【完結】女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
オシマイだ!!もしここまで読んでくれてた人いたら!
ありがとう!!アンタたちのロック魂に幸アレ!!
「うおおぉぉぉぉっ!!み、皆!大丈夫!?」
「うわあっ!?んだよ騒々しいな!」
いつも以上に荒々しく開かれたドア。
結束バンドの戦いが終わった日。きくりはSTARRYを訪れていた。いつものカウンター席から星歌は少し面食らいながら返す。
「ご、ゴメン先輩!み、皆は!?結束バンドの皆は大丈夫!?ちゃんと帰ってきた!?し、心配でさ!」
汗だくで肩で息をしながらそう話すきくりを見つめて、口角を上げながらため息をつく。
「心配無用だ。ちゃんと帰ってきたよ。…なんかいっちょ前にヘコんでるようだったから、これから負けなんか星の数ほど味わうんだから、一々落ちんな。っつっといた」
ひらひら手を振りながら視線を外す星歌に、思わぬ所から反論が飛ぶ。
「鬼!悪魔!!伊地知星歌!!あんな歩き始めたばかりのよちよちちゃんたちに掛ける言葉じゃないでしょも〜!!よくやったなとか!頑張ったな!とかあるじゃないですか〜!」
「うわっ!?PAさん!?」
きくりの視線の先には、いつもの結束バンドのダベリテーブルに突っ伏し、ジョッキ片手に啜り泣くPAの姿。
「ま、まあまあPAさん。飲みすぎよ、美人が台無しじゃない。ほら、鼻」
「うう〜。ずびーっ!」
その隣には背中を擦ってやりながら甲斐甲斐しく世話を焼く、ぽいずんやみの姿もあった。
「あ、あり?先輩。店は?営業時間でしょまだ?」
「ああ…。見ての通りPAがそんな感じだしな…、ライブの予定もなかったんで早終いしたんだよ。全く、いつの間に結束バンドにここまで入れ込んだんだか」
少し意地が悪い星歌の視線を受け、お酒に少し浮かされた頬を掻きながらPAは呟く。
「…。最初はそんなんじゃなかった。STARRYに出入りする他のバンドと一緒だと思ってたのに」
(はうう…。バイト怖い…、し、社会が怖い…!)
(ほ、ほら〜後藤さん。怖くないですよ〜。取り敢えずそのゴミ箱から出ましょうか〜)
(いたっ!?何すんのさお姉ちゃん!?)
(ここでは店長と呼べってんだろが!)
(PAさん!私の歌!どうですか!?良くなってますか!?)
(PAさん!いつも演出、ありがとうございます!!どんな演奏にも合わせてくれて、頼もしいです!)
(こ、こないだの音、カッコよかった…っす)
(リョウ先輩照れてます!?)
「な、なんかいつの間にか親みたいな感情を持っちゃってぇ!だ、だから!…今日皆が帰ってきて、顔見た瞬間…」
「ど、どうしよもなく悔しくなっちゃって…!もう!フェスとか!審査とか!ホントに残酷ですよね全員優勝で良いじゃんもー!!」
またも机に突っ伏し、ダンダンと拳を打ち付ける。その姿をため息混じりに見つめる星歌。すると、背中を擦っていたやみが、PAに語り掛ける。声色が、どこまでも優しい。
「PAさん。気持ち、スッゴク分かるわ。なんかいつの間にか引き込まれてるのよね。それがあの子たちの魅力なのかも。でもね…」
「大丈夫だよ。あの子たち、強いから。負けて泣いても、立ち上がれる諦めの悪さを持ってるから。だから、大丈夫」
言いながらやみは、きくりにウインクを飛ばす。少しだけきくりは照れ臭そうに視線を外した。
「ううう…!うあ〜ん!やみさ〜ん!今夜は飲みましょ〜!私の落とし所のない愚痴を聞いて〜!」
「あああもう分かったわよ!…せ、星歌?」
「あん?ああ、いいよ、店の酒でよければな。従業員が既に飲んでんのにお客に飲ませねえわけにいかねえだろ。おら、廣井も。飲んでくだろ?」
「うえっ!?な、なんだ今日先輩が優しいぞ!?」
「…。最後、アイツラに発破かけてくれたんだろ?…ありがとな。アイツラ、落ちてはいたけど、絶望してはなかった。悪くねえツラだったぜ」
「…!なら何よりだよ!うしっ!今日は飲むか!PAさん!私とも結束バンドの話しよ〜!」
酔いどれ同士がワチャワチャし始めるのを見届け、スルッとPAの横を抜け出したやみが、星歌に歩み寄る。
「…今、あの子たちは?」
「上。私たちの部屋に行ったよ。なんか今日は帰りたくないから全員泊まるんだと」
「仲良いわよね〜ホント」
「バンドなんか喧嘩ばかりのほうが良いと私は思うがな」
「あはは…まあ、それぞれ価値観違うでしょ」
つっけんどんに返す星歌に苦笑いしつつ、やみはSTARRYの入口を見上げるのだった。
「あ、あの…。に、虹夏ちゃん…」
「ん?なあに、ぼっちちゃん」
「な、なんでいきなり、泊まり、なんですか…?」
「…。ん〜。なんかね。…今日は皆と離れたくなかったから。一人でベッドで目を閉じたら、色んな言葉や場面が頭ん中でぐるぐる巡ったりして。どうせ寝れないなら、皆と話していたかったんだ」
「な、なるほど…なっとく…」
「全く。結構食らってるよね虹夏。店長にも言われたし一個の負けでヘコんでる場合じゃないよ」
「立ち直り早いな〜リョウは…」
「…。でも多分、私は皆のおかげ」
「私たちの?どういうことですか?リョウ先輩っ」
「皆の泣いてる姿見てたらさ。私はしっかりしなきゃなって」
「ご、ごめんなさい!ふ、負担でしたか…?」
「ううん。郁代。ちっとも」
「むしろ心地良いまであったよ。…皆。遠慮なく挫けてね。後ろに私、いるから」
「…リョウ先輩」
「そんかわし、私がリズムトチったりしたら皆で助けて。…きっと、その繰り返しなんだ。バンドってさ」
「…。そだね。これからさ、きっとどんどん辛いことや大変な事も増えていくよね。でもさ」
「皆となら、きっと大丈夫。そんな気がするよ」
「わた、私も頑張ります虹夏ちゃん!リョウ先輩!だ、だから私のMCがだだ滑ったら皆フォローしてください!」
「あんまMCやんないでしょぼっちちゃん!?」
「任せてくださいひとりさん!笑わない奴全員の口角指で無理矢理上げたりますよ!」
「やりかねねえ!?」
「あはははは!!」
少しずつ、帷が落ちる。仲の良い五人でも、流石に途切れがちになる会話。静寂を埋めようと誰かが付けたラジオの音だけが流れる。
「…静かだね」
「あ、はい…」
「…なんか、私たちだけ世界から切り落とされちゃったみたいだよ…」
「表現が一々センチで草」
「うっさい。しょーがないじゃんそんな気分なんだから」
「…黒井さん?どうしたのとお〜い目をして」
「静かで、寂しくて…。ちょうどこんな夜だったなあ…」
「…え?く、黒井ちゃん…?」
「私ね。弟に比べて何にも出来なくて、それでも何かを憎めるほどじゃなくてね。振り下ろす場所をなくした腕を抱えて暗澹と沈んでた、ホント…ちょうど、こんな夜でした」
「貴女に、会ったのは」
「…!」
「動画の中の貴女は、私にとって、ホントにヒーローで。…私は、貴女のお陰で自分の腕を、本気で振り下ろす場所を見つけられた」
「私は、貴女に魅せてもらった。二本の腕とエレキギターだけで、人はどこへだって行けるということを。未知、未踏という名の暗闇を、打ち破れる事を」
「…改めて、言わせてね。ひとりさん。私の尊敬する、最高のギタリスト。ありがとう。貴女に。そして皆に会える、この道に続いているなら、あの暗澹とした夜も悪くなかった。そう…。思えた」
「〜〜っっ…!!ち、ぢょっどまっでよぉ…!!ぞ、ぞんないぎなりぃ…!!」
「う〜わ。ぼっち号泣だよ」
「だ、大丈夫〜?ぼっちちゃん。ほらち〜んしな〜、全く。自重しなよ、こなちゃん!」
「全く…!!貴女ホントにズルいわよね!!」
「ぐっ。な、何がでい喜多郁代…」
「不意打ちにカッコいいのよ貴女!!いっつもいっつもいきなり!ひとりちゃんの事ヒーローヒーロー言ってるけど!私にとってヒーローは貴女なのよ!!」
「なぬ」
「ホントカッコよかった!公園で泣いてたら颯爽と現れてギターは弾いてやるから貴女は歌いなさい。貴女の後悔を清算しに行くわよって!他にも細かいとこいっぱい!色々!!」
「よ、よせやあい…。照れるぜ。でも喜多郁代。ヒーローはひとりさんの呼称だから違う呼び名を所望するわ。そうね、ギターヒロインなんてどうかしら」
「重ねてズルい!その呼称は私も密かに狙ってたのよ!サラッと持ってこうとしないでよ!」
「ふふふ…、なら勝負といこうかしら喜多郁代。どちらがヒロインに相応しいか!!」
「イイわよ!!やったろうじゃない!ヒロインならやっぱり歌えなくちゃね!!」
「ぐむっ!や、やっぱりギターヒロインたるものギターが上手くなくっちゃあ…!!」
「くっそどうでもいい争い始まって草。…ぼっち。もう大丈夫?」
「ほらこなちゃん。ぼっちちゃんがさっきの言葉に返したいって!」
「…ふう〜。こ、此方ちゃん。喜多ちゃんの言う通りです。ズルいです貴女は」
「ひとりさんまで!?えっ、ていうか名前…」
「い、いけませんか?此方ちゃん」
「い、いえ…つ、続きを、どうぞ…」
「…私さ、馬鹿なんだ。でもね。いくら私が馬鹿でも、嫌でも伝わるような本気をね。此方ちゃんには見せてもらったよ。何度も。何度もね」
「わ、私ね。貴女が思ってくれるような人間じゃない。でも、なってみるよ」
「私が思うギターヒーローじゃなくて。此方ちゃん。貴女が思い描いた本物のギターヒーローよりも、もっともっと。ずっと、強くて上手い、最高のギタリストに」
「…だ、だから、此方ちゃん。見ていて、くれる?」
(…嗚呼。やっぱり、貴女は、私の夢)
(私は、これからも見続けよう。貴女という名の、夢を。ギターヒーローの夢を)
「…ふふふ。はい!かぶり付きで見させていただきますよ!我が愛しのギターヒーロー!!」
「…へへ!ねっ!ぼっちちゃん!それ、もちろん私たちにも見せてくれるんでしょ!?」
「は、はい!勿論です虹夏ちゃん!!」
「ならさ。私もかぶり付きで見せてもらうよ!ぼっちちゃんのロック!」
「ぼっち・ざ・ろっく!を!!」
「ほ〜う。いいね、ぼっち。私にも見せてよ、最前列でさ!」
「きゃーっ!!何かのタイトルみたいでカッコいいわよひとりちゃん!!」
「ま、任せてください皆さん!!武道館を一人で埋めゆくゆくはグラマー賞!!後藤ひとりのロックを是非ご覧あれ!
うおおぉぉぉぉぉ大槻ヨヨコがなんだドーケシがなんだあ!!次は絶対勝ちまあす!!」メラメラメラッ!!
コンコン。
「邪魔すんぞ〜、元気は出たみてーだな」
「あっお姉ちゃん!!」
「寿司取ったぞ、食うだろ?帰ってきてからなんも食ってねえだろお前ら」
「ヤバっ、店長マジ気が利く。腹減って死にそうなとこだった」
「大袈裟なやつ。ほら降りて来い。…愚痴やら何やら。あるなら聞いてやるからよ」
「ありがとおねーちゃん!!でももう大丈夫だよ!!」
「皆が、いるから!!」
開け放たれたままのドア。階下に去っていく喧騒。消し忘れられたラジオから流れる、宛のない声。
「はいっ、そろそろお時間で〜す、最後のメール、読みますね〜」
「アキさん、人生で一番悔しかったとき、どうやって対処しましたか、私は今日悔しいことがあって眠れなそうです」
「あ〜ね。まああるわな色々。私、私は…。そ〜ね、歌うのオススメ」
「ヒトカラとかね。テンプレかもだけど、デッカイ声で好きな曲歌い散らかせば大抵の悩みはすっ飛んでくよ〜?お気楽?うるせっ!」
「オススメのナンバーはあるんだけどさ、これから曲流すから、曲名を言っちゃうのは辞めとくよ〜。はいじゃ最後はリクエスト曲流しながらお別れです〜」
「曲は…。おいおいマジかよこの人私の心読めんのか。まさに今私が言おうとしていたオススメナンバーだぜ」
「まあ人生あれだ。何も土産を持たずに生まれてきた私たちにも、酒と、詩と、ロックだけは共にあるから。それだけ忘れず、生きてこーぜ!!リクエスト曲!サンボマスターで、青春狂騒曲!!今日も聴いてくれてありがとう!バイにー!!」
干からびた 言葉をつないで
それでも僕等シンプルな思いを伝えたいだけなの
吹き抜ける くすんだあの日の風は
昨日の廃墟に打ち捨てて 君と笑う 今を生きるのだ
それでもあの出来事が 君を苦しめるだろ?
だからこそ サヨナラなんだ
このまま何も残らずに あなたと分かち合うだけ
やがて僕等は それが全てだと 気がついて
悲しみは頬を伝って 涙の河になるだけ
揺れる思いは 強い渦になって
溶け合うのよ
溶け出した感情は、頬を伝って、ひとすじの詩になる。
彼女たちの、青春狂騒曲は終わらないだろう。
きっと、これからも、ずっとだ。
女子高生は、ギターヒーローの夢を見るか!?
了
い、いよいよ最後だぜ…!スッと身を引いたほうがカッコいいんでしょうが私はそんな器ではない。カッコ悪くいかせていただきます!
完結祝いに高評価くれえ!!読んだ感想とかでも最高に嬉しいです!!
最初から色々迷走しまくりましたが何とか完結できて良かったです。黒井此方女史にはホント、助けてもらいました。最初キャラが自分でも掴めていなく、どうしようか迷いましたが、今ではお気に入りのキャラの一人です。
また多分何か書くと思いますので、その時はまた読んで下さい!!