審査、ドベ30位で通過。因みにネットにライブ映像もMVも何も上げずに突破した唯一のバンドである。

 

「…コレ取りようによっちゃ結束バンドに負けたってことにならねえ?大丈夫かな…?」

 

「僕らは大丈夫だよ。リーダーは大丈夫じゃないけど」ぷぷっ。

 

「馬テメー!!」

 

「嗚呼もう五月蝿い!!」

 

「……………」ヤレヤレ。

 

 

 

 

 

 

かくして役者は集う。決戦の地、新宿FOLTに。

 

 






次は少し息抜き回でも挟もうかな…。

結束バンドの日常回的なのもっと書いてみたい。

あそうだ。三人称目指してみたつもりの文なのですが、なってねえよ的なツッコミとか、テクニックを授けていただける方とか募集してます。なにぶんやったことないもので…。

もちろん感想や評価もお待ちしてますぜ!
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