女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!? 作:はま0821
「こんな感じの為になるお話を頂いたのよ。私も気を付けるからみんなも気を付けて!好きだからといって興奮して自分よがりにギターヒーローさんを怖がらせちゃ駄目だからね!」
「そんなんやるの此方ちゃんぐらいでしょ!?」
「えっ!?嘘!?」
一話前の岩下さんのお話は結束バンドのみんなの中では。
(…私。気を付けよ)
喜多さん以外、分かっていた。
(あんた、確か学校下北よね?あんたの学校の周りに最近、ピンクの妖精なるもんが出るらしいわよ)
…朝起きたらこんなロインがぽいずんさんから入っていた。…意図不明。なんだよピンクの妖精って。見付けたら幸せになれるのかしら?お舐めにならないでほしいわね。幸せぐらい自分で掴むわよ。そんな事を思いながらスマホを傍らに置き、今作ってる朝餉の味噌汁の味見をする。流石私。美味い。
「なあ姉ちゃん知ってるか?最近うちの秀華高に、ピンクの妖精が出るって話」
私が作った朝餉に二人して舌鼓を打つ食卓。ふと弟が今さっき誰かから聞いたような話をしだす。
「あんたもその話?なんか知り合いからさっき似たようなロイン入ってたのよね〜。何?見付けたら幸せにでもなれる縁起物なの?」
「いや違くてよ。よくよく話し聞いてみたら、全身がピンクな女の子らしいのよ。姉貴が探してるギターヒーローと、特徴合致してない?」
その言葉を聞いた時、私に電流走る。そ、そうかそういうことか!だからぽいずんさんもわざわざ私に知らせてくれたんだ!
「マジか!えっ!?秀華高!?」
「うん。うち」
「近い内に出向くわ。良い情報をありがと」
「どういたしまして」
ふむう。ピンクの妖精が現れたのは秀華高。前にピンクジャージのギターヒーローさんを見たかも!と言った喜多さんも秀華高だ。点と点が繋がり、線になりかけてる…。これは、喜多さんにあって話を聞かねば。私は、今日は授業が終わったら、STARRYに向かうことを決めた。心に一つ物を決めると、私の行動は早い。さっさと退屈な授業を聞き流してみんなに会いに行くぞ!
「此方ちゃーん!またね!!」
「ええ!また!!」
元気一杯に挨拶をくれるクラスメートたちに別れを告げ、帰途につく。…その前にと、私はトイレに向かう。
左耳にピアスをはめ込み、右腕のシャツを捲り上げてシールタトゥーを施す。放課後密かにロックガールに転換するこの時は気分はスーパーマン。いや、スーパーウーマン。ふふふ…、正体はバレてはいけないのよ…。でも、教師に見つかっても面倒なのよね。次から別の場所でやろうかしら。おっといけない、そんな事考えてる場合じゃなかった急がないと!!私は足早に道具を片付け、一路STARRYへと向かうのだった。
「頼もう!!」
勢いよくSTARRYのドアを開け、伊地知先輩とリョウ先輩がよく駄弁りに利用しているテーブルを目指す。
「伊地知先輩!!喜多さん来てますか!?」
「うわわ!?どったの此方ちゃん。まだ来てないけど」
「くうっ!もどかしい!」
もしかしたらギターヒーローさんに繋がる情報かもしれないのに!そんな事を考えながらみなさんと同じテーブルにつくと、リョウ先輩がこんな事を言い出す。
「此方。虹夏。クラスメートがこんな事を言ってたんだけど、最近下北界隈にピンクの妖精が出るらしい」
「はあ?何言ってんのさリョ」
「それだあ!!」
まだ喋ってる伊地知先輩をインターセプトして、私はリョウ先輩の話題に乗っかる!
「今日私が来たのはそのピンクの妖精についてです!ズバリ!このピンクの妖精!ギターヒーローさんではなかろうか!」
拳を握りしめ持論を展開する。すると、伊地知先輩から呆れ顔で疑問を呈される。
「あははそんないやいや。何でもかんでもギターヒーローに結びつけちゃ駄目でしょこなちゃん」
もっともかもしれないが、今はこれしか手掛かりはない。それに!
「全身ピンクの女の子なんてそうそういるとは思えません!しかもうちの弟に話を聞くところ!秀華高にいるらしいんですよこの妖精さん!喜多さんがギターヒーローさんを見た!って言ってたのがもし学校でだったとしたならば!ギターヒーローさんは秀華高生!ってことになりませんか!?」
「…おお。な、なんか筋が通ってる…!」
「だからあんなに急いで郁代に会いに来たわけだ」
ほら!二人も納得だ!私も話してて筋が通ってる気がしてきた!すると同時に後ろの扉が開かれる!
「お疲れ様でーす!!あれ、みなさんお揃いですね!」
喜多郁代の登場だ!よっしゃ素晴らしいご都合タイミング!
「喜多さん!前にギターヒーローさんを見た!って言ってたのは、もしかして学校で!だったりしない!?」
「えっ!?う〜ん。あっ!?そうかも!?絶対に知ってる気がしたんですよ、何時も何処かで見ているような…」
「ひょっとしたら廊下かどこかですれ違っているのかもね…。よし、決めたわ」
「な、何を?」
少し驚いた顔で聞き返してくる伊地知先輩を尻目に。
「喜多さん!秀華高に案内して!そのピンクの妖精!私が見極めるわ!」
私は喜多さんに人差し指を突き立てそう宣言した!
「こなちゃんは目的に向かって走り出すと止まらないタイプだね」
「暴走狂奔ガール…」
ぼそりと結束バンド先輩ズが溢した言葉を黒井此方は知る由もない。
三十分後。私と喜多さんは秀華高の校門の前に立っていた。ピンクの妖精はギターヒーローなのか。確かめるためである。因みに弟には少し前にロインしといた。案内してほしいからね。伊地知先輩とリョウ先輩は今回は不参加だ。伊地知先輩曰く、(大勢で行って圧力を与えたくない)だそうだ。流石の思慮深さである。
「ピンクの妖精。私も確かに知ってるわ。まさかギターヒーローさんと繋がりあるとは思わなかったけど…」
「確定したわけじゃないわ。でもなかなか面白い情報よ。実際に会って見てみれば私はギターヒーローさんを識別できる…ふふふ。もしかしたら今日!会えるかも!?」
「放課後だから帰っちゃってるかもね?」
隣の喜多さんの言葉に思わずずっこける。そういやそうだ!放課後に入ってから結構時間が立っちゃってるじゃん!用事がなかったらもう残ってないわね!そんなことを考えていると後ろから。
「おうい。姉ちゃん!」
聞き慣れた弟の声が響いた。
「来たわね。早速案内しなさい。そのピンクの妖精の、目撃場所を」
「ああ分かった、全く人使い荒いんだから…、ん?おろ、喜多さん?」
「あら黒井くん。さっき振り」
二人はそんな会話を交わす。あら?ひょっとして知り合い?
「そ、そっか!黒井くんと黒井さんってもしかして姉弟!?え、でも、歳一緒よね!?」
「そうよ、だから双子。喜多さん。愚弟がお世話になっていたようね」
「誰が愚弟だ誰が」
生意気にも言い返すようになって…。子供の頃はもう少し大人しかったはず。一体誰に似たのやら。
「へえ…言われてみれば、顔のパーツそっくり…。二人、よく似てるわね!」きたーん!
「ほらほら。それは良いからさっさと行くわよ。案内しなさい彼方!」
「りょーかい。んじゃ、喜多さんもついてきてくれ」
私たちは、弟を先頭にして、ピンクの妖精がよく目撃されるスポットへと向かった。道すがら弟は色々話してくれる。
「なんか二組の生徒らしい。全身ピンクで兎に角よく目立つんだけど、昼休みやら放課後やらになると煙のように消えるんだそうだ」
「なんか、臆病な動物みたいねぇ」
弟の話に喜多さんが相槌を打つ。…う〜ん。私の中のギターヒーローさんのイメージと若干の齟齬がある。だって概要欄にはロイン友達登録千人にバスケ部エースの彼氏持ちでしょ?そんなん絶対陽キャじゃん。それなのに誰とも喋らないで休み時間になると忽然と消えるのか…。頭の中に疑問符を浮かべているとその二組の教室の前である。弟が率先してスライド式の扉を開く。
「あらら。誰も残ってねえな」
「まあ、放課後だしねえ」
喜多さんと弟が残念そうに会話を交わす。だが私は、教室に残されていたあるものに目を引き寄せられた。
「このギターケースは誰の物?」
二人に問いかけてみると、二人とも興味を持ったらしく、コチラに寄って来る。
「ピンクの妖精さんはギターを弾くのか…?」
「ほ、ほんとにギターヒーローさんなのかしら…」
弟は何やら的外れに驚き、喜多さんは我が意を得たり!な事を言ってくれる。コレは…私の説、当たりじゃない!?ギターヒーローイコールピンクの妖精説!!
「ふふふ…。こんなに大きな忘れ物。きっと取りに戻るに違いないわ。どこぞかに隠れて様子を窺いましょう!」
「姉貴。俺は帰って良い?」
「あんまり大勢いると威圧感があるかもだから…。いいわよ。案内ご苦労。先に帰って私の夕餉の準備でもしてなさい!」
「おっしゃ。喜多さん。ほしたらまた明日。学校でな!」
「ええ黒井くん!また明日!」
弟と別れ、私と喜多さんは取り敢えず隣の教室に身を潜めることにした。足音が聞こえればすぐ分かるはずである。
「…言われてみれば確かに。なんで思い当たらなかったのかしら。ピンクの妖精さんがギターヒーローさんだって…。あら?黒井さんどうしたの?」
「や、ヤバい緊張してきた。も、もしかしたら憧れのギターヒーローさんに会えるかも!って思うと!」
あばばばば!今更ながらに緊張してきた!ヤバい!もし会えたとしてもテンション任せに絶対変なことしちゃうパターンだコレ!
「き、喜多さん!私がなんか変な事しようとしたら構うことないから全力で止めて!もしくはファーストコンタクト、変わって!こんなテンションで行ったら絶対怖がらせちゃうわ!」
「わ、分かったわ黒井さん!最初は私が聞いてみる!任せて!」
ああ…!持つべきものは陽キャの友達…!きたーん!と、頼りになりそうな効果音でもって喜多さんが了承してくれたのとほぼ同じくらいのタイミングで、一人分の足音が、同時に私たちの耳に届いた。
…来た!喜多さんと二人で顔を見合わせ、大急ぎで(かつ冷静に音を立てないように)教室のドアを開け、隣を覗き見る。…暫くゴソゴソと、隣の教室から物音は聞こえていたが、やがて扉は開かれ、一人の少女が駆け出してきた。
少女は周りに目を配りながら、いそいそと扉を閉め、駆け足で帰宅の途につく。その時に見えた。桃色の髪に、桃色の上下ジャージ。そして背中には、先程教室に忘れられていたギグバック。
「…どう?黒井さん。あの子、ギターヒーローさんかな…?」
「雰囲気は凄く良く似てるわね…!確かめてみたいけど…!追いかけて行って声掛けるのは怖がらせちゃいそうだし…」
「…なら、私に任せてよ」
「喜多さん?何か策が?」
「ううん。でも私、こう見えて人に話し掛けるのは得意なの。怖がらせないように声掛けて、連れてきてみせるわ。STARRYまで。勿論今日は無理矢理になっちゃうだろうからまた日を改めるけど」
ああ!コミュ力ある友人!なんて頼りになるのかしら!?私だけだったら多分突っ込んでギターヒーローさんに怖がられて終わってた!か、感謝する!喜多郁代!
「二組の子だって分かったから焦ることもないしね。黒井さんはSTARRYで吉報を待っててくれれば…」
「いえ!!駄目よ!コレは私の問題!貴女はそれに付き合わされてるだけなんだから、そんな大事なところまでやらせられないわ!ギターヒーローさんに声掛ける時は教えて!私も行く!」
「…分かったわ。…黒井さん」
「ど、どうしたの喜多さん」
「あの子。ギターヒーローさんだと良いね。貴女の憧れの人」
「…あ、ありがとう。喜多さん」
ついに。遂にここまで来た。雰囲気はよく似ていたし、もしかしたら本当に。長年の夢が、ようやく叶うかもしれない。…冷静にいくのよ黒井此方。急いては事を仕損じるわ。もし彼女がギターヒーローさんだとしても。努めて冷静沈着に!隣でフンスと気合を入れる頼りになる友人を見やりながら、もしかしたらの邂逅に、私の胸は高鳴るのだった!!
遅ばせながらようやくの登場かな?本家本元の主人公。
高評価つけてくださった方!ありがとうございます!!