女子高生ギタリストはギターヒーローの夢を見るか!?   作:はま0821

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いや、アカン。セルフお盆休みとってしまった。まあただネタに困っていただけですがね!


9 いいんだよっ!!

 

 

(ぽいずんさん。この間は有用な情報ありがとうございます。もしかしたらピンクの妖精さんが、ギターヒーローさんかもしれません!今度確かめます!)

 

(ホント!?もしギターヒーローさんだったら教えてね!取材したいから!)

 

情報を提供してくれたぽいずんさんにロインで返事をする。するとぽいずんさんがこんな事を言い出すのだが。少し待って欲しい。

 

喜多さんと私の弟に件の少女の身辺調査を行ってもらった。ピンクの妖精と、呼ばれる少女の名前は後藤ひとり。放課後や休み時間になると姿を消すので調べるのに難儀したらしいが、それによると彼女は、一人の友達もなく、ぼっちなのだそうだ。それによってかは知らないが、彼女はウサギのごとく臆病で、仮にクラスメイトに話し掛けられても飛び跳ねるように驚いた後、しどろもどろに話を続けようとして、結局続かない。…そんな事を繰り返すうちに、クラスメイトも扱いに困って、話し掛けなくなり、気付けば立派なぼっちの完成である。なんか言ってて悲しくなってきたな。

 

なのでだ。イキナリぽいずんさんのようなイケイケの人から話し掛けられたら、彼女が対処できるはずがないので、適当に時間を稼いでおく。

 

(そうしたいんですけど、彼女どうやら滅茶苦茶臆病みたいで。先ずは私たちが行って、警戒心を解きほぐしてみせます。もし取材受けても大丈夫そうになったらロインしますんで、それまで待ってもらえませんか…?)

 

(むう…。分かったわ。急ぎ過ぎると失敗するしね。そこは同じ女子高生である貴女に任す。憧れのギターヒーローさんともしかしたら会えるのよね!頑張りなさいよ!)

 

(ありがとう!ぽいずんさん!)

 

そこまでやり取りを終えて、スマホをポケットの中にしまい込んで前を向いた。

 

「それで?どうやって引き入れるの?ギターヒーローさん、もとい、後藤ひとりちゃんを」

 

そう前を歩いていた伊地知先輩に問い掛けられる。因みに今は、結束バンドのみんなと、秀華高に向かっている最中だ。ギターヒーローさんこと後藤ひとりさんを、私たちのバンドである結束バンドに向かい入れるためである。

 

「ここは私、いろいろ悩んだんですけど、先行隊は喜多さんに任せようと思います。私も行きたいけど、私が行ったらなんか変な緊張感を出しちゃうだろうし」

 

「ふっ…。此方にしちゃ冷静な判断」

 

リョウ先輩にこんな事を言われる。失礼な。人の事を何だと思ってるのか。

 

「暴走狂奔ガール」

 

心を読まないで下さいよ!?

 

「まあ、私が取り敢えず最初に行って、後藤さんとお話してみます。そして、貴女に憧れてる人がいるって伝えますから。そしたら黒井さん。来て」

 

「喜多さん。ゴメンなさいね難しい役を…」

 

喜多さんに謝意を示しておく。

 

「いいのよ。いい借りの返しどころだわ。私に任せて!」

 

きたーん!!喜多さんがいる方から謎の光が!うおっ眩し!?

 

「それで?私たちはもし二人が失敗したときに備えて待機していればいいわけだ?」

 

伊地知先輩に確認を取られる。

 

「そうです。もし取り逃がしてしまった場合はあまりしたくはありませんが実力行使で捕まえましょう。タックルをキメる時は腰から下ですよお二人とも」

 

「いやいや!?やらないよ!?」

 

難色を示す伊地知先輩。この人の性格的にそうなるよね。

 

「大丈夫、此方。郁代。最終手段としてゲーミング虹夏を召喚して確保するから」

 

「私のことを筋肉キャラにしようとするのやめてくれない!?」

 

ゲーミング虹夏。伊地知先輩の最終形態か何かか。物言いから察するに、伊地知先輩がムキムキにでもなるのか。あの可憐な伊地知先輩がムキムキに…。それを出させるわけには行かない。何としても私たちで成功させねば。

 

「よっし、じゃあ行きましょう喜多さん!」

 

「分かったわ黒井さん!頑張りましょう!」

 

二人して決意を新たにギターヒーローさんの下に向かおうとすると。

 

「待って喜多ちゃん!此方ちゃん!」

 

伊地知先輩に呼び止められた。

 

「あのね喜多ちゃん。此方ちゃん。特に此方ちゃんには難しいかもだけど、後藤ひとりちゃんのこと、なるべく特別扱いしないで欲しいの」

 

「…と、言いますと?」

 

問い返してみると、珍しく伊地知先輩が言い淀んでいる。…言いにくいというより、言語化するのに苦労してる感じだな。暫く悩んだ後。伊地知先輩は意を決したかのように言葉を続ける。

 

「これからひとりちゃんを勧誘して、バンド仲間になってもらおうってのに、勝手なコッチの憧れやら尊敬やらで、心の中に無意識に距離感作ってちゃ良くないと思うんだ…。ずっとギターヒーローさんを尊敬してきた此方ちゃんには特に難しいだろうけど、出来る限り友達としてフラットに、普通の女の子とおんなじ様に接してあげて?ソッチのほうが良いと思う」

 

なるほど。これまた考えてなかった。フラットに友達感覚で…。いや難しいな!?ずっと憧れてた人なのに!?

 

「分かりました伊地知先輩。私はそうします!でも黒井さん!黒井さんは自由にやってね!勿論伊地知先輩が言うようにフラットに接するのも大事だけど、貴女がギターヒーローさんに憧れてきたのも紛れもなく事実なんだから!」

 

喜多さんからアドバイスを受ける。フラットに。でも、憧れは隠さず…?むむむ?

 

 

「此方ちゃん!あんま難しく考えないで!普段の貴女でいいんだよ!」

 

私が自身の身の振り方を決めあぐねていると伊地知先輩がこんな事を言う。普段の私…?

 

「いつでも謎に自信満々で向こう見ずで。でもいざって時は冷静で優しい。それで、ギターヒーローさんに憧れている普段通りの黒井此方で接してあげれば良い。…私も言っててよく分かってないけど!頑張って!此方ちゃん!」

 

「…普段通りの私、ですか…。分かった。頑張ります。ありがとう、伊地知先輩」

 

「うん!!」

 

伊地知先輩は満面の笑みで。リョウ先輩は無言だが、少しだけ片側の口角を釣り上げながら、それぞれサムズアップを送ってくれた。

 

「…そういえば虹夏。虹夏もギターヒーローのファン。行かなくて良かったの?」

 

「…本音を言えば、会いたい気持ちはあるよ。でも此方ちゃんは三年間ギターヒーローさんを見続けていたんだ…。そこは譲らなきゃ。私、先輩だしね!」

 

後輩二人が去った後、そんな会話が交わされる。伊地知虹夏はニカッと微笑み。それを受けて山田リョウも、静かに笑った。

 

「それにしても、喜多さん。アテはあるの?なんかギターヒーローさん、神出鬼没みたいじゃない?」

 

そうなのだ。弟が言うところ、昼休みや放課後などの大きな休み時間は何処かに行ってしまい居場所が掴めない。と言っていた。ならば同じく放課後の今日。まずは居場所を探すところから始めなければならないのでは?

 

「ふふふ…!黒井さん!これは全くの偶然だったのだけれど、私は居場所に心当たりがあるわ!まずそこに行ってみましょう!」

 

喜多さんがやけに自信満々に宣言するので、信じてその背中についていく!すると、階段の下の空いた場所を使った謎スペースに辿り着いた。そして。聞こえてくるのはエレキギターの生音。

 

「おお、…!おおおおお…!!」

 

「さぁ、腹括ってよね黒井さん。多分この先にギターヒーローさんはいます!先ずは私が行ってくるわ。うまく空気を解きほぐせたら呼ぶから、心の準備しといて!!」

 

確かにギターの生音。この先にギターヒーローさんが…!!長かった。あちこち探した。それももう終わり!!ようやく会える…!!ギターヒーローさん!!いや!後藤ひとりさん!!私の憧れ!!

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

かくれんぼする人、この指とまれ〜!

 

何も考えずその指にとまれる性格なら、よかったのにな。

 

私の名前は後藤ひとり。秀華高校一年生。ただいま絶賛ぼっち街道驀進中の、名前の通りに孤独に愛される哀れな女子である。ど、どなたか…どなたかお慈悲を…話し掛けて〜…。

 

まあ、実際問題困るんだけどね…。話し掛けてもらっても。話のネタが無い上に、家族以外の誰かと話すのなんか久々過ぎて声が出ない可能性があるもん。…自分で思ってて悲しくなってきた。

 

何故こんな事になったんだろ。中学生の時、今みたいに友達が出来なくて、お父さんが見てた音楽番組に出てたバンドの人が言ってた言葉。

 

「バンドは陰キャでも輝けるんで」

 

この言葉を真に受けて、中学時代を捧げる勢いで練習しまくり、そりゃ上手くなったと思いますよ。ええ。片手間に上げ始めた(承認欲求を満たしたかったのもある)動画たちは上手い!とよくコメントがつくし、登録者数ももう少しで三万人…。

 

ただし!ギターにかまけ過ぎたせいで気付けば中学生は終わってて!友達一人もできないまんま、高校生になっていて!もともと引っ込み思案だった性格は誰とも喋らず過ごした中学三年間のせいで更に拗れ!今ここに至っても誰とも喋れず友達もできないまんまのぼっち生活は変わらない!誰だよギター出来れば陰キャでも輝ける!なんて言ったやつ!

 

はあ…。こりゃ、高校生中に友達作ってバンド組んで、文化祭で伝説ライブかましてリア充路線ひた走り!なんてな計画は無理かなあ…。…出来れば、私だって音楽やりたいよ。誰かと音を合わせて演奏して。バンドなんか組んじゃったりして。…ううん。多分、違うや。

 

神様。私だって。私だって、友達が欲しい。誰かと話してみたい。…それはそんなに、贅沢な事、かな?

 

 

 

 

 

 

♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと。軽々しく引き受けちゃったけど、私。意識して友達増やそうとするのは初めてかも。何時もは本能的に話し掛けて気付けば笑いあって友達になってるから。ギターヒーローさんこと後藤ひとりさん。怖い人だったらどうしよう。…いや!私の恩人の為。ここは頑張らなきゃ。今こそ私のコミュ力を遺憾無く発揮するのよ!

 

…それにしても。やっぱり上手い。流石ギターヒーローさん。黒井さんの憧れの人。まだ黒井さんに触り程度しかギター教えてもらってないけど、それでもレベルの高さぐらいは分かる。リズム感、そして、それぞれの音に表情があるかの如く個性がある。私は多分この曲を知っているが、思わず歌ってしまいそうになるぐらい生き生きとした素晴らしい演奏だ。

 

演奏が終わり一息入ったところ。いよいよ話し掛けに行く。

 

「凄い!感動!!後藤さんギター上手いのね!」

 

拍手しながら心からの本心で。

 

「ぴゃっ!?あわわわわき、聞かれて…!?て、ていうかなんで名前…!?」

 

「あっ!ごめんなさい後藤さん!私は喜多っていうわ!私一年生の大体の人の顔と名前一致するの!でも後藤さんがこんなにギター上手いとは知らなかったわ!私も最近ギター始めたんだ!良かったら、もっと聴かせて?」

 

「あわわわわすみませんお聴き苦しいものを…!?えっ…!?上手い…!?う、上手いですか…?」

 

喜びが顔に出てるわ後藤さん。褒められるの嬉しいのね。カワイイ。後藤ひとりさん。実際こう見てみると可愛らしい美少女。桃色のストレートな髪を背中まで伸ばしたヘアスタイル。前髪が長くて中々見えないけど時折覗くターコイズな色したクリっとした大きな瞳が凄くチャーミング。癖っ毛なのか纏めそこねた髪を髪飾りで止めて、横に流している。

 

「え、えへへへ…、そ、それではもう一曲…」

 

よしっ。乗ってきた。チョロいわね。あとは黒井さんを召喚して引き合わせるだけ。

 

後藤さんのギターがリズムを刻む。これも私、知ってる曲だ。リズムに合わせて鼻歌を歌ってみる。後藤さんとの即席デュエット。狭い空間に私の歌と後藤さんのギターだけが木霊する。最初は私も鼻歌だけだったが、後藤さんがサビにいくにつれギターを盛り上げてくるもんで、つい私も歌詞を歌いながら応じてしまう。ワンストローク分歌い終わり、後藤さんと目を合わせ。どちらからでもなくふわりと笑った。

 

「あっへへ…。う、歌、お上手ですね…!」

 

「ううん!後藤さんのギターが上手いからよ!凄く歌いやすかった!」

 

私がそう言うと、後藤さんはとても嬉しそうに表情を崩してくれた。すると横から強引に黒井さんがカットインする!

 

「ちょいちょいちょい!!ズルいわよ喜多さん!この私を差し置いてギターヒーローさんと先にデュエットだなんて!まさかこのまんま拐かすつもりじゃないでしょうね!?早く私のこと紹介しなさいよ!?」

 

「ぴゃあああ!?!?」

 

比喩ではなく物理的に後藤さんが跳ねる!ああもう!?黒井さん乱入早いわよ!?これから紹介するところでしょ!せっかくいい雰囲気だったのに!

 

「…!しっしまった!また出たとこ勝負の悪い癖が!?」

 

「ほらもう。後藤さんが可哀想なくらい怯えてるじゃない、威圧感があるのよ大体。今日ぐらい外してこれなかったのそのタトゥーとピアス!」

 

後藤さんは涙目で私の背中に回り、プルプル震えている。ひ、庇護欲を掻き立てられるわねこの子!

 

「うぐっ…。こうなったら仕方がない。いつもの如く勢いで!後藤ひとりさん!!」

 

「はひゃああ〜!ひゃ!ひゃい!!命ばかりはお助けを〜」

 

怯えてる。だいぶ怯えてるわ後藤さんが。まあでも黒井さんなら。多分何とかするんだろう。そんな安心感が彼女にはある。

 

「単刀直入にお聞きします!貴女!ギターヒーローさんですか!?」

 

「えっ…!?えっな、なんでそれを…!?」

 

…なんでそれを。確定ね。後藤さんが、ギターヒーローさん。黒井さんの憧れの人。

 

「や、やっぱり…さ、先程のギタープレイ、拝見しました!私が焦がれて、憧れ続けたギターヒーローさんそのものでした!!お、お会いできて光栄です!!私、貴女のファンなんです!!」

 

「わ、私のファン…!?」

 

「はい!!貴女に憧れてギター初めて!貴女に会ってみたくてココまで来ました!」

 

「わ、私の…私のファン…!!えへ、えへへ、えへへへへへぇ…!!」

 

凄い。凄いわ後藤さんの顔が物理的にとろけてきてる。余程嬉しいのね!

 

「あ、あの私!!貴女と音楽をしてみたくてここまで頑張ってきたんです!セッションでも何でも構いませんので何か御一緒できませんか!?それが私の夢なんです!!」

 

黒井さんは後藤さんの目をしっかりと見据えてそう伝える。夢を伝えた黒井さんの目には最早一切の迷いも逡巡も見えなかった。

 

「な、なんか。あ、ありがとうございます、こんな私に、そ、そんなに…私でよければ、も、もちろん…!」

 

「やっ、やった…!すぐ準備します!ちょっとお待ちを!」

 

ふふ。どうやら作戦は成功ね。外にいる伊地知先輩とリョウ先輩を呼びましょう。そして流れるように結束バンドに勧誘!鉄は熱いうちに打て!流れは引き寄せるもの!後藤さん!私たちのバンドに来てもらうわよ!

 

 

 

 

 

 

 

やっ、やったやったやったぁ!!ぎ、ギターヒーローさん!憧れの人が目の前に!!何度も擦り切れるくらい見た動画の中の人が目の前だ!なんか不思議な気分!やっぱり上手いわね!力強いストロークも流れるようなコードチェンジも。すべてのギター弾く時の癖が私に教えてくれる。目の前の人物はギターヒーローさん本人だと!

 

「なんか、夢みたいです…ギターヒーローさんとセッション出来るなんて…ギター始めて。諦めずやってきて良かった…!」

 

セッションの途中。私はギターヒーローさんに語りかける。

 

「あ、ありがとうございます。私の活動をそ、そんなに支持してくれて…。わ、私、登録者数は増えてたのは知ってたんですけど…実際にファンだって言ってもらえたのは初めてで…私も良かったです、つ、続けてて…」

 

「そうなんですか!?もっと評価されてもいいのに…!こんなに上手いんだから」

 

「う、上手い…!?えへへへえへえへ…!」

 

上手いと言われて、ギターヒーローさんの顔が綻び、そして崩れる。比喩ではなく、具体的に崩れる。どうなってるんだろそれ。

 

しかし。なんか、私が思い描いていたギターヒーローさんのイメージと違う。私のイメージは、みんなから頼りにされてて彼氏もいるけど、それでも何処か遠くを見ているような。些細なことでは感情をおくびにも出さないような、クールな人を勝手にイメージしていた。(概要欄参照)目の前にいるちょろかわちゃんとはどうもイメージ合わない。…そんな失礼なことを考えていると、ギターヒーローさん、いや、後藤ひとりさんが、顔を直して語り始める。

 

「…私、もう学校行きたくない、なんて考えてたんですよ。今日、お二人に話しかけてもらうまで、く、クラスメートともまともに喋れなくて。…ほら、わ、私。こんなだから。き、期待してくれてたろうに…し、失望、させてしまいましたよね…」

 

ああそうか。そういうことか。伊地知先輩が言っていた言葉の意味。ようやく分かった気がする。憧れや尊敬に曇った眼鏡じゃ見えないものがある。ギターヒーローさんは何も完全無欠のヒーローじゃない。多感で、少し引っ込み思案で見栄っ張りな、普通の十代の女の子なんだ。…うん。ならば。私のやることは明確に見えた。

 

「後藤、ひとりさん」

 

「あ、…はい」

 

「ごめんなさい、順番間違えたわ。セッションするより。音楽やるより。先に踏む手順があった。私の名前は、黒井此方!後藤ひとりさん!私と、友達になって!」

 

「え!?と、とも、だち…?」

 

「うん!!」

 

ギターヒーローさんとして後藤さんのことを神格化していた私だったらまず出てこなかっただろう言葉。でもホントは一番最初に言わなきゃならない言葉。

 

「……」

 

「…?ご、後藤さん?」

 

私の申し入れを受けて、後藤さんは俯いてしまう。ま、まさか!?嫌でしたか!?ぎ、ギターヒーローさんに拒絶される!?イヤイヤ無理だそんなの精神崩壊する!!

 

「…ずっと、願っていたんです。お、音楽続けてれば、諦めないで頑張っていれば、誰かが、それを見ていてくれた誰かが…話し掛けてくれるんじゃ。友達になってくれるんじゃないかって…。は、初めて会ったファンの人に、い、一番のファンだって…言ってくれる人に、友達になろうって言ってもらえるなんて…こ、これは、夢…?」

 

見れば、後藤さんの瞳は揺れていた。震えてるように見えるのが何の感情からなのかは私にはよく分からない。でも。ただ一つだけ。言える言葉がある。

 

「夢ではないですよ。私はここにいます。貴女のギターを聴いて。貴女の弾く姿をこの目で見て。貴女の諦めない姿勢を心に焼き付けて、私はココまで貴女に会いに来ました。貴女は凄い人です、後藤ひとりさん!私は貴女だから、友達になりたいんです!友達に、なって下さい!」

 

そこまで言って私は後藤さんの目を見て右手を差し出す。言いたいことは全部言えた。これで断られても後悔なぞない。…うそ。多分にある。でももうしょうがない!!

 

少しの間。後藤さんの右手が動く。引っ込みそうになったり、震えていたり。その動きに後藤さんの心が乗っかっていると容易に理解できた。…そして、おずおずと。遠慮がちに。後藤さんは私の手を握ってくれた。

 

「まだ、な、なんかよく実感が、湧かないや…。で、でも。ありがとうございます黒井此方さん。…はい!私の方こそお願いします!友達になって下さい!!」

 

やったぜ。成し遂げたぜ。一念は岩をも通す。やってやれないことはなし。どうだ彼方…!姉ちゃん成し遂げたぞ。服の色と髪の色しか手掛かりないのに探し出すなんて無理に決まってんじゃん。だとう?それがどうしたやってのけてやったぜ。…この手はもう洗わんぞ!ギターヒーローさんと握手した手だからね!

 

「ふふ。素晴らしい友情の芽生えでしたよお二人共!後藤さん!私ともデュエットしたんだから私達ももうお友達よね?」

 

「えっ!?は、はい。もちろん!!い、いいんですか喜多さん、喜多さんみたいなキラキラキララなカースト上位女子の方が私みたいな芋ジャージと…」

 

「もちろんよ後藤さん!そこにいる黒井さんには私、恩があるの。その黒井さんが憧れてる人と、友達になれるなんて!光栄だわ!」

 

「あ、ありがとうございます喜多さん!うわあすごい…!ゼロから一人、一人から二人…!倍々ゲームで増えていく…!この勢いなら友達百人どころか日本人口全員友達化も夢では…!」

 

「ご、後藤さん!それはちょっと怖いわ!?それはそれとしてね!もう一つ!お願いがあるの!伊地知先輩!リョウ先輩!」

 

喜多さんが影になって見えない階段の向こうに呼びかける。すると、暗闇から伊地知先輩とリョウ先輩が登場する!

 

「ふふふ…!はじめましてだね!ギターヒーローさん!!いや、…後藤ひとりちゃん!私の名前は伊地知虹夏!これから下北沢新進気鋭のエモエモガールズバンドになる予定の、知る人ぞ知るバンド!結束バンドのリーダーだよ!」

 

「無理無理。虹夏、誰も知らないから私たちなんて」

 

「うっさいリョウ!」

 

冷静に突っ込むリョウ先輩と即座に反応する伊地知先輩。アカン!後藤さんが展開早すぎてぽかーんとしてますよ!?

 

「…おほん。改めまして。後藤ひとりちゃん!私はひとりちゃんのもう一つの顔!ギターヒーローさんの大ファンでもあるんだ!こんな上手い人とバンド組めたらどんなに楽しいだろうなってずっと思ってた!どうかウチのバンドに来てくれないかな!?」

 

「…えっ!?えっと…!ば、バンド!?バンドですか!?」

 

「そう!おねが〜い私たちのバンドリードギターいないんだよ〜!ひとりちゃんぐらいの腕なら今からライブブチ上げても大ウケだからさ〜!」

 

さすが伊地知先輩。上手いな。私や喜多さんの交渉を見ていたのか。ギターヒーローさんは意外と…褒められるのに弱い!

 

「えへへそんな、ロックンロールスターだなんてぇ…い、言い過ぎですよう…」

 

言ってないそこまでは!ギターヒーローさん!?

 

「わ、私の活動なんて。私なんて誰も見てないと…お、思ってた、…で、でも…見てくれていた人が、こんなに…!…で、でも…」

 

そう言ったきり、後藤さんは俯く。そして、呟くように溢す。

 

「私。皆さんの期待を裏切るかも…。み、皆さんの期待に、応えられないかも…。私、何よりそれが、怖かった」

 

伊地知先輩が、少し目を見開いた後、後藤さんを見つめる。緩んでいた空気が引き締まるのを感じた。

 

「…私なんかが、あの指に止まっていいのかな?遊びの誘いを受けるたんびにそんなどうでもいいことを気にして…気付けば行ってしまう…。遊びたかった相手は何処かに…。も、もう、嫌なのに。そんな事はもう嫌なのに、身体が悴んで動かない…。あ、あはは。へ、変ですよね…私…」

 

そうか。後藤さんは、ホントは凄くやりたいんだ。バンド活動も、音楽も。…それでも、心の中の恐れが、その邪魔をする。何とか、安心させてあげないと。そう思案していると、伊地知先輩が人差し指を立てて後藤さんの前にさしだす。

 

「な、なにを…?」

 

「ひとりちゃん。ひとりちゃんは今まで、この指に止まれなかったんだよね?今度もそうかどうか、試してみようよ」

 

伊地知先輩はそう言うと、高らかに皆に向けて宣言する。

 

「結束バンドやる人この指止まれ〜!」

 

みな、固まる。伊地知先輩の意図を理解できずに。否、一人だけニヤリと笑い、歩き出す影があった。リョウ先輩だ。

 

「いいんだけどさ。虹夏。ちょっとダサくない?」

 

「むう。いいの別に!定番じゃん?」

 

するとリョウ先輩は、人差し指を立て、伊地知先輩の指に重ねた。

 

「私のベースがなきゃ虹夏のドラムなんて、ちょっと音がデカいメトロノーム。やっぱりバンドの彩りはベーシストいてこそ。この私、山田リョウのベースがなきゃね」

 

そう言って不敵に笑い、私たちの方を振り返る。そうか。そういうことか。

 

「私は、喜多、郁代…!わ、私もやります結束バンド!私はもう逃げたくない!自分の役目から!今は実力不足でも練習して!いつか皆さんに認めてもらえるようなギターボーカルになってみせます!だから!!」

 

喜多さんも、人差し指を重ねて笑顔を見せる。陰りがなくなった、喜多さんのホントの笑顔。眩しいわ、貴女はそんなふうに笑うんだね。

 

「…あ、あう…」

 

未だに踏ん切りがつかないのか、後藤さんは指を出すのに躊躇していた。悪く言えば臆病。良く言えば、思慮深く、遠慮がち?その性格のせいで、止まりたかった数多の指を見送ってしまったんだろう。

 

「く、黒井さん…み、皆さん…わ、私なんかで、ほんとにい、いいんですか?…私は、その指に止まっても…いいんでしょうか…」

 

その言葉を聞いた後、私は伊地知先輩を見やる。すると伊地知先輩は、私に任す。と言うように、指を差し出したままニヤリと笑った。ならば。と、私は、後藤さんの右手の人差し指に自分の人差し指を重ねて、伊地知先輩の指に重ねる。そして、四人で後藤さんを振り返り言葉を掛ける。

 

「後藤さん!」

 

「ひとりちゃん!」

 

「ギターヒーローさん…いや、後藤さん」

 

「ひとり」

 

「「「「」」」」

 

ハッと顔を上げた後藤さんに掛けた言葉は、四人全員。打ち合わせもしなかったのにキレイに揃った。

 

私たちの言葉を受けて、後藤さんは、ようやく表情を崩して笑ってくれた。

 

 






ああでもないこうでもない、と思案しまくり、ようやくできました。大分時間くってしまった…。文字数も軽くいつもの倍だよ…。
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