女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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少しずつ核心に近づいていく。ちなみにギターヒーローさんは秀華高入学式にはちゃんと制服を着ていたため、悪目立ちはしてません。


6 結束バンド!!

 

 

STARRYでの初ライブ。なんとか成功をおさめた私こと黒井此方と、バンドメンバーの面々は、現在控え室に移動し、未だ興奮冷めやらぬライブの感想を出し合っていた。

 

「今日はなんにせよ、助っ人二人の活躍が大きかった。此方、郁代。感謝する。最悪リズム隊二人で出ることになるとこだったから」

 

「う、うう…、半分は私のせいで…す、すいません…」

 

未だに申し訳なさが抜けない喜多さんの背中を引っ叩きながら、明るく声を掛ける!

 

「はいはい喜多さん!あまり引き摺り過ぎるのも良くないわよ!私が見てる限り、貴女は覚悟を示したわ。責める人なんて、もう居ないはずよ」

 

「く、黒井さん…」

 

「その通りだよ喜多ちゃん!真面目に練習してない子があんなふうに歌えるわけない!なんでかギターは弾けなかったみたいだけど、私はもう許した!気にしないで喜多ちゃん!」

 

「伊地知先輩…!」

 

「郁代。私ももう責めてない。流石にボーカルも練習してないでグダグダだったら文句の一つも言ったかもだけど、音合わせの時点で真面目に練習してきたんだってのは、伝わってたから」

 

「り、リョウ先輩〜…!」

 

「…むしろ、ゴメンね。ライブ前、脅すようなこと言って。…たとえこのライブが失敗したとしても、私は郁代を手放すつもりはなかった」

 

「…へ…?」

 

あらあら。喜多さんが美少女にあるまじき頓狂な顔してるわよ。そんな雰囲気じゃないからやらないけど、普段なら写真にとって残しておきたいところ。

 

「アイドルみたいなルックスに、良い意味で想像できないような低くて響く歌声。私は絶対に郁代には残ってもらうつもりでいた。…ライブ駄目でも、謝罪は受け入れるつもりでいたんだ。でも。ライブ前にそれ言っちゃったら、郁代から緊張感が抜けちゃうような気がして、言わなかった。…意地悪くてゴメン」

 

…そうだったのか。でも確かに、リョウ先輩の言うことには一理あるわね。喜多郁代さん。この子には、いるだけで空気を変えるようなスター性を感じる。…そして、これを喜多さんに話すこと。それがリョウ先輩の喜多さんへの信頼だと。私にはそう受け取れた。

 

「な、…なんっ…で。謝るんですか…伊地知先輩も…!り、リョウ先輩っも…!何も悪くないのに…!!悪いの全部、私なのに…!」

 

下を向いて再び嗚咽を漏らす喜多さんに、リョウ先輩が歩み寄り、…肩に手を回して、優しく抱き寄せた。

 

「ゴメンね。不安にさせたね。…怖かったでしょ…ゴメン」

 

そう言ってリョウ先輩は、喜多郁代の頭を優しく撫でる。…まるで、子供をあやすように優しく。啜り泣くような声を漏らしながらしばらくされるがままにされていた喜多さんだったが。私は。いや、私たちは忘れていた。この子は、嘘ついてまで憧れの先輩のバンドに潜り込むほどの悪い意味でのバイタリティを持つ女だということを。カタカタカタと。バイブレーションのように喜多さんが震え出す。

 

「っキャーーーーーーー!!!!!!」

 

「う、うおう!?何だ郁代どうした!?」

 

突如奇声を上げる喜多さんと驚くリョウ先輩。

 

「じ、状況に流されていたけど、推しの先輩に肩抱かれて抱き寄せられて頭撫でられてって…!!もうコレ求婚よね!?リョウ先輩!!式はいつにしますか!!?」

 

「はえ!?」

 

流石のリョウ先輩も驚愕の表情を浮かべている。てか発想が飛躍しまくっている!!落ち着いて喜多郁代!多分先輩慰めてくれてただけだから!そういうあれじゃないから!!

 

「喜多ちゃん!?どうしたの落ち着いて!!どうどうどう!!」

 

伊地知先輩が後ろから喜多さんを羽交い締めにして止める!しかし大分力が強いようで伊地知先輩も手を焼いている!

 

「モアナ!?ミラベル!?セントジェームズ!?いえ!たとえリョウ先輩となら全然!日本の小さなまちカドチャペルでだってぇ〜!!」

 

ジタバタと暴れる喜多さんを見ながら半ば呆れたようにリョウ先輩が呟く。

 

「…此方。郁代ってあんなんだっけ?」

 

「今までは失敗してしょげていただけで本来はあんな感じなのでは?だってほら、出来もしないギター出来るって言い張って、先輩のバンドに紛れ込もうとするような子ですし…」

 

そう返すと、リョウ先輩はこめかみを抑えながら俯いて。

 

「人選間違えたかな…」

 

とぼそりと溢した。ご愁傷さまです。リョウ先輩。惚れられた弱みってやつですな。しばらく俯いていたリョウ先輩だが、不意に思い出したかのように顔を上げ。

 

「そうだ。此方。此方もうちのバンド入ってよ。郁代の先生になってあげて。そして、先生ではなくともその卓越した腕。普通に欲しい」

 

その言葉にワチャワチャとしていた二人も行動を止める。そして伊地知先輩が。

 

「それいいね!リョウ!賛成!此方ちゃんも来てよ!私たちのバンド!!結束バンドに!!」

 

お気持ちは大変嬉しい。ギターの腕を褒められるのは正直好きだ。行きずりながらライブを手伝ったわけだし縁もあるのだろう。…でも。私には大いなる目標が…。うん?結束バンド?

 

「なぜ今コードとかをまとめる際、あると便利なグッズの名前が…?」

 

問い返すと、キメ顔だった伊地知先輩の顔が段々と赤く染まっていき、後ろでリョウ先輩は吹き出し、喜多さんは苦笑いを浮かべる。ま、まさか。今のがバンド名か!?そういえば聞くの忘れてたけど!

 

「もーっ!!笑うなーっ!!絶対変えるからねこのバンド名ーっ!」

 

「なんで?かわいいじゃん?」

 

リョウ先輩がそう返すと、喜多さんが首を縦に振る。気に入られてないわけでもないのか。まあ、それはさておき。

 

「お誘いとても嬉しいです。喜多さんの先生は任されました。…ですが、私には大いなる野望がありまして。その野望が成就するまで、バンドは組みたくないのですよ。…逆に言えば、その野望が成就した後なら、その話もお受けします」

 

「むむむ…。分かった。仕方ない」

 

渋々と言った感じでリョウ先輩は了承。

 

「ねねね!野望ってどんなん?差し支えなければ教えて!?」

 

伊地知先輩からはこんな言葉を掛けられる。

 

「よくぞ聞いてくれました伊地知先輩!!私の中学からの大いなる野望!それは!!今私の中でNO1ギタリストの名を欲しいままにしているオーチューバーギタリスト!ギターヒーローさんとバンドを組んでみたいのです!!」

 

天に手を突き上げ、拳を握り込む。

 

「ぎ、ギターヒーロー!!?」

 

ギターヒーロー。その言葉に伊地知先輩が反応する!まさか!ご存知か!?

 

「し、知ってるも知ってる!!あたしも大ファンだよ!!えっ!此方ちゃんもファンなんだ!!凄いね!」

 

おおおおお!!こんなに歳が近いファンがいたなんて!!また貴女に近付けそうだギターヒーローさん!!

 

「…そっかー!ギターヒーローさんとバンド組むのが此方ちゃんの目標か〜!…ほんとは私、此方ちゃんがギターヒーローさん本人なのかなって。そう思ってさ。だから、ライブの後に話できない?って言ったんだ。ほら、演奏の癖とかそっくりだったからさ!」

 

なるほどそういう。私のギターの基礎の部分はギターヒーローに多大なる影響を受けている。癖とかも似ていたはずだ。そこを見破られたのか。伊地知先輩。鋭い。

 

「…伊地知先輩はなにか知りませんか?このギターヒーローさん。どんな人で何処に住んでいるか?とか。噂レベルで構いませんので」

 

「へ!?いや、う〜ん。私にとってはただの憧れの人で実際に会ったりとかは…。でも、此方ちゃんは会ってみたいんだよね。うん。よし!協力するよ!!ギターヒーローさん!確か特徴的な髪の色してるよね!友達とかに聞いていてあげる!」

 

「ありがとうございます!百人力です!!」

 

「…良くわからないけど、そのギターヒーローって人を探してるの?」

 

喜多さん!?

 

「なら、私も友達に声掛けてみるわ!!恩人の悩み事だもの!!私に任せてちょうだい!!」

 

「…ふふ。私も聞いてみるよ。そんなに友達多くないけど。ギターヒーローって人に会えたら、結束バンドに入る話。考えてくれるんでしょ?…ついでにそのギターヒーローもうちに引き入れられれば、押しも押されぬ最強のバンドに!!」

 

おおお!!リョウ先輩まで!!なんてありがたい…!!これが友情パワー…!!

 

「ねね!!みんなで情報を共有するためにも、ギターヒーローさんの動画!みんなで見てみようよ!少しだけど髪とか指とかも映ってるから雰囲気は掴めるかも!なにより…最高に上手くてカッコいいから!!」

 

その通りよ伊地知先輩!ギターヒーローは最高に上手くてカッコいいのだ!動画なんか何度見たっていい!伊地知先輩が適当に選んだ動画をみんなで見る。…素晴らしい。相変わらずの美しい指捌き。すると、喜多さんが首を捻る。

 

「あ、あれ…?わ、私。この人知ってる。間違いなく…」

 

「な、なんですって!?ど、何処!?何処で!?」

 

「えっ喜多ちゃん!?ギターヒーローさんのこと知ってるの!?」

 

伊地知先輩と二人して喜多さんに詰め寄る。相変わらず喜多さんは動画を見つめながらうんうん唸ってる。

 

「う〜ん。絶対見たことある…何処だっけ…このピンク髪にピンクジャージ…!!あああ!!頭のココまで出ているのにぃ〜!!」

 

頭を抱えながら倒れ込み、鉛筆のように床をゴロゴロと転げ回る喜多さん。

 

「ちょっと喜多ちゃん!!そんな事してたらパンツ見えちゃうよ自重して!」

 

「女子しかいないしいいじゃないですか〜!!あ〜んもう悔しい〜!!絶対見たことあるのにぃ〜!!」

 

コレはかなり有力な情報かもしれない。喜多さんは今動画の雰囲気を見てその上で見たことある。と言ったのだ。ならば。

 

「焦ることはないわ喜多さん。どんな小さなことでも。思い出したら教えて!」

 

「う、うん…!任せて黒井さん!私は貴女にはホントに感謝してる!絶対に恩返しするから!!」

 

「ふふふ。良い貸しの返し場所見つけたわね!さて、伊地知先輩とリョウ先輩!喜多さんも!!ロイン交換しましょう!情報を得たら私にロイン頂戴!」

 

「うん!!交換しよしよ〜!」

 

「ええ!!はいこれ私のロインID!」

 

「ん。見つけたら連絡する」

 

ふふふ!かなり!かなり順調よ!!なんと目撃者まで出たかもだし!着々とギターヒーロー包囲網が完成しつつある!!もうすぐ会えるのかしらギターヒーローさん!ど、どんな人なんだろう…!まだ見ぬギターヒーローさんに思いを馳せつつ、私はみんなとロインを交換した!!

 

その後もみんなで談笑していると、喜多さんが買ったギターが実は多弦ベースだったことが発覚して、喜多さんが空気が抜けた風船みたいに萎んだりとか色々あったが(マッコト面白え女である)私のお下がりギターを譲ってあげる事。お金の方はその多弦ベースを欲しがったリョウ先輩が、喜多さんから買い取ってあげることで幾らか戻ってきたみたいだ。良かったね!




情けは人の為ならず。この言葉を地で行く主人公である。

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