主人公恐怖症、主人公に付け狙われる。   作:ドンカラス好き

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ガラル編 10

 

 ユウリはとても忙しい。やることがいっぱいあるからだ。ビートという名の毒婦に負けないように、サキナにたくさんアピールしなければならないし、サキナにお邪魔虫が付かないように守ってあげなくてはならない。かっこいいから目立つのだ。

 ……そして一番重要な、やらなければならないことがある。それは……

 

「やっぱり、ユウリさんも気付いてたんだね」

 

 誰もが寝静まっている深夜、ラテラルタウンの壁画の前に、なぜかサキナが立っていた。

 言葉の意味は分からないが、ユウリは意味深に頷いておいた。デキる女は空気を読むのだ。

 

「この壁画はフェイクだ。おそらくこの奥に遺跡が隠れてる。……俺は目がいいからね。ユウリさんも分かってて壊しに来たんでしょう?」

 

 全然違う。ユウリはただねがいぼしを集めに来ただけだ。白昼堂々壁画壊して集めるのははまずいかなー……と、深夜にこそこそ来ていた次第である。

 

「ソニアさんのためかな? 優しいね。でもこういう悪いことは……俺みたいな悪いヤツに任せておいて」

「お兄さんは悪い人なんかじゃないです!」

 

 よく分かっていないまま、そこだけは否定しなくてはと、たまらずそう叫ぶとサキナはとても悲しそうな顔をした。それを誤魔化すように微笑んだあと、ユウリの頭を優しく撫でる。

 

「じゃあ……俺たち、共犯者だね。二人だけの秘密だよ……?」

 

そしてサキナは、そのままユウリの耳元へ顔を近づけ、囁くようにそう言った。頭は抱えられたままで逃げ場なく、甘く囁かれるその台詞は、ユウリから思考能力を全て持っていくのに充分な威力を誇っていた。

 ユウリのこの夜は、結局何が何だか分からないまま、ただ脳を焼かれて終わった。

 

 

*

 

 

「うーん……」

 

 アラベスクのホテルのロビーで、夜のうちに崩壊した壁画から遺跡が見つかったというニュースが流れている。

 やっぱりわざわざ俺がすることではなかっただろうか。でもなぁ〜、伝説系のフラグはしっかり立てとかないとユウリさんが後々困ることになりそうだし……まぁこの遺跡に意味があるのかは分からないけど。

 

「どこ行ってたんです? 結局一晩中戻ってきてなかったみたいですけど」

「あ、ビートくんおはよ〜。いや、それは秘密なんだけど……心配させてごめんね」

「おはようございます! 今日もいい天気ですね!」

 

 別にそこまでしてませんが……なんてようなことをぼそぼそと呟いているビートくんと話していると、隣にユウリさんがにっこにこで座っていた。もう驚かないよ。多分もう俺はユウリさんが自分の布団の中から這い出てきても驚かないと思う。

 

「ん? あれ……? ちょっと揺れた?」

「うーん、そんなことないと思いますけど……というかユウリの熱視線について聞いていいですか? 昨日なにかあったんですか?」

「嫉妬か?」

「ユウリは黙っててくれます?」

 

 絡みつくような視線を間近でユウリさんに向けられ、身体が震えている故かと思ったがやはり違う。気がする。

 

「いや、確実に揺れた。ナックルの方角だな。なんかあったのかな?」

「そもそもね、ぼくのこと気にする前にあなたはそのグイグイ行く癖を直すのが先なんですよ」

「……予定が早まったのかな? まぁ、良いことか……」

「ぐちゃぐちゃすぎて会話になってないぞ……」

 

 みんな自分の都合でしか喋ってないからね。ホップくんおはよう。そんじゃホップくん起きたし、みんなでジム開くまで観光でもするかあ。

 

 

*

 

 

「観光つってもここなんもないなあ〜」

「綺麗ではありますけどね」

「そういえば……サキナさんってなんでドンカラスが相棒なんだ?」

「あ、それ私も気になってた」

 

 ぼーっと四人で綺麗な光るキノコを眺めていると、ホップくんにそんなことを聞かれる。奇襲に対応出来るように普段から出しっぱにしてるドンカラスと顔を見合わせながら、うーんと悩む。

 

「うーん、最初に会ったのがこいつだったし……信頼してる理由って言ったら……ドンカラスと俺は同じだからね」

「同じ?」

「うん、同じ」

 

 ドンカラスを撫でながら答えると、三者三様の反応をしている。微妙そうな反応とか、不思議そうな反応とか、めちゃくちゃ羨ましそうな反応とかされてる。多分最後のは俺にじゃなくてドンカラスに対してだけど。

 ドンカラス……あの時はヤミカラスだったけど、多分あそこで会ってなかったらハクタイの森で死んでたな。生き残ってもシロナに勝てなかっただろうし。

 

「よし! じゃあ俺は先にナックル戻ってるから。三人ともジム頑張ってね。待ってるから」

「えー! 見ててくれないんですか!?」

「あなた一人で大丈夫なんですか?」

また迷子にならないか心配だぞ……」

「散々な言われようだなオイ」

 

 しまいにゃ泣くぞ。

 もうジムも開いた時間だろう。アラベスクから直接次のキルクスには行けないらしい。好都合だ。ナックルにも用がある。ちょっと急ぎたいからね。ごめんね。

 

 

*

 

 

「あ、やっぱここいた。おーい、ソニアさん〜」

「あれ、サキナくん!?」

 

 ナックルシティに到着して早々、一個目の目的であるソニアさんに出会えた。ラッキーである。

 

「ニュース見ました? ラテラルの壁画の奥に隠された遺跡があったらしいですよ」

「え、そうなの!? 知らなかった……早く戻って確認しないと!」

 

 よし、任務完了。あとはローズ委員長に会うだけだな。ビートくん達が戻ってくるまでに済ませないと。

 そう思い、ソニアと別れようとした瞬間、スタジアムから走って出てくる人影がある。

 

「おや、君は……」

「あっ、ダンデくん! ローズ委員長には会えたの?」

「ほーう。あんたが、ダンデか……」

 

 これが無敵のダンデか。確かに強いな。下手したらシロナよりも強いかも。ガラルは強えの多いなあ。

 

「とりあえず報告はしておいたから安心だ! それより、彼は……」

「ああ、彼はサキナくん! シンオウの神話に詳しくて色々教えてもらってるの」

「そうか! 君が! 弟も世話になってるんだって? ありがとう! 兄弟共々よろしく頼む!」

「よろしくー」

 

 テンション高い人だな。

 

「あ、じゃあわたしはラテラル行ってくるね! 今度また相談乗ってくれると嬉しいな」

「俺でよければ喜んで。美人さんに頼られると嬉しいからね」

「それ絶対ユウリの前では言わないでね」

 

 怒られた。うーん、ユウリさん居ないから良いかと思ったんだけどな。女の人ってみんな美人って呼ばれるのが嬉しいと思ってたけど違うのか。サンプルがマーズちゃんとジュピターちゃんしか居ないからなあ。あいつらイカれてるから基準にしちゃいけなかったか。

 

「ところで!」

「うわあびっくりした。なんすか」

「暇ならオレとバトルしないか? 弟からはめちゃくちゃ強いと聞いてる!」

 

 ……うーん、どうしようかな。とりあえずさっきの会話でローズ委員長に会う意味は無くなったけど……

 

 わざわざ本人に確認しなくても確信したからな。ナックル揺れたのアイツのせいだ。そんでユウリさんがそれに関わってる。それは別に良い。本人の意思だろうし。だからこそ……ガラルの伝説さえ使えればなんとかなんだろ。壁画は壊して正解だったな。

 

「うん、ちょうど今暇になったから付き合ってもいいすよ。無敵のダンデかどんなもんか気になるし」

「そうか! ありがとう! 君の期待を決して裏切らないと誓おう!」

 

 こいつかっけえな。 

 ……まぁ、なんにせよ、ユウリさんの目的は分かった。この地下のヤバいやつだろう。何のためにそうしているかは知らないけれど……最後に、それを手助け出来たなら、とても良い。




ガラル編全10話予定って言ったの誰〜
絶対無理だよ〜
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