主人公恐怖症、主人公に付け狙われる。   作:ドンカラス好き

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ガラル編 13

 

 ヒカリがあの男に初めて出会ったのは、たにまの発電所だった。

 何もかもがどうでもよかった。何もかもがつまらなかった。だから旅に出た。出てもつまらなかった。

 全てが変わった。一目見た瞬間に、このために旅に出たんだと理解した。男はこちらを見るなり目を見開いて、「マジかよ」と一言だけ発した。声も良かった。

 幹部のマーズとやらを倒したら、ようやく男と戦えた。雑魚だったマーズと違って強かった。初めて強かった。初めて苦戦した。初めて負けた。興奮した。

 死ぬほど煽られた。むかついた。興奮した。逃げられた。悔しかった。興奮した。その時マーズを抱えていたことに嫉妬した。仕返しの瞬間を思えば心が躍った。感情がここまで揺れ動いたのは初めてだった。

 手持ちはポッチャマ一体のみ。もうやめようと思っていた旅。モチベーションという言葉の意味を初めて知った。

 絶対に、初めて抱いた欲望のままに、自分のモノにしてやると心に誓った。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

「いい? ユウリ。好意を隠さないのはいいけどそんなぐいぐい行ったらダメ。もっと引くことを覚えなきゃ」

「その話長くなる? お兄さんのとこ行きたいんだけど」

「頑張れマリィ……! 人としての常識を取り戻させてやってくれ……!」

「頑張ってください……! どうか人の心を……!」

「キレそう」

 

 あっちは楽しそうだなー。俺はさー、なんか変な白黒お兄さんに絡まれまくってんのにさー。楽しそうだなー。

 

「だからね、おれはアンタが妹とどんな関係かって聞いてるんですよ」

「知らんよ。さっき会ったばっかだもん。……知り合い?」

「知り合いと来ましたか! 兄であるおれを差し置いて勝手に知り合うとは! モルペコの恩人とはいえふてえ野郎ですね!」

「意味わからん! ココア奢ってくれたから良い人だと思ったのにー!」

 

 何なのこの白黒ー!

 

「ああ、ゴメンゴメン。あんたがイケメンだから邪推してるだけ。ユウリの良い人は取らんから。ほら、アニキももうやめて」

「えっへへ、良い人だなんてそんな」

「え、ヤダ。イケメンだなんてそんな」

 

 照れ照れしてたらダブルで睨まれた。違う違う。すみませんでした。

 

「……まぁ、落ち着きましたよ。大丈夫。モルペコのこと、ありがとうございましたね。妹の大切な相棒なんだ」

 

 おー、ほんとだ。落ち着いた。別に良いよ。そんな大したケガじゃなかったし。ココア美味しかったし。甘くてあったかかった。

 飲んでる間凄い生暖かい目でユウリさんに見られてたのはアレだったけど。

 

「シャッターのことも叱っといたんでね。良ければ今からでもチャレンジ始めますか?」

「是非! 私からお願いしていいですか!?」

 

 ユウリさんが凄いやる気を見せてる。いつもと違う。何で? 焦ってる?

 

「別に良いですよ。じゃあ、スタジアムへいきましょうか」

「ありがとうございます!」

 

 なんかあれだね。他の人に対するユウリさん見てると別人みたいで脳がバグるね。すげーまともじゃん。

 

 

 

*

 

 

 

「すごかった! 俺ライブっていうの? ああいうの初めてだったからすごかった!」

「負け試合なのにそんな喜んでもらえると照れますね」

「私が勝ったのに……私のお兄さんなのに……声援が全部向こうに……!」

「ごめんけどユウリ、あたしのアニキ睨み殺すのはやめてくんない?」

 

 ユウリさんがネズさんに勝って試合後、興奮して感想を伝えてしまった。ユウリさんにおめでとうを伝える前に。やべっ。でもライブとかコンサートなんて贅沢なもん前の世界でも行ったこと無いからなー。びっくりしたよ。

 

 まぁそんくらいで怒るユウリさんではないだろうということで、改めてユウリさんにおめでとう言おうとした瞬間、西の方から轟音が鳴り響いた。と、同時にびりびり来る。

 

 あぁ、もう終わりか。

 

「おっと、ギリギリ間に合った! じゃあ私は用事あるので! みんなはジム戦頑張って!」

「ごめんユウリさん、俺も行っていい?」

「……分かりました!」

 

 慌てて音がする方に行こうとするユウリさんを引き止め、ご一緒させてもらう。なるほど焦ってたのはこれが理由ね。

 多分俺の想像で間違っては無いと思うんだけど、ちょっともうこっちも時間なさそうなんだよ。ローズ委員長にユウリさんと一緒に会わなければ。

 ごめんね、ビートくん、ホップくん。また応援出来ないや。でももう俺はいらんだろ。

 

 

 

「いやこっちからでも来れるんかい!」

「ふふっ、でも寒いのも楽しかったですよっ」

 

 ここ繋がってたならあの氷河なんだったん!?

 

 

 

 

*

 

 

 

 ローズ委員長には会えた。ユウリさんの目的も分かった。轟音の原因である暴走したダイマックスポケモンも俺とユウリさんとダンデさんの3人が居たから一瞬で鎮圧出来た。

 ユウリさんの目的は概ね想像通りではあったな。何故それを、っていう理由は教えてくれなかったけど。

 

 ダンデとユウリさんと別れて、ナックルスタジアムの地下でローズ委員長と二人きりになる。

 

「ローズ委員長さぁ、ダンデさんだったんでしょ? 最初は。何でやめてユウリさんにしたの?」

「……話してなくても分かるんですね? 流石は銀河のサキナ……といったところですか?」

「そのあだ名キモいからやめてね」

 

 本当にやめてね。よその悪の組織の出向員潰しすぎて変なあだ名付けられちゃったんだよ。つかなんで知ってんだよ。それ悪党どもの中でしか広まってないでしょ。

 

「先ほどの質問の答えですが……あまりにもわたくしと噛み合いすぎていたんですよ。チャンピオンダンデより遥かにね」

「強さもダンデさん超えたしなー。今日ネズさんとのバトル見て分かったよ。完成しちゃったねあれは。ダンデの無敵プロモーションは風前の灯だけどいいの?」

「そうですねぇ、ユウリくんならいいんですよ。おそらく長い付き合いになりますから」

「ふーん……まぁユウリさんが納得してんなら良いけどね」

 

 うさんくさいけど、まぁいいや。

 

「じゃあさ、ちょっとお願いがあるんだけど」

「もちろん構いませんよ。あなたが居てこそ、なんですから……」

 

 

 

*

 

 

 

「あの、ぼくたちに何を隠してるんです? ユウリの忙しい理由にあなたも関わってるんですか?」

「そうだぞ! 信用ないのか!?」

 

 遅れてナックルシティに到着したビートくんとホップくんに詰められている。まぁそうなるわな。でもなー。

 ビートくんに、お前がやってたねがいぼし集めだよーん! なんて言えんからな。俺の目的に関してはもっと言えん。

 

「何でだんまりなんです?」

「ジムは勝ったの?」

「質問に答えてくれません? 勝ちましたよ」

「おれも勝ったぞ!」

 

 勝ったのね。まぁ負けるこたないと分かってたけど。

 

「じゃあ苦戦した?」

「いえ。特には」

「そんなにだったな」

 

 うん、よし。分かった。

 

「じゃあ旅はここまでだな。楽しかった。ありがとう。師弟関係もこれで終わりだ」

「……は!?」

「なんで!」

「ユウリさんには伝えてあんだけどね。もうビートくんは俺と同じくらい強くなったよ」

 

 ついでにホップくんもね。俺が直接教えたわけじゃないのにぐんぐん強くなったね。

 

「ありえない! まだ一度も勝ててないじゃないですか!」

「手持ちの練度だろそれは。自分で鍛えなさいよ。トレーナーとしてはもうビートくんは俺に劣らないって」

 

 ビートくんとホップくんが今までに見たこともないような顔をしている。俺だって君らとの旅は楽しかったけどね。そもそも旅なんか楽しんじゃいけないんだけどね俺は。

 

「最後のトーナメントはちゃんと見るよ。シュートシティには居る。俺からは会わないけどね。君らはまずここのジムクリアしな」

「待ってください! 待って……!」

「じゃあ、またね」

 

 もう時間ないんだよ。ヒカリ来てる。多分。

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